今月はワインのお話。
年が明けて1月中旬、昨年秋に創業して初仕込みを終えたブルース・ガットラブさんの10R(トアール)ワイナリーさんと、
三笠の山崎ワイナリーさん、千歳の中央葡萄酒さんに伺い、12年産のワインを試飲して来ました。
昨年の北海道の夏はとにかく暑かった。特に夜の寝苦しさは、北海道でもクーラーが欲しくなる程。
昨年の8月頃は、余市でも、空知でも葡萄生産者さんは皆笑顔で「今年はいいべ!」という声がどこでも聞かれました。
その後お盆を過ぎて、9月になっても暑さは続きました。しかしその頃から、
こんなに暑いのに葡萄の糖度が上がらないと言う声が、 生産者さんから少しずつ聞こえてきました。
好天の中で植物の葉がどんどん光合成をして栄養を作ると、
その栄養は葡萄の実に集まり甘く熟すだろうと普通は思います。
さて、植物は気温の変化で今の季節を感じているそうです。
暑い夏の時期は1センチでも高く背を伸ばし、1枚でも多く葉を増やして、
太陽のエネルギーをいっぱい受け止めようとするそうです。
そして朝夕が涼しくなってくると、植物は秋の到来を感じて木の生長を止め、冬に向けて木の生存のために身繕いを始めます。
そして自身の木が枯れてしまうことも想定して、子孫を残すために種を準備します。
しかし植物は足が無く自分で移動が出来ないので、種を別な場所にまくことができません。
そこで木は甘い実を成らせ、その実の中に種を入れたのです。甘い実は種を運んでくれる動物たちへのお駄賃。
実と共に食べられても種は消化されないため、動物と共に移動した後に糞と共に種がまかれます。
そこで条件が整えば、違う場所で芽が出るのです。
そこで昨年の天候を考えてみると、9月までは昼も夜も暑さが続き、植物は夏と思って木の生長を続けました。
10月になると雨が続き急に寒くなったので、季節は秋を飛ばして冬になりました。
種と実に栄養が蓄積される秋の期間が短かったため、あれほど暑かったのに思ったほど糖度が上がらなかったらしいのです。
しかし9月までは恵まれた気候で葡萄は生長したため、特に白はふくよかな味わいで全般に出来が良かったです。
赤は全体に淡い色調ですが、やはり中盤まで天候が良かったおかげで未熟な青さがなく、
あと2~3年も経てば熟成旨味が広がりそうな予感を持ちました。
子供の頃はてるてる坊主を作ったり、「明日天気になぁれ!」と靴を飛ばして天気を占いました。
あの頃より予報の精度は上がりましたが、葡萄の出来はやはりお天気次第なのですね。
さて今月のオススメワインは白で良い物が多く見つかりました。
ブルゴーニュの2010年は果実味に酸味とミネラル感が調和した素晴らしい白が造られた年。
サヴィニ村のシモン・ビーズがシャンプラン畑で造るブルゴーニュ規格の白と、
ベレーヌ(ニコラ・ポテル氏のブランド名)がサヴィニ・レ・ボーヌ村の自社畑で造った白は、価格以上の味わいでお薦めします。
でも、驚いたのは、赤で知られるフィリップ・シャルロパン・パリゾが07年産のシャブリ村で造った4種類の白。
正直言って今、一番の飲み頃はプティ・シャブリ07年でしょう。
昨年末から各生産者の並シャブリは11年産が日本に入荷しているのに、
シャルロパンが初めて造ったシャブリ07年産は6年以上熟成させて、
プティ・シャブリがやっと開き始めて来たというのです。
安旨とは良い辛い価格ですが、今月の一押し白です。
ボルドー地方からはオーメドック地区のシャトー・シャルマイユ02年。
この年は暑かった03年の陰に隠れて過小評価されていますが、小粒でも健全なカベルネ種のワインが造られました。
シャルマイユはまさにこの例で、完熟した果実味と熟成感が両方楽しめました。
シャトー・ヴァランドローのオーナー、テュヌヴァン氏が
「サンテミリオン地区じゃないけど、とても美味しいよ!」と言って造ったボルドー産赤、バッド・ボーイ08年。
5年を経た08年産は、そろそろ飲み頃に入り始めて来ました。
仏ロワール地方ではジョルジュ・ブリュネのヴーヴレ村01年と、デ・ゾービュイジエールのヴーヴレ村シレックス11年。
造り手は違っていても、同じヴーヴレ村、同じ品種のワインで、10年の時の流れを体験してみるチャンスです。
南仏からはミネルヴォワ村のシャトー・ベルヴィスでとても暑かった03年。
私はスパイス感とアルコール感が落ち着き、 アニマル系の熟成香が出てきた南仏の赤は大好きです。
10年熟成してこの低価格ですから、今月の赤の安旨大賞を受賞です。
今月のイタリアは赤が良かったです。
まずはピエモンテ州ピオ・マッカリオのシャルドネ種の白と、バルベラ種の赤。
共に北国らしい爽やかな酸味と果実味が楽しめて、この価格はとてもお買い得です。
北海道でもこのような赤ワインが安価で出来るようになれば、、、なんて思ってしまいました。
赤、白共に、安旨大賞の第二位受賞です。
あとは少し高くはなりますが、同じピエモンテ州でエンツォ・ボリエッティの
アルバ村産バルベラ種10年は、さすがと思わせる厚みと複雑さが出て、この価格でしたら充分お得だと思います。
飲み頃ワインではトスカーナ州ベリーニ社のコメディア08年。
イタリア品種とフランス品種が5年を経て上手く調和しています。
イタリアでもなく、フランスでもない、混血の複雑な味わいが楽しめます。
スペインの白ではリアス・バイシャス地区のグラン・バザンが造るアンバル06年。
爽やかさと熟成感の両方が楽しめる不思議な味。
少しワイン通の方に受けそうな、味わい深い白です。
私が大好きなリースリング種ではチリでビーニャ・レイダ社のリースリング11年。
爽やかな酸味の美味しさは、本場ドイツも驚くような出来の白でした。
北海道からは、暑かった12年産の白が入荷してきました。 宝水ワイナリーのケルナー種とシャルドネ種は、
共に完熟した果実味と爽やかな酸味の調和がとてもバランス良く仕上がっています。
改めて、道内の白の品質は、どんどん上がっているのが分かるような出来でした。
最後は食品から、スペイン・フォルム社のワイン・ヴィネガーで赤、白。
私もこのお酢をそのまま飲んで、むせませんでした。
果実感があって、ワインとお酢の中間と言った感じ。
これは是非一度味わっていただきたい初体験のお酢です。
店舗にサンプルがございますので、ご興味がある方は試飲が出来ます。