今月は珍しくBar(バー)のお話し。
私は時々、残業のお供に南部せんべいや、ひねり揚げなど袋菓子を狸小路のドン・キホーテに買いに行きます。この前も袋菓子を探していると、壁に「ドンキが始めた酒屋Bar HANASAKU(ハナサク)開店!」と貼ってあります。これから残業だけど、ビール1杯ぐらい試してみようかと寄ってみました。場所はドンキの地下1階で南3条通り側の角。地下2階の酒売り場には沢山のビールがありますが、バーにビールは3種類しかありません。でも、初めて見たチェコのピルスナー・ウルケルで樽ビールがあったのでオーダーしました。下面発酵ビールの爽やかさと、香ばしいホップの風味はそのままですが、瓶入りよりもクリアでシャープな味わいに寄り道した甲斐がありました。
下面発酵のビールは爽やかでのど越しが良いのですが、次は香り豊かな上面発酵のビールも飲みたくなりました。メニューを見てスコットランドのエール(上面発酵ビール)でブリュードックを頼みました。まずは香りが豊かでアールグレイの紅茶を思わせます。ふくよかなコクもあり、やっぱり2杯目は上面発酵がいいねと楽しんでいました。ところで1杯目は気づきませんでしたが、ビールを頼むとお店の方は大きな引き戸の冷蔵庫を開けて、最上段の棚に冷やしてあるグラスを取り出します。そしてタップと呼ばれる樽ビールのレバー下の注ぎ口にグラスを置いて注ぐのですが、このタップも冷蔵庫内の上段にあり、注ぎ終えると引き戸を閉めます。冷蔵庫の下段にはホースでつながった樽ビールがあり、つまり樽ビールも、ホースを含めた配管も全て冷蔵庫の中なのです。
今どきのお店で樽ビール用のタップはバーカウンターの上に立っていたり、壁に何本か並んでいて目の前でビールを注ぎます。でも考えてみると樽から出て配管内に残ったビールは室温になる訳です。ですから味にうるさいお店では、注ぎ口から出たビールの始めの1秒分位はもったいないですが流しに捨てて、途中からグラスを置いて次ぎ始めます。でもここでは、樽も配管も注ぎ口も全て冷蔵庫の中なので、低温で管理されているわけです。更に冷蔵庫内の樽を見ると、よくある金属製のずんぐりした樽以外に、透明なペットボトルの大きな樽があります。調べると「キーケグ(KeyKeg)」という新素材の樽で、大きなペットボトルの中に銀色の袋が入っていて、その袋にビールが入っています。これは段ボール箱入りワイン(バッグ・イン・ボックス)と同じ構造で、病院の点滴と同様に中身の液体が減ると袋がしぼんで空気が入らず、酸化が少ない優れモノの容器なのです。
結局一杯のつもりが二杯になり、この日は店に戻っても仕事が出来ずに仮眠をしてから残業を始めました。しかし飲食店の樽ビールもどんどん進化している事を知り、実りの大きい体験でした。実はここのバー、日本酒と焼酎が主体のお店なのですが、この樽ビールは絶対にお勧めです。