2009年 8月、9月

 今月は食べ物のお話です。

 私は厚切りのお肉が好きなので、時々スーパーマーケットで特価のオーストラリアビーフを3~4センチの厚さにカットしてもらい、中心をレアの火加減で焼いて、かぶりつくのが密かな楽しみです。こうして厚切りを食べていると、薄切りの焼き肉や出来合いの焼き鳥は、なんかぱさついた感じがしてしまいます。

 先月の休日、家族で近所の銭湯に行った帰りに、やはり近所にある焼肉店「ミウラバーベキュー」(中央区南1条東3丁目マルヤマビル1階)に行って来ました。二年ほど前に開店したこのお店は帰宅時に前を通ると結構繁盛しており、一年前からは横のスペースで日中は格安の焼き鳥弁当の販売も始めると、こちらも人気で気になっていました。

 予約もせずに行くと、偶然ひとテーブル開いていたので助かりましたが大変な混みよう。早速メニューを見て生ラムと塩ジンギスカンに野菜とライスが食べ放題で一人¥1,630のコースを頼み、ビール1本と息子にジュース、後からイタリアのキャンティ・クラシコを1本頼みました。

 鍋はよくあるジンギスカン鍋ではなく、網のようなタイプ。火床に大きな炭が3本ほど入れられると気分は高まります。しばらくして登場した生ラムは1キロほどの塊で、カットされた一切れの厚さは7~8ミリもあります。もうその厚切りを見たとたん私の理性は吹っ飛びました。

 噛むと肉汁が出るジンギスカン、まさに肉の旨味と醍醐味が味わえる厚さなのです。タレも有名な「だる○」を思わせるキレのいい辛口タイプ。また野菜も、焼くと3割は焦げて食べられない「もやし」を使わず、キャベツのざく切りを採用した英断も気に入りました。家内と子供はご飯と共にお肉を食べていましたが、私は肉、ワイン、肉、ワイン、時々野菜、の繰り返しで、会話も出来ない状態でした。

 厚切り好きの私は言わずもがなですが、後で聞くと家内も美味しいと言っていました。お店の方には怒られますが、店内は割り切った考え方で内装にはあまりお金をかけず、その分を全て食材の肉につぎ込んだ姿勢にすがすがしさを感じます。肉好きな方は是非一度、この厚切りジンギスカンを味わっていただければ、私の感動が判っていただけるでしょう。

 さて、今月のおすすめワインです。
 ボルドーからはシャトー・トゥール・サンボネ メドック地区05年。作柄の良かった05年らしく、一回り豊かな濃さ強さが楽しめてこの価格は絶対にお得でしょう。ブルゴーニュ地方からはジャン・マルク・モレが造るサントネ村のシエネ畑06年の赤。白の造り手として知られるだけに赤でも澄んだ果実味を持ち、濃度ではなくピュアで品のあるピノノワール種の旨味が楽しめます。

 一方南仏からは78番キュイエラ氏がローヌ地方ヴィサン村で造るヴァンドペイ規格コント・ド・グリニャン赤07年。グルナッシュ種とシラー種を半分ずつ使い、グルナッシュからの骨格とシラーからのふくよかさが上手く調和したローヌの理想の姿がこの価格で楽しめます。

 もし濃度勝負のワインがご希望でしたら、カリフォルニア スターレーン・ヴィンヤードのカベルネソーヴィニヨン05年は横綱級です。安くはありませんがこの凝縮感と緻密さは、世界中何処の産地の10,000円クラスのワインでもかなわないような気がします。

 そして今回のリストで最も感銘を受けたのは151番ダイン・ハルトが造るダイデスハイム村のリースリング種キャビネット規格のトロッケン(辛口)01年。もちろん皆さんがドイツワインを選ばれないのは知っています。でも、このワインを飲んだ時の満足感を、品種は違いますがシャルドネ種やソーヴィニヨンブラン種で得ようとしたら多分5,000円でも無理だと思います。年に一度でも素晴らしいリースリング種を味わってみませんか?