お気づきになったと思いますが、
フジヰニュース5月号からワインリストの順番を変えて、地元北海道のワインを先頭に持ってきました。
これは当店のお客様から伺った話が発端です。その話とは、今から30年近く前にオーストリアで何軒かのワイン生産者が、
生産する甘口ワインの味を良くするために、ジエチレン・グリコールという薬品を添加した事が発覚しました。
この問題はドイツにも飛び火して、当時、全国の酒小売店(もちろん当店も)や、
デパートの商品棚からドイツとオーストリアのワインが撤去されました。
当然、オーストリア・ワインの販売量は激減しました。
オーストリア政府はワイン法を厳格化し 品質向上を目指しますが、販売はすぐには増えません。
そんな時に立ちあがったのが地元のレストランとソムリエ達で、
ワイン・リストの先頭に地元のワインをもってきて販売を助けたそうです 。
これなら当社にも出来ると思い、5月から地元の北海道産ワインをフジヰニュースの先頭にしてみました。
もちろん、当社でも販売量はフランス・ワインが筆頭で、輸入物全体に対して北海道産の比率は1/10以下です。
でも、北海道を思う気持ちは1/10ではありません。
皆さんのお宅で親戚から毛ガニが送られて来た時、あるいは本州からのお客さんと共に食事をする時、
地元の食材に合わせて地元のワインを年に1~2回でも味わっていただける方が多くなると、
道産ワインの全体量が何割かは増えると思います。
小さな応援でも、人数が集まると大きな力になる事を願って、たまには地元の食材と地元のワインを合わせてみませんか。
さて今月のオススメ・ワイン
札幌ばんけい峠のワイナリーの白12年。ここは醸造過程でSO2(酸化防止剤)は使いません。
SO2を使わないと、すりおろしたリンゴが赤く変色するようにワインは酸化します。
皆さんが想像する若い白ワインは、クリアな淡い黄色でフレッシュ&フルーティな味わいだと思います。
でもSO2を使わない白ワインは、若くても酸化が進み数年以上熟成したような風味が出てきます。
色は黄色に茶のトーンが混じり、少し漬物の様な酸化した香りが出てきます。
このような風味は好き嫌いになりやすいのですが、この白はマスカット香の強い、
ナイヤガラ種やポートランド種をブレンドすることで、酸化香をマスカット香が包み込み、 バランスの良い味わいに仕立てています。
SO2無添加ワインを試してみるには最適の白だと思います。
今月はボルドーで熟成した飲み頃ワインが多く入荷しました。
オー・メドック地区のシャトー・マレスカス03年。
暑かった03年産は例年より一回り濃くて人気が高く、 10年を経て市場ではだんだん見かけなくなりました。
今のマレスカス03年は豊かな果実味と、熟成感の両方が楽しめ、今でも、更に数年の熟成も可能なポテンシャルがあります。
03年産を見つけたら迷わず、即買いです。
グラーブ地区のシャトー・オリヴィエ白01年。
ボルドーの2000年は誰もが知るグレート・ヴィンテージですが、同じボルドーでも収穫時期の異なる白は00年よりも01年の方が作柄良。
しかし一般の01年のイメージは「良くない年」なので、この年の白は、値上がりが少なくて良質なのです。
熟成した白がお好きな方には是非お奨めします。
サン・テミリオン地区のシャトー・オー・フォンラザード04年と、カスティヨン地区のシャトー・リュカ04年。
共に9年を経た04年で、ちょうどタンニンがこなれて美味しくなってきた頃です。
有名な05年の陰に隠れたこの年も、値上がりが少なく飲み頃でお買い得なワインが見つかる年です。
ボルドー規格の10年産、シャトー・ラ・ローズ・モントーラン。
まだ3年しか経っていませんが、これが素直に美味しいのです。
この価格なのにふくよかさがあって、うっすら木樽の風味も感じます。
手間のかかる木樽熟成ではなく、タンクにオークチップを入れて熟成させたのかも知れませんが、
とにかくバランスの良い味わいです。普段のデイリー・ワインには最適の赤だと思います。
ブルゴーニュではクルティエ・セレクション・シリーズのコート・ド・ボーヌ・ヴィラージュ93年。
20年前のブルゴーニュでこの価格ですよ!香りには古酒にありがちな紹興酒の風味が少しありましたが、
味わいには果実味が今もしっかり残り、ブラインドで出されたら99年あたりと答えそうな状態でした。
あとはセリエ・デ・ウルシュリーヌ社と、トプノ・ピエール家の飲み頃ワインが入荷しましたが、現時点では試飲がまだでコメントできません。
2軒の生産者は共に良い収穫年で、価格も控えめなので、私自身も大変期待しています。
白ではブレット・ブラザーズのマコン・クリュジーユ10年。
有機栽培の自然派ワインと言うと、味わいは薄旨系の繊細なタイプが多いですが、ここの白は濃さ強さがガツンとくるタイプ。
今風で言うと「肉食系男子」にお勧めの自然派ブルゴーニュの白です。
南仏からはシャトー・ラヤスがヴォークリューズ地区で造る赤。本家シャトーヌフ・デュ・パプにあるラヤスは定価20,000円以上ですから、
近隣の産地でこの価格はとてもお値打ち感があります。
味わいは大樽熟成された20年前のバローロを思わすような、果実味ではなく練れたタンニンと熟成旨味のスタイルです。
泡ではリムー村のロジェが造るブランケット・ド・リムー。
泡の産地と言えば、一般には北部の涼しいところですが、南仏リムー村はシャンパーニュ地方よりも先に泡を造っていた所。
この価格で最上の製法、瓶内二次発酵法を用いクリーミーできめ細かな泡を実現しています。
そして今月の安旨大賞はコンテ・トロザン地区のラヴィラ白11年。
この地区はアルマニャック・ブランディの産地ですが、
蒸留してブランディにせずに原料の白ワインをそのまま瓶詰めしたところ評判になりました。
ふくよかな果実味と、爽やかな酸味が調和した美味しいワインを蒸留すれば、更に美味しいブランディになると言うことでしょう。
さてイタリアからは、先月もオススメしたフリウリ州の生産者イル・カルピノがフリウラーノ種で造る白。
ジャスミンを思わす香りに、豊かなミネラル感が広がる様はかなり上質な味わいで、
料理無しでワインだけでも楽しめる豊かさを持っています。
ご予算に余裕があれば、上級品のピノ・グリージョ種も感動できます。
ボッター・カルロが造るロマーニャ州のサンジョベーゼ種08年。
この価格帯で赤のライバル、キャンティと比べても、豊かな果実味と少しこなれた熟成感が楽しめます。
もう少し熟成した方がお好きな方には、同じ生産者のコペルティーノ07年産をオススメします。
今月のイタリアで一押しはサン・パトリニャーノが造るロマーニャ州のサンジョベーゼ種06年。
生産者はなんと麻薬等の中毒患者の更生施設。ここはワイナリーだけではなく、
牛や豚を飼育する酪農業や、織物などの生産をしているそうです。
そして目的が利益ではなく更生ですから、現代の農業で見捨てられた手の掛かる作業をここでは行っているのでしょう。
教官はいますが、残りは素人の集団が造ったワインが、何代も続く名門生産者のワインを近年の品評会で打ち破っています。
その内、イタリア最高の工芸品は、更生施設で作られるようになるのかもしれません。今回の特別価格で是非一度お試し下さい。
スペインからはアタラヤが造るアラヤ10年と、カスターニョが造るロゼ10年。
ピンとキリのような組み合わせですが試飲の際、とても印象が良かった2点です。
ロゼはイチゴの風味が華やかで爽やかなタイプ。これからの時期に屋外で楽しむには最適のワインでしょう。
一方アタラヤの特醸品は強烈でした。あと少し凝縮したら、液体ではなくゲル状にでもなりそうな濃度。
これに難癖を付けるとすれば、上品さがないぐらいでしょうか。
私の予想ではパーカー氏から100点は取れなくても、95~98点評価はもらえそうな出来で、
この価格というのは世界中探してもライバルはいないと思います。
味が濃すぎて一人で1本は飲めないでしょうから、数人で味わって感動できる事を思うと、お値打ちワインの中に入ると思います。
最後は食品から。今ワインでも、オリーブ・オイルでも最高の評価を受けているオルネッライア。
輸入業者の変更に伴い、4、410円の品が特価で入荷しました。
ワインの最高級品の値段は天井がありませんが、最高のオイルの味わいをこの機会に試してみてはいかがでしょうか。
地元からは、余市ソガ・タカヒコのピノ・ノワール種で発酵が終わったワイン酵母に、
グラニュー糖と、山形産アカシアのはちみつを加えて作ったオリジナルのジャム。
口に含むと、チョコレートと赤ワインがマリアージュしたような初体験の味わいです。
店頭にサンプルがございますので、是非ご試食してみてください。
スペイン・マラガ地方ラ・ボルヘニャ社の枝付きレーズン。
完熟したマスカット葡萄を天日乾燥させたレーズンは種まで熟しているため、
丸ごと噛んでいただくと種が香ばしいナッツのように味わえます。
熟成したチーズとは最高の付け合わせになるでしょう。