2020年 11月

今春、一人息子が就職して、私たち夫婦はキャンプを始めました。きっかけは家内が春頃、ホームセンターで3人用テントと焚き火台を共に3千円台で買って来た事から。理由は妻が子供の頃の風呂は五右衛門風呂で、毎日、薪で火を起こすのが当番だったそうです。そして今でも時々、ゆらゆらと燃える火を見たくなるのだとか。私は屋外だったら煙を気にせず、ジンギスカンを思う存分食べられるだけでOK。こうして二人の利害が一致し、寝袋は二つあったので、私と休日が合わない息子は抜きで出かけるようになりました。

今までも休日は、家で妻の手料理とワインがあれば十分幸せなのですが、二人でテントを張って火を起こした後、椅子に座って空や夕陽を見ながらグラスを傾けていると、何と言うか喜びとか満足感が全然違うのです。外が明るいうちは、ビール(正しくは第三のビールで、ホワイトベルグ)と、あられのひねり揚げ(オタル製菓の横綱)があれば、チープでも最高に幸せです。

そして日が暮れてくると、ジューという音と共に夕食が始まりワインの登場です。私が屋外で食べたいお肉は、風味豊かな羊。理想はフレンチ・ラムラックと呼ばれるあばら骨付きの部位が最高ですが、無ければ生ラムを厚め(できれば厚さ8ミリ程)にカットしてくれる肉屋さん(私のお薦めは塩原精肉店)を探してください。

一般に成熟した羊肉は風味が強く、ボルドー地方産の赤ワインか、カリフォルニア等のフルボディ・タイプの赤が合いますが、子羊だと風味も穏やかなのでピノ・ノワール種の赤でも楽しめます。こうして厚切りの羊肉とワインを用意して、自然の中で焚き火を見ながらゆっくり楽しんでいると、私の感覚ですが美味しさは2倍近くになる気がします。

ただキャンプは初心者なので、不備な面は多々あります。枕は家から持参した方が熟睡できるとか、夜に使うライトをぶら下げる方法とか、実際にやってみて初めて気が付くことばかり。でもキャンプはとても楽しくて、気付いた問題点は次回に改良すれば良いのです。キャンプ場で周りをを見回すと、テントは有名メーカーの豪華な物ばかりで、うちの様な3千円台のテントはいませんが、今の所は何も問題は無かったです。

興味のある方は来年に向けて、ご家族で、ご夫婦で、あるいは今流行りのソロキャンプ(お一人様)でも、一度トライしてみてはいかがでしょうか。

2020年 10月

今春、一人息子が就職した為に、休日は夫婦だけで出かけることが増えました。

こうして9月の休日、家内と二人でモエレ沼公園に行って来ました。前回ここに来たのは、まだ子供が小さかった10年以上前。その時、私たちの目は子供しか見ていなかったのでしょう。改めてゆっくりと公園を眺めると、全体で100ヘクタール以上という規模以上に設計者イサム・ノグチ氏の才能と、その遺志を受け継ぎ20年以上かけて公園を整備、発展させて来た札幌市のエネルギーに圧倒されました。前回来た時もモエレ山や、ガラスのピラミッドはありましたが、今思うに眺めていただけだったのでしょう。

今回、山を登ったり公園内を散策していると、大きな神の手のひらの中で、私はもてあそばれているような気持ちになりました。公園内の山も、木も、土も水も自然の物ですが、植物が一糸乱れずに並んでいる様は雑木林とは異なり、私の脳裏にはエジプトのピラミッドが思い浮かびました。更に十数年前には無かった施設が幾つか増えており、多分、長期的な計画で今も完成に向けて工事が続いているのでしょう。自宅へ運転中、札幌の市民税は有意義に使われているなぁと嬉しい気持ちになりました。

さて夕方になり公園を出て三角点通りから家に向かうと、見知らぬスーパーを発見して入店します。ここ「スーパー・マルコ」は入口から活気があり、私はワクワクしながら奥に進みます。そして見つけたのは生きの良いイワシが12匹以上入って98円! 前の晩に赤ワインを買っているので今夜はお肉と思っていましたが、今日はイワシのトマト煮込みにしませんかと私から提案。始め家内は魚の下処理の数の多さに難色を示しましたが、代替のメニューが思い浮かばずイワシを購入。

夕食は安価な南イタリアの赤、サリーチェ・サレンティーノ・リゼルバ2014年と、家内が作った、イワシのトマト煮を美味しくいただきました。皆さんもモエレ沼公園で雄大なイサム・ノグチ・ワールドを体験していただき、帰りにスーパーマルコでお買い物のドライブコースはいかがでしょうか。

そしてモエレ沼が気に入った方には、美唄のアルテピアッツァをお薦めします。こちらは山の裾野で高低差のある敷地の中、廃校になった木造の小学校を利用し、安田侃(ヤスダ・カン)氏の作品と自然とが調和した素晴らしい公園の美術館です。

2020年 9月

例年の夏休みは妻の実家の東京に行くのですが、今年はコロナで帰省できず道東旅行に行きました。そして酒関係で道東と言えば、厚岸(アッケシ)のウイス キー蒸溜所。今年はここに行って来ました。厚岸と言えばカキですが、私にとってはウイスキーの厚岸蒸溜所。通常ここの蒸溜所見学は、厚岸の道の駅とレストランが入る公共施設「コンキリエ」が窓口となって行っていますが、コロナの影響で中止のまま。そこで酒小売店の特権を使ってお願いをして、今回は例外的に見学を許されました。

当日は約束の時間より早めに厚岸に着き、前述のコンキリエ内の炭焼きの店で昼食。そこはお店の入口にある水槽や冷蔵ケースの中から魚介類を選び、会計を済まして店内のテーブルに着き、セットされた炭焼き台で自分で焼いて食べるスタイル。通常のカキは炭火で焼き、地元でも貴重なカキの「カキえもん」は生でいただきました。

こうして腹ごしらえを終えて、昼から蒸溜所に向かいます。実は今回、見学は認められましたが、コロナの影響で蒸溜器のある建物は外のバルコニーから窓越しの見学しか出来ませんでした。まずは事務所に入り、製造担当課長の田中さんより説明を受けます。この蒸溜所のスタートは、ここを運営する堅展実業(ケンテンジツギョウ)の社長さんがウイスキー好きであったこと。そしてウイスキーの中でも特に個性の強い、スコットランド・アイラ島産のモルト・ウイスキーを目標に計画が始まりました。目標が明確だったので、日本の中でアイラ島の特徴である3つの特性(冷涼で湿潤な気候、スモーキーな香りの元となる泥炭(デイタン)層と豊かな水源、カキの産地)を持つ土地を探しをして行くと、 必然的に厚岸に決まったそうです。

ウイスキー製造を始めた「堅展実業」は、日本の食品製造会社に様々な原材料を輸入販売しています。厚岸蒸溜所の所長である立崎氏は、元々大手乳業メーカーで管理職を務めており、その取引業務で堅展実業の樋田(トイタ)社長と出会いました。そこで才能と情熱を合わせ持った立崎氏に、樋田社長は自身の夢であるウイスキー製造の話をして、もし現実となったら手を貸して欲しいと依頼します。

しかしプロジェクトが動き出すと、50歳目前で大企業の管理職という立場、東京から最北の地への単身赴任もあって、一旦は依頼を断ったそうです。しかしゼロから蒸溜所を建てて、ウイスキーまで仕上げるような壮大な仕事のロマンを思うと心は次第に傾き始め、最終的には家族も理解を示して転職を決めたそうです。

さて、日本の基準ではウイスキーに樽熟成期間の規定はない為、蒸溜後の樽熟成が1年未満でもウイスキーを名乗れますが、本場スコットランドでは3年以上の樽熟成が必要です。厚岸では自主基準で本国と同様の3年以上の樽熟を経て発売の予定でしたが、地元の方々だけでなく多くのウイスキーファンより、途中経過の製品でも味わってみたいという声が高まりました。そこでウイスキーと名乗らずに「厚岸ニュー・ボーン」という名で、No.1から4まで仕込みや樽材を変えた若い原酒を随時発売した所、大変な人気となり欧米のウイスキー専門誌でも90点オーバーの評価を受けました。

そして2020年2月に3年以上樽熟成を行った、厚岸初のウイスキー規格が「サロルンカムイ(アイヌ語でタンチョウ鶴)」という名で発売されました。この複雑で力強く、厚みのある味わいは非の打ちどころが無く、サンフランシスコのワールドスピリッツ・コンペティションで最高金賞受賞もうなずけます。

しかし当社への割り当ては僅かで販売は出来ず、現在は店内の立ち飲みカウンターで試飲のみの形です。当社の屋号はワインショップなので、ウイスキーにそこまで力を注がなくてもいいのではとも考えますが、同じ北海道でゼロから始めた造り手を少しでも応援したいのと、旅行で来たお客様からの要望もあって続けています。

堅展実業の社長さんが、ウイスキーを味わい感動したことからこの事業が始まりました。当社で味わい感動した方が、ニッカさん、厚岸さんの次の蒸溜所を作るかもしれないと思いながら、私は毎日仕事を続けています。

2020年 8月

7月、私は積丹に行って来ました。

皆さん、この時期はウニ丼目当てと思うでしょう。確かにウニは欲望の片隅にはありましたが、1番の目的は積丹スピリットの蒸留所見学です。この会社は蒸留器を持ってスピリッツ(高アルコールの蒸留酒)を造っていますが、このお酒に風味付けをする為のボタニカル(木の実や、ハーブ類)の多くを自社畑で栽培しているのです。

通常ジンの蒸留所では、高アルコール原酒に購入したボタニカルを数種類入れ、それを蒸留してジンを造ります。しかしここでは、まず自社農場のボタニカル・ガーデンを拓き、4年間かけてハーブ類を自社栽培と乾燥や熟成をさせて、5年目の今年に蒸留器を設置して酒造りを始めました。例えて言うならカレーを作るのに、クミンを始めとする香辛料の元となる薬草類を育て、その葉や実を乾燥して、香辛料を作ってから、カレーを作り始めるような事です。

さらに通常のジンでは、ジュニパーベリー(西洋ねず)の実を主体(7~8割程)に、更に10種類ほどのボタニカル類を加えたミックス・ハーブを作り、アルコール原酒に入れて風味を付けてから蒸留します。しかしここ積丹では、輸入に頼るジュニパーベリー以外で、味わいの鍵となる地元のボタニカル(赤エゾ松の新芽、オオバコロモジ、キハダの実、エゾヤマモモ、他)を、その各品種に適した方法で個別に蒸留し、単一ボタニカルのジンを7種(試験蒸留では20種類を製造済)造ります。その単一品種のジンを、ジュニパーベリー主体のジンにブレンドする方法で製品を造ります。

分かりやすく言うと、全部のハーブをごった煮にせずに、各ハーブのエッセンスを作り、それを香水のブレンダーと同じ手法でお酒に仕上げるのです。こうして出来た積丹ジン「火の帆(ホノホ)・KIBOU(キボウ)」を味わった時、私はジンというカテゴリーを超えた、全く新しいお酒の誕生を感じました。フランスかぶれ的に言うと、命の水「オー・ド・ヴィー」か、森の精「エスプリ・ド・ラ・フォレ」といった感じでしょうか。

「急がば回れ」と言う言葉は知っていても、実際には中々出来ない現実の中で、こうして手間と時間をかけて造られたお酒には凄まじい力を感じました。さて、虫に刺されながらハーブ農園を見学し、試飲を終えて蒸留所を後にした私と家内は、10年以上前に宿泊した「なごみの宿いい田」さんに向かいました。

積丹スピリットの社長さんに近所でお薦めの宿を伺うと、「いい田」を紹介されたので今回も予約を入れました。

あとはお風呂に入って、ごはんを食べるだけ。ここは民宿的な宿ですが、料理が凄いのです。ススキノの和食店で修業された息子さんが作る魚介のコース料理、そして2色のウニはその甘さと美味しさに私と妻はしばし無言で食べ続けました。事前にワインの持ち込みをお願いして、持ち込み料を払い、グラスも持参しました。

持参したワインは白がドイツのリースリング種のトロッケン(辛口)タイプと、赤は少し熟成したカリフォルニアのピノ・ノワール種。始めはこの料理には白が合うとか、赤の方が、、と話していましたが、正直、ウニが出て来た後の事はあまり覚えていません。

とにかく今の積丹には、私の心を狂わす物がありました。時期は限られますがウニ。そして、おばあちゃん家に泊まった様なしつらえと、素晴らしい食事の「いい田」。更に、新しい積丹産のジンは9月末頃には当社に再入荷する予定です。

私が命の水「オー・ド・ヴィー」と感じた、強烈で風味豊かなスピリッツを味わってみませんか。

2020年 7月

今月は音楽の話。

私は流行りの音楽を聴くのが大好き。中学の頃に流行っていたフォーク・ミュージックから始まり、ロック、ブルース、ソウル、ジャズと、節操なくカッコいいと思うものを聞いて来ました。

そして今の私のお気に入りは「クオシモード」と、「インディゴ・ジャム・ユニット」で、共に今は解散した日本人のジャズ・ユニットです。2つのグループは共にメンバーは4名で、ピアノ、ベース、ドラム、パーカッションという構成。特にインディゴの方は、この4人が自身の楽器で戦うように、他のメンバーと応戦を繰り広げ、もう一方のクオシモードはバトルをしながら、メロディも重視といった所でしょうか。

それでもこの2グループ一番の見せ場は、ドラムとパーカッション二人の打楽器による応戦です。ただ、誰もがこの音をカッコいいとは思わないようで、家内と二人でドライブ中に私がこの2グループのCDをかけていると、「聞いていると、何か急かされているような気持ちになるので、止めて!」と言われてしまいます。

こう考えると家内とは映画の趣味も、音楽も、食べ物も、突き詰めると全ての好みは違っていますが、今のところは夫婦を続けています。子が「かすがい」なのでしょうが、息子は息子で映画はあまり好きではなく、音楽の趣味も全然違います。

でも考えてみたら私の両親も全く好みは別でしたから、何とか妥協点を探りながらでも一緒に暮らすのが家族なのかもしれません。無理して合わせようとはせずに、お互いの個性を尊重しながら家族を続けて行く事こそ、平和の第一歩かなと思います。

2020年 6月

今月は息子と車のお話。

39歳でやっと結婚が出来、42歳で息子が生まれた晩熟の私(笑)。その息子も18歳になり、遂に車の免許を取りました。今、私の車は初期型の古い日産ノートでオートマですが、前の車は「おフランス」製のポンコツ・マニュアル車。「男ならマニュアルだ!」という親父のたわ言を聞いてくれ、試験場がコロナ閉鎖になる目前で免許を取りました。

例えば自動車保険。今まで事故もなく、車も古い為に安かったのですが、30歳以上の条件から、18歳でも保証する「年齢制限無し」になると、保険料は2倍以上! そして車の前後には、初々しい若葉のマークが付きました。

さて私にとって最初の車は、1980年頃会社で買ったスズキ・アルトで、価格は最安値の全国一律47万円。当時、フジヰは地下街ポールタウンにあり、店頭販売だけの酒屋でした。その頃、軽自動車の価格は60万円以上でしたので、フジヰが配達用に買える車はアルトだけ。ペナペナなトタン板で作ったような車体は550kgと軽く、2サイクル3気筒のエンジンは550CCでしたが低回転からスムーズに吹け上がり、板バネでリジット・サスペンションのリアがピョンピョンと跳ねながら走っていました。

話は戻って息子の話。運転はビュンビュン飛ばす私と違い、息子は静かでスムーズなスタイル。私が助手席でツベコベ言っても、マイペースで運転しています。

今乗っているノートは2005年車ですが、ワインを扱っていると感覚がズレて05年産はそろそろ飲み頃と思って、私はまだまだ乗るつもり。息子の車の好みは分かりませんが、私は61歳になっても二人乗りのスポーツカーに憧れる永遠の車少年です。

2020年 5月

今月は何を書こうか?

毎月の締め切りが近づくと、私の頭の隅にはその思いが潜んでいます。ただ今月は、「コロナの事だけは書きたくない!」という気持ちが大きくなって来ました。

今までの我が家では、息子がつけなければテレビは消えていて、1日に1度もテレビを見ずに過ごす事がよくありました。でも今日の感染者は何人か? ダイヤモンド・プリンセス号は? 東京オリンピックは? 志村けんが、と毎日、毎日、新たなニュースが入ってくると、NHKニュースから他局のニュースへと、どんどんチャンネルを変えて見入ってしまいます。そんな状態が1ヶ月以上も続いたせいで、今うちのテレビはずっと点きっぱなしです。家でも、職場でも気を使い、手洗い、マスク、外出は三密を避けて行動していますから、もうテレビのニュースは止めて、翌朝の新聞でいいんじゃないかという気になってきました。

もちろんテレビが悪いのではなく、ウィルスや病気が敵であって、役所や医療機関の方は戦い続けています。でもせめて仕事を終えて家にいる時は、コロナのニュースは止めて、好きな映画を観たり音楽を聴いたり、ちょっと美味しいものを食べたりして、これから私はリラックスしたいと思います。そして翌朝から、また仕事と共にコロナと戦いましょう。このメリハリがあれば、長期戦になっても頑張り続けることが出来そうな気がします。

敵の脅威には、恐れるだけでは勝てません。緊急事態の中でも喜びを見つけて、それをご褒美に一日一日乗り切って行きたいと思います。あ、やっぱりコロナの話になってしまいましたね。(笑)

2020年 4月

今月は当然ウィルスのお話。

世界中の人間を不安に駆り立てる事が、これほど容易に出来るとは驚きでした。中国で新型コロナウィルスによる肺炎が増え、同じ症状の患者が韓国と日本でも見つかる。間もなく欧米へも飛び火が始まる。

日本では手洗い、マスク、外出を控える等の呼びかけに、多くの市民が直ぐに対応した事の結果でしょう。日本人はお上からの通達に、一致団結するスピードが速く、今回はそのお陰で、発症地に近かったのに、患者数の増加が比較的緩やかだったのかもしれません。ニュースで諸外国の患者数の増加を毎日見ていると、なかなかヤルナ日本人と思ってしまいました。

しかし、これは我々日本人には絶対出来ないというニュースを見てしまいました。患者が急増したイタリアで、自宅待機をしていた市民が、バルコニーや窓から国歌などの歌を歌い始めたのです。1軒が始めると、アパートやマンションの窓がどんどん開き、家族が集まって歌い始めます。ベランダに立ったお母さんは、台所から持って来たフライパンとナベ蓋をぶつけて伴奏をしていました。私も築38年のマンション(約200世帯弱)に住んでいますが、自分から窓を開けて歌おうなんて思いもしません。

更にこの歌声はお隣フランスにも飛び火したそうで、夜になると最前線にいる医療関係者に感謝をしようと、アパートの窓から歌やエールを送り始めました。同じ状況下でも国民性の違いをまざまざと見せつけられた思いです。

仕事より日々人生を楽しむことを大切にする。食べて、歌って、毎日の生活を楽しむのが人生のすべて、こんな国民性の人々がワインを造ると、理論を越えた味わいが生まれるのかもしれません。

2018年 11月、12月

今月は葡萄のお話。

葡萄にとって重要な二つの時期は、開花時期と、実が熟す8~9月の天候です。ヨーロッパも、山梨、長野も、葡萄の開花は6月上旬。しかし、春の遅い北海道では7月上旬が開花時期。この時期に穏やかな晴天が続いてくれると、おしべの花粉が、めしべに受粉し、一粒の葡萄が結実(ケツジツ)するのです。一房の葡萄は100粒程あるので、100本のめしべがそれぞれ受粉しないと、一房の葡萄にはなりません。そして750mlのワイン1本を造るには、200gほどの小振りの葡萄が5房、1キロの葡萄が必要です。

さて今年の北海道で6月末から7月上旬は、蝦夷梅雨(エゾツユ)と呼ばれる長雨がずっと続きました。この開花時期に雨や低温が続くと、花粉はめしべに付かずに流れてしまいます。すると葡萄の木は、寂しいことに実がない状態で成長します。今年の道内の農家さんは、皆さん一様に春先の長雨で土が乾かず、やきもきしていました。その蝦夷梅雨の影響で、葡萄農家は2割減~半分に収量が落ちたそうです。ただ今年の8月、9月は晴天が続き、なんとか受粉できた葡萄の実はすくすくと熟してくれたようです。

ワイン用葡萄の収穫は一般に9月後半から10月後半まで。この調子ですと、量は少ないが良質な葡萄が収穫されているようです。私は毎年、7月上旬と、10月になると、天候に恵まれるように願っていますが、最高の年なんて10年に一回あるか無いかです。厳しい年でも農家さんは、ある程度の量と品質の葡萄を仕上げるそうです。

そして醸造家はその年の葡萄を見極めて、最適な仕込みの方法で美味しいワインに仕上げます。地元産のワインを飲む楽しみの一つは、「この年は暑かったから、やっぱり濃い味わいだ!」とか、「冷夏だったのに風味が豊かなのは、皆の努力の賜物だね!」とその年の天候や、自然の息吹を感じられることです。

それと、北海道産ワインを開ける時は、出来れば一品でも北海道産の食材と一緒に合わせていただけると、更に楽しみが増えると思います。高価な毛ガニやアワビでなくても、ジャガイモや、キノコ、道産の肉や魚でもいいのです。北海道という大地の恵み豊かな土地に住んでいる事に感謝していただきましょう。

2018年 10月

やはり、今月は9月に起きた地震のお話。

9月6日は仕事が終わらず、残業中の午前3時過ぎに揺れが始まりました。直ぐに止むかなと思っても揺れは止まらず、 オイオイまだ続くのかと感じ、こりゃまずいなと少し怖くなった時に、 「ガシャン」と瓶の割れる音がして、受け身の気分から我に帰りました。

揺れが収まり見に行くとワイン数本が床に落ちて割れています。家内に連絡すると、家は被害はなく大丈夫と聞いたので、私はそのまま店に残る事にしました。間もなく停電になりましたが、非常灯が点いたので懐中電灯を持って店内を見回ると、幸運なことに店の1階と地下は破損が無く、2階の数本のみ。水道も出たので、暗い中でモップとバケツを持って2階を何とか片づけました。

さて、外の様子はどうなっているか気になり、4時過ぎに電灯を持って外に出てみるとネオンの街は真っ暗。明かりは時々走ってくる車のライトだけで、 皆がスマホの明かりで慎重に歩いています。ニッカの大看板のあるススキノの交差点に行くと、100人以上の人が呆然とした表情で歩道上に座り込んでいて、パニック映画かゾンビ映画のようでした。暴動が起こってもおかしくない雰囲気で心配になり、店に戻り仮眠をしようと横になりました。

1時間ほど仮眠していると、朝6時前に「ガー、ゴー」と音がして目が覚めました。窓から外を見ると、朝日の中で飲食店の生ゴミを集めるゴミ収集車が作業をしていました。

普段はこの収集車を見ても何の感情も湧きませんが、全てが止まった街の中をいつも通りに収集作業を行っているのを見て、地震が起きても札幌の街はこうして生きているぞ!という熱い思いがこみ上げてきました。起きて通勤用の自転車で街を走ってみると、多くのコンビニは閉まっていましたがセブン・イレブンは開いていました。店内は暗いですが、何故かレジは作動しています。 多分、非常電源等の準備があったのでしょう。

一回りして店に戻る途中、近所のヤマト運輸集荷センターの前で担当の方がいて色々話を聞きました。この停電は送電線が切れたのではなく、大元の発電所の故障が原因で全道が停電となり、復旧には時間がかなり掛かるらしいと。店に戻ると、間もなく専務が自転車で店に来ました。店内を点検後、電気もすぐには回復しないだろうから、今日は臨時休業にしてスタッフに自宅待機をメールで連絡。専務と交代で私は家に帰って寝ることにしました。

その日の夜も私は寝袋持参で店に泊まり、7日朝5時頃に店の電気が点きました。こうして7日の11時から店舗の営業を開始し、業務用の配送業務は8日から始めました。地震から時間がたち、街は少しずつ平常に戻りつつありますが、今も私の耳から今も離れないのは、地震後の朝に聞こえたゴミ収集車の作業音。その音は「どんなに最悪の暗い夜でも、必ず朝は来る!」という気持ちを私に与えてくれました。

地震で被害を受けられた方々には、お見舞い申し上げます。

2018年 9月

夏休みは家内の実家がある東京へ行きました。

毎年、話題の街や施設を見ながら、何か面白い物は無いかとキョロキョロしています。実は私、スーパーとデパートが大好きなのです。40年前に初めて青山のスーパー「紀ノ国屋」を見て品揃えの素晴らしさに魅了され、30年前、売り場に伝説のバイヤー、勝山さんがいた頃の広尾のスーパー「ナショナル麻布」では、飛ぶようにワインが売れて行くのを茫然と見ていました。

そしてデパートだと、新宿の「伊勢丹」です。本当に品揃えも売り方も素晴らしく、食品と酒売り場で半日は過ごせるのですが、一番好きなのは本館の隣にある「メンズ館」。ジャケットが5~10万円、靴は7~10万円以上と呆れてしまう価格。その時の私の姿は、安価なポロシャツと半ズボンにサンダル履きで、こんな人はここでは絶対に購入はしないと断言できるスタイル。普通はここで気おくれしてしまうのでしょうが、良く見ると値札の価格表記は裏側か、表側でも小さくしか表示されていません。だから値段を見ずに眺めるだけだと、「ビビ」らない事に私は気付きました。

自分が中学、高校の頃は、「VAN(ヴァンジャケット)」の服を着たら、カッコよくなれると思っていました。でも大人になって気付いた事は、ブランド品を着ても変身はできず、自分は自分以外にはなれないという事。とは言っても伊勢丹メンズ館でかっこいい服を眺めていると、いつかはここで似合う服を購入できる人になりたいと思います。メンズ館さんには申し訳ないですが、今の所は無益な客である私をお許しください。

それでは今月のおすすめワインです。

仏ボージョレからはマルセル・ラピエール レザン ゴーロワ、久々のご紹介です。自然派ボージョレの先駆者であった故マルセル・ラピエール氏。今は奥様のマリー女史と息子さんのマチュー氏が引き継ぎ、ピュアなボージョレを造っています。ガメラー(ガメイ種好きなお客様)必飲の1本。あまりの人気に輸入元で欠品していて、当社在庫が無くなると次回入荷は早くて11月以降になるそうです。

南仏からは、「ヴェルジェ・デュ・シュド」シリーズのオー・フィル・デュ・タン ルージュ。収穫年や熟成による差異を少なく、安定した品質を保つために毎年、新酒を継ぎ足してタンクで熟成させています。まるで鰻屋さんのタレのようにしているので、チョット練れた風味と若い果実味が融合しています。何時飲んでも飲みごろで美味しく楽しんでいただけます。デイリーワインにもってこいな逸品です。また、先月号でご紹介しましたブラン(白)もお薦めですのでお試しください。

ブルゴーニュに住む仲田晃司氏が、南仏の葡萄で造るルー・デュモン・紅の豚。ジブリのプロデューサー鈴木敏夫氏のラジオ番組「ジブリ汗まみれ」に仲田氏が出演した折、映画 『紅の豚』の大ファンである仲田氏のために、鈴木氏が書き下ろした書をラベルにしました。ラングドックのメルロ種主体の果実味の豊かさとシラー種からのスパイシーさが融合し、バランス良く仕上がっています。仲田氏は南仏の葡萄も上手に作ります。氏の新たな挑戦をお楽しみください。

イタリアからは、ボッター・カルロ社サンジョベーゼ・ディ・ロマーニャ リゼルヴァ。1928年よりイタリア北部のヴェネト州、ピアーヴェ河流域にてワイナリーを営むボッター社。家族経営の伝統を守りながら良質でコスト・パフォーマンスの優れたワインを造り続けています。サンジョベーゼ・ディ・ロマーニャは、エミーリア・ロマーニャ州産のサンジョベーゼ種からの赤ワイン。この価格でもリゼルヴァ規格ですから、樽を含め2年以上の熟成を経たワイン。芳醇で豊かな果実味と、樽熟成による複雑さが楽しめる人気ワインです。

イタリアからの白では、モンカロ社レ・ヴェレ ヴェルディッキオ クラシコ。マルケ州北部にあるモンテカロットを中心に約800ヘクタールを所有する協同組合の白。安定した高品質のワインを生産することで国内外の人気も高く、ガンベロロッソ誌など国内の評価本では常に高い評価を受けている生産者です。レ・ヴェレは樽を使わずに造られたフレッシュな果実味を楽しむ爽やかな白ワインで、現地でもアドリア海の豊富な魚介類と合わせられており、魚介のパスタやオリーブオイルを使った料理との相性は抜群です。

南イタリア・プーリア州からはヴィニエティ・デル・サレント社イ・ムーリ ネグロアマーロ。日中は大変暑く、6月から収穫の時期までの約3ヶ月は40度にもなります。しかし夜は冷たい風が畑の中を吹き抜けるため、昼夜の寒暖差がもたらされ、畑が暑くなりすぎるのを防いでいます。ネグロアマーロ種はタンニンがしっかりしているため、樽熟成させることにより柔らかくなります。カシスやブラックベリーなど黒い皮の果実の強い香りが広がります。しっかりとしたタンニンがありますが、口当たりはベルベットのようにしなやかでとてもバランスがとれています。

シチリア島からはカステラーニ社「ボッサート」シリーズのグリッロと、ネロ・ダヴォラ。イタリア各地でコスパの高いワインを生産するカステラーニ家のシチリア産白と赤。太陽の恵みを存分に受けたワインは、暖かさを感じるアロマに完熟した豊かな果実味を持ち、魚料理から肉料理まで幅広く料理にも合わせられ、食卓を楽しませてくれます。

スペインからは、イヌリエータ社ナバエルス ナヴァラ。日本限定で造られた特別のワインで、名前はナヴァラ地区からの造語です。緑豊かで、風が強く風力発電が盛んな地域で、あちこちに強大な風力発電機があるようです。イヌリエータ・ラベルのワインを造る全ての段階で選別し、基準に僅かに満たないものをブレンドして、このナバエルスになります。また、全てがナバエルスになるわけではなく、劣るものは地元の農協へ一部バルクで売っています。「飲みやすいをリーズナブルで」が、モットーのコスパワインです。

ファン・ヒル社ペドレラ。1916年設立のファン・ヒルは、4世代に渡ってワインを造り続ける南のフミーリャ州を代表するボデガです。ブレンド用とされていた品種モナストレルにこだわり、品質を求めて収量を制限しています。モナストレル種の肉厚な果実を、シラー種のがっしりとした骨格と緊張感が絶妙のバランスで支えるパワフルな赤ワインです。このワインをタンクで輸入し、日本で瓶詰した為、美味しさはそのままでお安くなりました。

ドイツ・モーゼル地方からはフリッツ・ハーク リースリング QbA トロッケン。ミシュラン三ッ星レストランのワインメニューに、ドイツワインを代表してオンリストされることが多いハーク家の辛口ワイン。このワインも、そうしたレストランのために造られています。温暖化の影響で、以前よりも尖りのある酸の取れたモーゼルの繊細な味わいは、まさに和食にもぴったりです。

アメリカ・カリフォルニアからはダックホーン社メルロ ナパ・ヴァレー。ダックホーンはナパヴァレー地区セントヘレナの北に、ダンとマーガレットのダックホーン夫妻により1976年に設立。当時ブレンド用品種として見られていたメルロ種を、主体にしたワインで大成功を収めました。メルロ種は今日に至ってもダックホーンを代表するワインとして評価を受けています。滑らかな口当たりに柔らかなタンニンが心地良く、長い余韻にはしっかりとした濃さも楽しめます。仏サン・テリオン村の赤ワインを思わせる上品な味わいです。

ニュージーランドからはオーバーストーン社ソーヴィニヨン・ブラン。ニュージーランド産のソーヴィニヨン・ブランでは、おそらく最安値でしょう。しかも品質が良いと、いいとこづくめの白ワインです。木の芽や草原を思わせる爽やか系。冷蔵庫に常備しておきたい逸品です。

また同じニュージーから、フライング・キウィ社のシャルドネ。コストパフォーマンスが高く、当社では大好評のフライング・キウイ社の白が再入荷しました。この価格でも、樽で発酵・熟成をしている贅沢な造りで、樽の香ばしさにも負けない豊かな果実味と、心地よい酸味が絶妙に合わさっています。少しこなれた2014年というのも魅力的です。

ハードリカーでは、辰巳蒸留所のアルケミエ・ジン。岐阜県郡上(グジョウ)市の八幡(ハチマン)町で造るクラフトジン。取り扱いをしたくて随分待ちましたが、やっと入荷しました。18年の春の蒸留から、夕張で使われていたポットスチル(単式蒸留機)を移設して蒸留した物をブレンドしているとのこと。何か里帰りした娘のようで身近に感じます。数量限定で入荷ですので、お早めに!

佐渡島北雪酒造の北雪 金星 生貯蔵原酒。創業時から造られている北雪を代表する金星の生貯蔵原酒。冷酒からお燗まで幅広く楽しめるお酒で、料理にも合わせ易いので用途に合わせて一年中楽しむことができます。原酒のためアルコール度数が高いので、オンザロックや、炭酸割で飲むのもおすすめです。残暑にひんやりとしてお楽しみいただけます。

素焼きカシューナッツ500g。生産地が高温・干ばつによる天候不順で生産が減少し、ナッツ類の高騰が続いています。更に健康志向ブームによりナッツの需要が増えているようです。今回入荷したカシューナッツは、ナッツの老舗専門店のもので、炒りも程良く品質も高い物です。500gとかなりの量ですが、業務店様、ヘビーユーザーの方にオススメです。

2018年 8月

今月は十勝に行ったお話。

2019年を目標にワイナリー開業を目指している、帯広のあいざわ農園さんへ7月に行って来ました。ここでは山葡萄系の品種を無農薬で栽培し、独自のワイン醸造に向けて準備をしています。畑に行って驚くのは、葡萄の葉の多くにポツポツと小さな虫食いの穴が見られました。畑を案内していただいている間にも、相澤さんの手は葉に着いた虫を1匹、1匹潰していますが、追い付かない数の虫がいます。それでも数日前から、この虫を食べる益虫が現れて少し気が楽になったと話していました。

さて、葡萄の木は-10度~-15度以下になると、凍害で枯れてしまいます。しかし余市など日本海側の産地は、雪が沢山積る事で雪が断熱材となって、木は低温でも越冬する事が出来ます。しかし十勝など太平洋側の産地は、冬に雪が少ない為に寒さで葡萄の木は枯れてしまいます。そこで低温に耐性のある山葡萄か、山葡萄を品種改良した品種しか栽培できません。

北海道産ワインと言えば、ケルナー、ツバイゲルト、最近はピノ・ノワールですが、こういったヨーロッパ系のワイン用品種は、十勝では越冬出来ないのです。害虫と闘いながら必死に育つ山葡萄系品種からのワインが、新しい北海道ワインの顔となる事を願いつつあいざわ農園さんを後にしました。


私は今まで余市か、岩見沢付近の農家さんしか知らなかったので、十勝ではアメリカの農業を見たような気持ちになりました。私の知る余市の農家さんの多くは4~5ヘクタールの畑ですが、多分、十勝の農家さんは50ヘクタール以上の畑を持っているのでしょう。大平原の中を車で走っていると地平線の先まで畑が続きます。そして畑の中に居るトラクターも大きいのです。

帯広に着いて、昼食は名物の豚丼。本当は豚丼発祥の店「ぱんちょう」に行きたかったですが、店の外にも人が並んでおり断念して、近所の「はなとかち」で食べましたがこちらも大満足でした。大規模な十勝の農家さんの経営が成り立ち、帯広に人や物が集まる事で街に活気が生まれ、そこに豚丼や六花亭など独自の食文化も発展したのでしょう。

その日の宿は帯広から少し離れた糠平(ぬかびら)温泉の中村屋です。ここが又とても良い宿でした。元々中規模のホテルだったこの宿を、現オーナーの中村さんが客室数を1/3以下にしてコツコツと自前で改装、工事を続けながら営業をしています。館内のあちこちにオーナーのセンスを思わせる手仕事が感じられ、有名建築家やデザイナーさんが作る箱物とは真逆の路線。お食事も地元の食材で作ったお惣菜的な味付けが心地良く、ゆったりとした気持ちで美味しく頂きました。

中村屋さんの手仕事で一番感動したのは、露天風呂。湯船の脇に1メートル程の金属の棒が置いてあり、お湯に浸かりながら棒を持ち、壁の下部にある黒いボタンをそれで押すと全ての明かりが30秒程消えます。真っ暗な湯船の中で上を見上げると、空には満天の星。安全の為に明かりは間もなく付きますが、星の美しさに惹かれ私は何度もボタンを押して夜空を眺めていました。

翌日は帯広の隣の中札内(なかさつない)にある、六花亭が運営する六花の森に行きました。こちらの施設は手仕事ではなく、プロによる計算された素晴らしい庭園でした。十勝には気の利いた手作りの宿があり、緻密に作り込まれた庭園があり、この町独自の美味しい食文化があり、この町で生まれた素晴らしいお菓子がある。人口では勝っている札幌ですが、私は十勝に対して少し羨ましい気持ちが芽生えました。


それでは今月のおすすめワインです。

仏ボルドーからはバリエール・フレール グラン・バトー ボルドー・ブラン16年。ソーヴィニヨン・ブラン種100%で造られるワインは、発酵と熟成にフレンチオークの新樽を70%使用するなど、贅沢な造りで、豊かなコクを備えています。この価格でここまで上品な樽香を感じられるワインは、そうある有るものではありません。シーフード料理、グリルしたお魚はもちろん、白身のお肉にも合います。


仏ブルゴーニュからはパトリック・ジャヴィリエ家のキュヴェ・フォルジュ13年。ジャヴィリエ家はムルソー村で何代も続く栽培農家の家系でしたが、パトリックが73年に醸造学のディプロマを取得し、翌74年より収穫、醸造を自ら行うようになりました。キュヴェ・デ・フォルジュはヴォルネイ村寄りの区画の葡萄を使用し、リッチなスタイルに仕上がっています。新樽率も適度で樽香がくどいこともなく、非常にバランスのとれた白ワインです。


ロワール地方からはパトリック・ボードアンのサヴニエール15年。低収量のシュナン・ブラン種から造られる果実味の凝縮とミネラルの豊かさを存分に感じられるワイン。畑ではビオロジックでの栽培、醸造では自然発酵、SO2の使用は最小限など人為的な介入をできるだけ避けて自然な手法でワイン造りを行う生産者です。


アルザス地方からはツイント・フンブレヒト家のリースリング種でトゥルクハイム村16年。今やアルザスだけではなくフランスを代表する白ワインの名手ツイント・フンブレヒト氏。氏の一番ベーシックなシリーズのご紹介です。リースリング種の特徴である酸味とパイナップルを感じさせる豊かな果実味が長い余韻と共に印象的です。

同じアルザスからヒューゲル社のジョンティ・アルザス16年。アルザス地方の老舗ワイナリー、ヒューゲルが造るお手頃な白ワイン。アルザスの高貴品種を組み合わせて造られたジョンティは、ゲヴュルツトラミネール種、ピノ・グリ種、リースリング種、ミュスカ種、シルヴァネール種の品種の個性を見事に調和させた逸品。熱い季節にはぴったりの爽やかな白ワインです。輸入元希望小売価格2,100円が特別価格で入荷しました。


仏シュド・ウエスト地方からは、マディラン村アラン・ブリュモン氏のシャトー・モンテュス13年。アラン・ブリュモンは85年に、かつて誰も行わなかった、タナ種80%、カベルネ・ソーヴィニヨン種20%というアッサンブラージュのシャトー・モンテュスを発売し、大きな注目を集めました。非常に濃厚で力に満ち、まろやかで滑らかな味わいのワインとなります。ブラックベリー、プラムの凝縮感にスパイスの香りが豊かに広がり、緻密で芳醇なタンニンが、上品に感じられます。ある意味、ボルドーよりもボルドーらしい強さと、きめ細やかさをもった赤ワインです。


イタリアからは北部ロンバルディア州のマスティオ・デッラ・ロッジアのスプマンテ・グラン・キュヴェ ブリュット。とっても長い商品名で申し訳ありません。暑い夏を乗り切る爽やか系スパークリングに特別価格が出ました。やや辛口でフルーティな味わいは何方がお飲みいただいても楽しんで頂け、しかもお手頃価格でお財布にも優しいのが魅力です。きっと自宅の冷蔵庫に常備したくなる逸品です。


中部ウンブリア州からはファレスコ社のメルロ・ウンブリア14年と、同ラッツィオ・ビアンコ15年。メルロの魔術師と呼ばれている醸造家リカルド・コタレラ氏がオーナーのファレスコ社の赤、白が限定・特別価格です。メルロ種はチェリーを思わせる豊かな果実味にほんのりとウッドのニュアンスが楽しめます。ラッツィオ ビアンコはメロンの果実味にフルーティな酸味が調和し、グビグビ飲んでも飽きない味わい。赤、白共にバランスの良い味わいと、お値打ちな価格でお薦めです。


スペイン中央部からは、フェルナンド・カストロ社のバルデモンテ赤ラ・マンチャ。スペインのワイン評価本『ペニン ガイド』で、2010年・2011年と2年連続5つ星の最高評価を受けた赤ワイン。高品質ながら手頃な価格のため、日本でも人気が高いワインです。複数ヴィンテージをブレンドしているのでバランスが良く落ち着いた印象。この価格でこなれた味わいが楽しめます。


スペインのお隣ポルトガルからはアレクシャンドレ・レウヴァス社のアトランティコ赤16年。アレンテジャーノ地区のこのワイナリーはコスパの高いワインを生産することで定評があり、大航海時代をイメージさせる「アトランティコ(大西洋)」と名付けられたこのワインは、世界中の様々なコンクールで金賞を受賞しています。オーク樽熟成による香ばしさがあって、果実味、酸味、柔らかなタンニンのバランスが良く、スパイシーさも楽しめます。


人気のチリからはインドミタ社のグラン・レゼルバ規格カベルネ・ソーヴィニヨン16年。インドミタの看板シリーズで、8ヶ月~10ヶ月の樽熟成からくる複雑味と熟した果実味がバランス良くまとまっています。安価でも、期待を裏切らないチリカベです。


東欧ルーマニアからはヴィル・ブドゥレアスカのヴァイン・イン・フレイム シャルドネ17年。今注目の東ヨーロッパからのしっかりとした樽感が感じられるシャルドネ種です。今年のフジヰニュース4月号のおすすめでこの2016年産を紹介しましたが、
瞬く間に輸入元で完売となって早くも2017年産が入荷しました。トロピカルな厚みのある果実味と樽風味が調和し、ニューワールドを思わせるようなリッチな味わいに仕上がっています。


次はハードリカーのお薦めで、シングル・モルト・ウイスキーのスプリングバンク10年。スコッチ・ウイスキーの中でもバランスの良さと塩っけがアクセントの人気銘柄。近年のウイスキーブームの為、入荷が年1回しかございません。お見逃しなく。


食品からは、伊シチリアでオーガニック・ワインの生産者アリアンナ・オッキピンティが自家用に作るタイムの花のはちみつ。ハーブのニュアンスを感じる複雑さはありますが、クセが強いわけではなく、どなたでも美味しく召し上がれます。処理をしていない為に結晶化していますが、ぜひ、熱を加えずに常温でヨーグルトやチーズやパンに合わせてどうぞ!


ふらのから、ワインポテトチップス。富良野の酒屋さんがプロデュースしたポテトチップスです。ふらのワインの赤をフリーズドライ化して、ポテトチップスにまぶした本物志向。しかもワイン味?これはぜひ試食したい!と富良野から取り寄せました。味わいは酸味とチーズがマッチして、なんともあとを引く美味しさです。このポテトチップスを商品化するまでに何度も試食をくり返されたそうです。ドレッシングにビネガーを加えていくような微妙なさじ加減を感じます。

2018年 7月

今月は寄合(よりあい)のお話。

私が30代の頃は今よりずっと自分勝手で、皆が共同で何かを進める事は若気の至りでカッコ悪いと思っていました。仕事や家の事での集まりでは、会費は出しても会合には一切参加せず、自分がしたい事だけ続けて来ました。そんな私も今年59歳にもなって、先輩方から寄合にもたまには参加して下さいよ! と言われて参加すると、私の年齢もあって会の役員を頼まれてしまうのです。

こういった会の多くは3月が年度末で、前年度分の会計監査や新年度の計画等を決める為に、5~6月にかけて年一回の寄合が集中します。各役員が無報酬で寄合に向けて準備をし、会員の方々への書類を作成します。

説明、質疑の後は拍手で採決して、親睦会です。諸先輩のグラスにビールを注ぎ、挨拶をするのは今も得意ではありませんが、私も少しずつ大人の仲間入りをしています。人が集まると、そこには色々な思いや意見が出て来ます。その中でより良い意見を取り入れ、皆で少しずつでも進む事で今の社会が出来ている事が分かりました。

自宅マンションのエレベータに乗っても、今までは殆ど一人無言のままでしたが、寄合の後は自然と挨拶するようになりました。小さな会社でお山の大将になっていると分からない事。人間関係の中で人は成長するという事を、60歳を前にして今頃気付き始めた私です。


さて今月のおすすめワインです。

北海道からは千歳ワイナリーの北ワイン・ケルナー・レイトハーベスト・プライベートリザーブ14年 1/2サイズ。ここは1988年千歳で創業したワイナリーで、 葡萄は余市町登地区・木村農園産のみを使用しています。レイトハーベストはいい年にしか生産されないので、2010年以来となる発売です。マーマレード、蜜の様なニュアンスは疲れた体を癒してくれます。ハーフサイズというのも少し飲みたい時には重宝します。

こちらは余市・平川ワイナリーのスゴン・ヴァン16年。スゴン・ヴァンは、余市にある平川ワイナリーが、高品質のセカンドワインを目指して造られた赤。香りに独自の個性があり、色調の濃さと香りのバラエティーさがあります。一方で味わいはなめらかで、優しいふくらみがあり、きめ細かいタンニンの質感があって飲みやすいです。料理の前では一歩引いた謙虚さがあり、食の味わいを引き立てるワイン。牛肉から豚肉、鶏肉、ジビエを幅広く合わせることができます。


仏ボルドー地方からはシャトー・ロックブリュンヌ・ボルドー16年。カベルネ・ソーヴィニヨン種100%で造られた驚きの旨安ボルドーです。線が細くボディが軽くなりがちなカベルネ・ソーヴィニヨン種を、ブレンドせずに100%で造られているのに、果実味、酸味、タンニンのバランスが良く、厚みのある味わいに仕上がっており、50%をオーク樽(フレンチ&アメリカン)熟成した中には3割新樽を使用するという贅沢な造りをしています。


アルザス地方からはポール・ブルケール リースリング アルザス16年。2ヶ月程欠品していました当社人気のアルザスワインがヴィンテージも新たに再入荷いたしました。フルーティなすっきりとした辛口で、これからの季節に最適なワインで、鱒やイカなど魚介類と良い相性です。


シャンパーニュ地方からは、J-M セレック ソリスト13年。ピノ・ムニエ種100%のシャンパーニュは今では珍しくはなくなりましたが、これは別物です。輸入元主催の試飲会で飲ませていただき、これほどの完成度が高いムニエは初めてでした。単なる果実味主体の味わいではなく、複雑味と綺麗な酸が調和し独自な世界を醸し出していました。シャンパーニュ好きなお客様にぜひお薦めしたい逸品です。


イタリアからはヴェネト州のルイジ・リゲッティが造るプリモ ロッソ ヴェネト16年。創業者のアンジェロ・リゲッティ氏が100年以上前に傑出した生産者として評判を得てから今日まで、高い評価を得ています。コルヴィーナ種だけ1ヶ月ほど、乾燥(アパッシメント)させているので、干したプルーンの様な味わいがありますが、後味が甘ったるくなく、エレガントな果実味がスッと伸びていきます。よくある濃い甘ワインよりも品のある味わいが楽しめます。


泡ではヴェネト州のカヴィッキオーリ社ランブルスコ・ロッソ・ソルバーラ セッコ。これからの暑い季節にぴったりな冷やして楽しめる微発砲性の辛口赤ワイン。ジンギスカンとの相性が非常に良く、弊社でも人気の高いランブルスコに新商品が入荷しました。ソルバーラ種は、軽やかでありながら果実味に芯があり、酸味を基調とした味わいはどことなくピノ・ノワール種にも似た感じがあります。


南のプーリャ州からはロッカ・パリィアーラ アパッシメント・ロッソ16年。このワインの造り手ボッター社は1928年にヴェネト州に設立されました。アパッシメントとは、イタリア語で葡萄の乾燥を意味します。干して旨味を凝縮させた葡萄からは、強くて複雑な味わいのワインが出来上がります。豊潤なボディと上品なタンニン、程良い酸味とほろ苦さが、濃密ながら飲み疲れしないバランスを生み出しています。


スペイン・アラゴン地区からは、ガバルダ セレクション15年。カリニャン種85%、ガルナッチャ種15%のワインをアメリカ産、フランス産のオーク樽(50%ずつ)で10ヶ月熟成させました。ワインアドヴォケイト誌で90点獲得のスペインワインといえば濃度勝負と思いきや、上品な樽香とエレガントな果実味が楽しめる品のあるスペインワインです。

スペインと言えば赤ワインのイメージですが、こちらは白の良品でトビーア ダイモン・ブランコ リオハ15年。ふくよかで豊かな果実味と、木樽熟成によるバニラ、ナッツ、スモーキーな香りが融合し満足度の高いワインに仕上がっています。シンプルな塩味の焼き鳥に最適です。


カリフォルニア・ナパからはフランシスカン社カベルネ・ソーヴィニヨン15年。ナパ・ヴァレーの中心に構えるフランシスカン・エステートは、カリフォルニアで最も愛され敬意を表されるワイナリーのひとつです。今でも何百もの区画の中から選ばれた、最良の区画のみで収穫された葡萄を使ってブレンドしています。カベルネ・ソーヴィニヨン種には最上級のロットのみが使われているため、ワインに強さ・凝縮感があり、濃いワインがお好きな方にオススメです。ステーキや煮込みハンバーグ、すき焼きと相性が良いです。


ニュージーランドからはフライング・キウィ ピノ・ノワール16年。ニュージーランドでは上質なピノ・ノワールが産出されますが、美味しいと思えるものは大体3~4千円してしまいます。そんな中で見つけた大変お買得感のあるピノ・ノワール。オーク樽の香ばしい風味が楽しめ、樽のロースト感にも負けない果実味があり、酸味、タンニンとの均整が取れたバランスの良い味わいです。


次はハードリカーのお薦めで、モルト・ウィスキー・ベンロマック10年。ピート、オレンジ、焦がした麦の香ばしい香り、蜂蜜等々、複雑で華やかな香りに、骨格がしっかりとした麦の風味とオロロソ・シェリーの味わいが口中に広がります。スコットランド・スペイサイド地区の新星といっても過言ではない逸品です。


こちらは札幌・澄川の紅桜公園内に出来た蒸留所のクラフトジン9148(ロットナンバー0101)。18年の春から生産を始めて間もないのに、この味わいの完成度は驚きです。ヨーロピアンスタイルを思わせるコクのある味わいは、一度飲むと病みつきになりそうな雰囲気です。正直言って高いジンには懐疑的だった私の固定概念を打ち砕いてくれたジンでした。ハードリカーがお好きなお客様にオススメです。


次は食品から、良質なドライ・フルーツの専門店、タツヤのフィグ・ブランシュ(白いちじく)。美容、健康にも良い乾燥イチジクは積極的に頂きたいのですが、なかなか日々の生活では取れにくいので、我が家では透明の保存瓶に入れて、キッチンで見える所に置いています。横にはナッツを入れた瓶。目につくとおやつがわりに自然に手が伸びます。


次はナッツの専門業者・豆豊のカップ入り日本酒アーモンド。この日本酒アーモンドには一体なにが合うか?店にあるお酒と合わせてみました。その結果は、やはり日本酒!特に純米酒でした。アーモンドに酒粕をコーティングしたおつまみは、酒粕の香りを楽しみながら、純米酒をいただきますと、まさに相乗効果バツグンでした。また熟成させた甘口シェリーとも良く合いました。両方の甘さがひとつになって、深みのある味わいをお楽しみいただけると思います。

2018年 6月

今月は山梨に出来た、注目の新ワイナリーのお話。

山梨県塩山駅から車で10分程の日川(ヒカワ)沿いにあるマグヴィス・ワイナリーに行ってきました。二階建ての近代的な建物に入ると、一階は今時のおしゃれなテイスティング・カウンターとワインショップがあり、その奥はガラス越しに発酵タンクが並ぶ醸造所が見えます。ここで「マグヴィス・ワイナリー」のロゴ入りTシャツを着た松坂社長さんから説明を伺いました。

このワイナリーの経営母体は塩山製作所という半導体の組み立てを行う会社。1953年からここ塩山で電気製品製造等を行う会社が、66年に半導体の組み立て事業を開始し、発展をしたそうです。このワイナリーの建物も、実は04年に建設した液晶用半導体生産の工場でした。

しかし5年後の09年には、台湾メーカーとの価格競争で液晶部門を閉鎖。より高度なスマートフォン用カメラのフィルター製造に移行しますが、アジア圏との価格競争でベトナムへ生産を移管し15年には国内生産を閉鎖。

社長さんからこんな壮絶な話を淡々と話された後、5年で破たんする仕事ではなくこの地で何十年も続けられる事業を模索。まずは社長さん自身が地元、山梨のワインが好きだった事と、祖父がここで葡萄農家だったこともあって、15年に半導体の会社がワイナリ―に着手したそうです。

半導体の設備で活かされたのが、エアーシャワー付きの防塵室と奥の瓶詰室。手術室か原発の技術者を思わせる、開口部が目の部分だけの作業着を着て、クリーンルームで瓶詰する事で異物混入を防止。搾汁時の酸化を防ぐため、半導体で使用した窒素と炭酸ガスを随所に使い、果汁の酸化を極力抑えています。もちろん各畑にはセンサーが設置され、気候データ等がオンラインで監視されています。

葡萄は地元産にこだわり、フランス系品種は無く、白が甲州種、赤はマスカット・ベーリーA種だけ。ワイナリーに隣接する畑は、横を流れる日川(ヒカワ)が運んだ砂と石が主体の痩せた土地で、当然水はけも良く葡萄にとっては最適の畑。良い葡萄が育つ場所だけに、半径500メートル程の周りにはグレイス・ワイン、メルシャン、シャトレーゼ・ワイナリー等5軒以上のワイナリーが軒を連ねています。

また、新たに購入した勝沼町上岩崎・引前(ヒキマ)畑は、中央高速の勝沼インターチェンジと繋がる国道東側の区画。畑の西側で10メートル程高い位置にある高架道路は西日を遮る役目を果たし、近隣の畑より夜間の温度が下がる事で寒暖差から葡萄の糖度が上がり、17年産のベーリーA種の糖度は23%になったそうです。

この話を聞いた私が思い出したのは、カリフォルニアでピノ・ノワール種の名手カレラ社のオーナー、ジャンセン氏が、仏で研修後にカリフォルニアで畑を探す際に、石灰質土壌の分布を調べるのに人工衛星からの写真を使って畑を探したという逸話です。異業種から農業へ参入したマグヴィス・ワイナリーの挑戦はまだ始まったばかり。また、ここのワインは3,000~5,000円と高価ですが、北海道の各ワイナリーと共に発展して行く姿を見てゆきたいと思いました。

最後に、6月9日(土)当社店舗で行う試飲会で、マグヴィス・ワイナリー数種を出品する予定です。高額の為に有料試飲が多くなりますが、山梨で始まった甲州種とベーリーA種の新しい挑戦をぜひ味わってみてください。

それでは今月のお薦めワインです。

北海道からはオサ・ワイナリーのtabi(タビ)17年。ワイナリーのある小樽はお寿司が美味しい事でも有名です。そのお寿司との相性を一番に考え、旅路葡萄の収穫時期をずらした4種のワインをブレンド。次の一口が美味しくなるようなワインに仕上げました。お寿司に合う事は間違いないのですが、以外にもガリにもよく合うワインです。お食事無しでワイン単体で飲まれる時は少し飲まれる温度を高めにしていただくと一層美味しくなると思います。

同じく地元から、千歳ワイナリーの北ワイン・ケルナー17年。1988年創業のワイナリーでは、余市町登地区・木村農園産の葡萄のみを使用しています。樹齢約30年のケルナー種の白は、心地良い爽やかな辛口で、後味にほんのりとした苦みが余韻に広がります。北海道の良質な白ワインを飲んでみたい方に、ぜひ飲んで頂きたい北海道を代表するワインです。

関東・栃木県からはココファーム・ワイナリーの農民ドライ17年。農民ドライは軽めでスッキリと飲める、手ごろな価格の白ワインを目指し、日本各地の葡萄を使って造られました。そして嬉しい事に、この17年産には余市の白葡萄が63%も使われています。爽やかな辛口タイプで、鶏肉や魚、チーズなどの軽めの料理と合わせやすいです。また、暑い夏の時期、1日の終わりや夕食に飲むと、涼しい気分にさせてくれます。お寿司や和食、お惣菜にも合う白ワインです。

仏ボルドー地方からは、レクスプレッション・ド・ポイヤック ポイヤック11年。超優良生産者から提供されたワインを瓶詰めしているというACポイヤックの赤。そのワインの出所のシャトーがどこなのか気になるところですが、インポーターは頑なに教えてくれません。気になってインターネットで調べてみると1級シャトーの名前が出てきますが、それが真実なのかも分かりません。しかし、美味しいことは事実で、この価格で力強さとエレガントさのあるポイヤックらしさが感じられます。

仏ブルゴーニュ地方からは、シャンソン社ブルゴーニュ・ピノ・ノワール15年。安定した造りで定評のあるシャンソンが造る旨安ピノ・ノワール。2015年は天候に恵まれたため、果実味に厚みがあり、酸味、タンニンとのバランスも秀逸で、自社畑の葡萄も一部使用されていることもあって、味わい深さもあります。ブルゴーニュの価格の高騰が続く中で、大変お買い得感のある1本です。

次もブルゴーニュで、ショーヴネ・ショパン家のコート・ド・ニュイ・ヴィラージュ14年。ユベール・ショーヴネ氏はニュイサンジョルジュ村の南にあるコンブランシアン村の生産者。しかしこの村のワインはコンブランシアン村の名を名乗ることができず、ラベル表記は「コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ」になってしまいます。知名度の低い村で代々続く生産者には、お値打ちなワインが多いですが、この赤も小粒なニュイサンジョルジュを思わせるタンニンと果実実が楽しめる良品です。

南仏からはヴィニュロン・エステザルク組合のキュヴェ・デ・ガレ16年。エステザルグ葡萄栽培者組合は、現在10人のメンバーで構成される小規模な組合です。最も良い葡萄約1/3をドメーヌ名で出荷、1/3は組合名で瓶詰めし、残りはネゴシアンに売ってしまいます。選別酵母や濾過、清澄などは使用せず、果実味と土壌の可能性を生かすように醸造しています。フレッシュでふくよかな果実味が楽しめる人気コスパワインです。

仏アルザス地方からは、今注目のチュスランが造るゲヴュルツトラミネール ボーレンベルグ12年。このワインは香りがとっても華やかで、蜂蜜、ライチ、ユリ、バラ等、次、次と香りが出て来て楽しませてくれます。ほんのりとした甘味が心地よくアペリティフ(食前酒)としても良いですし、ドライコルンにクリームチーズをトッピングしていただきますと格別の味わいです。

南仏からはドメーヌ・ド・ヴェディランのセリカ・ヴィオニエ16年。ヴィオニエ種を樽発酵、樽熟成したワインで、2千円以下で美味しいと思えるものはなかなか見つかりません。低収量による贅沢な造りをしており、花にナッツやバターの香り、アプリコットのふくよかで凝縮した果実味、洗練された味わいの中にはほろ苦さもあって、酸味、ミネラルと合わさることで広がりが生まれます。同じ

南仏から、マジャスのスリー・ツリーズ・ル・カイユでブラン14年。親日家のオーナーが、日本語で「森」と書かれた印象的なラベルのフランス・ワインです。有機栽培に取り組み自然酵母で発酵し、果実味を楽しんでもらうためにコンクリートタンクで発酵、熟成。有機栽培の葡萄から造られた滑らかで綺麗な味わいと、ミネラリーな風味がお料理を一層美味しくしてくれるワインです。自然な作りなのでほんの少し酸化熟成したニュアンスがありますが、これが果実味と酸とミネラルを調和させる黒子のように働き全体をまとめています。魚介とももちろん相性が良いですが、サラミ、生ハムと合わせてもお楽しみいただけると思います。

イタリアからはラッツィオ州ポッジョ・レ・ヴォルピ社のフラスカーティ・セッコ17年。約40ヘクタールの畑を有し多様なワインを生産する名門ワイナリーで、フラスカーティはローマ近郊の町フラスカーティ周辺で伝統的に造られる白ワイン。爽やかで軽快、飲み心地抜群のデイリーワインとしてローマっ子に親しまれてきました。魚介系はもちろんのことお料理を選ばず楽しめるワインです。

アブルッツオ州のカンティナ・トロ社のカジオーロ・モンテプルツィアーノ・ダブルッツオ12年。この会社は安価でも上級ワインの品質を持つ事で、世界中から注目を浴びているワイナリーです。このカジオーロは、メリハリのあるダイナミックな渋みとそれを包むまったりとした濃厚さが特徴。イタリアワインらしい飲みごたえのある1本です。

オーストリアからはロイマーのロゼ16年。葡萄はツヴァイゲルト種とピノ・ノワール種で、北海道でもこの二品種のブレンドで赤ワインが造られています。オーストリアでロゼに造るとどうなるのか、興味があり仕入れてみました。味わいは爽やか系ロゼワインの良さを思う存分発揮しています。ツヴァイゲルト種からは白コショウの様なスパイシーな香り、ピノ・ノワール種からはチェリーとホオズキの香りをもらい絶妙な香りのバランスで楽しませてくれます。

ドイツからはトーマス・バルテン社のドルンフェルダー・トロッケン16年。ドルンフェルダー種の畑は、標高250m、斜度35%の斜面にあり、西南西を向いています。葡萄の平均樹齢は15年。ドルンフェルダー種は樹勢が強い品種のため、収量制限をする必要があります。樽で2ヶ月熟成させたワインは、マイルドな味わいの軽やかでドライな赤ワインです。夏は少し冷やした方が美味しく飲めます。

こちらもドイツの赤で、フォン・ウィニング・ダインハード社のダイデスハイム村シュペートブルグンダー種13年。南部ファルツ地方の温暖な気候から生まれる果実味豊かなシュペートブルグンダー種(ピノ・ノワール)の赤。畑はビオディナミとサステーナブル農法を実践し、一部に天然酵母醗酵を行うなど人為的なものをできるだけ抑え、テロワールの表現を重視したワイン造りで、世界的に評価を高めています。希望小売価格2,400円が特別価格で限定入荷しました。

リキュール類ではイタリア・カルパノ社のビアンコ(白・甘口)。「ヴェルモットはドライじゃなきゃダメ」と、お考えの皆様に飲んでいただきたいスウィート・タイプのヴェルモットです。たっぷりのハーブとスパイスが甘味と渾然一体となり、旨みが広がっていきます。休日の昼間に炭酸で割ってカルパノ・スプリッツァーを一杯いただくと、幸せな午後になること間違いなしです。

食品ではアルテル・エコ社がスイスで作るオーガニック・チョコレートのノワール(黒)。カカオの含有量が高いチョコレートは苦味が強く、カカオは身体に良いからと無理して食べていた感ありましたが、このノワール・アブソリュ85%は苦味が柔らかく、甘み、酸味と調和してバランス良く美味しくいただけます。また、ここのノワール・オランジェは、有機のオレンジ・ピール(皮)が練りこまれ、オレンジの甘酸っぱさがチョコレートとマッチし、なんともあとをひく美味しさです。2種ともこのクオリティで、このお値段なら言うことなしです!

北欧ラトビアからはバンガ社のスモーク・オイル・サーディンで2種類。燻製している珍しいオイルサーディンで、鮮度が良いいわしを丁寧に加工しているので、臭みがなく、やさしい塩味、燻製香もやわらかく様々なお料理にアレンジ出来ます。そのままワインのおつまみとしていただくなら、軽い辛みがアクセントになっているチリ味がおススメです。

ナッツの専門店「豆豊」のメイプル・カシューナッツ。当店のナッツの中で一番人気のメイプル味のカシューナッツです。お酒のおつまみに、またお茶うけのおやつに男女問わずに支持されている美味しさです。

ここの新製品が、グリーンレーズンと、いちじくのプラリネ。イチジクとグリーンレーズン、さらにアーモンドとカシューナッツをプラリネ風に固めた、「おこし」のようなものです。ワインのおつまみとして合うので、゛雷おこし゜ではなく、゛ワインおこし゜と呼びたいです。

2018年 5月

今月は4月上旬、京都に行ったお話し。

三十数年前の話ですが、全国の酒小売店でワインに力を入れている所が20軒ほど集まり、生産地から共同仕入れをして安価で良質なワインを販売するネットワークが出来ました。北海道では当社が参加したのですが、毎年ヨーロッパ等に買い付けに行く時間と余裕が当社には無く、当時は本部の仕入れた物を販売するだけでした。その後、買い付けは全員参加にしようと、加盟店は毎月積み立てをして買い付けに備えましたが、 その会は数年で自然消滅。その後30年以上経て、大阪の本部から当時に積み立てたお金が今も残っており、同窓会にでも使おうと「京都・山城の筍と、京料理に合わせるワイン会」の案内が来ました。

会場の京都・美濃吉本店・竹茂楼さんに現地集合してみると、私も含めて皆さんすっかり浦島太郎状態で年配になられていました。挨拶の後、食事が始まり、途中からは舞妓さんと芸子さんが来て、食事と舞を堪能しました。舞が終わると、二人の女性はワインの給仕をしながら皆と会話をします。私の横でも給仕をされましたが、本当に首からお顔まで真っ白なのです。

私が思い浮かべたのは、真逆ですが昔流行ったコーラスグループ「シャネルズ」。彼らは黒人の音楽とスタイルに憧れ、自ら靴墨を自分の顔に塗って黒人になりきって歌い踊っていました。でも、舞妓さんはお客の為に、白く塗り舞を踊るのです。シャネルズは自身の希望で黒く塗りましたが、舞妓さんはお客さんの為に白く塗っていると思うと、居たたまれなくなり、私は舞妓さんの顔を正面から見る事ができませんでした。

そんな困惑した状態の時に、「藤井さん、こっち向いて!」と本部の方に言われて、芸子さんと記念写真を取られました。多分、今自分は苦しく、困った顔をして写っていたのだろうと思っていましたが、数日後メールに添付されたその時の写真を見ると、でれ~と鼻の下を伸ばした私が写っているのです。

人は頭の中では理性を持って行動しているつもりでも、体は違う動きをしているのが分かりました。大変赤面する写真ではありますが、証拠写真としてプリントしましたので見たい方は当社店舗にお越しの際に、「証拠写真を見せて!」と言って下されば、特別にお見せします。どうぞ笑ってやって下さい。

さて、今月のお薦めワインです。

北海道からは藤野ワイナリーのコハル・ロゼ17年。丁寧な選果を行い、亜硫酸塩(酸化防止剤)を最小限に抑え、無濾過と天然酵母で醸造するワイン作りをしています。イチゴやラズベリーの甘酸っぱさの中に熟した果実の柔らかさが余韻を引き立てる辛口のロゼワインです。自然の炭酸ガスやぶどう由来のオリが含まれることがありますが全く無害ですので安心してお召し上がり下さい。

フランス・ボルドー地方からは、オー・メドック地区のシャトー・ラローズ・ペルガンソン10年産。フランス全土で、ワインは素晴らしい出来となった2010年。果実味の凝縮と新樽熟成のコーヒーやチョコの風味があいまって、これぞボルドーといった風格を醸し出しています。2010年産を見つけたら、即、買いです。でなければ、後で後悔する事になりますよ。

仏ブルゴーニュ地方からは、フェヴレ社メルキュレ村のラ・フランボワジエール畑の赤でハーフ・ボトル15年。ニュイ・サン・ジョルジュ村に本拠を置くフェヴレ社は、1825年の創立から7代にわたって続く名門です。このメルキュレ村でも優良なフランボワジエール畑のピノ・ノワール種で、素晴らしい年となった15年産。ラズベリーやフランボワなどの香りに、爽やかな瑞々しい果実味が中心となり、後から上品な木樽の風味が広がる、しなやかで滑らかな口当たり。若いうちから楽しめる、懐の深い味わいです。

同じくブルゴーニュから、ルー・デュモンのブルゴーニュ・ブラン15年と、ルージュ15年。18年1月に、某・国営放送局の番組でオーナーの仲田晃司さんのルポタージュがありました。ブルゴーニュの地で裸一貫から始め、今や世界中に輸出するまでの生産者へ成長された仲田氏の温和で堅実な人柄がにじみ出ている様なワインです。

南仏からはフォンカリユ社でコトー・ダンシェリューヌ地区のエスプリ・ド・ノ・ペール11年の赤。フォンカリユ社は組合員1200軒、5000ヘクタールを持つ、南仏でも大手の生産者共同組合で、仏ワイン専門誌「ラ・ルヴュ・ド・ヴァン・ド・フランス」の『2012年度・年間最優秀ワイン生産者組合賞』を受賞しています。この赤はシラー種主体に数品種をブレンドし、タンクで5年以上熟成させた11年産ワイン。若いワインが多い南仏で、安価ですが飲み頃の美味しさが楽しめる貴重な1本です。

仏シャンパーニュ地方からは、J-M セレックが造るソレサンスのブリュット・ナチュール。17年、ジャン・マルク・セレック氏が来札され、試飲いたしました。平均樹齢40年の力ある葡萄からのピュアな味わいと、 ヴァン・ド・レゼルヴ(優良年で取り置きしていたワイン)の比率が50%(通常は3割程)というだけあって、複雑で奥行きのある風味に圧倒されました。今一番のお薦めシャンパーニュです。

人気のスペインからは、温暖なバレンシア州南部のエル・アンゴストが造るラ・トリブ10年。ここの標高は550メートルと高く、西の大西洋から吹く比較的冷涼なポニエンテと呼ばれる風と、東の地中海から吹く比較的温暖なレバンテと呼ばれる風が交差し、ぶどうは理想的に成熟します。しかも最高の天候だった10年産なので、凝縮した果実味と、スパイス感に木樽の風味が合わさり、飲み応えがあり、満足感の高い一本です。パーカーポイントも90点で、この価格はお値打ちです。

そして、今やスペインの顔となったカヴァ(泡)で、 コヴィデス社のゼニウス・カヴァ・ブリュット。ここはペネデス地域の800のワイン生産者による大手協同組合で、日本のワイン専門誌にもベストバイと評価されたことがあり、高品質のカヴァを生産しています。泡がきめ細かく、果実味と酸味のすっきりとした爽やかな味わいで、暖かくなるこれからの季節にぴったりな、一押しスパークリングワインです。

更にスペインの白では、テラ・アルタ地区のセリェール・ピニョル家のヌエストラ・セニョーラ・ポルタルでブランコ。ガルナッチャ・ブランカ種主体の白で、複雑な香りと長い余韻が魅力のワイン。テラ・アルタはカタルーニャ語で「高い土地」を意味し、その名の通り標高950mの山々に囲まれた場所にあり、銘醸地のプリオラートやモン・サンに似たテロワールを持ちながらも、リーズナブルで高品質なワインを産出するとして注目されています。希望小売価格1,650円が特別価格で入荷となり、大変お買い得となりました。

スペインの最後は赤、カスティーリャ・レオン地区のトリデンテでエントゥレスエロ・テンプラニーリョ15年。上級品のトリデンテには僅差で使われなかったタンクを、別に詰めたお買い得ワインになります。凝縮した果実味と樽からのバニラ香が広がり、パエリヤ、パスタ、マッシュルーム、シチュー、ソーセージ、チーズなどによく合います。この価格でフルボディワインをお探しの方には必見です。

ドイツからはダイデスハイム村の名門ワイナリー・ヨーゼフ・ビファー社のリースリング種ハルプ・トロッケン(やや辛口)14年。ここではテロワールを尊重したワイン造りを行っており、2013年より日本人徳岡女史が社長兼醸造家として活躍しています。このハルプ・トロッケンは、ピュアな果実味、きれいな甘味、フレッシュな酸味とが見事な構成をつくり、透き通ったミネラルとの調和により、味わいに広がりのある上質なワインに仕上がっています。

チリからはカサス・デル・ボスケ社カルメネール種のレゼルバ15年。カサス・デル・ボスケは、森や牧草地だった未開の土地をワイン用の葡萄栽培が出来るよう開拓し、「量より質」を求め、チリのプレミアム・ワインを生み出す事だけを目指した新鋭のブティック・ワイナリーです。風味の良い口当たりで、果実と樽の絶妙な融合が感じられ、バランスの良い柔らかいタンニンと程よい余韻が楽しめます。甘酸っぱいソースを使ったお料理や、火を使ったお肉料理に合わせやすい味わいです。

アルゼンチンからはエル・エステコ社のドン・ダビでトロンテス種レイト・ハーヴェスト16年。こちらは遅摘みしたトロンテス種100%で造られた甘口ワインです。トロンテス種独特のバラやライチ、ハチミツのような華やかな香が広がり、 果実味と酸味とのバランスが良く、マーマレードのような心地よい酸味を伴った爽やかな甘味を楽しむことができます。若干の貴腐香も感じられ、この価格では驚きのパフォーマンスです。

次は清酒から、新潟の佐渡ヶ島の北雪酒造の北雪で純米生原酒。少しマスカットを思わせる爽やかさがあり、ワイングラスでお飲み頂くとよりそのフルーティさが際立ちます。加熱処理をしていない生原酒ならではのフレッシュな香りと、コクのある旨味が楽しめます。

食品では宮城県塩釜市の五光食品が作る「炙りかき」です。アジア圏の輸入物ではなく、国産品。 原材料の欄には、「宮城県産かき」しか書かれていません。加工食品で添加物が無添加というのはあまり例がなく、さらにお手頃価格。宮城県で水揚げされた牡蠣を、海の目の前の工場で作っているので、新鮮さが封じ込められています。搾ったレモン汁をかけたら、小粋なワインのおつまみがスピーディに出来上がります! また、自然で優しい味わいなので工夫しだいで、色々アレンジが出来ます。

2018年 4月

今月はちょっと昔のお話。

今年の2月末で、狸小路3丁目のドンキホーテが入っているビルの1階にあった果物店「サン・フルーツ」さんが立ち退きで閉店されました。私が子供の頃、ここはサンデパートという百貨店で、そこの果物店なので「サン・フルーツ」となったのでしょう。そしてワインショップフジヰも、元々は札幌北1条西3丁目にあった果物店「フジヰ食料品店」がルーツです。元は同業者だったこともあって、私はサン・フルーツさんの前を通る度に挨拶をしていました。

1972年の札幌オリンピックと共に出来た、地下鉄南北線と地下商店街。その商店街ポールタウンの開業時に、フジヰ食料品店の支店として入店。始めは果物店として営業し、途中から輸入洋酒の販売を始め、その後ワインの割合が増えて「ワインショップフジヰ」という店名になりました。


私が子供の頃、町には今の様な「スーパーマーケット」は無く、八百屋さん、魚屋さん、肉屋さん等が単独で営業するか、市場(イチバ)と呼ばれる共同店舗に入って営業していました。北1条のフジヰは、1階が果物を中心に食品類、お菓子、酒類を販売し、2~3階は「パーラーフジヰ」の名でレストランを営業。4階は住み込みの従業員さん達と共に私達家族も暮らしていました。

うちの家族は両親と、私と弟の4人で六畳一間。タンスで狭くなった部屋に、毎晩、家族の布団を敷くだけでギリギリでしたが、住み込みの従業員さんは大部屋に何人もが狭いスペースの中で暮らしていました。


さて今の商店は、全国チェーンのスーパーが多くなり、個人商店はどんどん減っていく一方。サン・フルーツさんはビルの立ち退きで閉店されましたが、店主のお父さんはここに新しいビルが出来ても、家賃が高くなって入れないとぼやいていました。当社の得意先の飲食店さんでは、サン・フルーツさんからレモンや、果実類を買っている店が多かったので、この界隈で再び営業して欲しいと願っています。


さて今月のおすすめワインです。

仏ボルドー地方からは、レ・フィエフ・ド・ラグランジュ09年産。メドック格付け3級のシャトー・ラグランジュのセカンドワインです。115haを所有し、収穫は手摘みで行い、ステンレスタンクで15~25日間発酵後、新樽を25%使用して樽熟成を行います。深みのある赤色で、ブラックカラント、スパイス、タバコ、チョコレートの香りを感じ、肉厚で長い余韻が楽しめるワインです。メーカー希望小売¥5.200が特別価格で限定入荷しました。しかもグレートヴィンテージの09年は間違いなく買いでしょう。

同地区の白は、グラーヴ村のクロ・フロリデーヌ・ブラン14年。1982年には僅か2haの畑を所有するにすぎなかったこのシャトーをボルドー大学醸造学部教授ドゥニ・デュブルデュー氏と夫人が拡大し、現在は31.9haを所有します。樽の香りとミネラルがバランス良く合わさったワインで、同価格帯のブルゴーニュを買うより満足感があります。定価¥4.150が特別価格でのご提供です。

同一オーナーでブライ地区のCh レイノン ソーヴィニヨン・ブラン15年。白ワインがお好きな方、このレイノン白もとってもお勧めです。木の芽を思わせる香りと辛口なのに蜂蜜を思わせるふくよかさ、春野菜やゆずの風味を利かせた魚介にとっても良く合います。一昨年に亡くなられたドゥニ・デュブルデュー博士の心意気をそのまま継承しています。


次はブルゴーニュ地方から、ドルーアン社のモンタニー村の白13年。メゾン・ジョゼフ・ドルーアンは1880年に古代ローマ要塞の内側のボーヌ村に創立されたワイナリーです。130年以上もの間、家族経営にこだわり、頑なに創業当時から受け継がれるテロワールへの信念を守り、「エレガンスとバランス」を追求し続けています。モンタニー村のシャルドネ種は、活き活きとした柑橘系果実の味わいがありながらも、まろやかな厚みもある凝縮感を楽しめます。フレッシュでチャーミングな果実味のある、バランスのとれたワインです。

同じブルゴーニュから、ミュザールのサントネ村のピノ・ノワール赤96年。ミュザールは、サントネ村の歴史あるドメーヌです。しかもこちらの赤は、22年も熟成した、村名付きブルゴーニュとしては破格のお値段。熟成香の、きのこや枯葉のような香りが広がります。飲み心地は少し枯れ始めていますが、味わいは複雑です。熟成したワインがお好きな方におすすめです。


南仏からは、アンドレ・ブリュネルのヴォークリューズ地区の赤。この生産者はシャトーヌフ・デュ・パプの最もエネルギッシュで、力量のある生産者の一人です。土壌は出来るだけありのままで、たまに使う肥料はオーガニック。土は、年4回掘り返し、全ての畑で除草剤は使っていません。問題がなければ、銅などの農薬は全く使いません。グルナッシュ種主体で、スパイス感と熟した果実味が楽しめる超コスパワインです。

北部のアルザス地方からは、クザヴィエ・ヴァイマン ミノリ リボ・ミックス14年。アルザス自然派を代表するクリスチャン・ビネール氏とのコラボで造られた日本限定の逸品です。華やかなライチと柑橘の香り、旨みの乗ったふくよかな果実味が食欲をそそります。3品種のブレンドによる味わいがバランス良く、和食全般に合わせられる味わいです。


イタリアからはラ・ビアンカーラが造るサッサイア IGT ガルガーネガ・デル・ヴェネト 16年。人気が高く入手困難となっているイタリアの自然派ワインの白です。人為的介入を極力抑え、無施肥による有機農法を実践し、すべてのワインを野生酵母で発酵しています。今回入荷のサッサイアは、ガルガーネガ種100%(ヴィンテージによってブレンド有)で酸化防止剤無添加タイプ。タンクの上澄みの部分から造られた、きれいでピュアな果実味と旨味が楽しめます。

トスカーナ地方の赤ではポリツィアーノ家のロッソ・ディ・モンタルチーノ15年。創業1961年、現オーナーのフェデリコ・カルレッティ氏は二代目を担っています。農学を修めた後、北イタリアのワイン産地での経験を経て、1980年にポリツィアーノに入社。最高品質の葡萄を収穫する目的のために、最適な土壌やミクロクリマを求め、クローンを厳選し、最適な植樹のレイアウトを施し、剪定法を研究しました。ロッソ・ディ・モンタルチーノは、チェリーやベリー系の豊かな香りに、ホワイトチョコレートやローストされたコーヒーのニュアンスが感じられます。程良く濃さのある、飲みやすいワインです。

南部ラッツィオ州からはファレスコ社テルース ロッソ・ラッツィオ15年。太陽燦々と輝くイタリア・ラッツィオ州からシラー種で造られたスパイシーなワインです。シナモン、ナツメグなど香り系のスパイスに、デーツなどドライフルーツを思わせる凝縮感。これからの行楽シーズンにはもってこいのワインです。


近年人気のスペインからはナヴァラ地方アスル・イ・ガランサ社アブリル・デ・アスル・イ・ガランサ16年。スペイン北部のナヴァラ地方でビオロジック栽培から生まれたコストパフォーマンスの高い赤。ワイナリー名の「アスル・イ・ガランサ」は、「アスル」はスペイン語で青、 「ガランサ」は、輝きのある深い赤色を意味し、強い日差しと乾燥した空気によって際立つ強烈な空の青さと、美しくテロワールが表現された果実味豊かな赤ワインの色を合わせて名付けられました。春のすがすがしさを表したかのような「アブリル(4月の意)」と名付けられたこのワインは、まさに春の陽気の中で楽しむのにぴったりの赤ワインです。


近年、地味に人気が出てきたオーストリアからは、ブルゲンラント地区のマインクラングがピノ・ノワール種で造る赤16年。デメテルの認証を受けたビオディナミ農法で育てられたピノ・ノワールの赤。ブルゴーニュの高騰が著しい中で、ピノ・ノワール好きには嬉しい価格帯であり、果実味がきれいで、酸味、タンニンのバランスが良く、純粋に果実の旨味が楽しめるお買い得感のあるピノ・ノワールです。


今注目のポルトガルからは、ドウロ地区モンテ・カシュカシュのレゼルヴァ・ブランコ 14年。地葡萄のラビガト種100%で造られたふくよかでリッチな味わいの白。口当たりは滑らかで、洋梨、アプリコットなどの熟した果実味に程よい酸味があり、 フレンチオークの上品な樽の風味が広がる中ですっきりとしたミネラル感がアフターまで続く、この価格では驚きのパフォーマンスです。輸入元終売により、希望小売価格1,900円が特別価格で入荷しました。


ルーマニアからは、デアル・マーレ村のヴィル・ブドゥレアスカが造るヴァイン・イン・フレイムのシャルドネ種17年。今注目の東ヨーロッパのルーマニアで造られた、しっかりとした樽感が感じられるシャルドネ種の白です。ここはルーマニアの伝統と最新のワイン技術の融合により、安価で上質なワインを生産するワイナリーです。トロピカルな厚みのある果実味と、オーク樽が合わさりニューワールドを思わせるようなリッチな味わいに仕上がっています。


次はハードリカーから、英国からキングスバリー社ヴィクトリアン・ヴァット・ジン。ジンの味わいを決める中心軸は何と言ってもジュニパー・ベリー(ネズの実)。贅沢にもそのジュニパー・ベリーを通常の2倍以上使用し、シングル・カスク(1タンク分)で仕上げられたジンです。そのため生産本数は346本、またこのジンがリニューアルするため今回のラベルでの出荷は最後となります。大きな声では言えませんがラベルが変わる時は味わいも変わる時が多いです。この貴重な逸品をお見逃しなく。


当社はワイン主体ですが、清酒も扱いはございます。地元、札幌の千歳鶴で純米生うすにごり。札幌の老舗酒蔵、千歳鶴が造る季節限定の生酒です。明治五年の創業以来、女性が初めて杜氏となり、千歳鶴は転換期を迎えています。6代目杜氏となる市澤智子さんが酒造りに加わったことで新たなラインナップも増え、このうすにごりも誕生しました。従来のものとは異なる爽やかさと旨味が加わることで味わいに広がりが生まれています。ワイングラスでお飲み頂くと色調、香り、味わいをより楽しむことができます。

食品ではスペインのサンセホ・ホットチョコレート。このホットチョコレートはスペインの高級デパート『エル・コルテ・イングレス』等で販売されているそうです。スペイン旅行で味わった本場の味を再現出来ます。キッチンに飾っておきたいインスタ映えする可愛い缶です。ココア・ドリンクだけではなく、お菓子作りの材料としてもおススメです!


最後はワイン・アクセサリーで、コルカー。現物をお見せできないのが残念ですが、コルク栓に付属のピンを指して、可愛いマスコットに仕上がります。とあるワインバーでは、手持ちぶさたのお客様にコルクと、このコルカーをお渡しして、仕上げていただくそうです。マスコットが仕上がるにしたがって、お客さまも笑顔に!コミュニケーションツールとしてもお使いいただけます。

2018年 3月

今月は買い物の話。

休日に書店でワイン関係の本を見た後、入口付近に「黒沢明コレクション」と書かれて、名作映画「用心棒」が1,000円で売っていました。黒沢明が監督し、名優「三船敏郎」と「仲代達矢」が戦う有名な作品です。旧作ですからレンタルしても100円ですが、黒沢監督の名作が1,000円なら絶対買いでしょう。しかもこの黒沢映画はシリーズ物で隔週ごとに発売され、第二弾は最高傑作と言われる、「七人の侍」が1,800円で隣に並んでいます。思わず私は、衝動的な大人買いで二作を購入しました。

実は私、封切りで黒沢映画を見たのは「影武者」以降で、真の黒沢ファンとは恥ずかしくて言えません。しかし、こんな値段で少しでもその仲間に入れるのでは?と、思わず買ってしまいました。黒沢映画に興味のある方は、騙されたと思って1、000円の用心棒だけでも買ってみてください。気が乗らずに買う気になれない方は、100円のレンタルでも結構です。この時期の黒沢映画は世界中の映画関係者から絶賛され、世界の最前線にいた事が分かると思います。でも、もし観て面白くなかったら、私に文句を言って下さい。私は真摯に謝るつもりです。

そして、私が一番好きな黒沢映画は「天国と地獄」と、「影武者」。少なくてもこの映画が出るまでは、書店で黒沢映画全集を買い続けます。私にとって美味しい食事やワイン、楽しい映画、こういった休息が毎日の仕事の情熱に繋がっている様な気がします。

さて今月のお薦めワインです。

レ・フィエフ・ド・ラグランジュ14年1/2サイズ。メドック格付け3級シャトー・ラグランジュのセカンドワインです。サンジュリアン村で115ヘクタールの広さを持ち、収穫は手摘みで行い、ステンレスタンクで15~25日間発酵後、新樽を25%使用して樽熟成を行います。深みのある赤色で、ブラックカラント、スパイス、タバコ、チョコレートの香りを感じ、肉厚で長い余韻が楽しめるワインです。メーカー希望小売¥2.640が特別価格で限定入荷しました。ハーフサイズなので気楽に開けられます。

ムーリ村のトップ・シャトーのひとつであるシャトー・モーカイユ14年。その実力はメドックの格付けシャトーに比肩する高い評価を得ています。2014年のボルドーは偉大な年の2015年に隠れてしまっていますが、良質な葡萄が収穫され評論家からも高い評価。2015年産の価格の高騰が著しい中、2014年は価格が抑えられ、消費者にとっては喜ばしいヴィンテージとなっています。

サン・テミリオンのシャトー・ラセグ07年。パーカー・ポイント100点を13回獲得したカリフォルニア、ソノマ地区の「ヴェリテ」。ここのオーナー、ケンダール・ジャクソン社と、ヴェリテのフランス人醸造家ピエール・セイヤンが、サンテミリオン村のシャトーを購入し、共同で手掛けるボルドーワインです。ボルドーで厳しい年となった2007年をよくぞここまで凝縮させて、熟した果実の旨みとオーク樽の上品な風味の調和が楽しめるワインに仕上げたものだと驚きと感動があります。ゆくゆくは、ヴェリテと同様に、ラセグでも100点獲得を目指しているのでしょうか?

次はブルゴーニュ地方から、元DRC(ロマネコンティ社)の社員で、担当はロマネコンティ畑と、ラ・ターシュ畑の栽培だった、オーディフレッド氏。独立した彼が、ニュイ・サン・ジョルジュ村に所有する区画と、賃貸契約できた区画を合わせた0.14ヘクタールから造られた1樽(300本)だけの赤ワイン。オーディフレッドのワインはピュアという言葉を体現したような味わいで、ブルゴーニュの真骨頂といったところ。収穫から5年を経て、少し開き始めた頃でしょうか。

同じブルゴーニュから、ドゥフェ・ラヴノー家のシャブリ1級レ・リス畑で03年産。ここはシャブリでも歴史のある造り手で、有名なフランソワ・ラヴノーとは親戚になります。果実味とミネラル感、15年を経た熟成による複雑な味わいを楽しめます。古酒のお好きな方におすすめです。

こちらもブルゴーニュから、フレデリック・マニャンのモレ・サン・ドニ村クール・ダルジル14年。ジュヴレ村寄りの畑で粘土を意味するアルジルの名の通り、粘土が多い土壌から力強い葡萄を産みます。収量は45hL/haとまるで特級畑並みの少量生産。ブルゴーニュ本来の旨味、果実味、酸味のバランスの取れた味わいをお楽しみください。

バスク地方イルレギーの白。 44年間シャトー・ペトリュスの醸造長だったジャン・クロード・ベルエ氏が生まれ故郷で造る白ワインで、希少な14年産が入荷しました。木樽を使わずにステンレスタンクによる発酵、熟成で、テロワールとグロ・マンサン種の個性を表現したワインになります。凝縮した果実味に、酸、ミネラルが混じり合った、複雑な味わいが楽しめます。

次もブルゴーニュで、シルヴァン・ロワシェで赤、白、2種類のワイン。ブルゴーニュで新進気鋭のドメーヌが造る上質でありながらコスパの高いシャルドネとピノ・ノワール。ビオロジック農法で栽培をし、発酵は野生酵母、洗練されたスタイルで 注目を集めている生産者です。コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ白は第一搾汁のみを使って樽発酵をし、ピュアでクリーンな果実味とオーク樽の上品な余韻が楽しめます。ニュイ・サン・ジョルジュ村の赤は1級畑に接するレ・グランド・ヴィーニュ畑のもので、コート・ド・ニュイの畑名のものでは破格のお値段です。しかも優良年の2012年産。無清澄、ノンフィルターで旨味がつまった果実味豊かなスタイルです。

シャンパーニュ地方からは、ラミアブル社のブリュット。品種はピノ・ノワール種主体で、果実味豊かなスタイル。ここが生産するシャンパーニュは殆どが国内で販売され、輸出されるものは全体の10%ほど。日本での知名度は低いですが、フランス国内での評価は高く、上質なシャンパンとして知られています。小売価格5000円が特別価格で入荷しました。

イタリアからはサン・パトリニャーノを代表する「アヴィ」サンジョベーゼ・ディ・ロマーニャ14年。サン・パトリニャーノはイタリアの麻薬等の薬物中毒の更生施設で、若者らが技術習得と社会復帰を目的として、葡萄栽培、酪農、織物製作等で働いています。そのワイン部門のトップ・キュヴェがアヴィで、凝縮した果実味とタンニンがたっぷりの赤。希望小売¥6000のところ特別価格でのご提供です。

伊ウンブリア州のスポルトレッティ社ヴィラ・フィデリアの白13年。スポルトレッティは何代も続く農家でしたが、ワインを主力になったのは1970年代から。ウンブリア州ペルージャ郊外アッシジの丘陵地に26haの畑を所有する、家族経営のワイナリー。ヴィラ・フィデリアの白は、グレケット種とシャルドネ種を樽発酵、樽熟成させた、果実味と樽香が調和した、高コスト・パフォーマンス・ワインです。

アブルッツオ州からはファルネーゼ社のジロで3Lのビッグ・ボトル。パーティーに持参すれば、スターになる事間違えなしの瓶です。モンテプルチアーノ種の赤は、4~7ヶ月新樽で熟成させているので、熟した赤い果実の複雑なアロマに、 チョコレートや樽からのスパイシーな風味が感じられます。今でも楽しめますが、しっかりした骨格があるため、この先、長期熟成させることが出来ます。

スペインからはK5ワイナリーのピロタ15年。スペイン北部で、フランス国境に近いバスク地方出身の有名シェフ、カルロス・アルギニャーノ氏がプロデュースした微発泡白ワインのチャコリです。チャコリ独特の飲み方として、瓶を高く持ってテーブルの平たいグラスに勢いよく注ぎ入れ、発泡させてから飲むのが流儀といわれていますが、これはカジュアルなチャコリの話。このピロタは、白ワイングラスであくまでも白ワインとして飲んでいただきたい、とのことです。オンダラビ・ズリ種をオリと共に5ヶ月間熟成させた極上のチャコリは、シーフードと共にお楽しみください。

こちらもスペインで、フミーリャ地方アテカ村のオノロ・ベラ16年。ジャケ買いしたくなる、白黒の大胆な女性の顔のラベルです。オノロは創業者の曾祖母の名前、ベラは祖母の名前で、祖父の名前は「ファン・ヒル」として残っているので、母方の名前も残したいと願ってワイン名にしました。ガルナッチャ種からの熟したブラック・チェリーの色で、赤い果実(ラズベリー、スグリ)、ミネラルやバルサムを思わせる強い香りがあります。少し甘い風味の果実とタンニンがパワフルで、インパクトのあるスペイン・ワインです。

カリフォルニアからはデリカート社のウッドヘーヴン・カベルネ・ソーヴィニヨン13年が特価で入荷しました。デリカート・ファミリーは、アメリカン・オブ・ザ・イヤーに3度受賞するなどアメリカを代表する大手優良生産者で、ウッドヘーヴンはハイコストパフォーマンスのワインとして人気の高いシリーズです。カシスなどの豊かな果実味に、フレンチとアメリカンオーク・チップによる香ばしいオーク香が合わさり、味わいに広がりを見せる飲み応えのあるワインです。輸入元の終売による特別価格です。

2018年 2月

この独り言に何度か書いていますが、私の年越しは大晦日の夜11時過ぎから時計台の正門横で新年を待ち、12時の鐘の音を聞いて今回で37回になります。

大晦日の夜11時といえば、普通の家庭では「紅白」を見ながら、ご馳走を食べてゆっくりくつろいでいる時でしょう。氷点下の屋外で一人、やせ我慢で冷えたシャンパーニュとキャビアをつまみながら12時を待っていると、頭の中も真っ白に冷えて来ます。こんな時間でも時計台の前には沢山の人がいるのですが、多分私以外の殆どが観光客で、皆さん時計台をバックにスキーウエアー姿で記念撮影をしています。

一応、当社のお客様が来た時の為にシャンパン・グラス数個は毎年用意していますが、あまりに非常識な時間ですから、ここ数年は使わずに済んでいました。ところが今年は、お二人もお客さんが来てくれました。一人、屋外で良質なシャンパーニュを飲んでいても、寒さの為に香りは殆ど感じられません。でも、知っている方と共に味わうと、この寒さの中でも美味しく楽しめるのです。震える手でクラッカーにキャビアを載せてお渡しすると、皆さん手袋をポケットにしまい素手で受け取り、寒さの中で濃厚な魚卵の美味しさを共に味わいます。

そして11時50分を過ぎる頃から、ここに集まった方々は無口になり時計台の時計を見上げるようになります。さらに1分前ぐらいになると、皆が自分の携帯の時刻と時計台とを見比べ始め、30秒前からは何人かのカウントダウンの声が聞こえてきます。そして振り子時計の鐘の音が12回、澄みきった空気の中で鳴り響くと、あちこちから「明けましておめでとうございます」の挨拶と共に、時計台前がまた賑やかになります。毎年大晦日の夜、外で1時間弱立ちすくむ事で全ての煩悩が消えるわけではありませんが、この事が私にとって除夜の鐘の様なものになっています。

当然、今年2018年の大晦日も、38回目の年越しを一人で行っていますので、ご興味のある方は<暖かい格好をして>時計台の前に11時過ぎにお越しください。参加費は無料。そして飲み物、食べ物の持ち込みは大歓迎(当然、ゴミは持ち帰ります)です。ただ、アルコールを飲みますので、必ず地下鉄か、タクシーでお越しください。

さて今月のお薦めワインです。

北海道・最北端の果実の産地である増毛(マシケ)町産ポワール(洋梨)。春頃までの期間限定商品の洋梨で造ったスパークリングワインです。2017年度の洋梨は、色づきが早めでしたが、味、香りともに良い物となりました。昨年から粗濾過タイプになり、若干にごりがありますが、品質には問題ありません。細やかな泡立ちと豊かな香りが楽しめ、アルコール3.5%と低めなので幅広い方に楽しんでいただけます。

仏ボルドー地方からはカスティヨン地区のシャトー・カプ・ド・フォジェール。13年はバッド・ヴィンテージだからと敬遠されていらっしゃるお客様。難しい年だからこそ良い生産者を選べば、お手頃で若くから打ち解けてくれるワインに出会えます。コスパの高いお財布にやさしいワインです。

ブルゴーニュ地方からはウィリアム・フェーヴルが造る1級畑ヴァイヨン15年。ここの自社畑は15.2haがグラン・クリュ畑とシャブリ最大のグラン・クリュ所有ドメーヌです。跡継ぎのいないフェーブル氏はドメーヌを売却することにし、1998年、同じブルゴーニュにあるブシャールの復活に成功していたシャンパンハウスのアンリオ家が獲得しました。今シャブリでも95%は機械収穫ですが、フェーヴルは手摘みで行っています。シャブリ1級畑らしいフレッシュ感と、ミネラル豊かな味わいが楽しめます。

こちらもシャブリで、ジャン・マルク・ブロカール氏のシャブリ サント・クレール16年。やや酸が穏やかだった15年と比べると、酸味とミネラル感が増し、よりシャブリらしい味わいが楽しめます。寒いこの時期の牡蠣にピッタリの逸品です。

次もブルゴーニュで、シルヴァン・ロワシェで赤、白、2種類のワイン。ブルゴーニュで新進気鋭のドメーヌが造る上質でありながらコスパの高いシャルドネとピノ・ノワール。ビオロジック農法で栽培をし、発酵は野生酵母、洗練されたスタイルで 注目を集めている生産者です。コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ白は第一搾汁のみを使って樽発酵をし、ピュアでクリーンな果実味とオーク樽の上品な余韻が楽しめます。ニュイ・サン・ジョルジュ村の赤は1級畑に接するレ・グランド・ヴィーニュ畑のもので、コート・ド・ニュイの畑名のものでは破格のお値段です。しかも優良年の2012年産。無清澄、ノンフィルターで旨味がつまった果実味豊かなスタイルです。

次もブルゴーニュからドミニク・ローランの自社畑でモンテリー村の赤12年。パティシエ(菓子職人)から転身し、ブルゴーニュ屈指のネゴシアンとなったドミニク・ローラン。豊かな果実味と芳香のワインは、ドミニクマジックと呼ばれ、世界中のワイン愛好家を魅了しています。上品なスモーク香、澄んだ果実味と旨味のある、上品なピノ・ノワールです。

モレ・サン・ドニ村の生産者、ユベール・リニエのアリゴテ15年。かつてはリッチで凝縮感が高く、新樽の香りも強かったユベール・リニエのワインですが、故ロマン氏がスタイルを変え、バランスのよいものに仕上げてから、昔の濃さを支持していたアメリカ市場だけでなく、世界的に高い評価を受けるようになりました。こちらのアリゴテは、生き生きとした酸味とふくよかな果実味が調和した飲み心地です。

南仏からはシャトー・ペスキエの赤で桜のラベル15年。パーカー・ポイント92点を獲得したコート・デュ・ローヌ地方の赤です。優良年の2015年は凝縮感のある綺麗な果実味と柔らかなタンニンがあり、パーカー高得点のイメージとは反して、洗練されたワインに仕上がっています。ラベルに描かれた桜も、心地よい旨味と余韻が楽しめるワインのイメージによく合っています。

アルザスのマルク・クライデンヴァイツでクリット畑のピノ・ブラン16年。クライデンヴァイツ氏は早い時期からビオディナミ農法を実践し、1989年よりビオディナミの称号であるデメテールが認定されています。この区画のピノ・ブラン種は樹齢が50~60年と高く、鉄分と小石の多い花崗岩質土壌と共にリッチな味わいを醸し出しています。一般のピノ・ブランより複雑でバランス良く、お食事に合わせやすい白ワインです。

南仏・ルーション地方の名手ガルディエのマ・ラ・カーヴ14年。米「ワインスペクテーター」誌でもルーションの新しい生産者の一人として紹介されています。馬を使って土を掘り返し、肥料も基本的には使用せず、必要な時は家畜の糞と食物をまぜたものを使用します。病気の時は、イオウとオレンジの皮を松脂と混ぜて使用。必要最小限にする為、松脂と混ぜて用います。シラー種主体に、グルナッシュ種、ムールヴェードル種、他をブレンドした赤は、南仏特有のスパイス、ふくよかさがありながら、澄んだ果実味が楽しめます。

シャンパーニュ地方からはドラピエ社のブリュット・ナチュール。このドラピエ社の白眉ともいうべきシャンパーニュは、有機栽培のピノ・ノワール種100%と、ドサージュ(糖分添加)無しの自然な味わいで、自然派生産者のパカレ氏や故ラピエール氏が愛飲していたのも頷けます。ピノ・ノワール種本来の太い酸味と、厚みのある味わいをお楽しみください。今回は希望小売価格7,200円のところ特別価格でのご提供です。

次はスペインのお値打ち白ワイン、アルタビンのプティット・ホワイト16年。2001年創業とまだ新しいワイナリーですが、当主のジョアン氏は代々ワイン造りの家系出身ということもあり、 安定して品質の高いワインを生産しています。ガルナッチャ・ブランカ種主体のワインは、豊かな果実味が酸味とミネラルにより引き締められ、食事が進む親しみやすい味わいが魅力です。

食品からはサンセホのホットチョコレート。ホットチョコートといえば、日本の甘いココアをイメージしますが、これはカカオの風味を楽しめる大人のチョコドリンクです。この商品はスペインの有名デパート『エル・コルテ・イングレス』や、グルメ・ショップで販売されているそうです。これからの季節、バレンタインの義理チョコとしても最適です!

<おいしい作り方>①本格的な作り方は鍋にホットチョコレート粉末と牛乳(150ml)を鍋に入れ火にかけ、ゆっくりと混ぜながら温めます。②お手軽な作り方はカップに粉末を入れ、上から熱い牛乳を注ぎ入れてよく混ぜて溶かします。(少しダマになりやすいです)

サンティアゴのペドラス社のチョコレート。このチョコの名前でもあるサンティアゴの街はキリスト教カトリックの巡礼地として世界遺産にも指定され、世界中から癒しや奇跡を求めてこの地に巡礼にくるそうです。人生を立ち止まり、変わらない存在との出会いを求める旅、幾日間も歩き求めて最終地で味わうチョコレートの味わいは格別でしょう。歩いた人しかわからない領域でしょうが、それを思い巡らしながら食す想像力も神から与えられていることを感謝します!

地元、北海道産のメグデュカ。デュカはエジプトの調味料で、ハーブやスパイスたっぷりのお塩。料理にかけるだけで、お気軽にエスニック風味が楽しめます。地元産の昆布や、スパイスも調合されているので、普段エスニックな味付けに慣れていない方でも十分に楽しめます。パラリとかけるだけで、味わいが変化し、料理のアクセントになり、会話もはずむこと間違いありません!このスパイシーな味わいに合うワインは、南仏のシラー種というのが、フジヰスタッフの意見でした。

2018年 1月

今月は、ちょっと難しいお話です。

最近は毎月のように、北海道産ワインのイベントが行われ、私もなるべく参加するように心がけています。こういったイベントで多いのが「パネル・ディスカッション」と呼ばれる公開の討論会で、各ワイナリーや行政の担当者等がテーマに沿って発言をします。昨年開催された公開討論会では、アメリカでのワイン産地の発展がテーマでした。

今では名産地として知られるカリフォルニアは1850年代からワインを造っていたが、世界的に評価されるようになったのは1970年代に入ってからです。病害虫を乗り越えてワインの品質を上げ、産地の知名度を高める為に行った方法は、その地区内全ての生産者が、ワインを出荷する際に「1リットルにつき1円」の様な形でお金を集め、その資金で大学や研究機関に問題の解決法を研究してもらったり、産地の知名度を上げる為のイベントを開催したそうです。

この時の司会者が、「こういった形で日本でも産地の発展は出来ないだろうか?」と質問すると、参加していたアメリカ人のブルース・ガットラヴ氏(岩見沢10Rワイナリー)が答えたのはたった一言、「デモクラシー(民主主義)!」でした。広くて新しい国アメリカは、国土開拓の歴史が全て。西へ西へと開拓を進める際に問題が起こると、皆で資金を出し合い解決法を見つけては前に進んだそうです。

私も「デモクラシー」という言葉は知っています。でも、この言葉は歴史の教科書の中か、政治家や組合等が行う事で、自分たち日本の生活ではあまり使わない言葉だと思いました。北海道内でも、規模も産地も違う各ワイナリーが、一つのテーブルに集まり討論をして何かを決めるという事は、多分大変なことです。でもこうした際に必要となるのが「民主主義」らしいのです。私たち日本人は、共同作業に関しては欧米からまだ学ぶ必要があるようです。

さて今月のおすすめワインです。

千歳ワイナリーが造るピノ・ノワール16年。北海道のピノ・ノワールのルーツとも言える、余市の木村農園。92年に苗を入手してから、ピノ一筋でやってきました。繊細で上品なミドルボディで、チェリーなどの果実の風味と上品なフレンチオーク樽の香りを特徴としています。半年から1年ほど熟成させると、更に味わいが開いてくるでしょう。

フランスのボルドーからはシャトー・ジョアナン・ベコの11年。シャトー・ボーセジュール・ベコのオーナーである、ジェラール・ベコ氏の娘ジュリエット・ベコ女史が2001年2月から所有するワイナリーです。グリーン・ハーベスト(間引き)により収量を厳格に制限し丁寧に仕立てられるワインは、果実味の凝縮感がありながら、柔らかなタンニンを持ち、優しさや丸みを感じられます。女性醸造家の情熱や思いが詰まった1本を、ぜひこの機会にお楽しみください。

ブルゴーニュ地方の大手生産者、ジョセフ・ドルーアン社のアリゴテ16年。メゾン・ジョゼフ・ドルーアンは1880年に古代ローマ要塞の壁の内側に位置する、ブルゴーニュワインの中心地ボーヌに創立されたワイナリーです。130年以上もの間、家族経営にこだわり、頑なに創業当時から受け継がれるテロワールへの信念を守り、「エレガンスとバランス」を追求し続けています。このアリゴテ種は綺麗な果実味とほのかな火打石のニュアンスを感じられる、酸のしっかりとしたフレッシュな白ワインです。この低価格でもブルゴーニュの良さが楽しめるお値打ちな白です。

次はニュイ・サン・ジョルジュ村のティボー・リジェ・ベレールが造るブルゴーニュ規格の白。リュニー村とモンタニー村のシャルドネ種をブレンドすることで、ふくよかでミネラリーな味わいになっています。2012年はブルゴーニュの当たり年で、熟成によりきれいな果実味とこなれた酸味との調和が楽しめます。

ミッシェル&ジョアンヌ・エカールのサヴィニ・レ・ボーヌ ルージュ ヴィエイユ・ヴィーニュ14年。長い商品名で申し訳ありません。この生産者は元々サヴィニ村を代表するモーリス・エカールの息子夫婦になります。諸事情があり、「モーリス・エカール」の名前とワイナリーを売却しました。その品質が以前のレベルに達していないと考えたミッシェル氏は、ドメーヌの再興のため約1/3になった畑を基にワイン造りを始めました。入魂のサヴィニ村名ワインが超特価でのご提供です。

南仏で当社大人気の生産者ダンデゾン。35haの畑は海抜200mに位置し、ワインは50%がドメーヌ名でリリース、残りはエステザルグのワインにブレンドするか、ネゴシアンに売ってしまいます。基本は、除草剤を使わず、銅や硫黄を使用。ただ、病気に罹った際には、薬を使うこともあります。ラベルに牛が使われているのは、元醸造責任者のニックが牛が好きだったことと、ラベルを見て「雄牛=フルボディ」というたくましいイメージを連想させるためだそうです。シラー種100%からのワインは、雄牛のように濃くて強い味わいです。

ロワール地方からは、プイィ・フュメ地区のタボルデが造るソーヴィニヨン・ブラン種の白。人気のプイィ・フュメと、隣村のサンセールは、価格も3~4,000円以上の高級ワイン。そんな中でダボルテの白は、品質とお値打ち価格で、社内試飲では満場一致で決めたロワールの白。イヴォンとパスカルの「タボルデ兄弟」が1981年に設立したドメーヌで、畑では農薬や除草剤、化学肥料などはほとんど使用せずに自然な農法でワイン造りを行っています。16~18℃の低温で約2ヶ月かけてじっくりと醗酵するため、味わいはクリアでミネラル感に溢れています。

LGI ビッグ・レッド・ビースト16年。ラベルを見るとまるでカリフォルニア・ワインかと思うようなヘタウマのビースト(野獣)が描かれています。しっかりとした濃い系の果実味があるのに、全体を渋みと酸味が上手くまとめ上げて楽しませてくれます。コスパ抜群のリッチな南仏産赤ワインです。

シャンパーニュ地方からはピエール・パイヤールのレ・パスセル。ブジー村のパイヤール家では、力強いピノの産地で知られるこの村の葡萄だけから造られます。パワフルなこの村の味わいに、フレッシュさとエレガンスさをもたらすため、このキュヴェではシャルドネ種を40%も加えて、独自の上品さとふくよかさが楽しめます。葡萄栽培は20年前からリュット・レゾネで行っており、自然の野草で覆われた葡萄畑では、ここ15年間、化学肥料を一切使っておりません。ノン・ヴィンテージですが、瓶詰め後42ヶ月間も熟成を行っており、生き生きとした細かな泡が駆け抜ける味わいは、ふくよかな果実と細かな酸を備えています。グラン・クリュの力強さとエレガンスに、長期熟成の奥深さを堪能できます。

イタリアからは南の濃い系ワイン、ヴィニエティ・デル・ヴルトゥ-レのアリアニコ種の赤。畑は標高500m以上の高い所にあり、南部でも冷涼です。アリアニコ種は晩熟ですが、成長過程では涼しい気候を好むため、最適の産地。認証はありませんがオーガニックに近い栽培方法です。クモは化学的物質に弱い生き物で、その存在は畑が健全で自然であることを示します。濃厚で濃いワインですが、酸があるので、シロップのような濃さまでにはなっておらずバランスが良い味わいです。

次は食後酒に最適な、薬草がたっぷりのイタリア産プレミアム・ヴェルモット。カルパノ社のアンティカ・フォーミュラーは、私が一番好きなヴェルモットです。お食事とワインを終えて、ちょっと飲み足りない時や、少し音楽でも聞きたい時に最適なお酒です。甘さとハーブの苦旨みが、奥行きの深さと重層的な味わいで、特に寒いこの時期には欠かせません。ぜひ一度お試しください。

スペインのシェリーでは、バルバディージョ社が英国の酒商ベリー・ブラザーズ・ラッド社の為に造ったオロロソ・タイプの辛口シェリー。シェリー好きの人には是非試して頂きたい熟成シェリーです。英国最古のワイン&スピリッツ商が、生産者との深い絆より生まれたオリジナル・シェリーです。熟成感の中にもフレッシュさがあり、輸入過程における劣化を感じさせない抜群の状態です。肉料理や中華料理もそうですが、濃厚なチョコレート・デザートにも相性が良いです。

日本酒では、鯉川酒造の別嬪(ベッピン)純米酒。寒さが続く中で温めて美味しくなる日本酒をご紹介します。全国燗酒コンテストで2度の受賞歴があり、実際に温度を上げながら試してみると、まろやかになり全体の調和がとれてより美味しくなりました。ただ、温度を上げ過ぎるとアルコールが強く感じてバランスを崩してしまうので、ぬる燗(40度程度)がおすすめです。

2017年 12月

近年、北海道産ワインの評価が上がるにつれて、行政側でもワインを応援するイベントが増えています。今回、「道産ワインと胆振地方の食・魅力発信セミナー」が11月16日、洞爺湖のウインザーホテルで開催され、私も参加させていただきました。


2008年、日本開催のサミット会場となった、北海道で最も豪華なホテル、ウインザー。今回はここの総料理長が6種類の道産ワインに最適な料理を地元の食材を使って考案し、ワインと食の組合わせを体験するという贅沢な会。ただ私はウインザーで食べた事があるのは、前にここで購入した数種のパンしかありません。そんな「おのぼりさん」状態でしたが、第一部のセミナーで飯島総料理長さんのお話を聞いて驚きました。

飯島さんの前職場は日本で最高の朝食と評価された、栃木県那須高原に4万2000坪の敷地を持つ高級リゾートの二期倶楽部。那須では敷地内のガーデンで野菜栽培と、調理の両方をされていた飯島さん。更に雄大な自然が残る北海道に来て、素材探しと新しい食材を使った料理に打ち込んでいる姿に私は感動を覚えました。洞爺湖を見渡す山の頂上に立つお城のようなホテル、私のイメージでは日本中どころでは無く、世界中から最上の物を取り寄せているイメージでしたが、飯島さんが来てからは地元の食材にこだわり、地元の生産者とミーティングを重ねて、独自の味わいを追求しているそうです。そして今、ウインザーでは地元のお祭りや、イベントに積極的にブース等を出して参加しています。出店の際は食器やサービスも含めて本物にこだわり、食で感動していただくことで、洞爺の皆さんに愛されるホテルを目指していると語っていました。


次の第二部は試飲と試食。最初の鶴沼ヴィンヤード白は、マスカット香が華やかで食事とは合わせ辛いイメージでしたが、生の帆立を使ったマリネにマンゴーを加えることで、マスカットとマンゴー二つの香りが口中で共鳴し、閃きのある前菜となりました。

今回、私の注目はロゼワイン。千歳ワイナリーのピノ・ロゼに、ヒラメのお寿司と、霜降り和牛のローストの2品が用意されます。お寿司はポン酢・紅葉おろし・シソを使って、ワインの酸味と上手く調和していました。でも次の霜降り和牛の様な強い食材には、赤ワインでなければ負けてしまいそう。そこで牛にドライフルーツのソースを加える事で、フルーティなワインとの相性が良くなり、ピノ・ノワール種のタンニンと旨みを持つ辛口のロゼが、肉の脂肪分に溶け込んでゆくような感覚は初めての経験でした。

こうして今回、6種のワインに12品の料理が用意されていました。


さて、農学部で有名な北大は、今、ワイン研究にも目を向けています。道庁から市町村までの行政も、ワインが町おこしに役立つと気付き、動き始めています。当然、葡萄農家さんと、ワイナリーは全力で打ち込んでいます。5年、10年後、道産ワインが更に美味しくなり、道民だけではなく、全国のワイン好きから愛される事を願って私も努力を続けて行きます。

そこで皆さんの応援方法は、例えばカニやシカ肉など地元の良質な食材を入手した時に、道産ワインと共に味わってみませんか? 洋食でなくてもいいです。いつもの調理法でも、別に小皿を数枚用意して、ミネラル分の多い塩、粗引きコショウ、レモン汁、柚子こしょう、オリーブオイル、バルサミコ酢等を各小皿に入れます。そして食材とワインが調和する調味料を色々食べ比べをしてみると、食卓に楽しい会話と発見が見つかる事でしょう。


さて、今月のオススメワインです。

まずは地元から、余市・田崎正伸ソーヴィニヨン・ブラン16年。大手である北海道ワイン㈱の契約農家の中で別格の扱いを受ける田崎農園。ここが試験栽培を始めたソーヴィニヨン・ブラン種の初成り葡萄からの白。植えて3年の若木ですが、爽やかな酸味を持った味わいはまさにソーヴィニヨン・ブラン種。今後、木の成熟と共に、将来が期待されます。


フランス・ボルドー地方からは、ムーリ村のシャトー・ベレール・ラグラーヴ97年。20年を経てまさに飲み頃のボルドーです。若くてジューシーなボルドーも楽しいですが、熟成による旨みと複雑さにはかないません。「まさにボルドーの真骨頂!」といった感じです。また、今年二十歳になられた若い方々へのプレゼントとしても最適ではないでしょうか。


仏ブルゴーニュ地方からは 期待を裏切らないグロ・フレール・エ・スールのオート・コート・ド・ニュイ地区の赤で、作柄の良かった15年産。以前は果実味豊かで力強いスタイルで知られる生産者でしたが、オーナーが病気をして以来、洗練されたエレガントな造りを目指しており、味わい深いワインとなっています。2015年は良質な葡萄が収穫され、上質な果実味にオーク樽の香ばしさが合わさり、若いうちからでも芳醇な味わいを楽しむことができます。


同地区での上級品は、ヴォーヌ・ロマネ村の名門ジャン・グリヴォでこの村の12年産。ジャン・グリヴォは18世紀の末にまで遡る由緒正しき造り手です。ベルベットのようなエレガントな喉越しが、このドメーヌの共通の特徴。この赤ワインは、ヴォーヌ・ロマネ村内の数区画からのブレンドから造られています。綺麗なチェリーの風味、しっかりとした果実味とタンニンを楽しめる、旨みのあるワインです。


ブルゴーニュの白では、若手生産者の中で注目度ナンバーワンのバンジャマン・ルルー14年。果実の純粋性を表現する達人で、オーク樽のニュアンスはほんの僅かしか感じさせないようにしており、果実のみずみずしさを感じることができる上質なワインです。奥まった位置のオーセイ・デュレス村は、控え目な値付けで良品が見つかる、とっておきの産地です。


ムルソー村の人気生産者フランソワ・ミクルスキの赤、白。当主であるフランソワ・ミクルスキ氏はボーヌで醸造学を学んだ後、カリフォルニアのカレラで研修を受けます。白は天然酵母を用い、発酵に3~4ヶ月もかけます。熟成はオーク樽で12ヶ月以上、樽のニュアンスが出過ぎないように新樽比率は20%以下に抑えています。赤は15~17日間ステンレスタンクで発酵させた後、オーク樽にて14ヶ月以上熟成させます。希望小売4,000円以上の品が特別価格で限定入荷です。


南仏からは、エステザルク農協が造る安旨ワイン、プティ・アンデゾン赤。当社で大人気ワインであるダンデゾン・ヴィエイユ・ヴィーニュのセカンド的ワインです。16年ヴィンテージよりシラー種はダンデゾンのシラー種のみを使用し、グルナッシュ種は南部の葡萄を使用。シラー種2/3、グルナッシュ種1/3で、今まで以上にダンデゾンの品質に近づきました。ダンデゾンは無濾過、無清澄で濃厚ワインでしたが、このプティアンデゾンも力強い果実味は流石です。


シャンパーニュ地方からは、リッチな味わいで有名なゴッセ社グランド・レゼルヴ・ブリュット。1万円弱のプレミアム・シャンパーニュが、なんとビックリの価格です。豪華なおせちと共に味わう、年越しの泡はゴッセで決定です。


イタリアからは、コスパの高さで知られるファルネーゼ・ファンティーニ社のシャルドネ種と、ピノ・グリージョ種の白2種。辛口評価で知られるルカ・マローニ誌で常に最高評価を受けている生産者です。2種共に、12度で約20日、ステンレスタンクで発酵させます。その後、良質な澱とともにステンレスタンクで約3ヶ月熟成させます。シャルドネはレモンライムの香り、ふくよかな果実味とミネラルのフレイバーがあり、ピノ・グリは香ばしさとメリハリ感が楽しめ、共に爽やかでバランスの良いワインです。


スペインからボデガス・カスターニョの赤、ソラネラ15年。カスターニョ家では、自然が与えてくれた贈り物、天然の良質な土壌と、モナストレル種を大変誇りに思っています。彼らは先祖代々受け継がれてきた伝統を決して忘れることなく、更に新しい技術の開発に心血を注いできました。3品種のブレンドによる完熟した濃厚な果実味は飲みごたえがあり、少し贅沢な時間を与えてくれます。


ドイツ、モーゼル地方からは、コスパワインの代表格トーマス・バルテン家のやや甘口リースリング15年。畑の50%以上が急勾配の斜面で、その傾斜はなんと40%~75%。ワインは自然なものであるべき、そして自然のままであり続けるべきと考え、培養酵母は使わず、自然酵母を使って発酵させています。デザートワインまで甘くないので、どなたでも飲みやすい万能ワインです。


チリからコイレ社のロヤル・カルメネール13年。コイレは、1885年から6世代にわたる栽培醸造家のウンドラーガ氏が2006年に設立したプレミアム・ワイナリーです。コルチャグア・ヴァレーで最も標高の高いアルト・コルチャグア地区に畑を所有し、バイオダイナミックとオーガニック農法で栽培しています。凝縮したスパイス、オレンジピールにカカオ、森林を思わせるクリアな香り立ちがあり、しっかりしたコクと深みのある均衡のとれた味わいで、滑らかなタンニンが余韻まで続きます。インパクトのあるワインをお探しの方におすすめです。


アルゼンチンからは、トップ・ワイナリーのモンテヴィエホが造るマルベック種の逸品、リンダフロール08年。畑では環境に配慮した有機農法による栽培を実践し、ミッシェル・ロラン氏監修でポムロールのシャトー・ル・ゲ等のテクニカルチームがワイン造りを担当、世界でもトップ・レベルのワインを生産しています。味わいはふくよかで滑らかな果実味と、フレンチオークの上品な樽香が見事に調和しており、9年の熟成により濃さだけではなく、飲み頃の旨みも楽しめます。


ハード・リカーでは 仏アルマニャック地方の名門サマランス社の8年熟成アルマニャック・ブランディ。単一種の葡萄(ユニ・ブラン種)、単一蒸留所、単一生産地で、シングル・ド・サマランスと名前が付けられている通り、全てシングルにこだわりぬいており、このほかにも芳醇なフローラルの香りをつけるため澱を加えたり、自然な甘みだけを出すためにリキュールや砂糖を加えないなどのこだわりを持って造られています。滑らかな口当たりを持ち、香り高い上品な香りが口中に広がる高品質なアルマニャックです。


ラムでは、プランテーション・オリジナル・ダークラム。カリブ海の島でバーボン樽熟成の後、クオリティーの高い物だけを、わざわざフランスへ運び、コニャック樽で再熟成と、何とも贅沢な造りのラム酒です。ストレートでももちろん美味しいですが、ダークラム仕様のカクテルを秀逸に仕上げます。「マイヤーズでは少々甘くて・・・」と思ってらっしゃる方に最適な味わいです。なお、同じプランテーションで、アルコール69%もあるダークラムと、3つの島からのラムをブレンドしたスリースターズ(ホワイトラム)も、本当はお薦めに入れたいくらいの品質でした。


ビールでは、ベルギーの欧和(オーワ)ブリュワリーが造る黒欧和(クロオーワ)。以前、某航空会社の機内誌に今井礼欧氏の記事が載っていて、是非当店でも取り扱いたいなと思っていたビールです。しかも今回はボルドーで”クロ・レオ”を造る篠原麗雄氏とのコラボとなると見過ごす事が出来ません。


食品からはスリランカのマーズ・ハッピー・ライフ・キッチン社のカレーペースト。料理をカレー風味にしたいけど、普通のカレー粉ではもの足りない、そんな時に最適なカレーソースです! スパイシーで酸味のバランスのとれた味わいです。瓶に入っているので、開けても冷蔵保存出来るので便利です。マンネリ化した家庭料理にちょっと変化球を投げてみてはいかがでしょう。


ドイツ・メステマッハー社からはライ麦、オート麦等から作られたとても重たいパン、ドライコルン。これほど栄養素の高いパンはないでしょう。原材料は、有機全粒ライ麦、有機オート麦、有機大麦、有機亜麻仁、海塩、有機ゴマなど、身体に良い物ばかり。繊維質、ビタミンB、ミネラルたっぷりです。おすすめの食べ方は、厚めにカットしたセミハードチーズをのせてこんがりトーストします。クリーミーなチーズがドイツパンの複雑味、酸味を包みこみ、あとをひく美味しさです。朝食にいただいたら、朝から元気に活動できそうです。このパンは、7枚カッとされていて、丁度一週間分です。ワインのおつまみにも最適で、ミネラル豊かな白ワイン、酸味やスパイシーな赤ワインにもよく合います。※お腹に負担をかけない為、玄米のように、何度も良く噛んでお召し上がりください。


北海道からはアグリシステム社の小麦ヌーヴォー。ボージョレ・ヌーヴォーにあやかり、最近、様々なものが初物と称して紹介されています。この道産の粉もそのひとつ。この粉で、パンを焼きましたら、いつものパンより粉の味わいが深く美味しく感じました。初物に感謝する心も相乗効果になっているのでしょうか。とても簡単に作れ、かつ美味しいパン「ドデカパン」の作り方を、YouTubeで紹介しています。「世界一簡単かも??基本のドデカパンの作り方」で検索ください。ドデカパンをこの粉で焼きましたら、フジヰスタッフにも大好評でした!

2017年 11月

10月、家内の両親が数年ぶりに札幌に来ました。

初日の夕食はうちの家族3名と両親の5名で、札幌駅西側に出来た、六花亭ビルの上にある「モリエール・カフェ 降っても晴れても」でディナー。ワイン屋の仕事をしていると、沢山の美味しいお店とお付き合いがあって、お店選びはかえって悩んでしまいます。今回は両親が高齢なのと、義父の江戸っ子気質もあって、何皿も出てくるコース料理では無く、メインの料理中心でくつろげるお店で選びました。

前菜のサラダはとても綺麗な盛り付けと、具材ごとの味付けが見事で、小食の義母も完食してくれました。メイン料理は私と息子と義父の3名は牛肉の赤ワイン煮を選び、女性陣は魚料理のクネル。男性ですとサラダと、メイン一品では足りないと思われますが、 メインの料理を半分ほど食べた頃にクネルにはリゾット、肉にはビーフシチューとご飯が熱々の状態で、おかわりの様に盛りつけられ、お腹は十分満たされます。〆のデザートはミシュラン北海道版で三ツ星評価を受けたレストラン・モリエールのカフェですから、提供の仕方も、味わいも大満足。両親に喜んでいただき、私もホッとしました。

翌日は私が運転して、藻岩山の頂上から札幌の景色を眺め、その後はお義母さんの希望で北大のイチョウ並木を散策、夕食は自宅で鍋料理を頂きました。その食事中、義母から驚くべき話しを聞かされたのです。

この「独り言9月号」で、私は家内と東京の新名所となった「ギンザ・シックス」に行った事を書きました。ギンザ・シックスではランチの値段が超高いので、このビルを出て、裏側にあるラーメン店「むぎとオリーブ」で安くすませた話です。義母はその話が気になり、ギンザ・シックスに行った際にそこの案内の方に「このビルの裏にあるという「むぎとオリーブ」というラーメン屋さんは何処にあるの?」と聞いたそうです。

私はその話を聞いて目が点になりました。義母は「その方は親切で、ラーメン店に近いビルの出口を教えてくれて、出ると正面にあったのでラーメンを食べて来た」と言っていました。ギンザ・シックスのスタッフの方、義母が失礼なことを伺いましたが対応していただきありがとうございます。お返しで次に私が伺った際には、ギンザ・シックス内で食事をさせていただきます。

それでは今月のおすすめワインです。

北海道からは、藤野ワイナリーがリンゴで造るスパークリングワイン、シードル16年。札幌市の中心部から車で約30分強で、気軽に行くことができるワイナリー。亜硫酸塩(酸化防止剤)を最小限に抑え、無濾過であることと天然酵母で醸造する、より自然に寄り添うワイン作りを目指しています。アルコール度数6度と低めな為、アルコールに弱い方でもお楽しみいただけます。リンゴの爽やかさが楽しめるワインです。

長野県からは小布施(オブセ)ワイナリーのちゃぶ台ワイン16年。フランス産のアリカント・ブーシェ種を親に持つ日本の伝統的赤品種であるアリカント種を使用。このワインはイタリアやフランスでよく見かけるような、ワイナリー内の計り売りワインのイメージで造られました。適度に濃さのあるバランスの良いチャーミングな味わいで、テーブルではなく、ちゃぶ台に置いて、コップで家族や仲間と楽しく気軽に飲めるワインです。

フランス・ボルドー地方からは、サン・ジュリアン村の名門シャトー・タルボ14年。高騰しているブルゴーニュ地方に比べ、やっとボルドー地方の価格が落ち着いて来ました。しなやかで魅力的なサン・ジュリアン村の第4級格付け。年末に向けて今のうちに確保したいワインです。

ボルドーの白では、クロ・フロリデーヌの白14年。名醸造家、故ドュニ・デュブルデュー氏が所有するシャトーの一つ。氏はスキン・コンタクトや樽発酵、熟成など、現代的な手法を取り入れた先駆者。剪定などは全て手作業、有機肥料の使用や除草剤の不使用など、化学肥料などの使用を抑えています。ソーヴィニヨン・ブラン種とセミヨン種を主体に造られ、石灰質土壌の畑に由来する爽快な果実味、透き通るようなミネラルが特徴の白ワインです。

お値打ちボルドーでは、シャトー・ピュイグローの11年。銘醸『ル・パン』のティエンポン家が、ボルドー、コート・ド・フラン地区に所有するシャトー。1983年のファースト・ヴィンテージより評論家にも絶賛され、安定した品質と抜群のコストパフォーマンスで大人気のシャトーです。ボディは力強く、熟した赤い果実の豊満な果実味と、しっかりとした渋みがとてもバランスの良いワインとなっています。

ブルゴーニュ地方からは、リュリー村のシャトー・ダヴネイ白09年。8年熟成により飲み頃を迎えた、貴重なブルゴーニュの白。ニコラ・ポテル氏の下で白のスペシャリストとして名声を高めた、ファブリス・レンヌ氏が醸造に加わったことで、 今、評価を高めている注目の生産者です。09年らしい完熟したアプリコットの風味に、木樽由来のカスタードの上品な香りが合わさり、余韻まで長く楽しめます。

お値打ちブルゴーニュでは、ヴェルジェ社のマコン・ヴィラージュ16年。通常ヴェルジェのマコンで一番ベーシックなワインは、マコン・ヴィラージュ”テール・ド・ピエール”ですが、この年は雹が降り難しい年だったので選別を厳しくし、言わば上級品を格下げして出されたワインです。希望小売¥2.500のところ、特別価格での入荷です。

赤では、特級畑クロ・ド・ベーズの最大所有者としても知られる、ジュヴレ・シャンベルタン村の名手、ピエール・ダモワが造るACブルゴーニュの赤14年。ジュヴレ村のお隣、フィサン村やクーシェ村の樹齢40年のピノ・ノワール種を使用しており、村名クラスと言っても過言ではない、タンニンと果実味が重なった味わいが楽しめます。

南仏からは、ローヌ地方の頂点に立つギガル社のシャトーヌフ・デュ・パプの赤11年。ギガル社の創業は戦後間もない1946年。その後、わずか半世紀にして北部ローヌ最上の生産者へと大成長を遂げました。平均樹齢50年の葡萄を使用し、温度調節をしながら3週間の醸し発酵。3年間大樽で熟成。よく熟した赤い果実のアロマ、タンニンはこなれており、プラムのフレーバーがあります。複雑でリッチ、ボリューム豊かで、誰もが満足できる飲み心地のワインです。

ロラトワール・サン・マルタンが南仏ケラーヌ村で造る赤13年。畑の主となる部分は、ラストーの丘から200mあまりの、ケラーヌ村の北東にあります。栽培は農薬や化学肥料は使わず、ビオディナミ農法を実践。熟した果実味にスパイスの風味が合わさった、まさに理想のローヌワインで、ジビエ料理とは最適です。

ロワール地方からは、今注目の生産者ジョナタン・ディディエ・パヴィオのプイィ・フュメ16年。収量が激減し、「16年産は入荷しないのでは?」と思われたワインが数量限定入荷です。フュメ香(スモーキーな香り)と、澄みきった果実味で楽しませてくれるスタイルは、この年も健在。旨みの乗ったスモーク・サーモンに最適です。

お値打ちなロワール地方の白では、プイィ・フュメやサンセール村に程近いカンシー村の生産者トロテローの15年。粘土石灰質土壌のソーヴィニヨン・ブラン種は、豊富なミネラルに凝縮した果実味と柔らかな酸味とが調和し、爽やかな品種の個性と、複雑さが見事に表現された逸品です。

シャンパーニュ地方からはJ・コンテのブリュット。高騰していくシャンパーニュで、古木のピノ・ノワール種50%、ピノ・ムニエ種35%と、黒葡萄主体で造られたふくよかで、お得なシャンパンを見つけました。泡立ち細かなクリーミーな口当たりに心地良い酸味。こなれた味わいで複雑さがあり、この価格では驚きの上質な味わいが楽しめます。

次はイタリアからのお得な泡、アントニーニ・チェレーザ社のスプマンテ。実はこのスパークリング、当社で人気のスプマンテ「マスティオ・デラ・ロッジア」がメーカー欠品し、代替で取ったのですが、試飲をすると活気のある泡と爽やかな果実味で、こちらも定番化に決定。一度お客さまに紹介してみようと思いオススメに入れてみました。

スペインからフルボディタイプの赤で、アタラヤ社の最上級品のアラヤ15年。ステンレスタンクで27度以下に保ちながら発酵、マロラクティック発酵は樽で行います。熟成はフレンチオークとアメリカンオークのバリック樽で15ヶ月後、 ろ過も清澄もせず瓶詰めします。ガルナッチャ・ティントレラ種のポテンシャルの全てがこのワインに詰まっています。濃くて強いフルボディワインがお好きな方にお薦めしたいワインです。

ドイツのモーゼル地区からプリュム社のリースリング種で、トロッケン(辛口)タイプの14年。プリュムは、モーゼル川沿いの険しい傾斜の土地に葡萄畑を作った先駆者の一人で、何世代にも渡り近代的手法で高品質なワインを生産してます。粘板岩土壌の土壌からの、フルーティで華やかな芳香をもったワインです。辛口でも果実味が豊かで、酸とのバランスの取れた爽やかな味わいが楽しめます。

アメリカ、カリフォルニア州のノース・コーストからボドキン社のソーヴィニヨン・ブラン14年。シェークスピアの史劇「ヘンリー5世」にちなみ、ボドキン(矢じりの古語)の名を冠した気鋭のワイナリーです。醸造家のクリストファー・クリステンセン氏はスタンフォード大学を卒業後、20代の若さでメドロック・エイムズにて醸造家として活躍する傍ら、2011年より自らのブランドで、繊細な食事にも調和するな上品なソーヴィニヨン・ブラン種の白を造り始めました。ハーブのように爽やかで、果実味の凝縮感の強い仕上がりになっています。

次は近年注目される、東欧からの白。1450年創業のクロアチアの老舗ワイナリー・イロチュキ・ポドゥルミが、クロアチア原産のグラシェヴィーナ種で造られた辛口白ワイン。今や世界標準となったドライアイスや窒素ガスで酸化を防ぎ、ステンレスタンクによる醸造でみずみずしい果実味と爽やかさがあり、魚介類は勿論、鶏肉や豚肉料理にも調和する、ふくよかさも楽しめます。

今月は当社では珍しい清酒のお薦め。仏・ロワール地方でワインを造っている新井順子女史が、杜氏として仕込んだ酒。熊本震災の復興に少しでも役立てばとの思いを込めて熊本の米を使用し、地元茨城の蔵元と造りました。「順子・純米大吟醸・吟のさと」は2種類あり、通常のヤブタ式搾り器で搾った物と、もろみを布袋に入れて、袋をぶら下げ搾った、袋吊りの二種。ヤブタ搾りと、袋吊りの飲み比べはとっても楽しめました。

食品からは、毎年秋に入荷するフランス産のとてもお得な、マセズ社のトリュフチョコです。高価なトリュフ・チョコが500gも入って、この価格は驚きです。味も量も大満足いただけると思いますので、まだ召しあがったことがない方はぜひお試しください! 食後に濃いめに入れたお茶と共に、このチョコを味わって頂くと、私はちょっとゴージャスな気分に浸れます。小分けにして、おすそ分けしても喜ばれると思います。

2017年 10月

9月の定休日に、店内の空調設備の点検・洗浄をしました。

当社が扱っているのはワインですから当然、空調には気を使います。お客様の店舗部分は1階だけですが、地下と2階は商品庫で、業務用エアコンが全部で6台。エアコンとセットの熱交換器も5台。この11台と、屋外の室外機4台も洗浄してもらいました。

店を移転して10年目。この場所は元、大手ハンバーガー・チェーンの店が入っていた為、各階には大きな業務用エアコンが2台づつ設置され、今は熱の出る厨房が無いので元の機材のままで十分だろうと、そのままで営業しました。

しかし夏場は思ったように室温が下がらず、その後に空調機器の清掃を実施しましたが効果も感じられず、結局は1階のエアコン2台と室外機を交換してやっと店内温度が下がりました。しかし、地下と2階部分は元の設備のままなので、いつかは手を付けなければ、と思っていました。

今回は清掃だけでなく今の空調設備の状態も判断してくれるような業者さんを探していると、昨年のエアコン洗浄3,000台、エアコンの修理、施工100台という業者さんを見つけました。ホームページから見積もり依頼をすると、誠実そうな営業の方が来て店の設備を見に来ました。その方の話しを聞いていて、空調の専門家らしい信頼感があったので、私は直ぐに洗浄を依頼しました。

そして当日、その営業担当の方と他6人の計7名が、揃いのユニフォームを着て朝8:30に集合して作業が始まりました。前回の清掃時も私は立ち会いましたが、天井に埋め込まれたエアコンのボディを外し、ビニールで囲んでから掃除機でフィルターのゴミを吸い取る作業でした。

しかし今回はボディだけでなく、本体を分解しプロペラやモーターを外してエアコン内部のラジエターをむき出しにします。その周りをビニールで囲い、車の洗車に使うような高圧ポンプで洗剤を噴射して汚れを落とします。本来ラジエターはアルミ地金の色でシルバーなはずですが、うちのは油と埃で真っ黒。これでは空気がラジエターを通過できず、冷却効果が出なかったのが一目でわかりました。

作業をした方が、「この汚れは油なので、以前のハンバーガー店の汚れだろう」と言っていました。噴射した洗浄水はタールの様に真っ黒で、ビニールの中を通ってバケツにどんどん溜まります。外されたフィルターやプロペラは、大きな桶の中で丁寧に洗います。こうした流れ作業が夕方の5時過ぎまで続き、全ての機械の清掃が終わりました。

そして恐る恐る、地下と2階に設置された古い機械の寿命を聞いたところ、今回の洗浄でもう何年かは使えるだろうと言われました。業務用のエアコンは当然高額で、それを何台も交換すると多分2~300万円にはなるでしょう。私は後2~3年は頑張ってね、と機械にお願いしました。

そして今回依頼した、日美装建さんのプロの仕事には感謝しました。当社の主な納品先であるレストランさんは、厨房があり油汚れも多いと思います。フィルター、ラジエーターが詰まると、冷気が出なくなり、その結果モーターは止まることなく回り続ける為に、故障してしまうそうです。時々、空調の点検、洗浄をお薦めします。

それでは今月のお勧めワインです。

今年もヌーヴォーの季節がやってきました。シャトー・カンボン(M.ラピエール)ボージョレ・ヌーヴォー。有機栽培ボージョレ・ヌーヴォーの代表格シャトー・カンボンが昨年よりもお安くなりご紹介です。雑味の無いきれいな味わいは故ラピエール氏の伝統をしっかりと受け継いでいます。

今年の新顔は、ジョヴェール(ジュンコ)ボージョレ・ヴィラージュヌーヴォー。元ドメーヌ・ボワルカのオーナーだった新井順子女史がブルイィで葡萄の摘み取りから醸造まで丹念に行います。急勾配な畑、ポン・デュ・ディアブルからの出汁系旨みのきいたヌーヴォーをお楽しみください。

イタリアからは、大人気ファルネーゼのノヴェッロ(新酒)。ボージョレとノヴェッロの違いはノヴェッロはイタリア全土で造られ、品種も規定がないので、その生産者の個性、地域性が反映されています。南イタリアの太陽の恵みをたっぷりと感じられる、濃厚な果実の味わい。新酒ならではのフレッシュ感と葡萄の凝縮によるフルーティさがマッチして、飲みやすいけれど飲み応えのある味わいとなっており、それゆえ、ワイン初心者から幅広い層に人気があります。

フランス・ブルゴーニュ地方シャトー・ド・サントネが造るメルキュレ村の赤。除草剤に頼らず耕作するとともに、草生栽培を施して土壌の微生物層を活性化するなど、ビオロジック栽培を実践しています。また、ワイン醸造は伝統的な手法を取りながらも、空気式圧搾機や自動ピジャージュなど、常に最新の設備を投入し、テロワールの特徴を最大限引き出す醸造が行われています。グレート・ヴィンテージの2010年産。熟成感が程良い、エレガントなワインです。

南仏からは最高峰のシャトーヌフ・デュ・パプを造るジャナスがヴィオニエ種100%で造る白。2015年はローヌ地方はグレートヴィンテージで、ボリュームのある果実味があり、ワインアドヴォケイト誌で90点の高評価。凝縮感と風味の豊かさは同じヴィオニエ種で造られるコンドリューを彷彿とさせ、この価格では驚きの上質な味わいです。

ロワール地方からは、アルフォンス・メロ・サンセール・ブラン。ロワール川上流域でビオディナミ(自然農法)を実践する生産者で、凝縮と樽熟成による複雑さが楽しめます。このワインが僅かにラベル不良があり特別価格となりました。次の16年は雹害のため、この地域は収穫量が少なく価格が高騰しています。中身勝負というお客さまにもってこいのワインです。

同じロワール地方でマルク・ブレディフのヴーヴレ村の白。マルク・ブレディフは、1893年エルネスト・ブレディフ氏によって創設されました。1980年にパトリック・ラドゥセット男爵に引き継がれ、これまでの伝統に新たな技術を導入し飛躍的な発展を遂げています。完熟したシュナン・ブラン種からの蜜のような香り、柔らかい果実味と強すぎない甘みが絶妙なバランスで、まったりと飲みたい時におすすめです。

アルザス地方からは老舗ワイナリー、ヒューゲル社が造るお手頃な白ワイン。アルザスの高貴品種を組み合わせて造られたジョンティは、 ゲヴュルツトラミネール種、ピノ・グリ種、リースリング種、ミュスカ種、シルヴァネール種の品種の個性を見事に調和させた逸品。輸入元希望小売価格2,100円が特別価格で入荷しました。

イタリアからはバローネ・ピッツィーニのスパークリング・ワイン、フランチャコルタ。シャンパーニュを凌駕するほどの上質なスパークリングワインを産出するフランチャコルタから、30ヶ月の瓶熟成を経て造られた極辛口のブリュット・ナチュレ。ワイナリーは環境に配慮した有機栽培に力を注ぎ、葡萄本来の個性を味わうワイン造りをすすめており、年々評価を高めています。2013年産はシャルドネ種60%とピノ・ネロ種40%のブレンドで、構造がしっかりとした、風味豊かな味わいになっています。

イタリアの赤では、ラ・ソガーラのコミス。アンナベルタ社の別ブランドであるソガーラは、ヴェネト州ヴェローナの方言で”ソゲ”という言葉からきています。これは畑で葡萄の枝を束ねるために使っていたロープを指します。昔と現代を繋ぐ、また大切な友人との絆を繋ぐという意味が込められています。コルヴィーナ種、コルヴィノーネ種、カベルネ・ソーヴィニヨン種の3品種のブレンドが、バランスよくまとまり、飲みごろのおいしさが楽しめます。

次は超お得な、でかボトル入りワイン。エミリア・ロマーニャ州産の葡萄から造られる、モンテベッロ・サンジョベーゼ(赤)と、トレビアーノ(白)。2本分の1,500mlボトルで、香り高くバランスの良い赤と白が超特価980円!! この価格は見逃せません。BBQでもクッキング用でもこれ一本で大丈夫。質も量も兼ね備えたデイリーワインです。

イタリア中部のウンブリア州で有機栽培と、自然派の醸造を実践しているバローニ・カンパニーノ。ロッソ・ダ・ターヴォラはここのワインで入門編の赤。世界遺産アッシジの裏山で有機栽培の葡萄から造る風味豊かなワインですが、定価2、200円の品が、輸入元で扱いをやめる為に終売特価でご案内です。完熟した葡萄からの旨みと、果実味の豊かさが印象的な一品です。

シチリア州からはヴィニエティ・ザブがグリッロ種から造る白。グリッロ種はマルサラ酒用の葡萄でしたが、近年のクリーンな醸造法により、現在ではシチリアを代表する白ワイン用品種となりました。サンブーカのアランチョ湖周辺の畑からのグリッロ種をやわらかくプレスした後、香りを引き出すために低温で発酵。熟成はステンレスタンクで行います。華やかな果実の香りに、フレッシュでありながら厚みがあり、後味には心地よいほろ苦さを感じます。

スペインからはボデガス・ランガの白。ここでは代々受け継がれた畑を大切に管理しながら、1867年に小さな醸造蔵を建て、ワイン造りを開始しました。こちらのπ(パイ)は、標高900メートルの高地畑で栽培されている、樹齢60~80年の古木ガルナッチャ・ブランカ種を使用。凝縮した果実味、落ち着いた酸、豊かなミネラル感でなめらかな口当たりです。スモーキーでミネラリーな余韻が続き、心身ともに解きほぐされるような感覚を楽しめます。このワイン、個人的には「ぎょうざ」に最適と思っています。皆さんも一度、スペインのガルナッチャ種白と、ぎょうざをお試しください。

スペインで力強い赤を生む、トロ地区。ここで人気の生産者ボデガス・マツのエル・ピカロ。「マツ」という名は、日本語の「待つ、松」からわびさびをイメージしてつけた名前で、日本人にはとても親しみやすい生産者名です。このエル・ピカロはバリックで発酵し5ヶ月ほど樽熟成したタイプ。若々しい青年を表すラベルの通り、豊かな果実味に満ち溢れ、ジューシーな香りと力強い味わいの赤ワインです。

ドイツからは20年以上熟成した古酒です。廃業したモーゼル・シルト社が持っていた94年産白が当時と変わらない価格で入荷しました。エルデン村で最高の畑、トレプヒェンの斜度は約75%、モーゼル渓谷の中でも最も険しい斜面に広がっています。畑の向きは南南東。さらに樹齢の高い葡萄がワインに独特の個性とスタイルを与えています。今回は完熟を待って遅摘みしたシュペートレーゼ規格のワインを、甘さ控えめにに仕上げた「ハルプ・トロッケン」タイプです。

次は近年、注目されるポルトガルから、ソラール・ドス・ロボスの白。産地はポルトガル南部のアレンテージョ地方で、2002年に設立された若いワイナリーです。父から引き継いだ、娘のフィリパ女史が、最新の技術と女性ならではの感性で品質の向上に努めています。品種は地元品種と、仏系品種の計4種のブレンド。このブレンドが上出来で、柑橘風味の切れの良い辛口ですが、完熟した葡萄の果実味が感じられ、余韻も楽しめます。女性らしいイラスト風な可愛いラベルも、とってもキュート。

こちらも注目の産地、南アフリカから、フェアヴァレー社が造るピノタージュ種の赤。元の小作人である、黒人労働者達が共同で独立し、誕生した初のワイナリー。アパルトヘイト撤廃後の象徴とも言える、革新的なワイナリーが造るコスパの高い赤ワイン。南アフリカのオリジナル品種であるピノタージュ種100%で、豊かな果実味とスパイシーさが楽しめます。空気に触れさせることで全体のトーンが落ち着き、まとまり感が生まれるので、時間をかけて楽しむこともできます。

今度は大人気チリ産のエスピノ・ピノ・ノワール。フランスの辛口評価本「クラスマン」誌が、最高の3つ星評価を与えるブルゴーニュの生産者はわずかに15軒。その一人である、シャブリ地区のフェーヴル氏がチリで造るワインです。全体の40%はグリーンハーベストで収量制限し、完熟した集約のある葡萄に仕上げます。発酵後は、一部をフレンチオーク樽で熟成させますが、多くはタンクによる熟成。収穫も16年産と若いですが、香りにキノコや腐葉土を思わせる熟成香が感じられます。チリ・ワインでも、フランス人が造ると、何故かチリっぽく無く、フランス風に感じてしまいます。

次は食品からで、ギリシャのオリーブ・オイル2種類。この二種はよくあるオリーブの品種違いではなく、海側の産地と、山側の産地で区別しています。香り高く爽やかな味わいの海側と、ふくよかでコクのある山側は、 お料理やお好みで使い分けできます。良質で知られるギリシャのオリーブですが、ネックは高価なお値段。そんな中で、750mlで1,500円は絶対おすすめです! サラダやマリネには海側オリーブを使い、お肉や魚に合わせるなら山側がお薦めです。またこの価格ですので、揚げ物やいため物のオイルに使うと、上質な仕上がりになります。

最後は北海道の「風土火水」のお味噌。原料は北海道十勝の有機大豆に、無農薬・無化学肥料栽培したななつぼし玄米と、天日塩。この最高の原料を、日本で最高の自然派味噌の造り手、福井県のマルカワ味噌に依頼しました。1年間かけて仕込まれた、本物の味噌をお試しください。

2017年 9月

今月はお盆休みで家内の実家に行ったお話。

今や、東京の観光名所となった銀座6丁目の新商業施設「ギンザ・シックス」に私も行って来ました。ここに入っている海外の有名ブランド品には興味がありませんが、地下の食品売り場に新しいスタイルのワインや、日本酒のショップが気になっていました。館内に入るとお盆時期だからでしょうか、地下の食品街も大変賑わっています。長野のワイナリー直営店では、自社ワインだけではなく自家製のジャムや食品類が並び、新潟の清酒メーカーのショップでは、日本酒以外に麹を使った甘酒、塩麹、酒粕を使ったスイーツが並んでいます。そして、どの店でも買い物をされているお客様は殆どが女性でした。

そして屋上の庭園とウォーター・ガーデンを散歩して、時刻は昼過ぎ。家内がここでランチをしましょうと言い、レストラン街に行くと、どのお店も待ちのお客様が店の外まで並んでいます。何軒ものメニューを見ましたが、どこも驚くような銀座価格。親子丼が3,000円以上しているのを見て、私は「地下のパン屋さんでパンを買って、ベンチで座って食べようや」と提案。もちろん妻は反対で、二人の間に険悪なムードが広がります。

そこで妥協案は、このビルを出て近所の(安めの)お店でランチを食べようという事になり、見つけたのが店外に数人並んでいる小さなお店。店名「むぎとオリーブ」からスパゲティのお店と思いきや、ラーメン屋さんでした。5分程順番待ちの間に家内がスマホで検索すると、このお店はミシュラン誌にも載っている無化調(ムカチョウ・化学調味料無添加)ラーメンの有名店でした。

家内は醤油味の「鶏SOBA(トリソバ)」880円、私は100円アップの鶏SOBA大盛りを頼みます。ラーメン店らしからぬ店名から女性受けを狙った優しい味と思いきや、スープは醤油の味がビシッと決まり、ちじれの無いストレート麺はアルデンテのスパゲティを思わせるハリを持った仕上がり。安くても良質な味わいに満たされ、銀座のランチは大成功でした。

これには後日談があり、家内が東京の友人と会った際に「ギンザ・シックス」の話しになったそうです。多分家内は、「うちの旦那はケチで、ここは高いから外で食べよう」とでも言ったのでしょう。すると元同僚の女性は、私もここは高いと思って外に出たら、人が並んでいたので入った店が、同じ「むぎとオリーブ」だったそうです。皆さんにもお薦めします、「ギンザ・シックス」で買い物の後にここで食事が出来ない人は、このビル裏側の正面にあるビル1階にある「むぎとオリーブ」です。数人並んでいても回転が良く、それほど待たずに食べられると思います。

それでは今月のおすすめワインです。

千歳ワイナリーが余市産ケルナー種から造る白16年。余市町登地区・木村農園産のケルナー種でも、樹齢20年以上の区画が中心に造られています。2017年7月に山梨県で開催された「日本ワインコンクール」の審査会において、ここのケルナー2015年産が、欧州系品種の白部門にて金賞を受賞しました。同時に、この2016年産も同部門で銅賞を受賞しました。北海道を代表するミネラル豊かな辛口白ワインです。

赤では、余市町にある平川ワイナリーのセレニテ赤15年。主体品種であるレゲント種は、ファルツ地方ジーベルディンゲンの連邦ぶどう交配研究所で、ジルヴァーナー種とミュラー・トゥルガウ種の交配種に、さらにシャンボーソン種をかけ合わせたもの。特定のカビ菌に耐性があり、ビオワインの生産に向く品種です。ふくよかでキメ細かなタンニンが混じり合った複雑な味わいで、北海道の濃い赤ワインを探されている方におすすめです。

次は新しく取り扱いを始めた滋賀県のヒトミワイナリーから、白葡萄を原料に果汁と種皮をしばらく漬込む『醸し』という製法で造られたデラオレンジ。色素が抽出され、オレンジ色のような色調になる事からオレンジワインと呼ばれています。山形県産のデラウェア種から造られたワインは、はちみつのようなデラウェア種の香りのニュアンスを感じる個性豊かなワインです。

ブルゴーニュ地方からは、シャトー・ド・サントネのオート・コート・ド・ボーヌの白15年。除草剤に頼らず耕作するとともに、草生栽培を施して土壌の微生物層を活性化するなど、ビオロジック栽培を実践しています。また、ワイン醸造は伝統的な手法を取りながらも、空気式圧搾機や自動ピジャージュなど、つねに最新の設備を投入し、テロワールの特徴を最大限引き出す醸造が行われています。ミネラル豊かで凝縮感のある辛口ワインです。

赤では、ジュリエット・シュニュが造るブルゴーニュ・ルージュでモントル・キュ09年。暑かった09年を表現するように果実味たっぷりで、8年を経て熟成し、旨みと香りが複雑に絡み合います。今まさに飲みごろのブルゴーニュをお楽しみください。

アルザス地方からはマルク・クレイデンヴァイツのアンドロー村のリースリング15年。クレイデンヴァイツ氏は早い時期からビオディナミ農法に取り組んできました。1989年よりビオディナミの称号であるデメテールが認定されています。花崗岩質土壌で繊細な味わいとリッチな味わいを醸し出しています。林檎のような香りと、果実味の凝縮感が楽しめます。

南仏からはサン・シニアン地区のパン・デ・マルグリットが造るルー・ガベル15年。ここはラングドック地方にあるベルルーという人口180人弱の小さな村で営む家族経営のワイナリー。所有する10ヘクタールの畑では基本的に農薬を使用しない有機栽培を実践しており、サン・シニアンのテロワールをそのまま表現したいとの思いから、樽熟成は行わず、酸化防止剤も必要最低限に止め、ピュアな果実感を表現したワイン。滑らかな口当たりで、凝縮した果実味と旨味を伴ったスパイスの複雑さが楽しめます。

同じ南仏からルーション地方のワイン、ヤエの赤。フランスのルーション地方のまだ知られていないワインの魅力をカジュアルに知ってもらいたいという思いから生まれた、輸入元オーデックスがルーション地方に住むジャン・プラ氏と協力してブレンドしたオリジナルワイン。南仏らしいふくよかな果実味とスパイス感、そして09年産から11年産の葡萄のブレンドにより複雑で程良い熟成感があります。コスト・パフォーマンスに優れたワインです。

イタリアからは、トスカーナの老舗ワイナリー、ヴィッラ・プッチーニ社がヴェネト州のシャルドネ種で造る白。柑橘類やメロン、リンゴなどのフルーティな香りがあり、生き生きとしたフレッシュな果実味が楽しめます。輸入元希望小売価格1,200円が特別価格で入荷しました。

白ではウマニ・ロンキ社を代表する有名白ワイン、カサル・ディ・セッラ。このヴェルディッキオ種はあまり冷やしすぎないで”チョット温いかな~”ぐらいがベストな冷たさです。ふくよかな果実実に一本芯の通った味筋。魚介はもちろんコールドミートでも十分お楽しみ頂ける味わいです。

シチリア州からムルゴ社のエトナ・ロッソ15年。エトナ火山の麓、標高500~550mにあり非常に冷涼かつ雨の少ない気候のため、葡萄はゆっくり成熟し、果実味と酸どちらも豊かに育ちます。発酵後に滓引きし、エトナ地方の伝統的な栗の樹を使った樽(30~130hl)で熟成させます。ピノ・ノワール種、ガメイ種を思わせる爽やかな赤ワインです。

サルディーニャ島のセッラ&モスカ社が造るカンノナウ・ディ・サルディーニャ。軽やかなのに旨みがあり、しかも香りが素晴らしいワインで、デイリーワインに最適な一本。レゼルヴァ規格の熟成タイプは先のワインを二回りほど複雑で濃くした感じです。5年を経てキノコや、腐葉土などの熟成香が楽しめます。

MGM・モンド・デル・ヴィーノ社のイル・サローネ14年。お手頃価格で美味しいワインを造るというコンセプトの元、ワイン法を無視するかのようにイタリアの複数の州のワインをブレンド、しかもイタリア地場葡萄品種。濃くてはっきりとした風味は秋の季節にピッタリです。

スペインからはマリオーナ社のモスカテル/ソーヴィニヨン・ブラン16年。輸入元の品切れの為ご迷惑をおかけしていましたワインがやっと入荷しました。華やかなマスカットの香りなのに辛口、この意外な組み合わせが、逆に面白い風味を醸し出してくれます。

オーストリアからは、グリューバーが造るグリーン・ペップ16年。この国を代表するグリューナー・フェルトリーナー種100%で造られた白ワイン。「キュートな」を意味するペップというワイン名が正しく当てはまるような白。フレッシュな果実味、酸味とミネラル感の心地良さがあり、親しみ易い味わいです。

ドイツからはゼルバッハ・オスター社のスパークリング・ワイン。350年の歴史を持つ名門が造る限定生産のゼクトは、2008年産のピノ・ブラン種、ピノ・ノワール種、ピノ・ムニエ種の3つのピノをブレンドしており、瓶内熟成期間が72ヵ月という贅沢な造りをしています。泡立ちはきめ細かくクリーミーで、複雑さと味わい深さがあります。この価格は間違いなくお買い得!

ドイツ・モーゼル地方で評価の高い生産者フリッツ・ハークのアウスレーゼ規格でゴールドカプセルの熟成した04年産。ブラウネンベルグ村のユッファー・ゾンネンウーア畑の特徴は、完熟しても豊かな酸味を持ち甘く感じないことです。アウスレーゼであっても、料理に合わせられるようなイメージで、アウスレーゼ・ゴールドカプセルのようにトロリとしたものでも、ミネラルと酸味が豊かです。オーナーのオリヴァー氏はアジアを訪れ、気候、料理共にドイツワインに合っている、特に日本食が一番と感じたそうです。

カリフォルニアからはヴァレンタインのメルロ種で熟成した04年産。ソノマの北端からわずか500メートルに位置するメンドシーノのエコー・ヴァレー産です。ヴァレンタイン氏は、この盆地が生み出す昼夜の寒暖差を利用して凝縮感とエレガンスを併せ持つ高品質な葡萄を作り続けてきました。このワインは、2015年にこの世を去ったヴァレンタイン氏のプライベート・ストック。13年を経た熟成感を楽しめる飲み頃ワインです。

ワインの次は蒸留酒、吹上焼酎が造る風憚(フウタン)の芋麹仕込み25%。芋焼酎の本場、鹿児島で米麹を使わずに芋のみで仕込んだ珍しい焼酎。原料には生育が難しく鹿児島でもあまり生産されていない栗黄金を100%使用。芋の風味が際立つような味わいと思いきや芋の臭みは全く無く、思わず呑まさるほど澄んだきれいな味わいです。

食品では、スペインのアンドレス社のピコス。日本の乾パンの様な軽い食感で喉にも詰まらず、ほんのり塩味と小麦の味が楽しめます。ワインのおつまみは濃い味が多いので、箸休め的な役割を果たしてくれます。人で例えると、口数は少ないけど、みんなの話を聞いて、受け止めてくれるような存在!? 必要不可欠的なおつまみです! 現地では、名産の生ハムを巻いておつまみにしています。

イタリアからは最高のワイナリー、テヌータ・サン・グイド・サッシカイアが作るエキストラ・ヴァージン・オリーブ・オイル。グリーン・オリーブの鮮烈な香りと心地よい苦み、まさにトスカーナ州を代表するようなインパクトのある風味で味わった人を虜にしてしまいます。数量限定の入荷です。お見逃しなく。

「サッポロッピー」という名前ありきで始まったノン・アルコール・ドリンク。地元を愛する札幌人による、札幌人への飲み物で、 ホッピーの札幌版です。うんちくなしに、焼酎やハードリカーで割って、お気軽にアルコールを楽しみたい方に! また、そのままで、大人のノンアルコールドリンクとしても、おススメです。ラベルが白と、黒の2種類あり、柑橘主体の爽やかな白と、少しスモーキーさがある黒ラベルがございます。

2017年 8月

今月は少し堅いお話し。

7月中旬、新聞記事で著作権協会(ジャスラック)が店内のBGM用に音楽を無断使用したとして札幌の理容店を提訴したとありました。実は当店にも2~3年前、著作権協会から同様の通達が届き、それまでレコード店で購入したCDを店内で聞く事に使用料が発生するとは知りませんでした。

詳しい方に聞くと個人で音楽を聞くのと違って、営業用で音楽を使うと使用料が発生すると言われました。そして著作権協会からの請求を払わずにいると提訴されてしまうと聞き、当店では著作権協会に加入していない安価な有線放送(月額690円)と契約をして、この事を著作権協会に伝えると使用料の請求は止まりました。その後は営業時間中にその有線放送を流し、閉店後に1人で音楽を聴きたい時は好きなCDを聴く形で、使い分けて音楽を楽しんでいます。

昔レコードを聴いていた頃は、今より面倒で、雑音も多く、同じ個所を何度も聞こうとすると、レコード針の上げ下げが大変でした。CDになってクリアな音で、音飛びも無く、リピートもボタン一つで何度でも出来て夢のようです。しかし完璧なコピー品が簡単に出来るようになり、新たなルールが必要になったのだと思います。良い音で、簡単に音楽が聴けるようなったのですから、新しいルールに沿って楽しむ事が必要なのでしょう。


それでは、今月のお薦めワインです。

栃木県のココファームの、こことある 余市ツヴァイゲルト 15年。こことあるシリーズは自然の味わいを生かした適地適品種のワインです。余市登地区の中川農園と小西農園の葡萄を、10R(トアール)ワイナリーの醸造家ブルース・ガットラヴ氏が、北海道岩見沢にて野生酵母で醗酵させました。エレガントさと奥深さのあるこの葡萄の実力が凝縮されています。後味に白ワインを思わせるニュアンスがあり、魚料理にも合わせられる赤ワインです。


次はフランス・ボルドー地方から、シャトー・ド・フランのセリジエール06年。サン・テミリオン村のトップシャトーであるシュヴァル・ブランとアンジェリュスのオーナー同士が、手を組んで生まれたシャトー・ド・フランのスペシャル・キュヴェがセリジエールです。通常では3,000円前後で販売されているものをお得な価格で見つけました。凝縮したメルロ種の深みがある果実味に、新樽比率の高いオーク樽からの品のある香ばしさが合わさり、スケール感のあるワインに仕上がっています。


ブルゴーニュ地方からは、アンリ・ボワイヨのブルゴーニュ・ブラン13年。ボワイヨ家は1630年からの記録に残るヴォルネイ村で最も古い家柄の一つで、ドメーヌの創業は1885年。現在の当主アンリ・ボワイヨ氏は5代目で、その息子も06年からドメーヌの仕事に参加しています。リュットレゾネ(減農薬農法)を実践し、出来るだけ化学物質の使用を抑えています。自社畑でなくても果実味の凝縮感、樽由来のバニラ香が合わさった素晴らしい白ワインです。


北のアルザス地方からは、シュルンバジェのリースリングでプランス・アベ14年。1810年創業の伝統あるドメーヌで、重たさのないリッチさがこのドメーヌのスタイル。現在は7代目アラン・ベイドン・シュルンバジェが当主。栽培べてビオロジック(一部はビオディナミ)です。130ヘクタールもある自社畑の約半分はグラン・クリュで、スタンダード・キュヴェにも15年未満のグラン・クリュの若木が3~4割も格下げして使用されています。凝縮感のある果実味とミネラル、柑橘類のような香りとキレのある酸が、暑い夏にぴったりです。


南仏からは自然派の生産者シャトー・ルジエールのグラン・ド・ニュヌ・ブラン14年。ミネラルと果実味があふれる白ワインで、骨格がしっかりとしているのでお魚系のお食事と相性が抜群です。また、フランスのワイン誌ベタンヌ・エ・ソーヴではこの蔵元を「今後、このドメーヌがこの地域の白ワインとして頂点に近づいていると思っています」と高評価。ルーサンヌ種他のブレンドで、完熟した果実味とバランス良さを持った、見逃せない逸品です。


今注目の、シュド・ウエスト地方からはジュランソン村のクロ・ラペールで上級品ヴィタージュ・ヴィエイユ08年。有機栽培で、古木のグロ・マンサン種他からの白は、完熟したふくよかさのある果実味に、味わいを引き締める心地よい酸味とミネラル感が伸びていく、奥行と広がりを持った熟成白ワイン。9年の熟成期間で複雑さが生まれ、ゆっくりと時間をかけて楽しむことができます。希望小売3,200円が売り切りの特価で大変お買い得となりました。


イタリア・ヴェネト州からはカ・ルガーテが造るソアヴェ・クラシコのサン・ミケーレ15年。2000年から化学肥料の使用を止め、牛糞、オーガニック・コンポストによる土、植物由来のミネラルの肥料を使用しています。最初はレモンのような柑橘系の爽やかな香りがありますが、次第に熟した果実や蜜のような凝縮感ある香りへと変化していきます。一般的ながぶ飲み用ワインのイメージとは対照的に、味わいの凝縮度が高く、さわやかなソアヴェの特徴が感じられつつも、しっかりと味わえるスタイルとなっています。


アブルッツオ州で大人気、ファルネーゼ社が造るドン・カミッロ15年。サンジョベーゼ種85%、カベルネ・ソーヴィニヨン種15%からのワインを、贅沢に小樽で3~4ヶ月だけ熟成させ赤は、完熟した果実感とスパイスを感じさせるアロマに、バランスのとれた適度な樽香が調和して、複雑な風味を出しています。凝縮された上品なタンニンがあり、サンジョベーゼ種のもたらすふくよかな果実味と、カベルネ種の骨格を引き出した、パワフルで魅力のあるモダンスタイルのワインです。


スペイン・ナヴァラ地区で、新潮流として注目されているビーニャ・ソルサルが造るシャルドネ16年。有機栽培を実践し、畑を区画ごとに細分化するなど、テロワールも大事にしており、醸造においても近代醸造技術を思慮深く利用し、新樽や参加防止剤の使用を極力避けています。フレッシュかつ上品なバランスの良い味わいなので、アペリティフから前菜、魚料理まで、幅広く合わせられます。優しい味わいがお好きな方に飲んでもらいたい逸品です。


スペイン中央部ラ・マンチャ地区からオチョ・イ・メディオのマルベック16年。濃い赤のイメージを持つマルベック種ですが、良い意味で期待を裏切ってくれるバランスの良いスペイン・ワイン。長野のワイン名産地、桔梗ヶ原と同じくらいの標高(850m)で育まれた葡萄は、酸と果実味の調和に優れ、旨みのある飲み飽きのしないタイプ。マルベック種の新たな名産地となる可能性を感じさせるワインでした。


オーストリアからはハイサン・ノイマンが造る白ゲミシュター・ザッツのヌースベアク15年。今、世界中ではカベルネ種、シャルドネ種等の単一葡萄品種のワインが主流ですが、ゲミシュター・ザッツはオーストリアで造られる混植・混醸のワインです。つまり、畑で複数の品種を栽培し、醸造も複数の葡萄を同時に行う昔ながらの製法です。グリューナー・フェルトリーナー種、他7品種からの複雑で百花繚乱の様な味わいは、きっとワインに新たな楽しみをもたらしてくれること間違いなしです。


ドイツからはトップ生産者の仲間入りを果たしたシュロス・リーザーの白。モーゼル地方で最上の畑であるヴェレン村のゾンネンウーア(日時計)畑からのワイン。リースリング種からのペトロール香、ビッグヴィンテージである15年の豊かな酸味とミネラルが凝縮したワインは、10年、20年と熟成が可能なワインです。

ポルトガルのアレンテージョ地区からは日常飲むのにおすすめの赤ワイン。生産者はアレクシャンドレ・レウヴァスで、アトランティコ・レセルヴァ14年。安定した品質の高い造りで、世界各国のコンクールで金賞を受賞しています。地元葡萄にカベルネ種をブレンドした赤をフレンチとアメリカンオーク樽で熟成させることで、オーク樽由来の複雑なアロマが生まれ、味わいにも厚みをもたらし、トップのインパクトから余韻まで楽しむことができます。


アメリカからは抜群のコストパフォーマンスを誇る人気ブランド、キャッスル・ロックのピノ・ノワール12年。あえて自社畑や醸造設備を持たず、優れた畑および高い醸造技術を持つワイナリー等と契約することにより、効率的に生産拠点を広げています。カーネロス地区の豊かな陽光に、霧と冷たい海風が加わるこの地区は、カリフォルニアらしい豊かな果実味と樽の風味に、エレガントな酸味、適度に熟したタンニンが調和して、絶妙のバランス。ほんのりとしたスパイシーさが味わいを引き締め、食欲をそそります。5年を経て少し熟成感も開いて来た、コスパの優れたワインです。


現在、コストパフォーマンスで最も注目度の高い東ヨーロッパのルーマニアから、ドメーニレ・サハティーニのピノ・ノワール14年。ワイナリーと畑のあるムンテニア地方はブルゴーニュ地方と同じような気候であることから良質なピノ・ノワール種が産出され、果実味と酸味のバランスも良く、少し渋みと土っぽさを感じさせるコート・ド・ボーヌ地区のピノを彷彿とさせる味わいです。タンクで発酵、熟成させ、木樽無しでこのバランスの良さですから驚きます。ここで樽熟成させたものを味わってみたいと思うのは、私だけではないでしょう。


ハードリカーからは、シボーナ社のマディラ・フィニッシュのグラッパ。暑い夏にこそ度数の強いグラッパで暑気払いをしましょう。樽に残ったマディラ酒のふくよかな甘みと、マスカット種のグラッパ特有の華やかな香りの融合が気持ちを落ち着かせ、ゆったりとした気分で食後のひと時を楽しませてくれると思います。


アメリカ・パタゴニア社のポリシーのひとつが自然保護。近年、アウトドア向け衣料の販売だけでは限界を感じ、食物連鎖の修復を目指し、食品を手掛けることになりました。衣料同様、「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える」ことを土台に造られた独自のビールです。通常の大麦だけでは無く、「カーンザ」という土壌改良に役立つ穀物も使って、ビールを醸造。この「カーンザ」は無農薬で、年に複数回収穫ができる多年性の植物。15%程加えられたカーンザの辛みがアクセントになって、多くの人が素直に美味しいと感じる味わいです。飲むことによって、自然保護に貢献しているようで、ちょっと良い気分になれるビールです。


食品ではフランス・マーカル社のポレンタ粉(トウモロコシの粉)を混ぜたマフィンがうちの家族にとても好評です! 卵1個に、だいたい同量(70g)の菜種油、砂糖、ポレンタ粉、小麦粉、牛乳または豆乳にベーキングパウダーをまぜて焼くだけ。黄金色のマフィンはなんとも食欲をそそり、つぶつぶ食感が心地よく、我が家の定番おやつになりました。レシピのもとになったのは、ブラジルのポピュラーなおやつ「ボーロ・デ・フバ 」です。そのレシピが店頭にございますので、どうぞチャレンジしてみてください! また甘さを控えて、チーズなどを加えたらワインのおつまみになりそうです。


「風土火水」は北海道産の有機栽培に特化した食品のブランド。まずは十勝産有機小麦のふすま(小麦の外皮)。有機栽培だからこそ、安心していただける小麦ふすまです。パンやクッキーに混ぜて焼くと香ばしい風味で、ヘルシー志向のおやつが出来上がります。某レシピサイトに載っていたふすま100%のクッキーを作りましたら、スタッフに大変好評でした。そのレシピは店頭にございますので、どうぞお試しください。


最後は「風土火水」の大豆ミート。これを茹でて粉をまぶし、お肉料理(豚の生姜焼きや回鍋肉など)にまぜて作ると、肉と区別がつかない位、肉もどきの食感です。因みに家族もお肉と信じて食べていました。健康に気使うヘルシー志向の方におすすめです!

2017年 7月

今月は夫婦のお話。 

先日、家内と二人で遅めの昼食をとる事になりました。その日は車に乗っていたので、私は大好きな「ゆりや食堂」で、もりそばとラーメンの両方を食べたいと言った所、家内は円山西町にある眺めの良いカフェでランチをしたいと言います。結局、妥協案でまず食堂へ行って私がそばとラーメンを食べて、その後カフェに行き私はコーヒー、家内はキッシュ・セットを食べて帰りました。


改めて思いますが、男と女は好みが違うのです。これで思い出すのが、結婚当初お互いに映画が好きだったので、休日の前夜にDVDを借りて一緒に映画を観ていました。私はドカーン、バキューンの戦闘物やスポ根物を選び、 家内は文芸路線。観終えるとお互いに感想を言うのですが、家内は私の薦める映画のどれを見ても毎回、「人間が描けていない」の一言。私は、文芸物にも駄作と名画があり、戦闘物も同様で、それぞれのジャンルで良さを楽しもうと言うのですが、根本的に好みは平行線でした。

決定打となったのは、忘れもしないフェリーニ監督の「道」。貧乏でハチャメチャな夫と、弱く、けな気な娘との生活は、何も希望が無く、過ぎてゆく。ハッピーエンドが好きな私は、「道」を観終えると暗く落ち込むだけ。やり切れない思いを言葉にできない私は、映画の中で娘が何度も言っていた「ザンパーノが来たよ!」を茶化して言うと、「この映画の意味を何も感じないの?」と責められ、二人の映画鑑賞会は途切れました。


映画の好みだけではなく、食べ物の好みだって人それぞれ。お互いの好みを主張するだけではなく、相手の希望も取り入れながら、映画「道」のパターンには行かないようにと願っています。


さて、今月のお薦めワインです。

まずは地元から、小樽のアーバン・ワイナリー、オサ・ワイナリーからTabi(タビ)をご紹介します。小樽にゆかりのある葡萄、旅路種の収穫を時期をずらして行い、ブレンドする事で、フレッシュな酸味と完熟した風味を合わせ持つ複雑な味わいです。寿司とのマリアージュを一番に考えられた絶妙なブレンド。お寿司好きな方にオススメな逸品です。

三笠、山崎ワイナリーのピノ・ノワール15年。樹齢10年~18年のピノ・ノワール種から造られるワインは、深みのある赤い果実、針葉樹林を思わせる深く冷涼な香り。果実味と伸びやかなミネラルは、土地や気候の特徴を感じられるピノ・ノワールです。北海道の赤ワインを代表するピノ・ノワールです。

長野県にある小布施ワイナリーのソーヴィニヨン・ブラン16年。ハーブ香に爽やかな白桃、蜂蜜やパイナップルの香り、そしてマッタリしすぎない濃さと、グレープフルーツ系のアフターが心地よいです。日本のソーヴィニヨン・ブランでは珍しくphの低いワインなので、数年の熟成に耐えることができます。山の幸とあわせて飲みたいと思った1本です。


次はフランス、ボルドー地方シャトー・ラローズ・トラントドンで、最高の年09年産。シャトー・カマンサックのオーナーのエリゼ・フォルネ氏がディレクターを務めています。所有する、サン・ローラン村の142ヘクタールの畑は、メドック地区最大。上品でしっかりとしたボディを持っており、華やかな香りと木樽の風味もあります。熟成を経た複雑さも開き始め、飲み頃に入り始めたボルドー赤ワインです。

ボルドー右岸のフロンサック地区からは、シャトー・メイネイの2002年。新樽比率が8割と高く、始めはフレンチオーク樽の香ばしさが楽しめます。次にヨモギを感じさせるほんのりとしたメルロ種の青さが調和し、複雑なブケを楽しむことができる、今がまさに飲み頃のボルドーです。

同じくボルドーの右岸、カスティヨン地区で有機栽培を実践するシャトー・デュ・ロックの畑の中で、若木から造られるワインが、「アンフォラ(素焼きの壺の意)」です。樽を使わずにコンクリートタンクで発酵・熟成しているため、渋みは控えめで瑞々しいピュアな果実味が口中に広がります。まだ若い14年産ですから、今の状態ではアンフォラで醸造したような葡萄を搾って瓶に詰めたような果実味たっぷりのワインです。有機栽培葡萄の美味しさを、樽に入れずにそのまま味わって欲しいというオーナーの気持ちが伝わります。

次はサンテミリオン村で超有名なシャトー・ヴァランドローではなく、 ここのオーナー、 テュヌヴァン氏の事を、評論家のパーカー氏が親しみをこめて、 バッド・ボーイ(ヤンチャ坊主)と名付けました。すると、チュヌヴァン氏はその「あだ名」を、お値打ちなワインの名前にして発売しました。数万円するヴァランドローとは違い、畑はサンテミリオン村ではありませんが、彼が選んだ区画は恵まれた畑で、良質でありながら、お手頃価格。このバッド・ボーイで10年を経た07年産が入荷しました。たっぷりとしたベリー系の果実味と、木樽の風味が調和した飲み頃ワインをお見逃しなく。


次は仏ブルゴーニュ地方から。シャンボール村のアンリ・フェレティグ家が造る、お手頃価格の赤。ピノ・ノワール種とガメイ種を半分ずつブレンドした「コトー・ブルギニヨン」の赤です。混醸(各葡萄品種を粒の状態で混ぜて、同時に発酵する)で造られているため、豊かな果実味と心地よい酸味が、若いうちからに溶け込んで調和しています。

次は中堅で評価の高いヴァンサン・ジラルダンが、サン・ロマン村のシャルドネ種で造る12年産。ビオディナミ栽培を行っていましたが、ブルゴーニュの天候の問題で、完全なビオディナミでは不便な点もあるため、2011年よりリュット・レゾネ(減農薬)へ移行しました。サン・ロマン村は標高が高く冷涼な為、酸味とミネラル感もあり、野菜のマリネや蒸し料理によく合います。

そしてシャサーニュ村からは、名門ギィ・アミオのアリゴテ種の白12年。遅摘みによるリッチな味わいがこのドメーヌの特徴で、それぞれの畑が本来持つミネラル感とともに荘厳な世界を提供してくれます。果実味は豊かですが、鋭い酸とミネラル感があり、アリゴテ種らしさと、バランスのとれた出来に仕上がっています。爽やかなだけではなく厚みも欲しい、という方におすすめです。


次はロワール地方から、サンセール村ダニエル・ショタールが造るソーヴィニヨン・ブラン種の白。土壌は全体の70%がキンメリジャンの粘土石灰質、30%がカイヨット(白亜)です。葡萄の平均樹齢は20年、最も古い葡萄は樹齢40年です。アロマを最大限に引き出すため、14度の低温で発酵させることで、青っぽいハーブのニュアンスや、タニックなフレイバーが出ないようにしています。スキンコンタクトなし、マロラクティック発酵をせず、 綺麗な澱と共にタンクで約8ヶ月熟成。還元香もなくミネラルの凝縮したソーヴィニヨン・ブランです。

次はジョセ夫妻がシュナン・ブラン種で仕込んだ自然派のペティヤン(微発泡性ワイン)で、リズ・エ・ベルトラン・ジュセ ラペティアン モンルイ・シュール・ロワール。2004年に設立の新しい生産者ながら、フランスの3つ星レストランでもオンリストされている実力派。化学肥料や農薬を使わない有機栽培で、野生酵母による自然発酵。泡を得るための二次発酵の際も、蔗糖と酵母は無添加。ノン・ドサージュでSO2も添加せずに造られており、自然派ワインの真骨頂が味わえます。


アルザス地方からは、自然派生産者の雄、ビネール氏が、気心の知れた友達のジャン・リュック・シェランジェ氏とコラボして造っている、 クザヴィエ・ヴァイマンの、ミノリ リボ・ミックス14年です。 葡萄はエーデルツヴィッカーと言われるブレンド・タイプ。ピノ・グリ種主体のふくよかな果実味に、ゲヴュルツ種の香り高さが調和しています。自然派アルザス・ワインのお試しに最適な逸品です。


イタリアからは、自然派第一人者であるアンジョリーノ・マウレの下で、ワイン造りを学んだ、ダニエーレ・ピッチニン氏がヴェネト州で造る、ビアンコ・ディ・ムーニ15年。シャルドネ種と土着品種のドゥレッラ種とのブレンドで造られるワインは、心地よい酸味と充実した旨味が楽しめる澄んだ味わいで、暑い季節にはぴったりの白ワインです。


次は南部プーリア州の濃厚赤ワイン、プロゲット・ヴィーノのパッソ・デル・スッドゥでアパッシメント15年。収穫した葡萄を乾燥させ、干し葡萄状にしてから発酵させた、アマローネ・スタイルのフルボディワイン。燻製のような香りと、ビターチョコレートのような渋みと甘味の強い味わいは、とてもインパクトがあり、飲みごたえがあります。グリルしたお肉料理、熟成チーズ等と相性が良いです。

イタリア・シチリア島からは有機栽培で造られたワインのご紹介です。チェビコ社、ピプント・イオの赤(ネロ・ダヴォラ種+カベルネ種)と、白(カタラット種+シャルドネ種)の2種。どちらも地元品種と国際品種をブレンドしてバランス良く仕上げられています。白は華やかな香りとフルーティでクリーンな味わい。赤は複雑でやや重厚なタイプ。どちらもきれいな果実味が料理を引き立ててくれます。


スペインからはマルケス・デ・グリニョンがラ・マンチャ州の高地で栽培されたカベルネ・ソーヴィニヨン種から造る赤。気候は大陸性気候のため、夏は暑く乾燥しており、冬は寒い日が続きます。また昼夜の寒暖差も激しいため、成熟した高品質の葡萄を得ることが出来ます。ここの素晴らしい葡萄を更に高めるため、コンサルタントに仏ミッシェル・ロラン氏を起用しました。発酵は天然酵母と人工酵母を使い、アリエ産のオーク樽で18ヶ月熟成。フルボディなワインをお探しの方に満足していただけるワインです。


ドイツからは、貴重なリースリング種の古酒。当社で扱いのある生産者カール・エルベス氏が、かつて醸造責任者を務めていた蔵元がモーゼル・シルト。そのワイナリーが廃業した為、蔵元に残しておいた取って置きの古酒が限定入荷しました。リースリング特有のペトロール香と、熟成感が見事に合わさった甘口。リースリングが熟成に耐えうる事を証明してくれるようなワインです。年によってラベルが違いますが、当時ホテルも営業しており、ホテルのラベルと一般販売用のラベルの違いです。


カリフォルニア州からはブレッド&バターのシャルドネ15年。冷涼なソノマ地方カーネロス地区と、温暖なモントレー地方アロヨセコ地区の二つの畑の葡萄を合わせています。タイプの違う畑の葡萄を合わせる事によって、複雑味溢れる優雅なスタイルに仕上がっています。ナッツやバターの香り、ふくよかでミネラル感のある凝縮した味わいは、ムルソーの白ワインのようです。少し完熟した甘味があるのが特徴で、バター・ソースの魚介料理、クリーム系のパスタやスープと良く合います。


食品ではマルカワみその自然栽培の玄米甘酒(すり)。ここまで素材にこだわった甘酒は他にないでしょう。こだわり抜いたこの甘酒は、一流のスポーツ選手にも支持されています。大リーグで活躍中の前田健太選手は、広島時代から試合前と、試合中にこの玄米甘酒を同量の水で割り、少々のレモン汁をいれて飲まれているそうです。米と麹を発酵させた“米麹”から作る甘酒には、ビタミンB1、B2、B6、パントテン酸、ビオチンなどの必須ビタミン群を含み、病院で受ける栄養補給用の点滴と同じような成分であることから「飲む点滴」といわれており、古くから夏バテ対策のドリンクとして愛飲されてきました。これからの季節ぜひオススメです!

そして本業のマルカワさんが作る有機みそ。素材にこだわり続け、全国でも珍しく昔ながらの蔵に住みついている麹菌を使用し、麹を造っています。素材は有機大豆と有機米、すべて国産の物を使用し、塩はモンゴル地方で採取された天日湖塩を使用。自然の醗酵速度に任せて、一年間木桶でゆっくりと熟成しております。


次は小豆島の醤油屋、ヤマヒサのぽんず。日本の伝統的な技で製造されている材料で作っているので、ぽん酢だけで美味しいです!
レシピ1、旬のカブやきゅうりをジップロックの袋に入れ、ぽん酢を軽く入れ一晩、美味しい浅漬けになります。
レシピ2、豚肉のソテーにせん切り青しそと共にポン酢ひとかけ。夏らしい味わいです。もちろん冷しゃぶにもおすすめです!

毎年秋に、当店に入荷する小豆島・ヤマヒサのオリーブ新漬け.。そのオリーブの花の酵母を採取し、その酵母により仕込んだ醤油です。自然の神秘と人のたゆまぬ追求心から造られた芸術品のような醤油ははなやか香りの、やさしい味わい。白身のお刺身や冷ややっこなどのかけ醤油に。また花醤とオリーブオイルやレモン汁と合わせ和風ドレッシングもおすすめです。

最後はヤマヒサの、のりの佃煮。小豆島の醤油がのりを引き立たせ、とにかくご飯がすすみます! 炊きたてのあったかいごはんに合わせていただくと、日本人に生まれて良かった~と思わせるご飯の最高の友です!

2017年 5月、6月

5月の連休中に東京から友人家族が来て、一緒に美唄のアルテピアッツァ公園に行って来ました。始めは温泉を考えましたが、石山通りは渋滞するので逆方向からの選択でしたが大変喜ばれました。私が接待する際に心がけるのは地方から来た方は豪華な所、そして東京など都会から来た方は北海道らしい広大な風景が望める所。

昨年この家族が来た時は、広大な農場内にある月寒の「じんぎすかんクラブ」に行って来ました。ここのマトン肉は絶品ですが、あの過密な東京で生活している人にとって、広大な自然を目の前にしてのジンギスカンとワインは何よりも贅沢な事だと感じました。

そこで今年も北海道らしい場所に、プラス何か心をくすぐる所はないかと探したのが、安田 侃(カン)さんの彫刻公園。7ヘクタールの丘陵地帯に彫刻が点在し、敷地内にある廃校になった木造の小学校の教室にも作品が展示されています。教室の壁にはコートを掛けていたであろう釘の跡が均等に並び、生徒さんの名前もうっすらと読み取れます。目をつぶると子供の甲高い声がこだましそうな中で、柔らかな曲線の彫刻はその歓声を吸い取っている様な気にさせます。

ここで東京の友人が一番驚いたのが、掻き入れ時とも言える連休中で晴天の午後、7ヘクタールの中に人が100名程しかいなかった事です。東京で話題の展示会だと入場するのにも並び、鑑賞するのも数珠つなぎで立ち止まる事が出来ないのに、この素晴らしい施設をゆっくりと独り占め感覚で楽しめる贅沢さは信じられないと喜んでいました。

この後は、三笠の山崎ワイナリーに寄って直売所でワインを購入し札幌へ帰ります。夕食は二条市場の片岡精肉店で、厚さ約1センチにカットした超厚切り生ラムを購入して、今年は自宅でジンギスカン。ワインは、まずイタリア・メディチ家の微発泡・ランブルスコ赤でドルチェ(甘口)。ベル・ジンギスカンのたれには、少し甘味のあるランブルスコがピッタリでした。

2本目はピノ・ノワール好きな友人の為に、ジャイエ・ジルのパストゥグラン11年。繊細なピノに骨太なガメ種をブレンドする事で、味わいの強い羊肉との調和を試みましたが、少しワインの力負けでした。

3本目は羊とは定番のボルドー赤。オー・メドック地区のシャトー・ラローズ・トラントドン09年。完熟した果実味とタンニンが、羊の脂身をきれいに洗い流してくれます。それと厚切りの羊には、「たれ」よりも塩コショウが良かったです。

最後4本目は、友人が持参したジョルジュ・ルーミエのシャンボール・ミュジニで最高の2010年産! 友情をお金に置き換えるのは忍びないですが、時価25,000円は楽に超えるでしょう。1時間半ジンギスカンの煙にまみれ汚れた居間の中で、上品でけがれが無く、澄みきったサクランボ風味の花びらが静かに開きます。当然、グラスもリーデル社の物に変えてゆっくり味わいましたが、一番汚れていたのは室内では無く、自分の舌(ベロ)。脂の強い羊肉まみれだった私の舌に載せられたシャンボール村のピノは、まるで野獣と美女。真っ白い絹のシーツの上で鑑賞すべき物を、油で汚れたコンクリートの床に放り出された状態。しかしこんな状況でもワイン好きは、「少しずつ香りが開いて来た」、「こっちのグラスの方が酸味がきれいに延びる」とか言いながら夜は更けて往きました。

さて今月のお薦めワインは地元から。

札幌の藤野ワイナリーでキャンベル種のサン・スフル(酸化防止剤無添加)16年。昨年も好評だったこの赤は、アルコール発酵終了後に瓶詰して販売、購入後は皆さんが瓶内で始まる乳酸発酵を見守ります。今の状態では、葡萄を搾って瓶に詰めたような果実味たっぷりのワイン。冷暗所で保管頂くと、少しずつ乳酸発酵が始まることで酸味の鋭いリンゴ酸が減り 、微炭酸の発生と共に柔らかな乳酸が形成されます。

次は栃木県ココファームの赤・風のルージュ14年。葡萄は余市・藤沢農園産ツバイゲルトレーベ種約八割に、山形産メルロ種を二割ブレンド。ツバイ種のスパイシーさに、メルロ種のふくよかさが上手く調和しています。しかも、近年で最良の作柄だった14年産は今や貴重品です。

次は仏ボルドー地方から。2010年以降ブルゴーニュ地方が高騰する中、ボルドーは目立った値上がりが無く、為替の利点もあって今お値打ち感が出て来ました。オー・メドック地区のシャトー・ラネッサンと、シャトー・カントメルルのセカンド・ラベルは、共に9年を経て熟成旨みが開いて来た08年産。ここ1~2年程はふくよかな果実味と、熟成旨みの両方が楽しめる時期でしょう。

そして今も高騰の続くブルゴーニュですが、今月もお値打ちな物を見つけました。まずは赤から、ジャン・バティスト・ベジョのブルゴーニュ・ピノ14年。2,000円以下でも痩せた感じが無く、果実感が楽しめるのは驚きでした。次は毎年安定して良質なワインに仕上げてくるエルヴェ・シャルロパン氏。マルサネ村ロンジュロワ畑は、日当たりの良い東南向き斜面中腹の区画。豊かなタンニンで知られるこの村ですが、ここでは完熟した果実味がふくよかでタンニンと調和しています。

「パスカル・ラショー」はヴォーヌ・ロマネ村の名門ロベール・アルヌーが始めたネゴシアンのブランド名。ブルゴーニュ規格の赤は作柄が良く、少しこなれた12年産が入荷。買い葡萄でも、良質な小粒品種ピノ・ファンで造られた赤は品の良さを感じます。定価3,100円が特別価格で入荷しました。

ニュイ・サン・ジョルジュ村の名門ロベール・シュヴィヨンのパストゥグラン13年。少量のガメ種を加える事で、不思議ですがピノの風味が開いているのに、ガメ種の風味はあまり感じられません。同じシュヴィヨンで上級品のピノ100%・ブルゴーニュ赤よりも私は気に入りました。これはブレンドのマジックなのか?今の時期だけの短期的な風味かもしれませんが、ピノ好きでしたらこの味わいを是非一度味わって欲しいと思いました。

次はブルゴーニュ白、シャブリの名門ウィリアム・フェーヴル社のサン・ブリ村。ブルゴーニュでこの村だけが、例外的にソーヴィニヨン・ブラン種を栽培しています。なぜ、この村だけ?と思いますが、シャブリ地区はコート・ドール地区よりも、ソーヴィニヨン種で知られるロワール河サンセール村の方が近いのです。異端児のサン・ブリですが、味わいは正攻法の爽やかなソーヴィニヨン種。へそ曲がりと言われているが、自分は真っ直ぐだと自覚されている方にお勧めします。

こちらもシャブリ地区から、ジュヴレ・シャンベルタン村の雄、フィリップ・シャルロパンが造るシャブリの白。赤の味わいと同様に、この白も凝縮した強さを持っています。最高の作柄だった10年産が7年を経て少し熟成感も出て来ました。更にもう1~2年寝かせると、豊かなブーケ(熟成香)も開いてくるでしょう。

南仏からは、最高の出来だった10年産の赤が2種入荷しました。サンタ・デュックの古木からのローヌ赤。暑く乾燥した年だけに、ドライ・フルーツやスパイスの風味と7年を経た熟成感の両方が楽しめます。この価格では向かう所敵なしでしょう。

次はリラック村のシャトー・モンフォーコン。ここは南仏でも濃度勝負ではなく、上品さを持ったスタイル。しかし暑かった10年産は例年よりもエレガントさが弱く、強さがハッキリと感じられます。この凝縮し野性味まである果実味と、それを必死に手なずけようとする生産者の思い、この両方を思い感じながら味わってみて下さい。

南仏からの白ではマレノン協同組合のアムンタナージュ白。手間のかかる有機栽培ワインは一般に2~3千円以上しますが、ここの組合員は有機葡萄を安価で生産し、このような低価格で販売しています。4品種のブレンドも、バランス良く仕上がっています。また、有機ワインに多い還元(カンゲン)香や、アニマル香も無く、誰もが楽しめる白ワインです。

アルザス地方からの白はシュルンバジェ社のテール・ダルザス。ここは認証は取っていませんが、自社畑は有機栽培。この安価なブレンド・タイプも全て自社畑のワイン。品種もシルヴァネール種やシャスラ種を使わず、上級品種だけで造っています。格上の味わいでこの価格はお得です。

スペインからはヴァルフォルモサ社のカヴァ、クラシック・ブリュット・ナチュレ。スパークリング・ワインで「ブリュット(辛口)」規格の残糖は1リットル当たり15gまで認められていますが、ガス圧が高いと残糖10g程では、糖分は甘さとしてではなく「コク」として感じられます。そしてブリュット・ナチュレの規格では残糖は0~3g。通常この残糖では、線の細さを感じてしまいますが、ここでは長期熟成による旨味で味わいを調和させています。

そしてスペインの白では2点。まずはテルモ・ロドリゲス氏がルエダ地区で造るバサ。地元のヴェルデホ種は私のイメージでは、ソーヴィニヨン・ブラン種のメリハリ感と、シャルドネ種のバランスの良さが合わさった無敵の品種。旧価格の1,800円でも人気でしたが、円高から店頭1,300円にお安くなりました。

次はリオハの大手マルケス・デ・カセレス社が発売するリアス・バイシャス地区の白。前述したヴェルデホ種は爽やかなフルーティ・タイプで、リアス・バイシャス地区のアルバリーニョ種は、爽やかさに上品さと複雑さが少し出て来ます。ここはスペイン白で最高の産地ですから高額ですが、この特別価格は驚きです。ヴェルデホ種とは違った魅力を持っています。

オーストラリアからはヴィクトリア州ホッフキルシュのピノ・ノワール。南極に近くなる南部は冷涼な気候で、近年は良質なピノ・ノワール種の産地で注目されています。栽培、醸造共に自然派のこのワインは素直な果実味と特有の旨みを持ち、オーストラリア・ワインも様々なスタイルが出てきた事が実感できます。

ワインに香草、果実、糖分、ブランディ等を加えた物がフレーヴァード・ワイン。ヴェルモット類はワインに「ニガヨモギ」を始めとする香草やスパイスと甘味を漬け込んだお酒。スペイン・シェリーの大手ゴンザレス社が、満を持して発売したヴェルモット「ラ・コパ」は、ベースのワインを安価な物ではなく、同社のシェリーの中でも特別な古酒をベースにしています。上物の甘口ワインに、良質な香草とスパイスですから、仕上がりは格別な旨みを持っています。このままで素晴らしい食前酒ですが、コニャック産ブランディでも加えると食後酒でも通用する強さと複雑さを楽しめるでしょう。

食品からは、小豆島(ショウドシマ)・ヤマヒサ社のお醤油2種。まずは「こだわり醤油本生」、国内産で無農薬の大豆と小麦を杉の大樽で発酵、熟成させ、火入れをせず瓶詰めしました。始めは味が強く感じますが、逆に少量でも旨み十分なので、上からかけるのではなく、醤油皿に取って、極少量付けて食べて見て下さい。塩辛さではなく、複雑な旨みを味わう気持ちでどうぞ。

次はここの再仕込醤油の「豆しょう」。醤油は蒸した大豆と炒った小麦に、種麹(タネコウジ)を添加して全体を麹(コウジ)にし、塩水の中に入れて発酵、熟成させます。再度、大麦と小麦で出来た麹を、今度は塩水では無く、出来上がった醤油に入れて再び発酵、熟成させたのが再仕込。豆からの旨み成分は2倍、逆に塩分は少ない為に、濃いけど塩辛くない不思議な味わいです。赤身の刺身や、ステーキにお試しください。

2017年 3月、4月

前にも一度ここで取り上げましたが、 朝日新聞金曜の夕刊に「さっぽろレトロ建物グラフティ」という連載記事があります。出版社の和田由美さんによる、ほのぼのとした紹介文と、松本浦(ウラ)さんが描く建物は、写真よりも味わい深く記憶と重なります。

そして2月10日、私が時々伺う「ゆりや食堂」が掲載されました。当社の飲食店のお客様は、皆さん現代的なピカピカのお店ばかりですが、私が子供の頃にあった食堂がそのまま残っているのが、ここ「ゆりや」さんです。「食堂」好きな私は、月に一度はここの暖簾(のれん)をくぐります。

ここでいつも頼む物は、もりそばとラーメン。始めに蕎麦湯をもらい、湯をすすりながら待っていると、もりそばが来ます。蕎麦たれは甘辛く厚みのあるタイプ。のど越しのいい麺と共に味わうと、ふぅーと心の緊張が抜けてゆきます。半分ほど食べて少したれが薄まると、わさびは使わずに唐辛子を一振りかけて残りを頂きます。

そばを食べ終え蕎麦湯をすすっていると、ラーメンの登場です。澄んだスープにほんの少し縮れた麺、具はナルト、メンマ、チャーシュー、ねぎ。透明感のあるプレーンなしょうゆ味は、子供の頃食べたラーメンの記憶がよみがえります。こちらも何もかけずに食べますが、半分ほど食べると最後に白コショウを一振りかけてスープを味わいます。そして思うのです、この味には今時のラーメン店にある粗引き黒コショウではなく、粉の白コショウが合うなぁ~。

私がもう少し年老いたら、休日の昼下がりにぬる燗の清酒をちびちび頂き、その後に蕎麦かなぁ~なんて考えながら、食べ終えて帰ります。ちなみに東京っ子の家内は、この「食堂のラーメン」に入れ込む私の気持ちが分かってもらえません。多分、私にとってのソウル・フード(魂に染み付いた食べ物)なのでしょう。

さて、今月のお薦めワインです。今月は新入荷が多いので、お薦め品も沢山ございます。

まずは北海道。余市・リタファームからは十六夜(イザヨイ)の白2種。デラウェア種と、旅路種は共にアメリカ系の食用葡萄なので、グレープ・ジュースを思わせる香りがございます。デラはその香りが穏やかで、旅路はマスカット系の香りが華やかです。またこの2種の白は、共に葡萄の皮と種を一緒に発酵させているので、オレンジがかった色調と、複雑な「にが旨み」を持っています。スパイシーなアジア系の食事にいかがでしょうか。

千歳ワイナリーからはピノ・ノワール種で2種類。葡萄は余市産ピノで最も有名な木村農園産。少し冷夏だった15年産ですが、溌剌とした果実感が楽しめます。一方、リザーブは最良の14年産ですから、一回り豊かな果実感と樽香が楽しめます。

札幌の藤野ワイナリーはハセ・ロゼ。食用葡萄のワインですがキャンディ香も余り出しゃばらず、爽やかでフレッシュ&フルーティなスタイル。還元香等のネガティブな風味が無く、自然酵母を手なずける術を見つけたのでしょう。ただ、酸化防止剤・無添加なので、保管は冷暗所でお願いします。

次は長野県・小布施ワイナリーの白2種。まずはアメリカ台木を使わずに自根栽培している白葡萄をブレンドしたヴィーニュ・フランセーズ。栽培から渾身を込めた自社畑産ワインがこの価格はお値打ちです。

次はフランス南西部のプティ・マンサン種からの白。この品種は低収量ですが、果皮が厚く高温多湿な日本でもうまく育つ注目の品種。ここ小布施だけではなく、ココファームも山形で栽培しています。価格はそこそこしますが、一度味わっていただければ良質な白の可能性を感じていただけると思います。

次は仏ボルドー地方からの上級品2種。銘酒ピション・ラランドのセカンド・ワイン、レゼルヴ・ド・ラ・コンテスで最高の10年産がお値打ち価格で入荷しました。次は安定して高評価を受けているシャトー・ラグランジュの12年。共にこの2種は今の相場では1万円近くにはなるでしょう。今開けるとフレッシュな果実味で楽しめるでしょうし、熟成香を望むのでしたら、更に5年程待っていただければ、素晴らしい未来の贈り物になるでしょう。

もう少しお手頃な価格のボルドーは4種類。マルキ・ド・シャスのレゼルヴで、サン・ジュリアン村の葡萄で造った赤。作柄の良かった10年産だけに、完熟したカベルネ種からの杉を思わす香りが広がります。スモーキーなポイヤック村系ではなく、デュクリュ・ボーカイユ系の瑞々しい果実味はまさしくこの村の特徴でしょう。

そしてシャトー・シトランのセカンド・ワインで最良だった09年産。直近の収穫年でも2千円近いワインが、最高の09年産でこの価格は注目!

次は共にオー・メドック地区の人気シャトー、カントメルルと、ラネッサンの共にセカンド・ワイン。11年産のラネッサンは溌剌とした果実感、08年産のカントメルルは少し熟成した風味が楽しめます。

やっぱりボルドーは熟成していなければ、、と言う方には2種。まずはリストラック村のシャトー・フルカ・デュプレ96年。カベルネ種が完熟したこの年は、ふくよかな果実味と豊かなタンニンを持っており、21年を経て熟成香とタンニンが溶け込んできました。これから数年間が熟成のピークだと思われます。

リュサック・サン・テミリオン村のシャトー・フランス・ド・ロックは良年の05年産。12年を経てキノコやハーブ系の熟成香が開き始めました。果実味もふくよかで誰もが喜ぶボルドーでしょう。ボルドーの最後は有機栽培で有名なシャトー・ル・ピュイのセカンド・ワイン。濃度や、樽風味は無くても、透き通った果実感は味覚を充分満足させてくれます。特別価格で入荷しましたので、ボルドーの自然派ワインを体験してみるには最適の1本でしょう。

次はブルゴーニュ地方から。今月は白の良品が多く見つかりました。まずはシャブリ地区からで、名門ウィリアム・フェーヴルの1級ヴァイヨン畑のシャルドネ種。1級畑らしい凝縮したミネラル感と果実味が幾重にも重なっています。上級シャブリの理想と言える様な仕上がりです。

でも、やっぱりシャルドネ種はコートドール・ボーヌ地区が良いと思っている方には、3種類。ムルソー村のアルベール・グリヴォーのACブルゴーニュ規格のクロ・デュ・ミュルジュ畑で13年。一度メーカー欠品しましたが、作柄の良かった13年が再入荷しました。ラベルを見ずに味わうと、まさしくムルソー村の様なふくよかで厚みのある味わいが楽しめます。

ピュリニー村に多くの畑を持つアンリ・ボワイヨ家のACブル白13年は、ボーヌ近辺の村のシャルドネ種をブレンドした白。ブレンドによる厚みと調和したバランスの良さは、ちょっと驚くような仕上がりでした。

3番目はサヴィニー村のシモン・ビーズでペリエール畑のシャルドネ種14年。13年に夫が急死し、妻の千砂さんは家族とドメーヌを背負って行く事を決意した14年。NHKの番組で1年間取材を受けた、あの年の葡萄から生まれたワインです。涙もろい私はつい、ひいき目で見てしまうのをお許しください。

そして目下、絶好調のフレデリック・マニャン氏が造る白2種。マニャン家はモレ・サン・ドニ村ですから、当然ピノ・ノワール種を得意とする生産者。なのにサン・ロマン村とACブルのシャルドネが驚くほどの出来でした。自社畑では無いのに、この白の完成度はすごい!

ブルゴーニュの赤では、フェヴレ社が所有するポマール村の最上リュジアン畑からの赤で10年を経た07年産。しかもこの年にこの畑を購入したので、初めての収穫で当然、力の入った仕上がりとなっています。まだまだ熟成可能なポテンシャルを充分に感じさせます。

次は有名ドメーヌの少し熟成した入門ワイン2種。ポマール村の名門、ミッシェル・ゴヌーのACブル11年。この村特有の凝縮した果実味だけではなく、中心に骨格を感じさせる味わいはさすがです。

次はヴォーヌ・ロマネ村のミッシェル・グロで、こちらはお隣ニュイ・サン・ジョルジュ村の11年。6年を経ていますが、この村特有の果実味とタンニンが今もたっぷり。数年の我慢の後には、楽しい思い出が待っている事でしょう。

今からでも魅力たっぷりで楽しめるのが、 リュリー村の名門ラ・フォリーが造る特醸品キュヴェ・マリー。発酵中タンク上部に集まる果皮を混ぜる際に、ピジャージュ(棒や足で果皮を混ぜる)をせずに、ルモンタージュ(タンク下部から果汁を抜き、果皮の上に注いで混ぜる)だけで発酵させる為、タンニンが柔らかく果実味が際立っています。

ロワール地方からは赤と泡の2種。地元のラブレ組合が造るお値打ちシノン村の赤。未熟な青さの代名詞だった、ロワールのカベルネ・フラン種ですが、今では爽やかで溌剌とした味わいで、とてもバランスの良い仕上がりになっています。

ラングロワ・シャトーが造るクレマン(泡)は、4品種を使って複雑さと独自の味わいを持っています。地元のシュナン・ブラン種50%、カベルネ・フラン種10%に、シャルドネ種30%、ピノ・ノワール種10%を加えて、シャンパーニュ地方を超える泡を目指しています。

アルザス地方からは有機栽培を実践するクリスチャン・ビネール家のシルヴァネール種。この品種、一般的には格下に見られていますが、この生産者は上級品種を超える味わいに仕上げています。多分、先代か先々代が植えたシルヴァネール種を、今も大切に栽培し、細心の注意を払って醸造しているのでしょう。こういったやせ我慢に、私はつい応援したくなります。

南仏からはサンシニアン地区のスーリエが造るグルナッシュ・ブラン種主体の白。有機栽培を実践し、醸造も自然派のスタイルで行っています。一般に有機栽培は手作業が増え、収量も下がる為に価格が高くなってしまいます。そんな中で栽培、醸造共に自然派のワインでこの価格は驚きです。ぜひ一度お試しください。

フランス南西部からはマディラン地区のシャトー・サン・ベナジ01年。地元葡萄のタナ種は強烈なタンニン(渋味)が特徴で、飲み頃までは辛抱が必要。01年産は16年を経て、タンニンがこなれ果実味と調和し、今まさに飲み頃の美味しさが楽しめる状態です。

シャンパーニュ地方からはお手頃価格の2種。お値打ち感たっぷりのルノーブル・アンタンス・ブリュットは、シャルドネ種40%、ピノ・ノワール種30%、ピノ・ムニエ種30%。特にシャルドネ種は有名なシュイィ村産で、切れの良い酸味がスーッとのびて味わいを引き締めています。

一方ドゥ・カントナール・ブリュットも、シャルドネ種は有名なコート・デ・ブラン産60%に、ピノ・ノワール種30%、ピノ・ムニエ種10%。もう一回りふくよかで、バランスの良い味わいが楽しめます。

イタリア・ピエモンテ州からは赤2種。まずはフォンタナフレッダ社のバローロ村12年。北部にとってこの年は難しい年でしたが、ここではバローロらしい豊かさと、風格のあるタンニンが楽しめます。天候以上に、人の努力が成果を結んだ味わいです。

次はロベルト・サロットが造る、お隣バルバレスコ村の、リゼルヴァ規格で97年産。この年のイタリアは最高の作柄に恵まれ、各地で素晴らしいワインが造られました。味わいは完熟を超えて、干し葡萄からのワインを思わせる凝縮感が20年を経た今も感じられます。伝説の97年産が入手できる最後のチャンスでしょうか。

南イタリアからは赤、白の2種。南部ラッツィオ州のマチョッカが地元のパッセリーナ種主体で造る白。ここの大地の恵みを全て味わってほしいとの思いから、果皮と種も一緒に自然派の醸造を行い、瓶詰まで酸化防止剤を添加していません。葡萄の風味に畑の空気、日差し、土壌を一緒に煮込んだような豊潤な味わいを持った白。

赤はシチリア島モルガンテ社のネロ・ダヴォラ種13年。温暖な気候の中で完熟した葡萄は、凝縮した果実味と柔らかなタンニンが調和しています。低収量栽培を守り、丁寧な醸造によって生まれた、バランスの良い良質な赤ワインに仕上がっています。

今人気のスペインからは赤と、白の3種。温暖なテラ・アルタ地区の若い生産者アルタビン。入門編とも言えるプティット・レッド12年は、ガルナッチャ種主体に、シラー種、カリニャン種のブレンド。果実味とタンニン、スパイス感が5年を経て調和して来ました。この価格ではあり得ない程の満足感と、バランスの良さが楽しめます。

次の赤は最高の産地リベラ・デル・デュエロで高評価を受けているヴァルデリス。ここのファースト・ラベルは94点評価を受ける素晴らしい赤ですが、定価4,500円。そこで入門編として造られたのが、同じ自社畑の葡萄でも樽熟成無しで瓶詰したホーベンです。タンク熟成による瑞々しい果実味がたっぷりで、色調も縁まで真っ黒。複雑さは無くても、この低価格でこのフルボディ感は驚きです。

白はナヴァラ地区のソルサルがガルナッチャ・ブランカ種で造る辛口。温暖な産地とは思えない引き締まった青リンゴの味わいは、北部の冷涼な産地を思わせます。スペインといえば今も赤ワインのイメージですが、近年、白の出来には本当に驚かされます。

昨年あたりから、社内で旨安ワインと言えばポルトガル産です。スペインの隣で温暖な気候の中、葡萄は完熟し良質なワインが出来ますが、輸出はポートやマディラばかりで国外のワイン愛好家には知られていませんでした。ベーシックなエストリア赤、白は何と500円! この価格でもバランスが良く、毎日の食卓に最適なテーブル・ワインです。

この上級品といえるのがエンコスタ赤、白でこちらは900円! 一回り豊かな果実味と、数品種のブレンドによる調和した味わいが楽しめます。

ニューワールドからは白2種。オーストラリアのウェルウッドはピノ・グリージョ種からの白。この低価格でも豊かな果実味と、ナッツを思わせる香ばしさが豊かに広がります。

次はお隣ニュージーランドからヴァヴァサワーのソーヴィニヨン・ブラン種。グラスから立ち上る柑橘や夏野菜の香りと、爽やかな酸味のメリハリのある味わいは、この品種のお手本になりそうな出来栄えです。

ハード・リカーからはブランディとリキュールの2種。ガロティエ社のカルヴァドスは、有機栽培のリンゴを蒸留したブランデー。リンゴの皮を思わせる香りが、グラスから華やかに広がります。

次はフィリップ・ド・ブルゴーニュがオート・コート・ド・ボーヌ地区の桃から造ったリキュール。完熟を過ぎて、過熟したような桃の香りと、凝縮した風味はただ者じゃございません。食後に、このリキュールを一口頂くと幸せな気分になる事、間違えなしです。

次はノン・アルコールのドリンク。コニャック地方フェヴリエ家(仏・2月の意)のユニ・ブラン種100%果汁で、ガス無しと、ガス入りの2種。そのままでも美味しいですが、同じコニャック地方産ブランデーに少量加えても美味しく頂けます。

次は今話題のワイン用保存器プルテックスのアンチ・オックス。仕組みはよく解りませんが、柔らかなシリコン製で蓋状の物を瓶にはめると、ワインの酸化を抑えます。当社では、ボージョレ・ヌーヴォーにつけて数日ごとに時間経過を見ましたが、最後は1ヶ月を経ても、お酢にはなりませんでした。ただ酸化した風味にはなりませんが、味が何か違う方向へ向かっている感じがしたのも事実です。飲食店のグラス・ワイン用には、一度試してみる事をお勧めします。

食品では3種。タツヤの柿の種と燻製ピーナッツは、ちょっと癖になる程の良い組み合わせに驚きました。

次は品切れていましたカリフォルニア産の枝付きレーズンが、別のメーカーで入荷しました。

最後は新入荷、ベトゥルッツェッリ社の瓶入りグリーン・オリーブ。シチリア産でこの低価格。サイズは大950g、小290gがございます。

2017年 1月、2月

寒中お見舞い申し上げます。

本来であれば社長の藤井が、この「店主の独り言」を担当しておりますが、今回のみ私、藤井雅裕(専務取締役)がお詫びとご報告を兼ねて書かせていただきます。

昨年11月、12月に多くのお客様から「新しいワインショップフジヰ ニュースはまだ出ないのですか」とお問い合わせをいただきました。社員一丸となって繁忙期の前にフジヰ・ニュースをお届けするため作業をしておりました。しかし11月中旬、急に私は言葉をうまく喋ることが出来なくなり、検査を受けたところ6cmを越える髄膜腫(ずいまくしゅ)という大きな脳腫瘍が見つかり、摘出手術のため入院することになりました。

当社は社長を含め7人で運営している零細企業のため、毎日の業務をこなすことで精いっぱいとなり、このニュースが年を越してしまいました。また、私が欠けた事でお客様への接客や飲食店様への対応でご迷惑をおかけしたことが多々あったかと思います。本来であればお会いして申し上げなければいけませんが、ひとまずこのフジヰ・ニュース上でお詫びさせていただきます。大変に申し訳ございませんでした。

幸い、理解あるお客様のおかげで、会社は何とか新年を迎えることができました。本当にありがとうございました。私は12月中旬に10時間を超える大手術が成功し、合併症もなく、いくつかのリハビリをこなし、昨年末に退院することができました。開頭手術というリスクの高い治療でしたが、トップレベルの技術を持った医師、粘り強く、親身になってくださる看護師、有数の技術を持った技士や療法士の方々のおかげで無事克服できたと思います。中村記念病院の皆さま、ありがとうございました。退院後は順調に回復し、少しずつですが仕事に復帰しております。今後は健康管理に努め、皆様にご迷惑のかからないようにしていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

最後に私を支えてくれた妻と二人の息子にこの場を借りて感謝の気持ちを表したいと思います。貴方たちが居てくれたおかげで病気に打ち勝つことができました。本当にありがとう。これからも末永く、共に笑い、共に泣き、時にはケンカし、楽しい人生にしていきましょう。

次のおすすめワインは入院明けの私ではなく、店主の藤井よりさせていただきます。

ではここからは、いつもの店主の藤井による今月のお薦めワインです。

まずは北海道から、千歳ワイナリーで新発売になったケルナー種の上級品、プライベート・リザーブ。優良な区画のケルナーを遅摘みした白は、非常に凝縮した果実味を持ちながら甘くなっていません。豊かなミネラル感が味わいを引き締めているからでしょう。こうして今までとは違った新しいタイプのケルナー種が出てくる事で、道産ワインの品質がまた一段階上がりました。

次は道産ワイン大手、㈱北海道ワインからの自社農場の鶴沼産ゲヴュルツトラミネール種14年。ここでは新型の選果機を導入して更なる品質向上を図り、その上13年産より600円も価格を下げて14年産を発売しました。今、道産ワインの各生産者は、品質と価格の両面で努力を重ねているのがわかります。


山形県からは、タケダ・ワイナリーのブラン・ド・ノワール(黒葡萄で造った白ワインの意)樽熟成14年。黒葡萄のベーリーAを優しく絞り、その透明な果汁を樽に入れて発酵、熟成させました。香りよりも味わいに、厚みとにが旨味等の複雑さを感じることでしょう。フルーティーで果実味たっぷりタイプよりも、この白は和食も含めてお食事との相性が良いと思いました。ぜひお試しください。

長野県の名門、小布施ワイナリーからは、お値打ちな品2種。白は近隣にあるカクトウ農園のシャルドネ種で上級品レゼルヴ・プリヴェ15年。小布施の曽我社長自身は過剰な新樽香を嫌う方ですが、 カクトウ農園の優良区画のシャルドネ葡萄を見た時に、これは新樽100%で醸造しなければならないと感じたそうです。ナッツやバニラの香りと凝縮した果実味は、分かりやすく言うと良く出来た「ムルソー村」のスタイルです。

赤ではオーディネール・メルロ&カベルネ14年。ミディアムな果実味にタンニンと酸味が調和した赤。柔らかで澄んだ果実味に、もう少しで熟成旨みも開きそうな気配です。


次は仏ボルドー地方から2種。果実味とタンニンがたっぷりのボルドーがお好きな方にはムーリ村のシャトー・モーヴザン・バルトン11年。この年から新オーナーとなったバルトン家が、高価な光学式選別機を使って厳格な選別をしているのでしょう、11年産ですがグレート・ヴィンテージの様な凝縮感が楽しめます。今後も楽しみな新シャトーが又一つ見つかりました。

次も同じムーリ村で名門、シャトー・プジョーのセカンド、ラ・サル・ド・プジョーで熟成した07年産。ボルドーに濃さ強さを望む方にはお薦めしませんが、枯れ始めた果実味に溶け込んできたタンニンの感じがお好きな方には、たまらない1本だと思います。しかし、少し前までセカンド・ワインは早飲み用で熟成はしないと言われていましたが、こういったワインを飲むと考えを直さなければなりませんね。


ブルゴーニュ地方からはトリコン家のシャブリ14年。ここ5年ほど毎年、高騰を続けるブルゴーニュ。特に人気の高いシャブリ地区は値上がり幅も大きい中で、お買い得シャブリが見つかりました。安価なだけではなく、味わいにメリハリがありシャブリらしさが楽しめます。安いだけで、薄っぺらで酸っぱいだけの白だろうと思っている方!そんな貴方にこそ飲んで頂きたい1本です。

赤では古酒に強いセリエ・デ・ウルシュリーヌ社で、ラドワ村のレ・ブリコット畑赤08年。ブルゴーニュでお値打ち品を見つけるコツは、まず信頼できる生産者、そして超有名ではない村の良い区画のワインを探す事です。少しマイナーなラドワ村ですが、1級畑に接する東向き斜面(日当たりの良い)のブリコット畑はまさにその好例です。今も表情が開いてとても美味しいですが、古酒好きの私にはもう2~3年熟成させたいと思ってしまう程のポテンシャルを感じさせます。


ロワール地区では有名なサンセール村の名門アンリ・ブルジョワ家が造るお値打ちな白のプティ・ブルジョワ。サンセール村のソーヴィニヨン・ブラン種は3,000円を楽に超えますが、サンセール村の付近で栽培されたソーヴィニヨン種は、村の物と近い味わいを持ちながらも価格は約半分になります。

次はモンムソー社が造るアンジュ地区のフレッシュなロゼ。完熟した果実甘みと、澄んだ酸味が調和してとても爽やかです。女子だけでなく、男子でも美味しく飲める甘さ加減だと思います。


人気のスペインからは2種。まずはカラタユド地区のNKホワイト。標高1000mの高地で栽培されたマカベオ種からの白は、野暮ったさが無くクリーンで引き締まった味わいです。

赤では45番ロス・フレイレスのシネルジア・バリカ07年。地元のモナストレル種80%にカベルネ種20%を樽熟成させた赤は07年産。10年を経てモナストレル種の果実味と、カベルネ種のタンニンが、木樽風味と共に調和してきました。やっぱり力のある赤は、10年前後経ることで美味しくなってくるのが分かります。


アメリカからは安価ですが、クエイル・クリークのワインが良かったです。個人的にはシャルドネ種白と、メルロ種赤が、素直な果実味で甘さが気にならず、バランスの良い仕上がりで気に入りました。飲食店のグラス・ワインや、毎日の食卓に合わせるデイリー・ワインには最適の赤、白だと思います。


今注目のニュージーランドは、良質ですが小規模生産者が多い為、安価なワインが殆どありません。そんな中でバードのピノ・グリ種(定価2,200円)が、在庫処分の形でお安くなって入荷しました。完熟した果実味がたっぷりのピノ・グリ種に、6年を経た熟成旨みも開き始めて来ました。


食品ではスペイン産ホセ・ロウ社のオリーブ3種。一番人気はアンチョビの旨みとオリーブの塩味が楽しめるアンチョア。面白いのは熟成した梅干しを思わせるシットリ感のブラック・オリーブのネグラ・デ・アラゴンでしょう。

2016年 10月~12月

今月は寝室のお話し。

もう季節は冬ですが、今年の夏も暑く寝苦しい日がありました。夏休みのキャンプから帰って来た息子は、自分の部屋が暑いと言ってベランダにマットを敷いて寝袋で寝始めました。翌朝体が痛くなっても知らないよと言っても聞かないのでそのままにした所、風が気持ち良くて熟睡できたと言い、その後は毎晩ベランダ寝。

その数日後、家内が私も寝てみると言い出し実行。すると家内と息子は毎晩、一つしかない寝袋をジャンケンで争うようになりました。今まで家内は布団がフカフカしてないと寝られないと言っていたのに、コンクリートの床に敷いた厚さ1センチ程のマットで寝ているのです。

1週間程して、家内は私にもベランダ寝を体験してみたらと言い出し、私もトライしました。幅1.5メートル程の狭いベランダの床に寝てみるとコンクリートの床は確かに硬いのですが、薄いマットでも十分快適。その日はベランダに出ても風を感じませんでしたが、横になってみると床のあたりは心地良い微風が頬を撫でるように流れ、見上げるとベランダの壁にさえぎられ細く切り取られた空でも星はキラキラ輝いています。気が付くと寝返りもせずにぐっすりと寝いり、翌朝は日を浴びて気持ち良く目覚めました。翌晩から私は部屋の寝床に戻りましたが、ベランダ寝は意外に楽しい体験でした。

更にベランダが気に行った家内は、夕食も折りたたみのテーブルと椅子を出して外で食べるようになりました。北国にとって長くはない夏のひと時、キャンプに行かなくてもベランダへ一歩踏み出せば、手軽に屋外の空気を楽しむ事が出来ますよ。


さて、今月のお薦めワインです。

まずは、ヌーヴォーのお知らせ。今年もフランスから11種類、イタリアから2種類、そしてカシス・リキュールの新酒が入荷します。今年初登場のユドロ・ノエラ以外は、当社で毎年安定した品質で人気の高い新酒ばかりです。私はいつも熟成したワインばかりを探していますが、この時期だけは私も出来たての新酒が恋しくなります。皆さんも、年に一回ぐらいは初物を味わってみませんか。


次は北海道の奥尻島から、シャルドネ種の白15年。島の畑は海に近く、潮風は微量の塩分を葡萄の実に付着させます。その実を発酵させると、塩分がミネラル感となって独自の味わいになります。天つゆではなく、塩で食べる天ぷらに合わせてみては如何でしょうか。

そして、余市で15年に創業した平川ワイナリーのポワレ(洋梨の発泡酒)。元洞爺湖ウインザーホテルのソムリエ平川氏が転身し、始めたワイナリーです。通常のスパークリングワインは2~3気圧以上の発泡性がありますが、 こちらは約1気圧と僅かな微発泡。ガス圧を楽しむのではなく、少し高めの温度で熟した果実の風味を味わって欲しいと平川氏は話していました。


仏ボルドー地方からはシャトー・カロン・セギュールのオーナーが所有する別シャトーのカベルン・ガスクトン02年。この年はグレイトではなく平均的な作柄でしたが、収穫を遅らせたカベルネ種は良質な仕上がりになりました。14年を経て青さもこなれて、熟成香と熟成旨味が楽しめる飲み頃ワインです。

次はサン・ジュリアン村のシャトー・タルボ11年。この年パーカー90点評価の格付けシャトーで、この価格はかなりのお値打ち。あと10~15年後の楽しみに取って置きたい方には、丁度良いボルドーだと思います。


お値打ちボルドーでは、大人気のオー・メドック・ジスクール12年。柔らかでふくよかな果実味にタンニンが調和し、今から楽しめるバランスの良い赤です。そしてこの価格は今の相場より2割ほどお得だと思います。

でも、やっぱりボルドーは10年以上熟成させなければ、、、という方にはオー・メドック・ド・ラベゴルス05年か、プルミエ・コート・ド・ボルドー地区のシャトー・レスコンブ93年。ラベゴルス05年産は優良年らしい完熟した果実味と、11年を経た熟成香の両方が楽しめます。レスコンブ93年産は23年を経た複雑な熟成香と、少し枯れ始めた果実味にタンニンが溶け込んだ古酒の世界が感じられます。


そして今注目のボルドー・白では、シャトー・ラグランジュが造る新しい白、フルール・デュ・ラック13年。このシャトーではソーヴィニヨン・ブラン種主体のレ・ザルム・ド・ラグランジュを造っていますが、こちらは逆にセミヨン種主体で造られた白ワインです。品種特有のふくよかな果実味と、樽発酵による木樽の風味は、かなり上級な白の満足感に近い物です。


ブルゴーニュ地方からは有名生産者が造る、ベーシックなピノ・ノワールの赤2種が入荷しました。フィリップ・シャルロパン・パリゾのブルゴーニュ赤13年と、モンジャール・ミュニュレのオート・コート・ド・ニュイ地区の赤12年。共に瑞々しい果実味と、良質な樽からのバニラ風味が、グラスの中からじわじわと開いて来ます。

少しこなれたピノ・ノワールでしたら、クロワ・ブランシュの06年産ヴォルネ村の赤がお薦め。10年を経た香りは、果実でもドライフルーツを思わせます。味わいは香りよりも若い印象で、果実味に酸味とタンニンが混じり始めたぐらいでまだまだふくよかです。価格は近年のACブルゴーニュ程で、人気の高いヴォルネ村の06年がこの価格は注目です!


フランスで今月の旨安大賞は、セクレ・ド・シェでトゥーレーヌ村のソーヴィニヨン・ブラン種。この品種は柑橘系スタイルのタイプが多いですが、こちらは野菜系の香りがグラスから広がります。当然ラタトゥユ等の野菜料理には最適の白でしょう。


イタリアではソアヴェの名門タメリーニ家の白。この上に畑名付きの上級品もございますが、私にはこちらの並品でも十分美味しく楽しめました。しっかりと味がありながら、濃すぎずに爽やかさもあって丁度良いバランス感が素敵です。

同じヴェネト州で有機栽培を実践するエンピリアのビアンコ・ディ・クストーザ白。トレビアーノ種、ガルガネガ種に数品種をブレンドした白はフルーティ系ではなく、 野菜やハーブ系の風味が主体。食事と共にゆっくりと味わいたくなります。


今月は熟成ワインでお値打ちな物が見つかりました。カリフォルニアからはヴァレンタインのカベルネ02年。昨年亡くなったここの創業者が、自分用に売らずに残して置いたワインを、輸入業者が残された家族に頼みこんで限定入荷しました。14年を経てもまだ果実味とアルコール感がたっぷりで、収穫時の果汁の力を感じずにはいられません。更なる熟成にも十分耐えうる赤でしょう。

そしてドイツからはモーゼルシルトのヴュルツガルテン畑の遅摘みリースリング種で、約20年を経た97年と、94年の白2種。2種共に遅摘みし、完熟したたリースリング種の甘みと、豊かな酸味が今も溌剌とした印象。カリフォルニアの赤は創業者の遺品でしたが、こちらは蔵元のモーゼル・シルト社の廃業によって放出された、共にいわく付きのお宝ワインです。通常、長期熟成を経たワインは、保管料や金利負担等によりどんどん高くなりますが、今回の赤、白は、今発売されている若いワインと変わらない価格で入荷しました。ですからこの商品が完売後は代品がありませんので、気になる方はお早めのご注文をお薦めします。


スペインからはシェリーの逸品です。名門ヴァルデスピノ社が年に一回だけ発売する特別のマンサニージャ。海沿いの場所で造られたこのフィノ・タイプは、別格の新鮮さと、塩味がはっきりと感じられます。これ程に澄んだ味わいは、スペイン・ヘレス地方のシェリーの蔵元に行って、特別に瓶詰前の樽から試飲をさせてもらったレベルではないかと思います。シェリーをよくご存じの方にこそ、味わっていただきたいシェリーです。


ハードリカーでは、北海道・十勝ワインのブランデー原酒。1985年に蒸留し、30年以上樽熟成させていた原酒を、加水せずに小瓶に詰めました。59%のブランデーを生のまま極少量、舌の上に乗せると強烈な辛さと刺激が突き刺さります。その刺激をこらえて、5秒、10秒待つと、今度は少しずつ甘味と果実感が感じて来ます。ほんの数滴で舌の上では、地獄と天国の両方が体験できる貴重な液体と言えるでしょう。


今年も蜂蜜のお酒ミードが、元の蜂蜜と共に訓子府(クンネップ)から届きました。菅野さんが蜂から採取した菩提樹の花の蜜。この蜂蜜を発酵させたのがミードです。特に菩提樹の蜜は複雑な風味と濃さを持ち、イメージする蜂蜜とは全く別の物です。


食品からはサバティーノ・タルトゥーフィ社のトリュフ・ソルト。一般には「塩」単体にトリュフの香りを付けますが、ここでは豆のさやにトリュフ香を付けて、それに塩を加えた為に、塩分はあまり強くはありません。ですから味付けされたポテト・チップス等に振りかけても塩辛さは目立ちません。ちょっと良質なオリーブ・オイルにかけると、即席のトリュフ・オイルになり、このオイルを魚や肉料理にかけていただくと、高級レストランの味になったように思えます。

まずは2グラム入りの小袋でお試しください。

2016年 8月、9月

今月は本のお話しです。

今、当社でも扱っているマンガ仕立てのワイン・ガイドブック、小久保 尊(タケル)著「図解 ワイン一年生」。私は仕事柄、ワインの本を見つけると購入するようにしていますが、この本は今まで見た事が無い衝撃的なワインの本でした。著者・小久保 尊は33歳で、千葉県でワインバーのオーナー・ソムリエとか。


ワインは中世以降ヨーロッパでの飲み物だったので当然ですが、国内のワインの本は現地の書物を翻訳するか、見本にする物が殆どです。欧州では2000年以上の年を経て葡萄品種や産地が淘汰され、各葡萄産地内では区画による品質の上下が認知されています。しかし日本でワインが飲まれるようになったのは近代から。そして今では世界各地でワインが造られるようになり、物流の整備も進み札幌にいても世界各地の物が入手できるようになりました。伝統的な産地では歴史を超えたワインが残り、新興産地では今までワインを飲まなかった消費者に向けた新しいワインがどんどん生まれています。

しかし今までのワイン・ガイドブックは、欧州の伝説的なワインしか取り上げていませんでした。この筆者は今、日本で買える様々なワイン(伝統的な物と、新興産地の物)を同列に並べて、その時の気分や好みに合わせて選びましょうという切り口で本は書かれています。この新しいワイン選びに使われるのが、産地ではなく葡萄品種による分類。そして沢山ある葡萄品種を覚える為に、各品種をアニメのキャラクター化しました。このキャラクターが良く考えられており、カベルネ・ソーヴィニヨン種は優等生の男の子、シャルドネ種は誰からも好かれる可愛い女の子、ピノノワール種は人を寄せ付けない気品と美しさをを持った女性といった具合。まずはこの性格分けがとても的を得ていて感心します。

でも、いろいろワインを飲んで来ると、同じ品種でも違うスタイルの物がある事が分かってきます。出身はフランス・ボルドー地方のカベルネ種だって、アメリカや、チリで栽培されるとその産地の味わいが加味されて、少しずつ変わってきます。そういった違いをこの本では、ボルドー地方では優等生タイプのカベルネ君が、アメリカに行ったカベルネ君だとサングラスをかけていたり、ブルゴーニュの地方のピノ・ノワールちゃんは黒毛で影のある暗さを持っていましたが、アメリカのピノちゃんは金髪でガムをクシャクシャ噛んだ姿で違いを表現しています。


もう一点は品種や産地でワインを分類していますが、銘柄を明記せずに目安となるアバウトな小売価格を伝えています。たとえば「日本のビールは350缶で230円ぐらいで、とても美味しいですよ」と書いてある感じです。当然ビールメーカーはキリン、アサヒ、サッポロ、サントリーがあり、各社とも何種類か出していますが、どれを飲んでも美味しいですよと言う事でしょう。

この手の本は筆者の好みが当然あり、普通は好みのメーカーの商品が推奨されています。この推奨銘柄が無いという事は、勘ぐって言うとメーカーのお抱えになっていない事です。ガイド本を見て各名産地の推奨品の輸入元が1社に集中していると、多分この筆者はその会社と関係があり、味ではなく自分の都合で銘柄を選んでいると思われます。このデリケートな部分をこの本はバッサリと捨てました。ブルゴーニュの説明で、「千円、二千円台でブルゴーニュを買えば、まずひどい目にあうと思っておいた方がいいです」と言って、ピノ好きな筆者は安物買いでガッカリするぐらいなら、五千円以上の物を買ってピノの良さを堪能してほしいそうです。


このあたりの割り切りの良さは、私も業界関係者だけに「アッパレ」と言いたい気分です。内容の約1/3はマンガ仕立てで読みやすく、文章の所も重要な所は始めからアンダーラインが引いてあります。誰もが読みやすい「おちゃらけた本」に見えますが、筆者のワインに対する思いは公正で、厳格で、何より純粋なのでしょう。ワイン好きでしたら、1本買うのを我慢してでもこの本をジックリ読んでみてください。結構、ワインの本質を突いているような言葉に出会える事でしょう。



さて今月のお薦めワイン、まずは北海道から。

余市のオチガビ・ワイナリーのバッカス種15年。創業から3年を迎え、栽培、醸造、共に安定してきました。そして今までケルナー種より高額の設定だったバッカス種の価格が、15年からお安くなりました。お得な価格でふくよかな果実味と、熟した風味が楽しめます。

次はタキザワ・ワイナリーのミュラー・トゥルガウ種15年。この年からミュラーは醸造法を変えて、3種類の醸造法でワインを造りブレンド。フルーティな果実味はそのままに4割ほどを果皮と種と共に醗酵させた事で、果皮からのタンニンや旨みが味わいに厚みと輪郭を与えています。地元の葡萄を醸造によって更に磨きあげる試みがなされています。

そして十勝ワインのピノ・ノワール13年。地元ワインのパイオニア、十勝ワインが造るピノは熟成させ飲み頃になってから発売しています。今、道産ワインの多くは15年の中で、13年産を発売するのはメーカーの心意気でしょう。3年を経て熟成旨みが少し開いて来ました。

長野県・小布施ワイナリーのメルロで、葡萄は佐藤明夫氏のキャトル・サンク農園の14年。やはり長野産メルロは完熟感があり、ボルドー右岸の物に近い風味を持っています。涼しい北海道にはない、熟したチェリーの果実味とスモーク風味が楽しめます。


フランス・ボルドーからは、シャトー・レオヴィル・ラス・カーズが造るクロ・デュ・マルキ10年。何度も言いますが、値上がり前の10年産を見つけたら即、買です。完熟感と凝縮感がたっぷりで、二周りは豊かな風味が楽しめます。将来の楽しみに取って置きたいワインでしょう。

さて、ボルドーの09、10年産は当然美味しいですが、今、狙い目はその前後の年です。オー・メドック地区の大規模シャトー、ボーモン11年。この年は思いのほか出来が良く、めっけもんが見つかる年。

そして次は高額で知られるポムロル村から、クロ・ブラン・マゼイル11年。熟したメルロ種からの豊かな味わいの赤は限定の入荷です。ラベルではなく、中身と価格を優先する方にお薦めします。

日本で大人気シャトー・モンペラと同一オーナーで、トゥール・ド・ミランボーのレゼルヴ赤。完熟したメルロ種からのチェリー・シロップ風味に、上質な木樽の風味が混じってこの価格ですから、お隣、英国での人気もうなずけます。作柄の良かった09年と、06年産マグナム瓶が限定入荷。

ボルドー地方シャトー・ル・ノーブル11年は大変お得なオーガニック・ワイン。自然派ワインに多い癖などはなく、素直な果実味ときめ細かなタンニンが楽しめます。今月入荷のフランス赤で、旨安大賞決定!


ブルゴーニュ地方からは、良質な白2種が入荷。白の名門アンリ・ボワイヨのブルゴーニュ規格の白12年と、シャトー・ド・ピュリニー・モンラッシェが、シャサーニュ村のシャルドネ種で造る白11年。共に数年を経て若さが落ち着き始めた頃で、そろそろ飲み頃になって来ました。こういった名門生産者の物でこなれた物は滅多に見かけません。

今、シャンボール村でグングン評価を上げているエルヴェ・シゴーのシャンボール13年。有機栽培からの澄んだ果実味と、清らかな酸味がとってもチャーミング。現在7,000円以上しているこの村の赤が、この価格は見逃せません。


ピノ・ノワール種の赤のお値打ち品では次の3種がお薦め。まずは大人気ジャエ・ジルが造るパストゥグラン11年。セメントタンク熟成ですが一部を樽熟させたのでしょう、うっすらスモークが香ります。ピノの香り高さと、ガメイ種のコクが、5年を経て混じり始めています。

二番、セリエ・デ・ウルシュリーヌは自社畑ではなく、ネゴシアン(ワイン商)のワインですが、ここのブルゴーニュ規格のピノ・ノワールは素晴らしい作柄だった02年産。14年を経た熟成香と共に、素直な果実味が今も十分楽しめます。

三番目はニュイサンジョルジュ村のはずれに暮らすショーヴネ・ショパンのコート・ド・ニュイ・ヴィラージュ12年。4年を経てニュイ地区特有のタンニンと、果実味が調和してきました。旨安の中でも私が一押しするのはショーヴネ・ショパン。正にこれからが飲み頃の、お値打ちで良質なピノ・ノワールです。

今月はヴォルネ村でビオディナミ栽培を実践するフェヴリエ家の飲み頃赤が限定入荷しました。まずは本拠地ヴォルネ村の98年産。18年経た豊かな熟成香と、熟成旨みがきれいに楽しめます。


そして隣のボーヌ村に所有するシャルドヌロー畑の赤で98年と96年。こちらは共にもう少し熟成が進み、香りに紹興酒や麹のニュアンスがありますが、味わいは果実味とタンニンが調和した感じで香りよりは若い印象でした。約20年を経た名醸地のワインとしては破格にお安く、味わいもまだしっかりしています。誕生年の方だけではなく、古酒入門にも最適なワインでしょう。


南仏からは白、赤2種のワインです。白ではラ・クロワ・グラシオがピクプール種からの辛口。長女が醸造を担当し、フレッシュな果実味とミネラル感が調和した白に仕上げています。地中海沿岸で採れる生カキだけでなく、魚介類にピッタリのワインです。

赤ではラストー村のコンブ・デューが造る赤で2000年産。作柄の素晴らしかったこの年ですが、16年を経て今ではほとんど見かけない貴重なワインです。味わいはグルナッシュ種と他の品種が調和してきましたが、今も強さを持っています。


ロワール地方からはサン・マルタンのミュスカデが、少しお安くなりました。瓶詰め後2年を経てフレッシュさが落ち着き、少し味わいが調和して旨味がのって来ました。この価格は注目です!

山のふもとサヴォワ地方からはリュパンがルーセット種で造る白。アルプスからの澄んだ空気を味わうような爽やかな味わいです。


イタリアからはエミリア・ロマーニャ州で有機栽培を実践し、バリバリの自然派の醸造を行うイル・ヴェイの赤、白が入荷しました。若干、自然酵母由来の酸化風味がございますが、澄んだ果実感と、旨味を感じさせる味わいはここ独自の物です。


赤ではボッター・カルロ社のサリーチェ・サレンティーノで、樽熟せさせたリゼルヴァ規格。この価格で強さと、複雑さを持った赤は中々見つかりません。そして更に2~3年熟成させる事も十分可能でしょう。


カリフォルニアからはメーカーで品切れていた旨安ワイン、エイリアスのシークレット・エージェント赤がやっと再入荷しました。今までこの地では単一品種の濃くて強い味わいのイメージでしたが、少しずつ調和のとれたタイプが出て来ています。この赤も数品種のブレンドで、ミディアムな果実味とバランスの良い味わいが楽しめます。


スペインからのお薦めは白1種と、赤2種。白はアラゴン地区ランガのパイ・ブランコ。ここの畑が3.14ヘクタールだったことから畑名を「パイ(円周率)」と名付けました。古木のガルナッチャ・ブランカ種を樽熟成した白は、筋肉隆々の引き締まったスタイルでほれぼれするほどです。シャルドネ種を使わずに、2,000円以下で、パーカー氏が90点は付けそうな出来に「あっぱれ!」と言ってあげたい出来。

赤ではメルム・プリオラーティのアルディレス07年。プリオラート地区の急斜面畑で栽培された、ガルナッチャ種、カリニェナ種、他が9年を経て少し調和してきました。この地区の赤は通常3,000円以上するのに、半値に近い価格でパーカー91点の出来。こちらも又「あっぱれ!」の出来です。

後はスペインの天才的サッカー選手、イニエスタ氏のワイナリーの上級品でプレミウム。シラー種、カベルネ種、等3品種のブレンドを18ヶ月樽熟成させた赤は、凝縮した果実味と木樽風味が充分楽しめます。サッカーファンでなくても納得できる上級ワインです。


次はウィーンのあるオーストリアからの白。この国の白グリュナー・フェルトリーナー種は良質な事で知られますが、小規模生産者が多い為に価格も、3000円前後します。フーグル家の白は半値以下の価格で、品種特性がしっかり楽しめます。ちなみにこの白品種、岩見沢の10Rワイナリーさんが少量栽培しています。


今月はカリフォルニアから良質な物が多数入荷しました。白はヴィラ・マウント・エデンがビエン・ナシード畑のシャルドネ種で08年産。8年を経てグラマラスな完熟感と、カスタード・クリームを思わせる木樽風味が混じり始めた「コテコテ」の白。バターをたっぷり使った料理が恋しくなります。

アメリカの赤で名産地と言えばナパ・ヴァレー地区ですが、値段もハイクラス。コン・クリークは地元農家とのネットワークを生かして、お値打価格で良質なワインを造っています。カベルネ種のタンニンと、シラー種の果実味を生かしたこの赤は、価格以上の濃さと豊かさを持っています。一度ナパ・ヴァレーを飲んでみたいと言う方には最適の入門ワインでしょう。ナパのカベルネ種で有名銘柄を追いかけると値段は数万円以上になりますが、地元で多く栽培されるジンファンデル種では頂点の物でも1万円ほど。カリフォルニアでコスパを求める方は、この品種抜きには考えられません。

サイクルズ・グラディエーターは、日当たりの良い事で知られるパソ・ロブレス地区のジンファンデル種を中心にブレンドし、フレンチオーク樽でしっかりと熟成させる事で、フルーティさと複雑さの両方が楽しめます。


そしてオーク・リッジのエイシェント・ヴァイン。ジンファンデルの銘醸地ロダイ地区の自社畑の中でも、最高齢120年~80年木の実を使って醸造した逸品は、ネクターやシロップの様な果実味と骨太なアルコール感が口の中で爆発します。アメリカン・スピリッツの真髄とも言える強烈なワイン。


ハードリカーからは、モルト・ウイスキーの最高峰ザ・マッカランの18年。日本でもNHKテレビ「マッサン」の放映後、ニッカ、サントリーの熟成年数入りの物は完売したままです。今から20年以上前、世界のハードリカー市場はウィスキーからラムやテキーラ等を使ったカクテルに需要が移り、当時ウィスキー原酒の生産は激減しました。そして近年になって、モルト・ウィスキーがブームになると、飲み頃の原酒が少なく18年等の長期熟成品が今、生産出来ない状態になっています。何せ、今から原酒を増産しても発売できるのは18年以上先なのですから。


今月の食品からは2種のジュースです。ヴァンドームのクラシックは、ワインからアルコールを抜いて、炭酸を加えたスパークリング・タイプ。今まで数多くのノン・アルコール・ワインを試飲しましたが、我慢できる物がありませんでした。しかしドイツ製のヴァンドームは、きれいにアルコールだけを抜き取った印象で、味わいはかなりワインに近いものに感じました。

日本からはは倉敷味工房で作られた夏みかんジュース。ネクターの様な濃さは無くても、素直な果実感と柑橘の皮を思わせる爽やかな苦旨味が、大人でもお代りをしたくなります。