今月は古い電気製品のお話。
店舗のBGM用オーディオアンプは、今は無きサンスイ社で40年近く前の製品。AU-9500という機種で、数年前知人から譲っていただいた中古品です。CDプレイヤーと小さなスピーカーは現代のものですが、この古いアンプで毎日店内に音楽を響かせています。
発売当時、この機種は有名だったらしく、レジ奥に置いてあるのを見つけて「実は、私もそのアンプを持っていました。」と言われる事が時々あります。
さらに私は店舗の2階奥にある事務室にも音が恋しくなり、自宅で壊れていた古いミニコンポを15,000円程かけて修理して持って来ました。
こちらはビクター社のFS-10という機種で、サンスイよりは新しいですが12年ほど前の製品。この器械は購入後1年ほどで自動開閉するCDの蓋が自力では開閉出来なくなりましたが、止まった位置から指で押してあげれば作動します。幅12センチの小さな箱に付いたフルレンジスピーカーはたった8センチですが、BGM用としては十分クリアで楽しい音を聴かせてくれます。
両方とも古い器械ですが、ワインを仕事にしていると古いものに対する偏見がなくなるのと、気に入った物は大切に使う為、この2台は当分現役で働いてくれると思っています。ご興味ある方は、ご来店いただければご覧いただけます。
さて今月のオススメワインは、有名なボルドー、ブルゴーニュ以外でも良い物が多く入荷しました。
南仏からのお買い得品は、ダンデゾンが造るコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ08年。シラー種主体のワインは濃さがしっかりとあり、肉の煮込みかコショウを効かせたステーキが食べたくなります。
コート・デュ・ルーション・ヴィラージュ地区の葡萄で造られたヤエ。このワインの決め手は3品種の葡萄のブレンドですが、その各品種がそれぞれ複数年のワイン、さらに木樽熟成品とタンク熟成品と様々な原酒をブレンドしたため、濃度だけではなく奥行きと複雑さのハーモニーを楽しむ事ができます。
イタリアからはヴィネア社が造る、ワイン法の盲点をついた規格外のワイン3種、カ・バローネ、ガルガーネガ、コルヴィーナ・ヴェロネーゼ。カ・バローネはこの地方の銘酒、アマローネ(コルヴィーナ種等を収穫後に陰干して、干し葡萄にしてから発酵させた強烈な赤)をタンニン豊かなカベルネソーヴィニヨン種で造った反則技のような赤。この濃さでこの価格は向かうところ敵なしでしょう。
ガルガーネガは白の銘酒レチョート・ソアヴェ(遅摘みし糖度が上がったガルガーネガ種で造る天然の甘口ワイン)までではなく、過熟手前まで収穫を遅らせて発酵させた辛口で芳醇な白。これを味わってしまうと普通のソアヴェは飲めなくなってしまう程豊かな味わいを持っています。
コルヴィーナ・ヴェロネーゼは前述した有名なアマローネの弟分にあたるリパッソ法(アマローネを仕込んだ後に残った葡萄の皮を通常の赤ワインのタンクに入れる事でアマローネの風味を加えて濃くする製法)とアマローネ用の干し葡萄も加えて再発酵させた芳醇な赤。カベルネ種よりもイタリア地元品種がお好きな方には絶対お勧めです。
同じイタリアから食品ではチリオ社のフレバード・オリーブオイル。全種類とても良質だと思いますが、中でもトリュフ風味は秀逸。しかも通常トリュフ・オイルは他のフレーバー物の2倍以上の値付けですが、ここでは他のフレーバードと同価格の設定、これは見逃せません。いつものサラダやパスタが、仕上げにこのオイルをかけるだけで、ちょっと豪華な一品に生まれ変わります。
最後はリースリング種が大好きな私。今月も美味しい白が入荷しました。
ドイツ・ファルツ地方の名門ブール家がリースリング種で造るQbA(クーベーアー)辛口タイプ。華やかでケミカルな香りと爽やかな酸味はもちろんですが、南部ファルツ地方の味わいは北部モーゼル地方とは違って完熟した果実味がたっぷり。
モーゼルワインを墨で描かれた山水画に例えれば、ファルツはゴッホのような鮮やかな色彩の油絵を思わせます。
そして、これが気に入った方はぜひ、同じブール家が造るヘアゴットザッカー畑のキャビネット・トロッケン08年をお試しください。このワインを口にした時、私は強烈なミネラル感とあふれる果実味に、驚きを超えて呆れてしまいました。