10月に私の友人が亡くなった話をしましたが、不幸は重なるものなのでしょうか。
同じ10月にブルゴーニュ地方サヴィニ村のワイン生産者、シモン・ビーズ家の主パトリックさんが亡くなりました。
8年ほど前の夏にパトリックさんご夫婦と子供さんの一家で札幌に来られ、
試飲会を開催し、三笠の山崎ワイナリーにも寄っていただきました。
そんな縁もあって日本人の奥さんのビーズ千沙さんへお悔やみの手紙を(当然、日本語で!)送ったところ、
1ヶ月ほど後に近況報告の返事が届きました。
お悔やみの手紙は札幌からだけではなく、世代、国境、職業を超えた方々から、今も毎日届いているそうです。
千沙さんは子供さんが家業を継ぐかどうかは分からないが、
その時までドメーヌを守り続ける覚悟を決めたと書かれていました。
ビーズ家の2013年産ワインは、開花時期も含めて春からの天候不順と多くの雨、
更に7月23日の雹の襲撃で生産量は例年の1/5しかなかったそうです。
そして追い打ちをかけるかのようなパトリックさんの死去。
そんな辛い出来事に押しつぶされた中でも生き残った葡萄は、ビーズ家とスタッフの愛情を受けて
順調にワインとなり、派手な主張はしないけれど芯のある素晴らしい品質になったそうです。
そして手紙の最後には「子供たちと一緒に笑顔で(この年のワインが)飲める時が来るまで、
覚悟して私はドメーヌを守ります。それには、皆さんの応援が必須。よろしくお願いします。」とありました。
この話しを聞いた家内は、聖書を取り出し「患難は忍耐を生み出し、忍耐は錬達を生み出し、
錬達は希望を生み出すことを、知っているからである」の所を示してくれました。
シモン・ビーズ家は仏ベタンヌ&ドゥソーヴのワイン・ガイドで3★評価を受ける名門。
安くはありませんが、この村で模範となるワインを安定して造っています。
異国の地で一人残された千沙さんと子供さんたちの為にも、ビーズ家のワインをよろしくお願い致します。
では、今月のお薦めワインです。
北海道からは千歳ワイナリーが余市・木村農園産のピノ・ノワール種を仕込んだ12年。
とても暑かった12年産は、朝夕の温度差が少なく黒葡萄の色付きが弱かったですが、完熟感はたっぷり。
まだ収穫後1年しか経っていない為に荒削りですが、
もう少し熟成させるか、早めに栓を抜くことで表情が開いてきます。
しかし暑いだけではだめで、朝夕が涼しくて昼が暑くないと、風味豊かなワインにはならないそうです。
仏ボルドーからはオー・メドック地区のシャトー・ラローズ・トラントドン09年。
本当に嫌になるほど高くなったボルドー・ワイン。
そんな中で、安定した品質と良心的な価格で知られるこのシャトーで、作柄の良かった09年産が入荷しました。
今、市場では09年産はどんどん減っており、この価格では早晩品切れると思います。
同じボルドーから、ブライ地区のシャトー・カレル01年と、リストラック村のシャトー・フルカ・オスタン05年。
カレルはメルロ種主体で、12年を経て少し枯れ始めた果実味と、豊かで複雑な熟成香が楽しめます。
一方フルカ・オスタンはカベルネ種主体。天候に恵まれた05年産は今も果実味がたっぷり。
この価格帯で久しぶりに完熟したカベルネの風味が楽しめます。
ブルゴーニュからはシモン・ビーズ家サヴィニ村のオー・グラン・リアール畑07年(定価6300円)。
亡くなったパトリック氏が仕込んだ遺作ともいえる赤が特別価格で入荷しました。
濃縮した果実味スタイルではなく、薄旨系の伝統的なピノ・ノワールに6年を経た熟成旨味が乗ってきました。
熟成したサヴィニ村の真髄とも言える味わいが、この価格は絶対にお得でしょう。
ダニエル・リオンがニュイ・サン・ジョルジュ村のグランド・ヴィーニュ畑で造る04年。
この村らしい太さと、タンニンが9年を経てこなれて来ました。
無骨とも言えるこの村の強い味わいが今も楽しめます。
白はジヴリ村のジョブロ氏が1級セルヴォワジーヌ畑で造る07年。
凝縮した果実味と、樽がしっかり効いた味わいが、6年を経てきれいに調和して来ました。
誰もが美味しいと思うシャルドネ種からの白です。
お買い得なブルゴーニュは、ロジェ・リュケが造るサン・ヴェラン村の白12年と、
ヴォルネ村のミシェル・ラファルジュがピノとガメ種で造るパストゥーグラン08年。
サン・ヴェランはフレッシュな果実味とミネラル感がたっぷりでこの価格ですから、当社の人気商品です。
一方ピノ・ノワール種は好きでも、ガメ種は嫌いという方が多いのも私は知っています。
そんな方に飲んでいただきたい赤がまさにこれ!
5年を経て両品種と木樽とが混じり始め、アニマル系の熟成香が開いてきました。
ロワール地方からはソミュール村のシャトー・ド・モンゲレ12年。
シュナン・ブラン種に20%ブレンドしたシャルドネ種が、地酒を洗練されたスタイルに変えています。
そして同じソミュールでもラングロワ・シャトー社の05年。
こちらはオーナーが、ブルゴーニュ地方に負けない白を目標に造った贅沢なワイン。
自社畑でも樹齢が高く、最良区画のシュナン・ブラン種を、樽発酵、樽熟成させた造り。
8年を経て樽と果実味が交じり合い、豊かなコクと飲み頃の美味しさがたっぷり楽しめます。
アルザス地方からはシュルンバジェ社のリースリング種で、レ・プランス・アベ09年。
このワインは特級畑のリースリング種を47%も格下げしてブレンドしているため、
舌の上で奥行きと複雑さを持った風味が広がります。
イタリア・ピエモンテ州からは、アレッサンドリアがアルバ産バルベラ種で造る赤11年。
かなり収量を下げているのでしょう、凝縮した果実味でグラスの向こうが透けない程です。
まだ若く熟成香は持ち合わせてはいませんが、
濃度勝負の素直な味わいは飲み手をにこやかな表情にしてくれます。
トスカーナ州からはヴァルデッレコルティのキャンティ・クラシコ08年。
ここの畑は標高が高く、香り高さと繊細さが持ち味。
複雑さを持ちながら透明感のある味わいが楽しめます。09年産がガンベロロッソ誌3★評価。
スペインからはタラゴナ地区ヴィンス・パドロ社のイプシス・クリアンサ赤10年。
テンプラニーリョ種とメルロ種を樽熟成した味わいは、果実感と熟成感がバランス良く楽しめます。
エデタリアが造るエデタナ白11年。
これは、先月お薦めしたワインの上級品にあたります。
ガルナッチャ・ブランカ種に加えた3割のヴィオニエ種が香り高さを生み、
半分を樽で熟成させることで複雑さも身に付けています。
品質をぐんぐん上げているスペインワイン。これからは赤だけではなく、白も注目です。
リオハ地区のマエティエラ・ドミニュムが造るガバンサ06年。
新しいリオハと言える味わいは、瑞々しい果実味と、スモーキーな樽の風味が7年を経て調和しています。
テンプラニーリョ種のイメージを変える、澄んだ果実味にタンニンがきれいに溶け込んだ姿は、
個人的に今月のワインの中で一番驚いた1本でした。
ニュージーランドからはシレーニ社のソーヴィニヨン・ブラン13年。
華やかな柑橘系の香りと、メリハリのある味わいは、まさにマル・ボロ地区の典型的な味わいでしょう。
ハンガリーからはシャトー・デレスラのトカイ・フルミント ドライ。
トカイと言えば、甘口・貴腐ワインのイメージですが、近年はこうした爽やかな辛口タイプも出てきました。
クリーンでフルーティな味わいは、多分最新の設備から造られているのでしょう。
食品では瀬戸内海・小豆島で、ヤマヒサのオリーブ新漬け。
毎年11月頃に少量入荷するこのオリーブを楽しみにされている方が多く、
入荷後はすぐに品切れます。取れたてオリーブの味わいを、ぜひお試し下さい。