2009年 5月、6月

  5月に奥尻(おくしり)島に行って来ました。
 目的は今年4月に発売したばかりの奥尻ワイナリーの見学です。


 札幌を朝5時に出発して、瀬棚(せたな)発のフェリーに乗って昼には奥尻島に着きます。どこの醸造所でも収穫期以外はだいたい静かで、伺った時は商品の瓶詰めと出荷を行っていました。畑は当初、海に近い所にあったそうですが、塩害で木がダメージを受けた為、内陸部に新たな畑を作って栽培していました。こちらの畑はまだ木が若く幹も細かったですが、潮風の中で必死に育っている木の姿を見ると、「がんばれよ」と声を掛けたくなります。


 畑やワイナリーのある島の西側は、民家が少なく食肉牛の牧場が点在しています。ちょうど新しい牧草地へ10頭程の牛が道路を走って引っ越しするところを見ましたが、茶色くて何百キロもある牛がまとまって走っていると結構な迫力でした。この様子を見ていた私は、東京のレストランで買い占められ地元では入手しづらい焼尻(やぎしり)島のサフォーク種羊を思い出しました。同様に潮風を浴びた牧草で育てることで独自の肉質を持つブランド牛を狙っているのかも、そうなれば奥尻牛と奥尻ワインの組み合わせも人気になるのかもと一人で勝手に考えていました。


 夕食は民宿でアワビのお刺身と活アワビの地獄焼きを堪能したので、翌日の昼食は軽くと思いフェリー乗り場2階の食堂でラーメンにしました。私たちの後に地元40代の男性3名が来て、メニューを見ながら食堂の年輩の女性に話しかけていました。「この奥尻ワインってどうなのよ!」この言葉を聞いて、私はラーメンをすすりながらこのワインが地元でどう評価されているのかが気になり、つい聞き耳を立ててしまいました。


 食堂の女性は「私はワインがよく判らないが、ワイン好きな人に言わせるとまだちょっと若いと言っていた」と言うと、男性は「1本2千円以上もするから、スナックで飲んだら4~5千円は取られるのでちょっと高いなあ」と言い、別な男性は「町として推薦するならもう少し安くすべきだ」と言っていました。島のワインが発売され普段ワインを飲まない方々にも、こうして話題になっているのを聞いて私は少し嬉しくなりました。


 近い将来、奥尻ワインと奥尻牛もこの島のウニやアワビのように名産品になることを願っています。

  今月のおすすめワイン。
 濃さ強さが少し枯れ初めても、こなれたワインが好きな私。シャトー・ヴァランタン04年は、練れた味わいで安いのですから言うことなしです。ブルゴーニュからはフィリップ・ロティのマルサネ村シャン・サン・エティエンヌ畑の04年。5年を経てこの村特有のタンニンがやっとこなれて来ました。本拠地ジュヴレ村のワインも素晴らしいですが、良質なマルサネ村産のワインがジュヴレ村の半値となるとつい肩入れしたくなります。さらなる熟成も十分可能なポテンシャルを感じさせる、一押しピノノワールです。

 それとこちらは若いですが、アルゼンチンから ミッシェル・トリノのマルベック種(赤)、カベルネソーヴィニヨン種(赤)、トロンテス種(白)。この価格でここまでの濃度と味わいがあったら、誰も文句は言わないでしょう。是非一度おためし下さい。