2008年 1月

 11月末に岩見沢の宝水ワイナリーに行って来ました。
目的は発酵が終わったばかりの新酒の試飲です。宝水ワイナリー06年産は余市と岩見沢の葡萄を使って仕込んだそうですが、07年は岩見沢の自社畑の葡萄のみで造った自信作!

予定より1便早い電車に乗れたので、岩見沢駅前の立ち食いそば屋「小もろ」で腹ごしらえ。この店のメニューは不思議なことに、かけそばも、天ぷらそばも、カレーそばも、そば類は皆300円なのです?それとゆで麺のせいもありますが、オーダーをして財布からお金を出す前にそばが出てきます。ちなみに私は500円のシンプルな味わいのしょうゆラーメンを頂きました。

ワイナリーへは駅から車で15分程で着きます。ここは新しい醸造所だけに最新の設備を見ることが出来ました。まずは約1メートル四方のプラスチックで出来た発酵タンク。軽い事と重ねられるので小ロットの仕込みに適し、赤の発酵前に行う低温浸漬もしやすいそうです。

次は小さな樽の形をした300リットル弱のステンレスタンク。このタンクは発酵終了後に、酵母菌等の澱(おり)を分離せずシュール・リー熟成させる際、通常の縦長タンクより容量に対して底面積が大きい為に澱の表面積が増え、澱からの旨味成分がワインに溶け込みやすい最新の物です。

試飲は白ケルナー07年から。発酵直後で炭酸が残っています。味わいはほぼ辛口で、熟した果実の風味とシャープな酸味が豊か。新鮮な柑橘の皮を思わせる心地よい苦味が味を引き締めています。

赤レンベルガー07年。紫の色調で濃さはしっかり。香りはインクの様でまだ閉じた印象、赤も炭酸ガス有、味はバランスが良くガメ種を思わせます、若いのに酸味が柔らかく少し熟成したワインに感じます。

最後は試験的に造ったと言う、樽熟8ヶ月のレンベルガー06年。色は07年より薄くグラスの縁は透明。濃い味わいではなくても、酸味が柔らかく若くても旨味が感じられます。もう少し熟成すれば、十勝ワインの銘酒、清美(キヨミ)の様に気品のある味わいになりそうです。

試飲後は近くでキジを飼育している施設があり、そこで出しているキジ肉チャーシュー入りで旨味たっぷりのキジラーメンをご馳走になりました。私にとってはラーメンが2食続きましたが、澄んだ味わいで美味しくいただきました。

さて、私は岩見沢でもう1軒寄りたい所がありました。岩見沢駅から歩いて5分ぐらいの、古い市場の中で営業している市川燻製屋本舗(0126-20-0300 日曜定休)です。

昔は魚屋さんや八百屋さんが20軒ほど入っていたであろう古い市場は、現在ほとんどが空き店舗で営業しているのは4軒ぐらいでしょうか。そんなさびれた(失礼)中で市川さんご夫婦が、目をキラキラさせてお客様に燻製の試食を勧めています。特にタチ(タラの白子)の燻製は感動ものです。でも美味しさ以上に、市川さんの嬉しそうな顔を見ていると買わずにはいられません。

会話の中で市川さんは、自分が元の会社を辞めてここ岩見沢で独立したのは、三笠の山崎ワイナリーの山﨑さんにお会いして勇気を頂いたからですと話され、私に山﨑さんをご存じですか?と聞かれました。私は「実は私の仕事は酒の小売店で、山﨑さんのワインを販売しており、今では親戚付き合いをさせてもらっています。本当に山﨑さんは素晴らしい方ですね」と答えると旦那さんは驚かれ、また試食を差し出されました。ここでサーモン、つぶ、タチ、カキの燻製をお土産に買い、JRで札幌に戻って店のスタッフと共に味わいました。

岩見沢は大都市ではないですが、身の丈に合った中で温かさや豊かさを感じさせます。多分近郊の農業が上手くいっている結果なのでしょう。ワインに関してもこの岩見沢を擁する空知地方では、鶴沼ワイナリー、山崎ワイナリー、宝水ワイナリー、そして中沢ヴィンヤードと層が厚く、更なる発展が期待されます。
町を車ではなくゆっくり歩いていただくと、ワイン屋のクラモチさんや、天狗まんじゅう、レイモンドカフェ等の個性豊かなお店が見つかります。皆さんも一度岩見沢へ遊びに行ってみませんか。

さて、今月のおすすめワイン。
まずボルドーの赤からは最高の作柄だった00年産。シャトー・フルカオスタン00年は、熟成感と若く豊かな果実味の両方が楽しめます。クロフロリデーヌ00年は、グラーヴ地区らしい土やタバコ葉の熟成香に、こなれたタンニンと柔らかくなった果実味が調和した飲み頃の美味しさが楽しめます。

ブルゴーニュからは飲み頃を迎えた03年産。カイヨのブルゴーニュ白03年は、ナッツ、スモーク香と果実味を引き締めるジンジャーの風味があり、この生産者が暮らすムルソー村のワインを思わせます。ヴェルジェが得意とするビュシェール村の03年は、ローストした華やかな樽香とそれに負けない完熟した柑橘類の果実味が、せめぎ合うようにグラスの中からどんどん広がって来ます。

イタリア、スパレッティ社のポッジオレアレ03年は、近年少なくなった大樽熟成させたワイン。こなれた酸、タンニンと果実味が調和し、舌の上で複雑さと旨味がじわじわと広がります。

最後は珍しく食品2種。広島県レインボー食品のカキのスモーク缶詰。香ばしいスモーク香と凝縮したカキの芳醇な味わいはちょっとクセになる程の美味しさです。瀬戸内海小豆島(しょうどしま)のオリーブ新漬け。ヤマヒサ社が10月末に発売したのは自社農園産ですが、こちらは近所の農家のオリーブで作った物。プレーンな塩味と浅漬けの食感に、じわっとしみ出るオリーブのしみじみとした旨味は、まさしくヤマヒサ独自の味わいです。