2013年 10月

9月の私は、ワインセミナーの講師依頼を受けたり、函館と余市に新しいワイン生産者さんを訪ねたり、多忙な毎日。

そんなある日、同じ高校だったN君が亡くなったというショッキングな連絡を受けました。

私は今でこそ少しは真面目に仕事をしていますが、中学、高校の頃はただ親に反抗をして、

頭の中は遊び仲間と、異性の事しか考えていませんでした。

しかし、相手の女性は私の空っぽな頭の中をすぐに察知し、振られてばかり。

そして高校卒業後は「浪人」の名目で、甘えと怠惰な生活を送っていた頃、

専門学校に通っていたN君とよく遊んでいました。

当時の自分の行動を思い出すと、穴があったら入りたい程。

N君はそんな僕を説教することもなく一緒に遊びながらも、自分自身に対しては努力を怠らない人でした。

その後、就職して彼はさらに努力を重ね、ある業界の第一人者となり、時々ギフト用にワインを買いに来てくれました。

多分彼の事だから、時間を考えずにひたすら仕事をして、無理がたたり病気になったのでしょう。

お通夜の場で、あの頃の僕を何度も泊めてご馳走してくれたN君のご両親、

そして奥さんと子供さんの姿を見ると、胸が一杯になりました。

二十歳ぐらいの息子さんは当時の僕とはまるで違い、素直でしっかりとした印象。

彼は仕事だけではなく、家族に対しても真剣に向き合っていたことを感じました。

私は帰りの地下鉄の中で「僕よりいつも先に進んでいて、その差を縮める事が出来ずに、

先にゴールするなんて反則だよ」と何度も独り言を言っていました。



さて、オススメ・ワインです。

まずは今年のボージョレの作柄。6月までの天候は雨ばかりでひどかったが、7月から好天に恵まれ随分と回復したようです。

そんなわけで収穫は例年より2週間以上の遅れとなりましたが、9月末から順調に始まり健全な実が収穫されているとの事。

パワフル・タイプではなく、瑞々しい澄んだ果実感を持ったワインになるようです。


北海道からは㈱北海道ワインの鶴沼自社農場産ゲヴュルツトラミネール11年。

国内でこの品種単独のワインは殆どない貴重な葡萄。栽培の手間や低収量を乗り越えて、ここでは造り続けています。


ブルゴーニュ赤では、トルシュテが造るブルゴーニュ赤ヴィエイユ・ヴィーニュ08年。

5年を経てなめし革やドライフルーツの熟成香、旨味と酸味、タンニンが調和して複雑さと飲み頃の美味しさが楽しめます。

ほっとするピノ・ノワールと言えば分って頂けるでしょうか。


一方ジヴリ村のジョブロが造る1級グラン・マロルは作柄の良かった09年。

過熟した果実感と凝縮感が楽しめるグラマラスなスタイル。

もう2~3年程我慢されると、旨みが乗ってご褒美になりそうなピノ・ノワールです。

白はミッシェル・カイヨのムルソー村テッソン畑のシャルドネ種07年。

近年のムルソーは、ふくよかタイプから引き締まったスタイルに移行していますが、

ここはふくよかで甘い香りの樽香がはっきりとあり、イメージ的にはコテコテのムルソー。

バターやクリームをたっぷり使った料理が恋しくなります。


南仏からの赤はジゴンダス村のビュルル家が造るヴァン・ド・ペイ・ド・ヴォークリューズ11年。

この年から葡萄はグルナッシュ種が主体となり、南仏らしいふくよかさにスパイシーさが加わりました。

白はグランジェットが造るピクプール・ド・ピネ12年。

ふくよかさをミネラル感が上手く引き締め、風味豊かでも、もったりした印象になりません。


爽やかタイプの白は、やはり北の産地から。ロワール地方のダヴィ・バイィ家のプイィ・フュメ11年。

完熟感のあるソーヴィニヨン・ブラン種はイメージよりは酸味が穏やかで、

グレープフルーツ、木の芽、石の香りが華やかに広がります。

しかも普通は3000円以上するこの村の白が、この価格は見逃せません。


アルザス地方からはマルク・クレイデンヴァイツのリースリング種11年。

ビオディナミ栽培からのワインは、この品種らしい鉱物的な香りが少なく完熟したリンゴの香りが広がります。

完熟した果実味に、豊かな酸味と土壌からのミネラル感が合わさり、フレッシュさと複雑さが楽しめる味わいです。


そしてシャンパーニュではアンドレ・ロジェのグランド・レゼルヴ・ブリュット。

私は何も言われずに試飲をして「まるでボランジェみたいな味だな!」と言ったら、

05年までここはボランジェの契約農家だったとの事。

ピノ・ノワール種でも骨太なボランジェ・スタイルが、この価格でしたらとてもお得に思えます。

イタリアからはファレスコ社のモンテリーヴァ・カベルネ・ソーヴィニヨン10年。

ミディアム・ボディの果実味と、柔らかなタンニンがバランスよく楽しめる赤がこの価格は絶対にお得!今月の旨安大賞です。


フル・ボディ好きにはシチリアのザブが造るインパリ10年。

カシスシロップとベーコンの香りに、味わいもビターチョコとベリー系のシロップ風味が広がります。

豊かなコクとバランスの良い味わいは、デザートワインの様に食事がなくてもこのワインだけで楽しめる程の満足感があります。


スペインからはサンタマリーナが造るエクウス。

地元のテンプラニーリョ種にカベルネ種、シラー種のブレンドが独自の華やかな香りとなり、

ミディアム・ボディですが複雑さが楽しめる赤ワインです。


濃いタイプがお好みでしたらアリカンテ地区のヴォルヴェールが造るタリマ・ヒル。

多分収量をかなり下げているのでしょう。

モナストレル種からの果実味の凝縮が凄く、樽の香りと共にゴージャスな味わいが楽しめます。


アルゼンチンからはモンテヴィエホ社のプティット・フルール。

4品種のブレンドが良く、瑞々しさと複雑さの両方が楽しめます。

有名なミッシェル・ロラン氏が絡んでいるのが納得できる味わいです。


今月はワインの造り手アラン・ヴェルデ氏が造るリキュールに驚きました。

ブルゴーニュ産のカシスとペシェ(桃)は、共に強烈な凝縮感がありながら澄んだ味わいでたいした物です。

試飲用に開けた瓶がございますので、当社店舗にお越しいただければお試しできます。


食品からはスペインのサラミ2種。

特に白カビ熟成をさせたフエは、容器の袋が穴だらけで呼吸が出来るのでしょう。

サラミ表面の白カビが生き生きとしています。


もう1点こちらも同じスペインから、品切れていたマラガ地区産マスカット種の干し葡萄。

このレーズンは珍しい種入りタイプ。でも収穫を遅らせ種まで熟しているので、種がナッツのように味わえます。

箱にはワインと同じ原産地呼称の「DOマラガ」と記載された本物です。