夏と共に冬休みの間も、家内と息子は東京の実家に帰省します。
正月明け、ジージ、バーバの元で好き放題をしている息子から珍しく電話が来ました。「お父さん、マグロが一匹いくらになったか知ってる?」
そう、東京築地市場の初セリで大手寿司チェーン店が、マグロ一匹を一億五千万円で競り落としたニュースの事です。
電話で私がそのニュースは知っているよ、と答えると「ワインショップフジヰは、そのマグロ買えるの?」。ちょっと想定外の息子の質問にドキマキしました。
「お父さんだけでなく、会社のみんなで必死に1年間働いたお店の売上の合計だったらそのマグロは買えるけど、
そうしたら残りのお金は殆どなくなっちゃって、会社のみんなのお給料も払えないよ」と答えました。
息子は「でもすごい!買えるんだ!」と言って喜んでいました。
数年前まで、お年玉は大きい500円玉がお気に入りでしたが、 小学5年生にもなればお札の魅力も解っています。
しかし大人であっても、1億円の実際のイメージは銀行勤務でもなければ分からないのが事実かも知れません。
そんな時、息子も大好きなマグロのお寿司。その魚が一匹、一億五千万円というニュースは、
随分昔あった「三億円強奪」のニュースと同様に、良い意味で社会勉強になるものだと思いました。そして、今年のフジヰはもっと頑張らないと、年明けマグロの初セリ価格に追い越されてしまうでしょう。
さて今月のオススメワイン。
まずは仏ブルゴーニュ地方の赤から、クリストフ・ブリチェックが造るモレサンドニ村クロ・ソロン畑の赤10年。
香りのトップはスモークで、直ぐにチェリー・シロップ。舌の上でも瑞々しいチェリーの果実味が広がります。
今は魅力的な赤系果実の風味だけでも美味しく飲めちゃいますが、酸味とタンニン、そして上質な樽の風味がたっぷり溶け込んでいます。
でも真の飲み頃はあと7~8年熟成させてからでしょうか。もちろん予算に余裕のある方は、5番同じ造り手の1級畑の方を絶対お奨めします。
お安めの物ではパトリック・ユドロのブルゴーニュ・ピノ・ノワール10年。
この低価格で有機栽培をおこない、十分以上に薄旨系の美味しいワインに仕上げています。
ところで、09年が最高の年と言われていますが、ブルゴーニュに関しては赤、白ともに10年の方が上なのでは、、、と最近思っています。
さて白では、シャンドン・ブリアイユが造るペルナン村の宝とも言える1級畑イル・デ・ヴェルジュレス09年。
果実味とミネラルがたっぷりの骨太な味わいは、化粧無しのすっぴんの旨さがあるような気がしました。
皆さんにも味わっていただき、印象を伺ってみたい気がします。
白のお安めの物ではシャルル・ルノワール社のシャブリ11年。
定価的には2000円はするシャブリですが、まずはこの低価格でありながら薄っぺらくないのです。
そこそこの果実味とこの村特有の石灰質土壌のニュアンスがあるので、当社で高いシャブリを買われている方々が、
全部これに代わったらどうしようと思ったほどです。
ボルドーからはポイヤック村のシャトー・クロワゼ・バージュで約50年前の1964年。
40年を過ぎたコルクの抜栓は、コルクがボロボロになっている事が多く、ちぎれたり、折れたりで緊張します。
でも今回入荷分は、同シャトーで近年コルクの打ち直しがされているので安心して抜栓出来ると思います。
状態の良い50年前のワインが、この価格では普通見つかりません。誕生年じゃなくても買うべきワインでしょう。
お安めの中では、オー・メドック地区マコー村のシャトー・ド・ジロンヴィル08年。オーナーは元銀行家で、ワインに魅せられた方。
特にプティ・ヴェルド種に愛着があるようで、通常1~2%しか使われないこの品種を10%も栽培しブレンドしています。
更に同じ村に所有する上位シャトーのベル・ヴューでは、プティ・ヴェルド種を20%も使っています。
この品種は晩熟で作付け場所を選びますが、完熟するとカベルネ種よりも豊かなタンニンを持つそうです。
ジロンヴィルも豊かな果実味とタンニンで、価格以上の満足感が楽しめます。
更にお買い得なのは、ボルドー・スペリュール規格のシャトー・デュ・ボワ・シャンタン10年。
この価格のボルドーと言えば、多くは未熟な青さがあったり、薄っぺらだったりで、なかなかお薦め出来る物は無いのが実状。
ただ、同じシャトーの09年を販売していて好評でしたので、09年完売後に10年産を1本取り寄せ試飲しました。
多分10年は薄いだろうと思って試飲をしたら、当社スタッフの皆が目を丸くしました。
「10年も美味しいじゃない!」今月の安旨・赤ワイン大賞受賞です。
南仏の赤ではギガル社のジゴンダス村と、サンタ・デュック社のラストー村で、共に07年産。
この年、南仏でまずいワインは出来ようがない天候だったそうです。
それだけに6年を経ても、まだまだダイナマイトのように強くてスパイシーな味わいがたっぷり。
箱で買ってあと数年間でも冷暗所に保管しておけば、同一ワインの熟成度を年ごとに楽しむ事も出来るでしょう。
南仏の白ではファンカリユ社が造るペイ・ドック地区のシャルドネ種11年。
温暖な産地のシャルドネ種を、タンクと樽とで発酵させた後に樽熟成させました。樽のさじ加減が上手で、誰もが「ちょっと上物の白」と思う味わい。
この価格ですから文句無く、今月の安旨・白ワイン大賞受賞です。
イタリアではコリーノが所有するバローロで筆頭の畑ジャッキーニの07年。
現代的な製法を用いたワインは、パーカー94点バローロと思って味わうと拍子抜けするほど柔らかくて今から美味しいです。
強烈なタンニンの伝統的タイプの物を20年熟成させてから飲むのもいいでしょうが、
コリーノのバローロは収穫後6年ほどでうっとりさせるだけの魅力を十分持っています。
もう1点トスカーナ州バロンチーニ社が造るサン・コロンバーノ・キャンティ・リセルヴァ09年。この価格で樽熟成24ヶ月はたいしたもんです。
私は安くても熟成したワインが好きなので、この価格でこの味わいだと二重丸を付けてしまいます。
今月、イタリアの一押しは、トスカーナ州の名門フレスコバルディ社の輸入業者が変更になるため、元の業者が在庫処分で4割近く安くなって入荷しました。
カステル・ジョコンドのロッソ・ディ・モンタルチーノ10年と、トレント地区のスパークリングワイン・ブリュット(泡・辛口)です。
赤は濃度勝負ではなく、上品で生まれも育ちも毛並みの良さを感じさせるタイプ。
一方、泡の方は凝縮した果実味ときめ細かな泡で、魅力的な表情を惜しみなく振りまいています。
共に、4割安の今がチャンスですので、お見逃しなく!
白ではサルディーニャ島のムラがヴェルメンティーノ種で造る11年産。
日焼けした石を思わせる香りと、白桃や梨の香り。味わいは凝縮した果実味がパインの様です。
同じムラの赤は、逆に北国の赤の様なチャーミングなタイプ。そして赤、白共に醸造は若い女性が行っているそうです。
南でも澄んだ印象があり、清掃や収穫後の選別などを厳格に行っている証なのでしょう。