< 2025年 4月 店主の独り言 >

 2月は葡萄畑が雪の中なので、この時期に各ワイナリーさんは普段は出来ない営業活動を行います。

 この月札幌では、北海道ワイナリー協会主催のワイン会「北を拓く道産ワインの夕べ」が旧ロイトンホテルで開催され、京王プラザホテル札幌ではワインライターの鹿取みゆきさんと、道内の自然派系ワイナリーとナチュラルチーズの生産者が30軒近く参加されるワイン会「ワインヘリテージ」が開催されました。翌週は余市町のワイン生産者が主催で、余市中央公民館で行う「ワインを楽しむ会」。仁木町でもワイン生産者が主催し、仁木町民センターで行う「仮面舞踏会」と、大きなイベントが4回あり、私とスタッフの三浦で、今年は3件に参加しました。

 各イベントでは、多くのワイナリーが今年の春以降発売予定のワイン等を出しているので、私も真剣にメモを取りながら試飲します。特に2023年は暑かったので果実味が豊かですが、収穫後も暑さが続いた為に野生酵母で発酵させている所は微生物管理が難しく、揮発性の香りが出やすい環境でした。しかし多くのワイナリーは難しい環境下でも、澄んだ果実味を目指して良質なワインに仕上げていました。さて、余市のイベントは17時開始で、終了後にJRで札幌駅に着いたのは22時近く。ワインを沢山試飲した後、体はお出汁のきいた汁を欲して、二人で駅から歩いて札幌の「みよしの餃子」が運営する蕎麦屋「信州庵・札幌JR病院前店」に入りました。お蕎麦の前におつまみでも頂こうかと、メニューを見ていたらドイツのワインが3種もあり、その中にシュペートブルグンダー(ドイツ語でピノ・ノワール種)1980円を見つけ頼まずにはいられませんでした。小売りでもシュペートブルグンダーは2000円以上はするので、ハーフサイズが来ると思ったらお店の方が750mlの瓶とコルク抜きを持ってテーブルに置いて行きました。この値段だから、自分で抜いてくださいとのことなのでしょう。

 ラベルを見ると収穫年は2012年だったので、この低価格で13年前だと果実味が枯れ始めているかなぁと思いながらコルクを抜き、グラスに注ぐと熟成していますがまだ果実味も楽しめました。ただ、赤ワインも冷蔵庫保管らしく冷え冷えの状態、グラスを手で温めても木樽由来のキノコやバニラ系の熟成香は無かったので、木樽を使わずにタンクで発酵、熟成させたワインだと思います。枝豆、さつま揚げ、天ぷら、他を食べながら熟成した赤をこんな値段で飲めるなんて信じられません!最後に二人でカレー蕎麦とかき揚げ蕎麦をいただき、会計は5360円。ワインは他にリースリング種とピノ・グリ種が同価格でありました。多分、白も良い熟成をして美味しいのではと思います。

 信州庵のオーナーさんは蕎麦屋さんでもワインが美味しく飲めるお店を目指したのでしょう。基本的にはチェーン店の飲食店ですから、手打ちの十割蕎麦等の個性的な方向性ではなく、安価で多くの方が望む蕎麦を広くて明るい店内でゆったりと楽しめるお店です。でもワイン好きの方が駅近辺でもう少し飲みたい時には、750ml1本が2000円以下ですから、穴場の一つだと思います。そして結局、この日も80種程の試飲をして、更にまたワインを飲んでしまい、寝る前に少し反省した一日でした。

< 2025年 3月 店主の独り言 >

 今月は蕎麦屋さんのお話し。

 先日、家内と昼過ぎに「蕎麦ひとすじ」というお蕎麦屋さんに初めて行きました。場所は街中、南1条西4丁目の電車通り沿いで、角の「いきなりステーキ」の東隣にあるビルの1階にあります。入口の半分が冷凍蕎麦の自販機になっており、ちょっと趣は弱いですが店に入ると、店中は落ち着いた雰囲気で期待が高まります。蕎麦は二八と十割の2種があるので、私は十割でいつもの様にもりとかけの二つを頼みました。

 店の主はまだ若く30代でしょう、寡黙で職人気質を思わせるタイプ。出て来たもり蕎麦は美しく艶々しています。十割を頼むと太い田舎蕎麦スタイルが多いですが、ここは少し緑と黒みがかった細麺。まずは何もつけずにお蕎麦だけをいただくと麺のエッジが立っていて香り高く、気に入りました。次に蕎麦つゆだけを少し味わうと、辛口で切れが良く神田や浅草の名店を思わせる味わい。そして麺の端につゆをチョコンと浸けてツルっといただくと、僕の好きなタイプで幸せな気持ちになりました。

 ここのもり蕎麦はつゆと共に、塩も添えられています。前に蕎麦通の方が、蕎麦本来の味わいを楽しむには塩だけでいただくと話を聞いたことがありましたが、私も初挑戦してみます。塩で頂くと確かに蕎麦の香りが際立ち、つゆとは違った味わいが楽しめます。つゆ、塩と交互に味わうという楽しい経験が出来ました。そして温かいかけ蕎麦、冷たいもりのシャープな味わいと違って、こちらは色調も淡くお吸い物を思わせます。お出汁の旨味をたっぷり味わえる温かいつゆも大変美味しく、ここでは冷たい蕎麦と、温かい蕎麦の両方を味わうことをお薦めします。

 家内が頼んだ玉子焼きは、甘味少なめの出汁たっぷりな味わいで大変美味しく、蕎麦前の他のおつまみも期待が出来ます。この日は休日の昼すぎでしたので家内と二人で日本酒をいただきました。吟醸香が少めと頼むと、良質な純米酒を楽しめました。街中にいて食事に困った時には、是非一度お試しください。そして最後に一言、希望を言わせてもらえば、入口の自販機は無くてもいいかなぁ。

< 2025年 2月 店主の独り言 >

 今月は家族のお話。

 うちの一人息子が2025年1月から独立のため家を出ました。今まで遅くに帰ってきて、電気をつけたままストーブの前でごろ寝をしていたり、洗濯の前に出してと言っても洗濯後にどっさり洗濯物を出したり、色々困った事をしていたのですが、息子が居なくなると洗濯の回数が減り、何か氣が抜けたような生活になってしまいました。一般的には40~50代で「子育てロス」を体験するのでしょうが、私は結婚が39才と遅かったので65歳になった今、これを感じています。

 こうして家内と二人になると、イレギュラーな事があまり起こらずに日常が流れて行きますが、たまに妻が私にクレームを言う時に、間違えて息子の名前を言ってから私のミスを指摘されると、お互いに笑ってしまいます。そして、今まで私が子供にかけていたエネルギーを今度はお客様に向ける事で、当店が更に発展できればと思っています。私にとって当店に並ぶ商品はある意味、自分の子供の様な存在。大切に育てた後に皆さんの食卓に彩を添える事で楽しいひと時になって欲しい。世界状況は円安が続き、食費や物価の高騰と問題が多い時代ですが、せめて食事の時間は家族と共にあるいはお一人様でも、楽しく過ごされる事を私は願っています。

< 2025年 1月 店主の独り言 >

 あけましておめでとうございます。今月は東京の蕎麦のお話しです。

 11月末に仏シャンパーニュ地方、サロンのオーナーが来日し、東京でワイン会が開催され私も参加しました。会が夜からでしたので羽田に3時過ぎに着き、まずは浅草に行って蕎麦の名店「並木の藪」で軽く腹ごしらえ。この店は昼に行くと店の外に10人以上は並んでいる超人気店ですが、夕方5時前に着くとすんなり店に入れました。夕食に蕎麦という方は少ないのでしょう、私の他には4組程のお客さん。

 私は座って「まずは日本酒をお願いします」と告げ、手酌で室温の日本酒を味わうと「自分は今、江戸に居るんだ」という気持ちになって来ます。こうして半分程お酒を飲んだ後にもり蕎麦を頼み、しょっぱくて濃厚な並木藪の蕎麦つゆに蕎麦をちょこんと浸して味わいます。そしてお代わりは温かいかけ蕎麦をいただき、お店を出ました。

 ワイン会は虎ノ門ヒルズの森タワービル51階にあるホテル・アンダーズ東京。浅草から新橋に出て、徒歩でヒルズに向かうと天を見上げるようなビルが何棟も立っています。ビルに入りホテル専用エレベーターに乗ると、ボタンは1階と51階の2つしか無く、51階に着くと、ここは浅草とは真逆な世界でした。51階にあるホテルの天井高は6メートル程もあり、窓からは東京タワーが同じ高さで見えます。まるで映画のセットの中にいるような所でワイン会がスタートしました。試飲したシャンパーニュはドゥラモットのスタンダート品、ブラン・ド・ブラン、ミレジム付きのブラン・ド・ブラン、ロゼと続き、最後はプレミアム品のサロン2013年産。洗練されたシャンパーニュを味わいながら、江戸と未来都市TOKYOを体験しました。

 この日の宿は杉並にある家内の実家。翌朝、朝食をいただきながら義父さんに「51階は東京タワーと同じ高さでしたよ!」と言ったら、東京タワーなんか東京もんは誰も行かねえよ!と言われておしまい。でも私の様なお上りさんには驚きの1泊旅行でした。後でアンダーズ東京のメニューを調べるとコーヒーはミニ・デザート付きで1790円、東京タワーのトップデッキ(高さ250メートル)の入場券は3500円ですから、アンダーズの方が入場料が無い分安いので、51階のホテルに行くのはちょっと緊張しますが新東京観光としてはおススメです。

< 2024年 12月 店主の独り言 >

 今月は旅行のお話し。

 10月の末に家内と瀬棚(セタナ)へ一泊旅行に出かけました。二人はどちらかと言うと、豪華絢爛な宿よりも情緒あるひなびた所で美味しい物をいただくと嬉しくなるタイプ。今回は友人の紹介で、瀬棚の三本杉岩前にある「民宿海の家」。民宿なのでお客さんは風力発電等の工事関係の方が多かったですが、料理はおいしく品数も多くてとても良かったです。さて、宿の予約時に酒屋であることを伝え、ワインを持ち込ませていただきました。ご迷惑をおかけするので、宿の方へ持ち込み料でイタリアの赤を1本差し上げ、ワイングラスとコルク抜きは持参して、白は三笠・山﨑ワイナリーのピノ・グリ、赤はドイツ・バーデン地方マルティン・ヴァスマーのシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール種)を選びました。

 食事の時間に食堂に行くと、隣のテーブルのご夫婦もワインを持参されていました。そのワインが栃木県・ココファームの「こことある・ぴのろぜ」。ココファーム・ワイナリーは栃木県にありますが、このワインは北海道余市・木村農園産のピノ・ノワール種100%で造った特別のロゼをご持参。結局、ワイン好き同士で話が弾み、お互いのワインを飲んでいると、お隣さんは次に藤野ワイナリーのナカイ・ケルナーを持って来ました。東京から来たという隣の旦那さんに話を聞くと、ワインが大好きで一時は個人でワインの輸入業をしていたが、現在はワインの仕事は止めて趣味に留めているそうです。道理で、ワインのチョイスが普通じゃない理由が分かりました。

 さて話は前後しますが、宿には温泉が無かったので途中のモッタ海岸温泉に寄ってから来ました。お湯は北海道では貴重な天然ラジウム温泉で、肌に刺激があるというか何か効能がありそうな感じがします。露天風呂からは日本海を一望できてロケーションも素晴らしい温泉でした。そして瀬棚の宿での食事の後に部屋でガイドブックを見ていると、瀬棚に日本一危険な神社があるとの事。翌日の予定は無かったので、二人で参拝する事にしました。

 宿から海岸線を江差に向かって車でずっと走ると、海沿いに太田山神社の鳥居が見つかります。ジョキングシューズの紐を締め直して荷物は車に置き、家内と参道の階段を上ります。この階段は斜度が50度らしく、階段に上から太いロープが2本垂れています。本気でロープをつかみながら登らないと落ちてしまいそうな階段の後もかなりの急勾配の斜面が延々続き、全ての道にロープや鎖が用意されています。こうして休み休みしながら約1時間登り切った所に、先に登っていた年配のご夫婦が立ち止まっていました。「私たちはここで諦めます」と言った先は、垂直に5~6メートルある岩の壁。壁には鎖とロープが垂れ下がっています。下を見ると200メートルはある絶壁、家内と相談して折角ここまで来たのだからと挑戦しました。

 岩壁はホントに怖かったですが、数メートル上にある小さな洞窟の中に小さな本殿がありました。ここで手を合わせて参拝し「フジヰが世界一のワインショップになりますように導いてください」と願いました。その後、壁をゆっくりと降りたところに、山のガイドさんと、お父さん、7~8歳の息子さんの3人が、子供さんに命綱を付けて壁登山の準備をしていました。ここの参拝は誰にでもお薦めはしませんが、達成感の素晴らしさと絶景は例えようがありません。

 壁の後の下りも慎重に歩き、最後の階段を下りて、出発点の鳥居横の湧水を飲んでやっと安心しました。汗をかいたのでこの後は温泉、湯(ユー)とぴあ臼別温泉に向かいます。ここは無人温泉で、ログハウスの様な脱衣所に募金箱があって、一人100円の協力金を払って入浴します。山の奥にあり、動物も勝手に入りそうな露天風呂は当然かけ流し、澄んだお湯は湯疲れせずに登山で疲れた筋肉をほぐしてくれました。この後は八雲に出て高速で札幌に夕方着き、かなりハードで充実感のある旅行になりました。

< 2024年 11月 店主の独り言 >

 今月は私の休日の過ごし方。

 10月に家内と休みが重なったので、家内の希望で千歳の温泉に行って来ました。13時頃千歳に着いてまずは昼食、「柳ばし」さんに向かいます。ここで家内は「チーズササミ定食」、僕は「メンチカツ定食」をいただきます。淡白なササミにチーズを挟むことで、ボリュームが増して美味しさもアップ。一方、僕のメンチカツはお店がお薦めするショウガ醤油でいただきます。柔らかめのメンチにショウガ醤油はぴったりで、とんかつソースとは違った美味しさが楽しめます。お腹も満ちて次は温泉「くるみの湯」に向かいます。

 千歳市郊外の畑が広がる中にあるこの温泉は大きくはなく、町の公民館か集会場という感じの規模。500円の入浴料を払って中に入ると、皆さん地元の方ばかりでした。お湯はモール温泉で、ウーロン茶色のヌルヌルでトロトロの感じ。露天風呂も無く、温度の違う二つの浴槽と洗い場だけですが、ゆっくり浸かっていると、肌がツルツルになって来ます。これは癖になりそうな柔らかなお湯で、温泉好きでしたら絶対に行くべきお湯でしょう。

 この後、車で温泉の駐車場を出た所で家内が直売所の看板を見つけ、「ますこ農園やさい直売所」に車を止めます。夕方近かったので野菜の種類は少なかったですが何点か買うと、ここの奥様から近所に出来たスーパーの話を聞き、次はそこへ向かいます。「モコ・プラス」というこのお店は、規模は大きくはありませんが、魚屋と八百屋が合わさったような感じ。店内は活気があって、魚、野菜、果物が輝いています。ここでは鮭と野菜を買って、家に帰ります。

 実はこの日、家内の友人でベリーダンスを習っている方の発表会があり、この後二人で観に行きます。これがどんな踊りか詳しく知りませんでしたが、ハワイのフラダンスに近い感じでした。昔、ショーン・コネリーが演じる映画「ジェームス・ボンド」で、アラビアの女スパイが「007」に近づく際に腰を振って踊っていた、ちょっと艶めかしいダンスと言えばわかっていただけますか。これを札幌の女性が踊るのですが、若い方もいれば年配の方まで様々。この日のお客さんは50名ぐらいでしたが、男性は僕を入れて3名。まるで女子高に紛れ込んだようなバツの悪さでした。

 更にこの後、得意先でオープンしたばかりのレストランバー「フォトゥイユ」さんに伺います。場所は昼飲みで有名な「第三モッキリセンター」さんの2軒北側にある、マツヒロビルの地下1階。元は写真スタジオだったそうで、天井が高く独自の空間です。調理はバスク料理で知られた「チョコ」さんの按田(アンダ)シェフ、支配人は若い女性で元「エルスカ」さんのホールに居た片野さん。この日は軽いおつまみだけで食事はしませんでしたが、ここは大人の隠れ家といった感じですぐに人気が出そうなお店です。さて、この日は昼前に出かけて、夜の10時過ぎまで盛り沢山で有意義でしたが、へとへとになった休日となりました。

< 2024年 10月 店主の独り言 >

 今月はお勉強の話。

 8月に今話題の中学・歴史の教科書、令和書籍出版の「国史」を購入しました。執筆者の竹田恒泰氏は旧皇族・竹田家の出身で、作家であり、テレビ「そこまで言って委員会」の出演者。その彼が取り組んだ歴史の教科書でしたが、文部省の教科書検定で4回も不合格となり、6年がかりでやっと検定合格となった教科書です。

 私は小さい頃から勉強が大っ嫌い。当然、教科書も後半になると開いた形跡が無く、時々、顔写真が載っていればヒゲを描いたり鼻毛を描くぐらいの問題児でした。この教科書「国史」はとても厚く、毎晩寝る前に1~2ページ読んでいますが、今やっと全体の2/3位まで読みました。そんな途中経過ですが、内容が面白く毎日読み進んでいます。ネット上でこの教科書は「極右思想」の危険な教科書と言われています。しかし私はこれが初めて真面目に読んだ教科書なので、この内容が当時の教科書に比べ、右寄りか左寄りなのかは分かりません。

 勉強嫌いな私が歴史で覚えているのは、先生がこれは重要だから年号を覚えなさいと言っていた「いい国(1192年)作ろう鎌倉幕府」ぐらい。今回読んでみて分かったのは、歴史は代々続く王様の記録なんですね。ある場所で王と共に住民が生活している所に、近隣で勢いのある王が侵略してくる。侵略されても、良い統治が続けば住民の生活の中に楽しみや文化が生まれる。その王が死に兄弟や息子に代替わりして統治が乱れると、別の王が出て来て新たな国が始まる。こういった全体の流れで歴史を見なければ、年号を覚えても意味がないことが分かりました。

 学生時代はテストのための勉強でしたが、今は日本人として日本の歴史を知る事の大切さを感じながら学んでいます。65歳にもなってやっと気付いたのかと笑われるかもしれませんが、あの劣等生が今、教科書を楽しんで読んでいる姿を当時の先生に見て欲しいなぁと思う今日この頃です。ちなみにこの「国史教科書 第7版 検定合格 市販版(税込2,000円)」は通常の書店では扱いが無く、購入はアマゾンか、紀伊国屋書店でしか販売していないそうです。

< 2024年 9月 店主の独り言 >

 2024年7月末、家内と共に函館に行って来ました。

 ブルゴーニュ地方ヴォルネ村の名門、モンティーユ家が函館で始めたワイナリーの開所式に出席する為です。オーナーであるエティエンヌ・モンティーユ氏は2015年頃から毎年、地質学者や専門家を同行して北海道内をメインに様々な産地を回って理想の畑を探していました。そして2018年函館・桔梗(キキョウ)町に決定し、2019年に葡萄の植樹がスタート。当初は1~2ヘクタールの規模でしたが、今回観た畑は20ヘクタールほどに広がり、更に近隣の拡張をしていました。モンティーユ家はピノ・ノワール種の名門ですから、植えられた葡萄は当然ピノ・ノワール種でしたが、気候も、風土もヨーロッパとはまるで違う日本での栽培なので、いくつもの区画に分けられた畑には実験的な試みが感じられました。

 開所式はモンティーユ氏のご挨拶から始まり、フランス大使館の農務参事官、道庁副知事、今話題の函館・大泉市長、国税庁、10Rワイナリー・ブルース氏の祝辞が続きます。次にワイナリー内部を見学し、外に出て広大な畑を回って行きます。畑のある桔梗町は内陸の斜面にあり、函館山や海を見下ろす風光明媚な場所。各区画では同じピノ・ノワール種でも苗木のクローン別だったり、挿し木する台木の種類、あるいは挿し木せずに自根栽培だったり、木の仕立て方だったり、様々な様式で葡萄が栽培されていました。フランス本場のやり方をそのまま持ってくるのではなく、この場所にとって最適な方法を見つける為に、研究を続けている最中といった感じでした。

 夕方になり、街の明かりが灯りだした頃に会食が始まります。食事はブュッフェ・スタイルで、函館「メゾン・フジヤ」さんのフランス料理だけではなく、「清寿司」さんの寿司、「二代目・佐平治」さんの前菜、「ワインダンサー」さんの前菜、そして熟成した沢山のチーズが並んでいます。飲み物は当然、モンティーユさんのワインですが、本家のブルゴーニュ産と、モンティーユさんが函館と共にアメリカ・サンタバーバラ地区で始めたカリフォルニア産と、北海道産の3地区のモンティーユ・ワインが並び、他に上川大雪・五稜乃蔵の日本酒もありました。参加者は160名程で、その半分近くが多分フランスからの方々でした。

 外人さんの奥様方の何人かは、映画俳優のような背中の大きく開いた原色のドレスを着ていて、まるで外国映画で観たパーティーの様。フランスでワインを飲むというのはこういう事なんだと思いながらも、僕は出ていた15種程のワインと日本酒を必死に試飲を続けます。一方、家内の興味は食事のようで、僕に飲んでばかりいないでこのお寿司美味しいよ、このお肉も食べてごらんと、時々おすすめ料理が僕に渡されます。函館は元々海の幸、山の幸に恵まれた食の街。更に近年はワイナリーも増えて、この地が余市、十勝、岩見沢・三笠に続いて北海道を代表するワイン産地になると実感した旅でした。最後に宿泊したビジネスホテル・グローバルビューの朝食が素晴らしく、特にイカのお刺身を食べた時、僕は仕事抜きで函館の美味しさをしみじみ味わいました。

< 2024年 8月 店主の独り言 >

 今月は当社のお話。

 昨年末で16年間働いてくれた鎌田君が退社して、会社としては10年ぶりに求人を出しました。10年ひと昔とは言いますが、募集の際に一般的な休日の日数や社会保険等の加入時期で、私の常識が今の社会とはズレていた事が分かりました。当初は欠員の1名補充と思っていましたが、今いるスタッフも現在の休日体系に合わせる為に、2名補充して皆が週5日勤務になるよう稲見店長が毎月シフト表を作っています。それから何人かのスタッフが入社しましたが、普段は馴染みのないアルファベットで書かれたワインの産地名や、生産者名を始めとする専門用語を覚えるのが大変で、続かずに退社するスタッフが多いのです。

 私と専務も体育会系のノリではないと思うのですが、この機会にZ世代と呼ばれる今の若者と共に働く事で、新人類と呼ばれる世代を知る機会と思って私も努力しています。そんな中、当社で約半年間勤務しているのが女性の篠崎さんです。彼女はパティシエを夢見て札幌の有名進学校から製菓専門学校に行き、札幌の菓子専門店に就職してその店のオーナーと付き合いのあったフランス人シェフが経営するカナダ・モントリオールの菓子店で5年間働いたそうです。更に驚きは、農業にも興味があったそうでカナダから戻ってきた後、美瑛の農家さんで2年間働いて、次に当社に来ました。

 彼女は当社ではワインやお酒の知識を学びたいと言って、ワインの専門書を購入して休憩時間に学んでいる努力家。また数年いたモントリオールはフランス語圏だったので、仏語と英語の日常会話は達者で当社でも外国の方が来店された時はとても助かっています。普段は午後から車に乗り、当社の得意先の飲食店様にワインを納品していますので、「Ca va(サヴァ)」と声を掛ければフランス語で応えてくれると思います。しかし、もう一人いた男性スタッフが退社した為、フジヰではもう1名を募集しています。

 ワインは割れ物で、重く決して楽な仕事ではありませんが、当社で1年間働けば新入荷ワインを900~1000種試飲することになり、ワインの知識が増えて行きます。ワインを学んでみたいと思っている方がいましたら、インディードの「ワイン販売」で検索していただき、当社宛へお問い合わせください。

< 2024年 7月 店主の独り言 >

 6月に妻と共に安平(アビラ)町に行って来ました。

 当社で扱う「いぶりナッツ」の生産者「スモークアップ・ジャパン」さんへの訪問がメインです。この会社は「電界風味添加装置」という機械を開発、販売する会社ですが、この機械で出来る燻製のデモンストレーション用に、ゆで卵やナッツを自社で燻しています。普通、機械の販売でしたら、展示会やイベント会場でその卵やナッツをタダで配って販路を広める所を、それぞれ「かしわのたまご」、「いぶりナッツ」と名前を付けて販売もしているのです。このサンプル品が一般の食品メーカーの物より良質で商品力が高いので、当社でもここのナッツ類を扱っています。

 ナッツやゆで卵は沢山のメーカーから様々な燻製した商品が出ています。通常は燻製室の下部でチップを燃やし、熱で燻した風味を食品に付けますが、ここでは低温にしたチップの煙を電子の力を使って短時間で食品に吸着させることで、食品に熱がこもらずに燻製が出来ます。ですから黄身が半熟のゆで卵をその状態のままで加工でき、マヨネーズなど液状の物でも燻製に出来るそうです。今回伺ったのは、良質な商品を造り続けているこの会社の秘訣が知りたかった気持ちがありました。会社で機械担当の河合さんと社長の小坂さん、お二人に話を伺いました。河合さんは電気や機械に詳しく、小坂さんは味わいの要を担っていて、私の印象ではワインショップフジヰの社長と専務の様に性格の違う二人が協力して上手くいっている感じがしました。

 その後、お昼はお薦めされた地元の名店、「そば哲・遠浅店」へ。大食の僕が蕎麦屋さんに行くと、いつも頼むのは一人で「もりそば」と「かけそば」のダブル。ここは特に麺が引き締まって美味しかったので、冷たいもりそばがおすすめです。そして食後は安平町の鹿公園に行きました。園内は丘や池があって多少標高差もあるので、散歩をしても景色に変化があります。広い公園を奥に進むと、小学校のグランド半分程の広さに鹿が15頭程暮らしていました。札幌の公園の多くは平地にあって歩いていても変化が乏しいのですが、ここは森の中にいるようで気持ちが良かったです。他にも「あびら道の駅」には本物の蒸気機関車D-51が、電気機関車や貨物列車と共に展示してあります。札幌から車で1時間半弱、お蕎麦を食べて、公園で散歩し、道の駅で「かしわのたまご(燻製卵10個1,500円)」をお土産に買うコースはいかがでしょうか。