2010年 11月、12月

 今年も三笠、山崎ワイナリーの収穫ボランティア募集受付の当社。
10月の私の休みと収穫日が重なり、家族と共にメルロ種の収穫に行って来ました。朝、畑に着くとメルロ葡萄がたわわに実っています。冷夏ですと黒葡萄の色目は赤茶けた感じになりますが、今年は暑かっただけに色も黒々。味わいはとても甘く、赤ワインにとって重要な葡萄の種の色も茶色がまじり、噛み潰しても未熟な青さが目立ちません。

後で聞いた話では、今年は特にメルロ種の作柄が良かったそうです。今年から大学を卒業し家業を手伝う次男、太地さんは、収穫に参加した皆さんをまわり色々アドバイスをしています。

幼稚園だった頃は一時間も作業をすると葡萄のつまみ食いにも飽きて畑で遊び回っていた息子は、小学校3年生になり昼の1時過ぎまで皆と同様に収穫の手伝いが出来るようになりました。朝は雲一つ無かった空に11時ぐらいから少しずつ雲が増え始め、昼を過ぎると一雨来そうな空模様。こうなると時間との戦いです。1時過ぎには何とか収穫を終え、山崎さんのログハウスの中で特製カレーライスをご馳走になっているとスコールのような雨が降り始めました。

この食事の際に、貴重な醸造途中のワインを試飲させていただきました。9月に収穫を終えたバッカス種は、発酵もほぼ終わり白ワインの味わいに近くなっています。このバッカス10年は09年と同様に残糖感が少なめで、中口タイプになるのでしょうか。次に試飲したケルナー10年はアルコールが約半分の5%程しかなく、まだ白く濁っています。味わいは残っているブドウ糖の甘さと品種特有の豊かな酸味が心地良く、この年のケルナーも例年と同様に安定した品質を感じさせました。

そして赤ワインは昨年09年産ピノノワール種で、タンク違いによる2種類を試飲。まずは通常のフィルターを通して澄んだ状態の物。冷夏だった昨年の物とは思えない完熟感と穏やかな酸味に驚きました。次はフィルター無しのピノノワール09年、瓶底にハッキリとオリがあり少し濁っています。味わいは旨味成分の量がフィルター後の物より豊かで元が同じワインだったとは思えない出来。私、個人的にはこのノンフィルターの味に興味を持ちました。

太地さんは軽トラックで収穫した葡萄を醸造所に運び入れ皆より遅れて食事を始めましたが、私が味わいのコメントを言い始めると食事を止めて広報担当者になります。「09年ピノに関しては、昨年出来る限り収穫を遅らせ完熟を待ったのと、醸造担当の兄、亮一さんがアルコール発酵の後に起こるマロラクティック発酵(ワインの酸味が穏やかになる)の扱いがさらに上達したため」と嬉しそうに説明してくれました。

一方、兄の亮一さんとお父さんは昼食をサッと済ますと、直ぐに醸造所に戻っていきました。帰る前にワイナリーの直売所に寄ると、お母さんと妹さんはにこやかにお客様を出迎えています。ご存じの方も多いでしょうが、山崎ワイナリーのラベルに描かれた5枚の花びらは家族5人の指紋をモチーフに描かれています。まるでラベルの花の様に山崎家の5人が一つになって働く姿こそが、山崎ワインの美味しさの秘密だったのでしょう。

さて、今月のおすすめワインです。
近年、値上がりがひどくお買得な商品が少ないボルドーですが、シャトー・カマンサックのセカンドワイン、レ・バイィ・・ド・カマンサック05年は、天候の良かった年らしく強さと木樽の風味がストレートに楽しめます。 逆にシャトー・ラウール02年は、濃度ではなく薄旨系の味わい。グラーヴ地区の特徴である革やたばこの葉の熟成香と柔らかな果実味が楽しめます。

一方、ブルゴーニュからはアラン・グラ家の本拠地、サン・ロマン村の白08年とロッシュ・ド・ベレーヌのブルゴーニュ規格の赤でヴィエイユ・ヴィーニュ(古木の葡萄)02年。共にブルゴーニュ産でふくよかな果実味が楽しめてこの価格帯はかなりお得だと思います。特に02年産の方は村名が付かない規格でありながら8年経ても枯れた感じがしないのはたいしたものです。

輸入元にて欠品していたアルザス地方テュルクハイム村協同組合のワインがやっと入荷しました。安くて美味しいアルザスといえばここは絶対に外せません。特にゲヴュルツトラミネール種は、特有の華やか香りとふくよかな味わいで一番人気です。

フランス以外ではイタリア、トスカーナ州・クエルチャベッラのキャンティ・クラシコ07年。定価3,900円が年末まで特価になりました。名門クエルチャベッラのワインをこの機会に是非お試し下さい。

私が好きな熟成したイタリアの安旨ワインでしたらモンカロ社のロッカヴィヴァ ロッソ・ピチェーノ05年。普通、この価格帯ですと08年か09年産が多いですが、赤はせめて5年は熟成させた物を味わいたいと思っている方にお薦めです。インパクトのあるタイプではありませんが、お食事と共に味わっていただくと美味しさがしみじみと感じられるでしょう。


最後は私が大好きなリースリング種。ドイツの辛口タイプ、デビルズ・ロック07年。和食の魚か野菜料理には抜群の相性で、このお値段で満足してしまう私は安上がりな人間ですね。