今月は二つの話題がございます。
まずは、7月末からワインショップフジヰ玄関横の軒先スペースで野菜の販売を始めました。
この軒先マルシェの開催は、毎週金曜(雨天は休業の予定)の13~16時頃まで。
私の知り合いの佐藤さん親子が、自身で育てた野菜を朝収穫し、その本人が当社の店頭で直売しています。
畑ではくすりの代わりに愛情を注いで栽培しているそうで、
葉っぱにはポツポツと虫食い穴が開いていますが、野菜本来の味わいがしっかり感じられます。
種類はオカヒジキ、ズッキーニ、にんにく、アイスプラント、小松菜、レタス、きゅうり、
ツルムラサキ、トマト、はつか大根など。 虫も食べたくなるような野菜たちです。
元気はつらつのお母さんと、生真面目そうな息子さんのコンビも良く、沢山の方が足を止めて、
食べ方の説明などを聞きながら野菜を購入していただきました。
金曜の午後、近所にお越しの際は、ぜひ一度金曜マルシェをのぞいて見てください!
次は8月に家内の実家に行ったお話。
昨年から多くの番組や、雑誌で取り上げられている話題のお店、
東京の立ち食いフレンチレストラン「おれのフレンチ・銀座店」に家内と二人で行ってきました。
当日、実家を出る前に息子へ「一緒にご馳走を食べに行く?」と聞きましたが、
「立ち食いは疲れるから行かない!」と言われ二人で出発。
まずは新しくなった東京駅とその付近を散策し、1時頃にビル地下の飲食街で軽めの昼食を取り
「ではディナーに行きましょうか」と言って、お腹を減らすために徒歩で銀座に向かいました。
「おれのフレンチ」は僅かな数しかない椅子席を除くと、予約は無く並んで順番を待つシステム。
開店は4時からで「夕食を2時から並ぶ人はいないよね!」と思って、
店に2時15分頃に着くと既に17人が並んでいました。
東京の強烈な湿度と30度以上の中で待つこと二時間弱。
サンダル履きの半ズボンとポロシャツ姿でも、汗でビッショリ。
開店の前に、お店の方が冷やしタオルを出してくれた時は、本当に生き返りました。
そしてこの店のシステムの説明が始まります。
まず来た順番に店内に案内され、飲み物の注文を取り、
次も来た順に前菜等の冷製料理の注文を取り、最後も来た順番で火を入れた料理の注文を取ります。
なぜ一度に注文を聞かないのかと言うと、お店の看板になるような名物料理は一日何皿分と決まっているためです。
エビが好きな家内のお目当ては、活オマール海老のロースト1280円。
肉好きの私は、牛ヒレとフォアグラのロッシーニ(トリュフ)ソース1280円狙い。
しかしお店の方は無情にも「本日の活オマールは6皿、ステーキ・ロッシーニは20皿です」と言われました。
当然、ステーキは頼めましたが、オマールは僕らより前で品切れ、
家内は代わりに甘エビのタルタル・キャビアのせ680円を頼みました。
ここは食べたい物があっても、よほど早い時間に並ばないと希望通りには食べられません。
外で2時間も待った後に、家内の落胆した顔を見た時は、なにか騙された気分になりました。
でも、折角来たのだから今日の食事を楽しもうと気持ちを切り替え、
注文を済ませグラスでシャンパーニュを味わうと気分も高まって来ます。
泡の後のワインは仏ブルゴーニュ地方のルモワスネ社サントネ村の赤1992年が4850円とこれまた破格。
皆さんが一番気になる味に関しては、量目も味付けも十分以上で美味しかったです。
2時間並んで、立って食べるというシステムには賛否両論があるでしょうが、
絨毯とシャンデリアの中で食べると一人2~3万円で、
立って食べて一人3~4000円というのは、人口の多い東京では共に共存出来るのでしょう。
最後に私が会計を済ますと、家内は「私が払うから、食後のコーヒーは、座って!飲みましょう」と言って、
銀座のドトール・コーヒーで倒れこむように座りました。
このお店は、本人と相方が忍耐強い方で、
待っている間に通行人から行列の写真を撮られても気にしない方にお勧めします。
多少のトラブルがあっても、待ち2時間、食事2時間を共に戦い抜いた後は、
たとえ希望の品が食べられなくても、とても清清しい達成感と、連帯感に包まれるでしょう。
さて、今月のオススメワインです。
まずは今年もヌーヴォーの季節が近づいてきました。
今年フランスでは春から夏にかけて天候が悪く、開花時期も2~3週間遅れたのですが、
夏からは好天に恵まれ今、遅れを取り戻しているそうです。
毎年特に好評な生産者と言えば、まずはボージョレ地区で
自然派(有機栽培、自然酵母で発酵、酸化防止剤無添加)の代表と言える7番マルセル・ラピエールのヌーヴォー。
2010年マルセル氏が亡くなった後も奥さんと息子さんが力を合わせ、
濃さではなく澄んだ果実味と旨味を持った味わいを引き継いでいます。
次は日本人の仲田晃司氏が醸造するルー・デュモン。
樹齢70~95年の古木が残った8区画からのワインは、 ボージョレとは思えない濃度と複雑さを持ったマッチョ・タイプ。
そこそこの価格で良質な物をお求めでしたらポール・ボーデ社。
華やかな香りと果実味がたっぷり楽しめ、毎年、当社の新酒販売のトップです。
そして円安の今年、最安値のヌーヴォーはペットボトル入りジャン・フルール。
フランスからの航空運賃は重さで決まるため、ガラス瓶では絶対にあり得ない価格です。
北海道からは奥尻ワイナリーのピノ・グリ12年。ふらのワインのミュラートゥルガウ12年。
山崎ワイナリーのシャルドネ12年。それと野生酵母発酵による香りが独特な藤野ワイナリーのナオミ・ブラン12年。
昨年の北海道はとても暑かっただけに、道内の各ワイナリーで造られた12年産の白は、完熟した果実味がたっぷり。
今年も良い収穫に恵まれることを願わずにはいられません。
今月のブルゴーニュからの一押しは、フレデリック・マニャンのコート・ド・ニュイ・ヴィラージュ赤10年。
低収量だった10年らしいコクと、ロースト強めのスモーキーな樽香が合わさり、畑名付き以上の満足感が楽しめます。
逆に濃度ではなく、うす旨系好きにはムーラン・オー・モワーヌが
オーセイデュレス村の自社畑産ワインで熟成した96年、02年、04年はいかがでしょうか。
白の一押しはヴァンサン&ソフィー・モレのブルゴーニュ白08年。
5年を経て果実味と木樽の風味が調和し、飲み頃シャルドネの理想の姿が楽しめます。
ちなみに同じ造り手で、サントネ村の白08年は更に良いですよ。
フランスの赤では、ダンデゾンのコート・デュ・ローヌでヴィエイユ・ヴィーニュ11年。
濃くて強いシラー種を、搾ってそのまま瓶に詰めたような味わい。
一方ミネルヴォワ村のシャトー・ファバスは熟成した08年産。
シラー種、グルナッシュ種他が混じり合って、革製品や干した果実などの熟成香が楽しめる旨安ワインです。
白ではラングロワ・シャトーが、甘口で知られるコトー・デュ・レイヨン村の09年産。
涼しい産地の甘口は、爽やかな酸味がアクセントに効いてメリハリのある味わい。
辛口ではジュランソン村のカプドヴィエルが造る10年。
有名産地でなくても、造り手の情熱が伝わってくるような骨太な味わいです。
今月は泡で多くの良品が見つかりました。南仏ブランケット・ド・リムー地区でロジェが造る11年産。
完熟した果実の風味と、瓶内二次発酵によるきめ細かな泡がこの価格。スペインのカヴァから浮気したくなる出来です。
シャンパーニュ地方からは、ピノ・ムニエ種に命をかけるバロン・フェンテ社のグラン・ミレジム04年。
シャルドネ種がムニエ種の風味を包み込み、ゴージャスな味わいに仕上げています。
そしてアンドレ・クルエはピノ・ノワール種100%。
ふくよかな果実味と太い酸味は、食前酒ではなく食事と共に味わいたいタイプ。
イタリアの泡ではベルフィがグレラ(プロセッコ)種を自然派タイプに仕上げた辛口。
産地的には「プロセッコ」を名乗れますが、官能検査でこの産地のスタイルではない為に規格外となった泡。
瓶底にはたっぷりオリが溜まり、残糖が無い代わりにアミノ酸の旨味を感じます。この味わいはちょっと癖になりそう。
チリからの泡はバルディビエソ社のブラン・ド・ブラン。
葡萄はシャルドネ種だけですが、約3年も瓶内熟成を行うことで、豊かさと熟成旨味が楽しめます。
イタリアワインではファルネーゼ社の各種ワイン。この低価格でもたっぷりとした果実味を持ち、
味わいのバランスも良く、文句のつけようがない出来です。まだ未試飲の方は、ぜひ一度お試しください。
スペインからはアルマンサ地区のアタラヤが造るラ・アタラヤとアラヤ。
主体となるガルナッチャ・ティントレラ種は、果皮だけではなく果汁も果肉も血のように色があるため、
ワインに濃厚な果実味をもたらします。フルボディ好きの方は、絶対飲むべきワインでしょう。
スペインのリンゴで造られた157番マヤドールのシードラ。
リンゴは葡萄より糖度が低いため、アルコールも4%しかありません。
250mlのかわいい瓶なので、グラスに移さず瓶にストロー挿して飲むのもキュート。
最後は麦の泡・ビールです。ドイツ・クルンバッハ社のエック・ピルスと、173番英国ブレインズ社のSAゴールド。
特にゴールドは上面発酵のため、芳醇な香りが豊か。
二種類共に、白ワイングラスを用意し30センチほどの高さからビールを注ぎ、
1分程泡が落ち着くのを待ってから味わっていただくと、香りが広がります。