< 2025年 1月 店主の独り言 >

 あけましておめでとうございます。今月は東京の蕎麦のお話しです。

 11月末に仏シャンパーニュ地方、サロンのオーナーが来日し、東京でワイン会が開催され私も参加しました。会が夜からでしたので羽田に3時過ぎに着き、まずは浅草に行って蕎麦の名店「並木の藪」で軽く腹ごしらえ。この店は昼に行くと店の外に10人以上は並んでいる超人気店ですが、夕方5時前に着くとすんなり店に入れました。夕食に蕎麦という方は少ないのでしょう、私の他には4組程のお客さん。

 私は座って「まずは日本酒をお願いします」と告げ、手酌で室温の日本酒を味わうと「自分は今、江戸に居るんだ」という気持ちになって来ます。こうして半分程お酒を飲んだ後にもり蕎麦を頼み、しょっぱくて濃厚な並木藪の蕎麦つゆに蕎麦をちょこんと浸して味わいます。そしてお代わりは温かいかけ蕎麦をいただき、お店を出ました。

 ワイン会は虎ノ門ヒルズの森タワービル51階にあるホテル・アンダーズ東京。浅草から新橋に出て、徒歩でヒルズに向かうと天を見上げるようなビルが何棟も立っています。ビルに入りホテル専用エレベーターに乗ると、ボタンは1階と51階の2つしか無く、51階に着くと、ここは浅草とは真逆な世界でした。51階にあるホテルの天井高は6メートル程もあり、窓からは東京タワーが同じ高さで見えます。まるで映画のセットの中にいるような所でワイン会がスタートしました。試飲したシャンパーニュはドゥラモットのスタンダート品、ブラン・ド・ブラン、ミレジム付きのブラン・ド・ブラン、ロゼと続き、最後はプレミアム品のサロン2013年産。洗練されたシャンパーニュを味わいながら、江戸と未来都市TOKYOを体験しました。

 この日の宿は杉並にある家内の実家。翌朝、朝食をいただきながら義父さんに「51階は東京タワーと同じ高さでしたよ!」と言ったら、東京タワーなんか東京もんは誰も行かねえよ!と言われておしまい。でも私の様なお上りさんには驚きの1泊旅行でした。後でアンダーズ東京のメニューを調べるとコーヒーはミニ・デザート付きで1790円、東京タワーのトップデッキ(高さ250メートル)の入場券は3500円ですから、アンダーズの方が入場料が無い分安いので、51階のホテルに行くのはちょっと緊張しますが新東京観光としてはおススメです。

< 2024年 12月 店主の独り言 >

 今月は旅行のお話し。

 10月の末に家内と瀬棚(セタナ)へ一泊旅行に出かけました。二人はどちらかと言うと、豪華絢爛な宿よりも情緒あるひなびた所で美味しい物をいただくと嬉しくなるタイプ。今回は友人の紹介で、瀬棚の三本杉岩前にある「民宿海の家」。民宿なのでお客さんは風力発電等の工事関係の方が多かったですが、料理はおいしく品数も多くてとても良かったです。さて、宿の予約時に酒屋であることを伝え、ワインを持ち込ませていただきました。ご迷惑をおかけするので、宿の方へ持ち込み料でイタリアの赤を1本差し上げ、ワイングラスとコルク抜きは持参して、白は三笠・山﨑ワイナリーのピノ・グリ、赤はドイツ・バーデン地方マルティン・ヴァスマーのシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール種)を選びました。

 食事の時間に食堂に行くと、隣のテーブルのご夫婦もワインを持参されていました。そのワインが栃木県・ココファームの「こことある・ぴのろぜ」。ココファーム・ワイナリーは栃木県にありますが、このワインは北海道余市・木村農園産のピノ・ノワール種100%で造った特別のロゼをご持参。結局、ワイン好き同士で話が弾み、お互いのワインを飲んでいると、お隣さんは次に藤野ワイナリーのナカイ・ケルナーを持って来ました。東京から来たという隣の旦那さんに話を聞くと、ワインが大好きで一時は個人でワインの輸入業をしていたが、現在はワインの仕事は止めて趣味に留めているそうです。道理で、ワインのチョイスが普通じゃない理由が分かりました。

 さて話は前後しますが、宿には温泉が無かったので途中のモッタ海岸温泉に寄ってから来ました。お湯は北海道では貴重な天然ラジウム温泉で、肌に刺激があるというか何か効能がありそうな感じがします。露天風呂からは日本海を一望できてロケーションも素晴らしい温泉でした。そして瀬棚の宿での食事の後に部屋でガイドブックを見ていると、瀬棚に日本一危険な神社があるとの事。翌日の予定は無かったので、二人で参拝する事にしました。

 宿から海岸線を江差に向かって車でずっと走ると、海沿いに太田山神社の鳥居が見つかります。ジョキングシューズの紐を締め直して荷物は車に置き、家内と参道の階段を上ります。この階段は斜度が50度らしく、階段に上から太いロープが2本垂れています。本気でロープをつかみながら登らないと落ちてしまいそうな階段の後もかなりの急勾配の斜面が延々続き、全ての道にロープや鎖が用意されています。こうして休み休みしながら約1時間登り切った所に、先に登っていた年配のご夫婦が立ち止まっていました。「私たちはここで諦めます」と言った先は、垂直に5~6メートルある岩の壁。壁には鎖とロープが垂れ下がっています。下を見ると200メートルはある絶壁、家内と相談して折角ここまで来たのだからと挑戦しました。

 岩壁はホントに怖かったですが、数メートル上にある小さな洞窟の中に小さな本殿がありました。ここで手を合わせて参拝し「フジヰが世界一のワインショップになりますように導いてください」と願いました。その後、壁をゆっくりと降りたところに、山のガイドさんと、お父さん、7~8歳の息子さんの3人が、子供さんに命綱を付けて壁登山の準備をしていました。ここの参拝は誰にでもお薦めはしませんが、達成感の素晴らしさと絶景は例えようがありません。

 壁の後の下りも慎重に歩き、最後の階段を下りて、出発点の鳥居横の湧水を飲んでやっと安心しました。汗をかいたのでこの後は温泉、湯(ユー)とぴあ臼別温泉に向かいます。ここは無人温泉で、ログハウスの様な脱衣所に募金箱があって、一人100円の協力金を払って入浴します。山の奥にあり、動物も勝手に入りそうな露天風呂は当然かけ流し、澄んだお湯は湯疲れせずに登山で疲れた筋肉をほぐしてくれました。この後は八雲に出て高速で札幌に夕方着き、かなりハードで充実感のある旅行になりました。

< 2024年 11月 店主の独り言 >

 今月は私の休日の過ごし方。

 10月に家内と休みが重なったので、家内の希望で千歳の温泉に行って来ました。13時頃千歳に着いてまずは昼食、「柳ばし」さんに向かいます。ここで家内は「チーズササミ定食」、僕は「メンチカツ定食」をいただきます。淡白なササミにチーズを挟むことで、ボリュームが増して美味しさもアップ。一方、僕のメンチカツはお店がお薦めするショウガ醤油でいただきます。柔らかめのメンチにショウガ醤油はぴったりで、とんかつソースとは違った美味しさが楽しめます。お腹も満ちて次は温泉「くるみの湯」に向かいます。

 千歳市郊外の畑が広がる中にあるこの温泉は大きくはなく、町の公民館か集会場という感じの規模。500円の入浴料を払って中に入ると、皆さん地元の方ばかりでした。お湯はモール温泉で、ウーロン茶色のヌルヌルでトロトロの感じ。露天風呂も無く、温度の違う二つの浴槽と洗い場だけですが、ゆっくり浸かっていると、肌がツルツルになって来ます。これは癖になりそうな柔らかなお湯で、温泉好きでしたら絶対に行くべきお湯でしょう。

 この後、車で温泉の駐車場を出た所で家内が直売所の看板を見つけ、「ますこ農園やさい直売所」に車を止めます。夕方近かったので野菜の種類は少なかったですが何点か買うと、ここの奥様から近所に出来たスーパーの話を聞き、次はそこへ向かいます。「モコ・プラス」というこのお店は、規模は大きくはありませんが、魚屋と八百屋が合わさったような感じ。店内は活気があって、魚、野菜、果物が輝いています。ここでは鮭と野菜を買って、家に帰ります。

 実はこの日、家内の友人でベリーダンスを習っている方の発表会があり、この後二人で観に行きます。これがどんな踊りか詳しく知りませんでしたが、ハワイのフラダンスに近い感じでした。昔、ショーン・コネリーが演じる映画「ジェームス・ボンド」で、アラビアの女スパイが「007」に近づく際に腰を振って踊っていた、ちょっと艶めかしいダンスと言えばわかっていただけますか。これを札幌の女性が踊るのですが、若い方もいれば年配の方まで様々。この日のお客さんは50名ぐらいでしたが、男性は僕を入れて3名。まるで女子高に紛れ込んだようなバツの悪さでした。

 更にこの後、得意先でオープンしたばかりのレストランバー「フォトゥイユ」さんに伺います。場所は昼飲みで有名な「第三モッキリセンター」さんの2軒北側にある、マツヒロビルの地下1階。元は写真スタジオだったそうで、天井が高く独自の空間です。調理はバスク料理で知られた「チョコ」さんの按田(アンダ)シェフ、支配人は若い女性で元「エルスカ」さんのホールに居た片野さん。この日は軽いおつまみだけで食事はしませんでしたが、ここは大人の隠れ家といった感じですぐに人気が出そうなお店です。さて、この日は昼前に出かけて、夜の10時過ぎまで盛り沢山で有意義でしたが、へとへとになった休日となりました。

< 2024年 10月 店主の独り言 >

 今月はお勉強の話。

 8月に今話題の中学・歴史の教科書、令和書籍出版の「国史」を購入しました。執筆者の竹田恒泰氏は旧皇族・竹田家の出身で、作家であり、テレビ「そこまで言って委員会」の出演者。その彼が取り組んだ歴史の教科書でしたが、文部省の教科書検定で4回も不合格となり、6年がかりでやっと検定合格となった教科書です。

 私は小さい頃から勉強が大っ嫌い。当然、教科書も後半になると開いた形跡が無く、時々、顔写真が載っていればヒゲを描いたり鼻毛を描くぐらいの問題児でした。この教科書「国史」はとても厚く、毎晩寝る前に1~2ページ読んでいますが、今やっと全体の2/3位まで読みました。そんな途中経過ですが、内容が面白く毎日読み進んでいます。ネット上でこの教科書は「極右思想」の危険な教科書と言われています。しかし私はこれが初めて真面目に読んだ教科書なので、この内容が当時の教科書に比べ、右寄りか左寄りなのかは分かりません。

 勉強嫌いな私が歴史で覚えているのは、先生がこれは重要だから年号を覚えなさいと言っていた「いい国(1192年)作ろう鎌倉幕府」ぐらい。今回読んでみて分かったのは、歴史は代々続く王様の記録なんですね。ある場所で王と共に住民が生活している所に、近隣で勢いのある王が侵略してくる。侵略されても、良い統治が続けば住民の生活の中に楽しみや文化が生まれる。その王が死に兄弟や息子に代替わりして統治が乱れると、別の王が出て来て新たな国が始まる。こういった全体の流れで歴史を見なければ、年号を覚えても意味がないことが分かりました。

 学生時代はテストのための勉強でしたが、今は日本人として日本の歴史を知る事の大切さを感じながら学んでいます。65歳にもなってやっと気付いたのかと笑われるかもしれませんが、あの劣等生が今、教科書を楽しんで読んでいる姿を当時の先生に見て欲しいなぁと思う今日この頃です。ちなみにこの「国史教科書 第7版 検定合格 市販版(税込2,000円)」は通常の書店では扱いが無く、購入はアマゾンか、紀伊国屋書店でしか販売していないそうです。

< 2024年 9月 店主の独り言 >

 2024年7月末、家内と共に函館に行って来ました。

 ブルゴーニュ地方ヴォルネ村の名門、モンティーユ家が函館で始めたワイナリーの開所式に出席する為です。オーナーであるエティエンヌ・モンティーユ氏は2015年頃から毎年、地質学者や専門家を同行して北海道内をメインに様々な産地を回って理想の畑を探していました。そして2018年函館・桔梗(キキョウ)町に決定し、2019年に葡萄の植樹がスタート。当初は1~2ヘクタールの規模でしたが、今回観た畑は20ヘクタールほどに広がり、更に近隣の拡張をしていました。モンティーユ家はピノ・ノワール種の名門ですから、植えられた葡萄は当然ピノ・ノワール種でしたが、気候も、風土もヨーロッパとはまるで違う日本での栽培なので、いくつもの区画に分けられた畑には実験的な試みが感じられました。

 開所式はモンティーユ氏のご挨拶から始まり、フランス大使館の農務参事官、道庁副知事、今話題の函館・大泉市長、国税庁、10Rワイナリー・ブルース氏の祝辞が続きます。次にワイナリー内部を見学し、外に出て広大な畑を回って行きます。畑のある桔梗町は内陸の斜面にあり、函館山や海を見下ろす風光明媚な場所。各区画では同じピノ・ノワール種でも苗木のクローン別だったり、挿し木する台木の種類、あるいは挿し木せずに自根栽培だったり、木の仕立て方だったり、様々な様式で葡萄が栽培されていました。フランス本場のやり方をそのまま持ってくるのではなく、この場所にとって最適な方法を見つける為に、研究を続けている最中といった感じでした。

 夕方になり、街の明かりが灯りだした頃に会食が始まります。食事はブュッフェ・スタイルで、函館「メゾン・フジヤ」さんのフランス料理だけではなく、「清寿司」さんの寿司、「二代目・佐平治」さんの前菜、「ワインダンサー」さんの前菜、そして熟成した沢山のチーズが並んでいます。飲み物は当然、モンティーユさんのワインですが、本家のブルゴーニュ産と、モンティーユさんが函館と共にアメリカ・サンタバーバラ地区で始めたカリフォルニア産と、北海道産の3地区のモンティーユ・ワインが並び、他に上川大雪・五稜乃蔵の日本酒もありました。参加者は160名程で、その半分近くが多分フランスからの方々でした。

 外人さんの奥様方の何人かは、映画俳優のような背中の大きく開いた原色のドレスを着ていて、まるで外国映画で観たパーティーの様。フランスでワインを飲むというのはこういう事なんだと思いながらも、僕は出ていた15種程のワインと日本酒を必死に試飲を続けます。一方、家内の興味は食事のようで、僕に飲んでばかりいないでこのお寿司美味しいよ、このお肉も食べてごらんと、時々おすすめ料理が僕に渡されます。函館は元々海の幸、山の幸に恵まれた食の街。更に近年はワイナリーも増えて、この地が余市、十勝、岩見沢・三笠に続いて北海道を代表するワイン産地になると実感した旅でした。最後に宿泊したビジネスホテル・グローバルビューの朝食が素晴らしく、特にイカのお刺身を食べた時、僕は仕事抜きで函館の美味しさをしみじみ味わいました。

< 2024年 8月 店主の独り言 >

 今月は当社のお話。

 昨年末で16年間働いてくれた鎌田君が退社して、会社としては10年ぶりに求人を出しました。10年ひと昔とは言いますが、募集の際に一般的な休日の日数や社会保険等の加入時期で、私の常識が今の社会とはズレていた事が分かりました。当初は欠員の1名補充と思っていましたが、今いるスタッフも現在の休日体系に合わせる為に、2名補充して皆が週5日勤務になるよう稲見店長が毎月シフト表を作っています。それから何人かのスタッフが入社しましたが、普段は馴染みのないアルファベットで書かれたワインの産地名や、生産者名を始めとする専門用語を覚えるのが大変で、続かずに退社するスタッフが多いのです。

 私と専務も体育会系のノリではないと思うのですが、この機会にZ世代と呼ばれる今の若者と共に働く事で、新人類と呼ばれる世代を知る機会と思って私も努力しています。そんな中、当社で約半年間勤務しているのが女性の篠崎さんです。彼女はパティシエを夢見て札幌の有名進学校から製菓専門学校に行き、札幌の菓子専門店に就職してその店のオーナーと付き合いのあったフランス人シェフが経営するカナダ・モントリオールの菓子店で5年間働いたそうです。更に驚きは、農業にも興味があったそうでカナダから戻ってきた後、美瑛の農家さんで2年間働いて、次に当社に来ました。

 彼女は当社ではワインやお酒の知識を学びたいと言って、ワインの専門書を購入して休憩時間に学んでいる努力家。また数年いたモントリオールはフランス語圏だったので、仏語と英語の日常会話は達者で当社でも外国の方が来店された時はとても助かっています。普段は午後から車に乗り、当社の得意先の飲食店様にワインを納品していますので、「Ca va(サヴァ)」と声を掛ければフランス語で応えてくれると思います。しかし、もう一人いた男性スタッフが退社した為、フジヰではもう1名を募集しています。

 ワインは割れ物で、重く決して楽な仕事ではありませんが、当社で1年間働けば新入荷ワインを900~1000種試飲することになり、ワインの知識が増えて行きます。ワインを学んでみたいと思っている方がいましたら、インディードの「ワイン販売」で検索していただき、当社宛へお問い合わせください。

< 2024年 7月 店主の独り言 >

 6月に妻と共に安平(アビラ)町に行って来ました。

 当社で扱う「いぶりナッツ」の生産者「スモークアップ・ジャパン」さんへの訪問がメインです。この会社は「電界風味添加装置」という機械を開発、販売する会社ですが、この機械で出来る燻製のデモンストレーション用に、ゆで卵やナッツを自社で燻しています。普通、機械の販売でしたら、展示会やイベント会場でその卵やナッツをタダで配って販路を広める所を、それぞれ「かしわのたまご」、「いぶりナッツ」と名前を付けて販売もしているのです。このサンプル品が一般の食品メーカーの物より良質で商品力が高いので、当社でもここのナッツ類を扱っています。

 ナッツやゆで卵は沢山のメーカーから様々な燻製した商品が出ています。通常は燻製室の下部でチップを燃やし、熱で燻した風味を食品に付けますが、ここでは低温にしたチップの煙を電子の力を使って短時間で食品に吸着させることで、食品に熱がこもらずに燻製が出来ます。ですから黄身が半熟のゆで卵をその状態のままで加工でき、マヨネーズなど液状の物でも燻製に出来るそうです。今回伺ったのは、良質な商品を造り続けているこの会社の秘訣が知りたかった気持ちがありました。会社で機械担当の河合さんと社長の小坂さん、お二人に話を伺いました。河合さんは電気や機械に詳しく、小坂さんは味わいの要を担っていて、私の印象ではワインショップフジヰの社長と専務の様に性格の違う二人が協力して上手くいっている感じがしました。

 その後、お昼はお薦めされた地元の名店、「そば哲・遠浅店」へ。大食の僕が蕎麦屋さんに行くと、いつも頼むのは一人で「もりそば」と「かけそば」のダブル。ここは特に麺が引き締まって美味しかったので、冷たいもりそばがおすすめです。そして食後は安平町の鹿公園に行きました。園内は丘や池があって多少標高差もあるので、散歩をしても景色に変化があります。広い公園を奥に進むと、小学校のグランド半分程の広さに鹿が15頭程暮らしていました。札幌の公園の多くは平地にあって歩いていても変化が乏しいのですが、ここは森の中にいるようで気持ちが良かったです。他にも「あびら道の駅」には本物の蒸気機関車D-51が、電気機関車や貨物列車と共に展示してあります。札幌から車で1時間半弱、お蕎麦を食べて、公園で散歩し、道の駅で「かしわのたまご(燻製卵10個1,500円)」をお土産に買うコースはいかがでしょうか。

< 2024年 6月 店主の独り言 >

 先月は私が酒小売組合の理事長も兼任していることを書きました。

 お酒には酒税がかかり、酒の製造や小売等の免許も税務署が管理しています。今まで当社では依頼している会計事務所さんが税務署等に必要書類を出していたので、直接税務署の方にお会いする事は殆どありませんでした。しかし小売酒販組合の理事長になると、札幌中税務署の連絡協議会というメンバーになり、年2回の会議に参加する事となります。この会は税理士会、法人会、青色申告会、納税貯蓄組合といった、札幌でも名門の会社の代表の方々が参加されております。

 札幌中税務署の会議室で行われた税務連絡協議会が無事終わると、次は場所をススキノの和食店に移してきっちり会費制で親睦会が始まります。初参加の私はこういった会に不慣れでしたが、偶然、札幌中税務署の署長さんの傍に座りました。税務署で一番偉い方の実家は道内の地方都市にある酒小売店だと言います。昔、給料後の楽しみはお酒を飲む事しか無かった頃、実家の酒屋は景気も良かったけど、今の酒小売は何処でも大変ですよねと言われ、つい私もホロっときました。

 署長さんは役所勤めの為、転勤で全国各地をまわったそうで、私に根室にいた時の話をしてくれました。ここには「北の勝」の蔵元として知られる碓氷勝三郎(うすい かつさぶろう)商店があります。日本酒の蔵元は冬が製造の真っ盛りですが、役所は12月28日仕事納め、1月4日が仕事始め。単身赴任の方々は皆さん正月連休の前後に代休を取って、早めに家に帰省します。「北の勝」さんは正月ギリギリまで働き、年明けも直ぐに製造を始めるそうで、毎年、仕事納めと仕事始めはには税務署の幹部の方が不在であってもご挨拶に来るそうです。

 「北の勝」さんは税務署より酒の製造免許を頂き、今年も無事に仕事を終えられました。そして新年も仕事が始まりましたというご挨拶なのでしょう。税務署長の宮坂さんは根室勤務の時にこの「北の勝」さんの話を聞き、このご挨拶を直接お受けしたいと思い、代休を取らずに暦どおり出勤され、挨拶に来た当主の碓氷さんは驚かれたそうです。今まで税務署はただ税金を集める所とだと思っていましたが、こんな美談を聞くと、今年は沢山利益を出してお国の為に国庫に納めようと思いました。毎日正直に仕事をして、お客様、酒の生産者さん、卸さんにも喜んでいただき、最後は税務署さんにも喜んでいただける会社になりたいと心新たに思いました。

< 2024年 5月 店主の独り言 >

 今月は私の仕事の話。

 私はワインショップフジヰの社長ですが、実は札幌中(ナカ)地区の酒小売組合の理事長でもあります。私の親も組合の役員をしていたので組合費は払っていましたが、自分の仕事だけで手いっぱいだった為に組合の集まり等は不参加でした。しかし数年前、同業大手の「リカーズかめはた」の社長さんから、そろそろ酒小売組合の仕事も手伝ってくれないかと頼まれ、逆らうことも出来ずに役員になりました。その後、中組合前理事長のムラオカ食品・浜井社長から、「私はお酒の販売で長く営業させていただいたので、酒業界に恩返しをする気持ちで組合の理事長を引き受けた」と伺い、私も業界への恩返しと次の世代に引き継ぐ為に、理事長を引き受けました。

 今の酒小売免許は申請を出せば、ほぼ自動的に下りますが、昔は条件が厳しくて簡単に販売免許はもらえませんでした。そのような特権的な免許制の中で同業者の組合が出来、会費を積み立てて慰安会等を行っていたようです。しかし現在、販売免許は誰でも取得が出来、家庭用ビール販売の大半を占めるスーパー、コンビニの多くが組合には加入しないので、組合員の多くは古い酒屋さん主体になっています。当然、組合員数は減り続け、現在の酒小売組合の理事長には特権や恩恵は全くありません。組合としては地元の税務署や警察署と共に「飲酒運転防止」、「未成年の飲酒防止」等のキャンペーンを毎年行っています。

 さて札幌の酒小売組合は中と東、西、南、北、5組合があり、この5組合を束ねる協議会会長は人望が厚い北組合「銘酒の裕多加」の熊田さんでしたが、2023年9月にご病気でお亡くなりになりました。新会長は南組合の山田理事長が引き受け、新体制に向けて動き出しています。札幌の酒業界は酒小売組合の酒屋さんと、「リカーズかめはた」さんの様な大手の業務用酒販店の両面で進んでいます。また世代交代や新規参入もあって、酒組合内にある青年部は積極的に活動をしています。私が理事長を続ける間で、何か多くの酒屋さんが興味を持ってくれるような事が出来ればと思いながら私は会合に参加しています。

< 2024年 4月 店主の独り言 >

 今月は私のお話し。

 先日、今話題の手稲稲穂にあるレストラン、パルコフィエラさんに食事に伺いました。このお店は色々な意味で独特なレストランです。まずロケーショは郊外なので可愛いお庭があるような一戸建てのレストランではなく、JR稲穂駅から徒歩1分以内の建物の1階に入っています。私は初めてこの駅に降りましたが、一戸建てが並ぶ住宅街で駅前にはコンビニすらない無人駅でした。

 店内はL字カウンターで定員9名の小さなお店。ここではランチは12時、ディナーは18時に一斉スタートで、お客はこの時間に合わせて来店しなければならず、遅れると食べられないメニューがあるとか。料理のコースは1種のみで、昼、夜共に一人20,900円。肉や魚のメニューでチョイスは無く、(ある意味独裁者の)中條シェフに全てお任せです。

 私の知人で、イタリア在中の日本人の方が札幌に来る事となり、その人から是非ここで一緒に食事をしてみませんかとお誘いを受けて、家内と3名で伺いました。シェフはカウンターの前でほとんどの料理を一から作って行きます。シェフの信念は塩とオリーブオイル以外の調味料は自分で作るらしく、お酢各種、アユで作った魚醬、木の実で作る味噌、等々、そして真骨頂は10種類以上ある生ハムまでもが自家製です。ある一皿は柵の魚に金串を差し、薪火の上でレア状態に火を通し、和包丁で切り分けます。そしてお酢、マスタード、魚醬等で味付けをして、その日同席した3組8名の方々に提供されます。

 昔テレビで見た、「料理の鉄人」さながらの光景を目の前で見ながら、出来上がった料理を一品、一品味わってゆきます。数えてはいませんが、生ハム類を入れると10皿以上のメニューがどんどん続き、時間は3時間を超える長丁場。来店されるお客様は8割が本州から、1割が海外、最後の1割が道内の方。飛行機賃と宿代を考えても、このコース料理は一人3~4万円払ってでもシェフの独創的な料理を楽しみたいと思える価値があると思います。

 私は今、この瞬間、ここにしかない味わいの世界を体験できる唯一のレストランとして、札幌の宝物とも言えるお店だと思います。最後にここの生ハム類が、前に「独り言」でお話ししたココノ・ススキノ地下1階にある肉屋さん「エルムの山麓」で切り売りしています。気になる方は一度味わってみませんか。