先月、中学校の同期20人ほどが集まる会に参加しました。問題児だった私は、この手の会に縁遠く卒業後37年目で初参加。自分が何組かも忘れていて、会場で教えられる始末。
久し振りに会った担任のF先生は少し年を取った感じでしたが、話をするとバカな事をして何度も怒られた記憶が鮮明に蘇りました。
今もそうですが昔はもっと勉強が大嫌い。落ち着きが無く、根気が無く、宿題もしない生徒でした。元々厳しいF先生でしたが、自身の教科だった数学の授業中はさらにビシビシと指導してくれた為、2年生の途中から数学の宿題だけはするようになったのです。
すると少しずつ授業の内容が解り始め、中学3年の頃は数学が好きになって来ました。たまに難解な図形の問題なんかを先生に指名されて黒板で解いた時、誰かが「すげー」なんて言ってくれると「俺って、数学得意じゃん」と思ったもんでした。
しかしこんな幸せな日々は長続きせず、高校では相性の良い先生に恵まれなかった事もあって、元の怠惰な自分に戻ってしまい現在の自分があるわけです。
今考えてみると厳しい先生が自分に合っていたのは、父親を早く亡くしたせいで、代わりに叱ってもらえる人を探していたのかも知れません。
私の父が亡くなったのは、今の息子と同じ小学校4年生の時。当時の事は悲しみよりも父の葬儀で親戚の子供達が集まり、お寺の長い廊下を走り回って怒られたこと位しか覚えていません。
そして現在の私はといえば、息子と会話中に形勢が悪くなり話題を変えると「なぜ急に話を変えるの?」とやり込められる始末です。息子の成長より、私の父親としての成熟を早める為には、52歳の私を叱ってくれる厳しい先生をまた探す必要がありそうです。
さて今月のオススメワイン。
ブルゴーニュからはベルナール・ドラグランジュが造るオーセイ・デュレス村で23年を経た88年産。ここでは蔵元内で飲み頃まで熟成させてから出荷する為に状態が良く、古酒に多い同一ロット内でも瓶の違いによる味の差が少ない生産者として知られています。
果実味は枯れ始めていますが、大き目のグラスをお使いいただければ干した果実やなめし革を思わせる熟成香と旨味が広がります。
白はシャブリジェンヌが造るシャブリ村1級フルショーム畑の02年産。石灰やミネラルの香りに9年を経てカスタードを思わせる熟成香が開き始めてきました。若飲みされることの多いシャブリで、こういったワインは貴重でしょう。
ボルドーからはオーメドック・ド・ジスクール05年。当社でも大人気で一度品切れた、最高の年05年産をやっと見つけました。05年らしいふくよかな果実味と木樽の風味は今でも楽しめますが、更なる熟成も十分可能なワインです。
もう一点は46番ボルドー・コート・ド・フラン地区のシャトー・ピュイグロー07年。作柄にムラの多い07年産ですが、このシャトーでは厳しい選別を行ったのでしょう。黒みがかった深い色調と豊かな果実味を持ち、さすがは評価の高いピュイグローと納得させられる味わいでした。しかもこのシャトー、通常は2,500円程していますので、今回の価格は絶対に買い!だと思います。
そして今月の飲み頃古酒で一番のオススメはレオニャン村のシャトー・ラ・ルヴィエール・ブラン82年。赤と違って白の古酒は人によって好き嫌いが分かれる事は解っていますが、この価格で約30年前のワインが入手できるのは見逃せません。
このシャトーの白はソーヴィニヨンブラン種85%で、爽やかさと木樽が調和した味わいで知られています。しかし約30年という熟成時間は、ここのワインをセミヨン種主体の様な骨太で芳醇な味わいに変えてしまいました。
古酒好きの方でなくてもハニー、樹液、ワックスを思わせる熟成香と、豊かで複雑さを持った味わいは気に入っていただけると思います。
イタリアからはとっても旨安な赤と白。赤はグラーティが造るキャンティでヴィッラ・ディ・モンテ08年。収穫後まだ3年ですが、熟成が早く進む大樽を用いた為にこなれた味わいがこの価格で楽しめます。
白はラ・ムローラがマルケ州マテリカ地区のヴェルディッキオ種で造る白。この品種と言えばカステッリ・イエジ地区が有名ですが、マテリカ地区ではより凝縮した味わいを持つことで注目されています。ただマテリカ地区のワインは一般に2,000円以上するためこの価格は注目です。
そして私の大好きなリースリング種からはチリのヴィ-ニャ・レイダ社のレセルバ級のリースリング10年。私の本音はこの品種は北国の特権にしたかったのですが、勢いのあるチリではリースリング種も見事なワインに仕上げています。
そして最後は「ヴァンガード」と言うワインを保存する容器。色と大きさは250gの徳用インスタントコーヒーの瓶の横に注ぎ口を付けたぐらい。まずは上に付いた茶色のふたを開け、内側の白い落し蓋も取ります。そして栓を抜いたワインを中に注ぎ入れます。次に内側に白い落し蓋をしてから、本体に茶色のふたをして完了です。
後はレバーを引けば注ぎ口からワインがちょろちょろ出てきます。ポイントは内側の落し蓋で、本体の円柱内側とほぼ同寸で隙間が無く、レバーを引いてワインが減るとそのままワインと共に下に移動するため空気が入らず保管できます。
ワインの保存器具では「バキュバン」を始めとする、ワイン瓶の中の空気を抜いて酸化させないようにする物が一般的です。当社では25年経った熟成ボルドーワインを開けて半分をヴァンガードに入れ、その減った瓶にバキュバンを付けて経緯をみました。
すると3日目ぐらいから風味に差が出始め、1週間でははっきりとバキュバンの方に酸化が見られ、ヴァンガードではフレッシュさが保たれていました。その後テストは2週間目まで行いました。またバキュバンでは空気を抜くため、香りが抜けてしまうという声もありますが、この点でもヴァンガードでは問題が無いようです。
当社店内のカウンターでは、夕方から立ち飲みワインバーを営業していますが、ここでは毎日ヴァンガードでサービスしております。ご興味のある方はお気軽に声をかけてください。