私は書店で三遊亭(さんゆうてい)圓生(えんしょう)の落語のCDを見つけると、つい買ってしまいます。
家内がそんな私のために、林家たい平独演会のチケットプレゼントに応募してくれました。その懸賞の結果ははずれたのですが、残念賞として半額で鑑賞できる割引券が郵送されたので、息子と二人で観に行って来ました。
夕方6時に入り口で券を買い、開演の7時までに食事を済ませます。今夜は落語ですから洋食はいけません。
私はテレビ塔の地下にある手打ちのソバ屋さんに入り、息子は冷やし狸そば、私は日本酒ともりそばを注文。
そばが来る前にちびちびと増毛の国稀を味わっていると、私の頭の中ではお囃子(はやし)がチントンシャンと鳴り始めています。
実は今日の独演会に少々不安がありました。私が聞いていたのは「昭和の落語界を代表する名人の一人」なだけに、伸び盛りとはいえ若手の噺家さんの落語は楽しめるのだろうかという気持ちです。
開演後、まず前座に出た女性のお弟子さんの噺で、そんな心配は直ぐに吹き飛びました。
そして林家たい平さんが登場、幽霊になりすまして友人を驚かす噺と、古道具屋さんの人情噺の二つを充分堪能させていただきました。
この日、実はさらにもう一点の心配事がありました。小学5年の息子が落語を楽しめるかどうかです。
二人でそばを食べながら、「落語はすごく古くから続く芸で、話し言葉も今とは違うので解らない言葉が出てくるかもしれない。でも解らない言葉は無視してもいいから、がんばって聞いていくと最後はちゃんと解ると思うよ。」と伝えました。
開演中の私は、時々横目で息子の様子をうかがっていました。息子は前座の時は、きょろきょろして余り楽しんではいませんでしたが、たい平さんが話し始めると前のめりになって食い入るように聞き入っています。
今回は半額割引券という策略にまんまと踊らされた形ですが、林家たい平さんのお陰で楽しい休日を息子と過ごすことが出来ました。
そして今度はたい平さんに、私が大好きな人情噺「文七元結(ぶんしちもっとい)」を演じてもらいたいと思いました。
さて今月のオススメワイン。
今月は熟成したワインで良いものが多く見つかりました。
まずは、ジュヴレ村の名門カミュ家の特級畑マゾワイエールで98年。現代的な濃縮果実味のタイプではありませんが、ミディアムで奥行と複雑さが楽しめてこの価格はちょっとあり得ません。
ボーヌ村で古酒の在庫を多く持つコヴァール家。ここが得意とするボーヌ村の1級サン・ヴィーニュ畑で、最高のブドウが収穫された02年産が入荷しました。10年を経てもこの村特有のふくよかな果実味がたっぷり残り、さらなる熟成にも十分のポテンシャルを感じさせます。
変わってボルドー地方からは07年ですが、ポイヤック村のシュヴァリエ・ド・ドプラ。
このワインはポイヤック村で数ヘクタールの広さしかないシャトー・ベルグラーヴのセカンド的ワイン。名前にシャトー名は付きませんが、この村らしい力強さを持った味わいと5年を経た熟成感の両方が楽しめます。
一般に4,000~5,000円はするポイヤック村のワインがこの価格なのはここのシャトーの知名度が低いため。名前よりは中身を重視する方にお勧めします。
メドック地区の頂点にいるシャトー・ポタンサック93年。雨が多かったこの年ですから、19年も経つと枯れ果てた味わいだろうと先入観をもって試飲しました。
すると色調、味わい共に驚くほど強さがあり、改めてオーナー、ドゥロン家の努力を見せつけられた気がします。
カスティヨン地区の名門シャトー・サント・コロンブの03年。有名なミッシャル・ロラン氏がコンサルタントした人気シャトーで、暑かった03年産が特別価格で入荷しました。
完熟したメルロ種からのふくよかな果実味が9年を経て木樽の風味と調和し、豊かな熟成香がグラスから立ち上るでしょう。ボルドーの03年産は絶対買いです!
そしてボルドー規格のシャトー・カンサック99年。1500円以下のボルドーといえばメルロ種主体がほとんどですが、こちらはアントル・ドゥ・メール地区では珍しくカベルネ・ソーヴィニヨン種主体。
そのせいか13年を経てもタンニンが味わいを支えており、果実味の枯れた部分を熟成旨みがうまく調和しています。特に古酒好きの方には箱買いしたくなる価格でしょう。
イタリアからはバロンチーニのキャンティ・リセルヴァ08年。この価格で樽熟成24カ月は造り手の意地でしょう。ディリーワインでも少し練れた味わいがお好みの方には最適の赤ではないでしょうか。
白はカヴァリエリ社のコッリ・ラヌヴィーニ スペリオーレ09年。ワイン単体で飲まれるとマルヴァジア種からの苦みが目立ちますが、オリーブオイルを使った料理と共に味わうと苦みが消えて旨みが出てきます。ぜひ一度、この味わいの変化を体験してみてください。
チリからはケブラダ・デ・マクール社のアルバ・デ・ドムス09年。低価格のイメージが強いチリのカベルネ・ソーヴィニヨン種ですが、こういった上級品になると持ち前の濃さに加え、複雑さと上品さを感じさせてくれます。特に高騰が続くボルドー地方の赤の代替え品として、じわじわと人気が出てきました。
最後は食品です。去年大人気だったフランスのマセズ社のトリュフ・チョコの500g缶が再入荷しました。このトリュフ一粒で、食後のひと時がとても豊かな時間に感じられることでしょう。
「ボンジュール!サバ缶」と名付けられた、フランス産サバの缶詰各種。日本でもお馴染みのサバ缶が、おフランス産になると何故こうもオシャレになるのでしょうか?
真っ白なお皿にこの缶詰とフランスパンのスライスを並べただけで絵になりそう。ちなみにフランス語で「サヴァ」は「よ!元気?」といった意味のくだけた挨拶で、日本の鯖(サバ)をフランス語ではmaquereau(マクロ)と言うそうです。