2013年 6月

今月は5月に積丹の旅館で一泊した家族旅行のお話。

実はこの旅行中の二日間、小学6年生の息子と何度もケンカになりました。

原因はたわいもない事でしたが、後から家内が言うには、私の叱り方は息子の心を逆なでする言い方だったそうです。

考えてみると、私は通常木曜日がお休み。

木曜は息子の学校があるので、帰宅する4時ごろから就寝までの半日しか一緒に過ごさないのに、旅行中は朝から晩までずっと一緒。

すると、私の中で父親としての責任感がムクムクと顔を出し、息子の気になる態度に私の小言が出て、

売り言葉に買い言葉で険悪になってしまうのです。

ところが、家内は息子を叱っても引き際が上手く、私から見るといい親子関係なのです。

小さいころから問題児だった私。さらに父親が小学4年生の時に亡くなり、母親は仕事で手一杯。

学校から帰宅しても家に誰もいないので、私は宿題もせずに好き勝手に遊んでばかり。

そんなせいで私は怒られた経験がないまま父親になり、いざ自分が息子を叱ろうとしても上手く出来ません。

家内に「どうやって息子を叱ればいいの?」と聞くと、もっと息子と接する時間を増やして何度も喧嘩するしかないよと、つれない返事。

だんだんと大人に近づき、親の言うなりにならなくなってきた息子との関係を改善するには、当分時間がかかりそうです。

さて話は変わって、泊った積丹の小さな(失礼)旅館のお話。

有名なミシュランのガイドブック北海道版で2★評価を受けた「美国観光ハウス」の予約が偶然にも取れました。

評判通り、手作り感と暖かみのある料理はとても良かったです。

また、飲み物リストに数点載っていたワインの選択も、店主が料理と合わせて試飲をし、選別したと思える物が揃っていて好印象でした。

個人経営の飲食店でオーナーがワイン好きですと、ワインリストには

ムートンやマルゴーなどの超高級品が真っ先に鎮座していることが時々あります。

しかし、この宿のお薦めワインは4000円前後。

赤は値上がりの続くボルドーを避けてチリのモンテス・アルファのカベルネ。

白はやはり高いブルゴーニュ・シャルドネを外して、アー・エ・ペー・ヴィレーヌのブーズロン・アリゴテ。

種類は多くなくてもお客様の立場で厳選されたワインは、料理やサービスと同様にオーナーのお客様に対する思いが伝わりました。

決して広くはないお部屋(失礼)が9室のみ、お手洗いは共同、お風呂も温泉ではありません。

プールや遊具付きの大きなお風呂のあるホテルが好きな息子が、

ここで朝食を食べた後に「お母さん、ボクは今日もここに泊まってもいいよ」と言ったのには驚きました。

なかなか予約が取れなく、お値段もそこそこはしますが、苦労してでも行く価値がある宿でお薦めします。

さて、オススメワイン。

今月は白で良質な物が多く見つかりました。まずは地元北海道から。

千歳ワイナリーが造るレシラ・シリーズのミディ12年。暑かったこの年らしい完熟した果実感と、品種特有の酸味が調和しています。

500mlのサイズとこの価格も、かしこまらずに楽しめそう。

アスパラをはじめとする春野菜にも相性が良いので、屋外のジンギスカンと共にいかがでしょうか。

もちろん、スクリューキャップですから、コルク抜きも要りません。

岩見沢市の宝水ワイナリーからは上級品、雪の系譜シリーズのシャルドネ12年。

特に白が良かった12年らしく、香りに未熟さがありません。

辛口でミディアムな果実味と調和した酸味がバランス良く、まさに北国で完熟した清らかなシャルドネ種のイメージです。

仏ボルドーのブライ地区シャトー・ボーモン・レ・ピエリエールの白12年。

味わいは仏ロワール地方のソーヴィニヨン・ブラン種を思わせる爽やかさですが、

少し温度が上がってくると樽発酵による複雑さが開き始めます。

高騰を続けるボルドー赤ですが、白は良質でお値打ちな物が時々見つかります。

ブルゴーニュからはセクストンのサン・トーバン村で赤06年。

有機栽培で、野生酵母による発酵ですからアニマル系の還元香はありますが、7年を経た熟成旨味は私にとってはたまりません。

まだ試してはいませんが、マグロの握りにも合うのでは?と思っています。白で知られる村の赤は時々めっけもんが見つかります。

同じブルゴーニュの赤で、フィリップ・ルクレールのブルゴーニュ赤ボン・バトン10年と、

ユベール・モレのシャサーニュ・モンラッシェ赤08年。

ルクレール氏はジュヴレ・シャンベルタン村の名門ですが、このボン・バトン畑は隣のシャンボール村にあり、

柔らかな果実味と上品な樽風味が飲み手をうっとりとさせる魅力を持っています。

一方モレ家の赤はシャサーニュ村。ここは白で有名な村だけに、赤が売れ残った時はチャンスなのです。

08年は作柄も悪くないうえに、5年を経て少し熟成感が開いてきました。

南仏からはミネルヴォワ地区のシャトー・ドンジョンが、隣のカバルデ地区で造る赤08年。

5年を経て3品種が混じり始め、飲み頃の美味しさが楽しめます。しかもこの価格は間違いなくお値打ちです。

イタリアからはファルネーゼ社の大人気カサーレヴェッキオ・シリーズで、ペコリーノ種からの白11年。

南部の白はもったりした味になりやすく私は避けていましたが、この白はそんな思いを裏切ってくれました。

凝縮した果実味を持ちながら、爽やかな味わいに仕上げてくるのはさすがファルネーゼ社です。

スペイン・ビエルソ地区からはアルヴァレス・ド・トレド社で、品種は今、注目のゴデーリョ種の白と、メンシア種の赤。

白は爽やかな柑橘と熟した桃の香り。ふくよかな果実味を酸味が引き締めた豊かでメリハリのある味わい。

赤は、スペインのピノ・ノワール種と称されるメンシア種。ブルーベリーシロップの濃そうな香り。

5年を経てふくよかな果実味と樽の風味が混じり始めています。

赤、白、共にパーカー90点評価を受けた味わいはインパクトがあり、料理が無くてもワインだけで満足させてくれます。

しかもこの低価格!今月の安旨大賞は、当然、赤、白、共にこちらに決定です。

食品からはニュージーランドの新着はちみつ三種。

カカラ(百花・数種の花のブレンド)、ラタ・フラワー、ホワイトクローバーの3タイプとも独自で、濃厚で、複雑です。

ここまで味わいが豊かですと、何かにかけたり、入れたりするのではなく、

そのままティースプーンで一舐めするのが一番美味しいような気がします。

そして長崎県小佐々(コサザ)の煮干し。昨年から品切れていましたが、やっと今年の漁が始まり入荷して来ました。

10センチほどの大きさも立派ですが、何よりもお出汁にした時の味わいです。

品切れ中は、同じ小佐々港産で少し小振りの物を扱っていましたが、やっと6月から入荷いたします。

煮干しファンの皆様、ご迷惑をおかけいたしました。