2011年 10月

9月の休みに栗沢の中沢ヴィンヤードさん、岩見沢の宝水ワイナリーさん、三笠・達布山の近藤さん、そして山崎ワイナリーさんと葡萄畑を回ってきました。生産者の皆さんがまず最初に言われることは、今年の7月前半の雨で開花時期の受粉がうまく行かず結実不良となり収量が約3割減ってしまった事。それと今年は比較的雨の日が多く、何とか結実した実が完熟する為にはもう少し晴れの日が欲しいそうです。

さて近隣にある4軒の畑を回ると、皆さんそれぞれこだわりがあり、畑を見ただけでも明らかに異なります。今は皆さん全員が農家ですが、山崎さんのように代々続く農家さんと、ご自分で農家になった方とは畑が大きく異なります。私が勝手に思うのは、代々農家の方の畑は雑草が刈り込まれ、見るからに整備された畑の中で葡萄の木が栽培されています。

一方、新たに農家になった方の多くは、さまざまな草や虫を含めここの自然環境の中で葡萄を栽培しようと思う為に、草の中で葡萄がすくすくと育っています。でもこうした畑の仕立ての違いも含め、根本には主のワインに対する思いがさまざまな面で形となり、最終的には味わいの違いになってくるのでしょう。

湿気の多い今年は何処もカビの対策に躍起なのと、今年はスズメバチが大量発生して葡萄の実に多少被害が出てきていると言われていました。収穫まであと少し、札幌では雨が降っても葡萄畑では降らずに少しでも実が熟すことを願わずにはいられませんでした。

ところで朝札幌を出発し、岩見沢で高速を降りて中沢さん、宝水さんと回ると、時刻は昼どき。宝水さんの直ぐ側には雉(キジ)を飼育し、そのスープで作ったキジラーメンで知られる食堂があります。普通の鶏がらスープより旨味があるのと、1番人気の「塩」にたっぷり入っている岩海苔の香りが素直な塩味にマッチして私はお気に入りです。


さて今月のオススメワイン。
ブルゴーニュからは、クリストフ・ブリチェックが造るモレサンドニ村08年。ふくよかな果実味に鉄分を思わせる複雑さが合わさり、この村の良さが素直に味わえます。一方同じ生産者の1級畑は、持ち前のふくよかさに透明感と品の良さが合わさり格上の味わいが楽しめます。

白はスフランディエールが本拠地プイィ・ヴァンゼル村の葡萄で造る08年。ヴァンセル村を代表する造り手は有機栽培を実践し、隣のフュイッセ村よりも豊かで凝縮した味わいを生み出しています。樽発酵による豊かなヴァニラ風味に少し混じるすり下ろしリンゴの風味は、酸化防止剤をほとんど使っていない証でしょう。

ボルドーからはコート・ド・フラン地区のシャトー・ピュイグロー06年。元々お値打ち品で知られるこのシャトーですが、少し熟成した06年産でこの価格は驚きです。ふくよかな果実味にカベルネ種のタンニンがうまく合わさり格上の複雑さが楽しめます。また、同じシャトーの04年産も当社在庫がございますので、ご興味のある方はお問い合わせ下さい。

南仏からはブルゴーニュ地方マルサネ村のフジュレイ・ド・ボークレールが地元でも珍しいピクプール種で造る白。南らしく完熟した果実味とおだやかな酸味まではよくあるタイプですが、豊かなミネラル分で引き締められた味わいはさすがブルゴーニュの造り手と納得しました。

赤ではコート・デュ・ローヌ地区のシャトー・シニャックが造る03年産。とても熱かった03年らしく8年を経ても豊かでスパイシーな果実味がたっぷり。まだまだ熟成し続けるポテンシャルを十分感じさせます。

あとは今、注目のスペイン。何と言っても、トロ地区のボデガス・マツが造る赤。栽培されているテインタ・デ・トロ種(テンプラニーリョ)の樹齢の違いで3種ありますが、一番若いエル・ピカロでも十分この地区特有の野太く、力強い味わいが楽しめます。斬新なラベルは樹齢に合わせて青年男子、熟年男性、ご老人の顔が作品の様にアップで写っており、産地やワイン名等の文字は裏ラベルに記載されています。

同じスペインでも白の方は今もなかなか評価されませんが、ルエダ地区のナイヤ09年はちょっと驚く出来栄えでした。地元のベルデホ種を1割ほど樽発酵(残りはタンク)させたワインは、ソーヴィニヨンブラン種のメリハリ感とシャルドネ種のバランスの良さが楽しめる、いい所取りの様な味わい。私は仏ロワール地方の銘酒バロン・ド・エルのニュアンスを感じました。白ワイン好きには一度お試しされることをお勧めします。