2003年 12月

 毎年秋になると東京から友人が遊びに来ます。なんとその彼が今年は全盲の男性を連れて二人で札幌にやって来たのです。まずは我が家で北海道名物ジンギスカンをご馳走して、翌日は温泉に行って来ました。
 全盲の方をお招きするのは初めてだったので不安はありましたが、お会いして話をしている内にその心配は吹き飛びました。ジンギスカンを食べながらワインを飲んだのですが、味わいのコメントが非常に的確なのです。イタリアのジャコバッツィ・ランブルスコ・ロッソで乾杯の後、北海道の山崎ワイナリー・ピノノワール、スペインのリベラ・デル・デュエロ地区の赤でヴァルデリス、出したワインが誉められると嬉しくなって最後はフランス・ソーテルヌ村の貴腐ワインでシャトー・ドワジデーヌまで開けて、ワインはフルコースになってしまいました。

 話の中で一番意外だったのは、一人で杖を付いて歩いている時に自動車が走っていないと怖くて歩けないと言うのです。外では耳が目の代わりになり、車が走っている音がする所は道路でその横には歩道があることが解るそうなのです。でも自動車の無い座頭市の時代は付き人がいないと歩けないと言うのです。
 その方は今施設で、一人でも生活出来るように訓練を続けており、コンピュータの勉強もしているそうなのです。そこではインターネットを音声で聴くことが出来、検索していて当社のホームページを開いたこともあるそうです。

 翌日の温泉の後に皆でジャスコ東苗穂店に行ってきました。そこで車椅子や移動用のベットに乗ったお客さんがいらっしゃいました。ベットの方は起きあがれないようで手鏡で棚に並んだ商品を品定めしていました。今までそんな光景を見ると大変そうだと思いましたが、考えてみると外出してショッピングを楽しんでいるのではと思えるようになりました。誰だって毎日同じ部屋の中にいたら精神が病んでしまいます。自分でさえ日曜日にリフレッシュすることでまた働く意欲が湧くことを思うと、体の自由がきかない方のストレスは計りしれません。
 別れる際、彼に何も言えませんでしたが、このホームページを開くと思うので「またワインが飲みたくなったら是非札幌に来てください。」