2014年 1月、2月

昨年の11月にオーディオ用真空管アンプのメンテナンス等をしている工房「ラヴ・ワークス」代表の伊藤さんより、

新しいスピーカーを一度聴いてほしいと言われ苗穂にある工房に伺いました。

ここの試聴室に鎮座していた自慢のスピーカーは、え!これが!と思ってしまう程小さな(26×16×24cm)箱。

当社店舗にあるモニター・オーディオ社のスピーカーも、そんなに大きくはありませんが(31×19×28cm)、

低音用と高音用で大、小、二つのスピーカー・ユニットが付いています。

伊藤さんの自信作は、うちの物より更に小さな箱に8センチほどの可愛らしいスピーカー・ユニットがポツンと一つだけ。

正直言ってあまり期待せずに試聴が始まりました。


ところが目を閉じて聞いていると、向こうで実際に楽器を演奏しているかのように臨場感があり、

左右の広がりと奥行きが感じられます。

設計者の伊藤さんが言うには、小さくても良いスピーカー・ユニットであれば、左、右、各一個で鳴らした方が、

低音、高音用とユニットが二個、三個付いた物よりも、音の左右の位置関係がクリアに表現できるとのこと。

試聴は伊藤さんと私が缶詰状態で4時間ほど続きました。

音源はレコードや、CD、PCオーディオと呼ばれるPCメモリー、アイフォンなどで、ジャンルはジャズが多かったです。

その音源を、真空管アンプ、通常のオーディオ・アンプ、後付けスピーカー等に付属される簡易アンプなど、

色々な環境での音の違いを体験させていただきました。


同じスピーカーを高価なシステムで鳴らすのと、携帯の音源と簡易アンプとでは明らかに違いました。

でもこれは例えるとラジカセの音と、100万円のスピーカーを比べるようなもの。

実際にラジカセを買う時は、誰も高級スピーカーは見ずに、ラジカセ・コーナーの中から好みの物を選ぶと思います。

この日、高級なシステムから安価タイプに切り替えた直後は、

カラー写真から白黒写真に変わったような寂しさを少し感じましたが、

その白黒写真でも見つめていると、水墨画のように奥行きや味わいを感じてきました。

こうして最良の環境だけではなく、安価な組み合わせの中でも、ノイズを感じず溌剌とした音色を出す姿に感銘を受けて、

伊藤さんの目論み通り、私は左右セットで7万円のスピーカーを発注しました。


それにしても真剣に微細な音を、長時間にわたって聞き比べた後はかなり疲れました。

この疲労感は、ワインの試飲会で一度に100種類以上の試飲をした時に近いものです。

そして今、このスピーカーは当社店舗で毎日BGMを鳴らしています。

ご興味のある方は、ぜひ一度音を聞きに来てください。



さて、今月のお薦めワインです。

北海道からは、増毛フルーツワイナリーのポワール(洋梨のスパークリング・ワイン)です。

猛暑で昼も夜も暑かった12年に比べ、13年は朝夕が涼しく昼はちゃんと暑かった年。

そのため13年産は果実味と酸味が両立して、メリハリのある味わいが楽しめます。

ここの本業はリンゴからの「シードル」ですが、冬期間だけ発売される「ポワール」は隠れた人気商品です。

また、地元農協で瓶詰めしている「増毛町・100%洋梨果汁」と、

「増毛町・100%りんご果汁」も(1リットル735円)お薦めです。

濃縮還元ではなくストレート果汁なので、瓶の底に1センチほど成分が沈殿していますが、

旨味成分と栄養価はたっぷりでしょう。朝の一杯が元気の元となりそうな果汁です。

山梨から、マンズワインの山梨甲州・樽熟成。

この価格ですから、甲州種の生産農家さんを思うと気の毒になりますが、味わいは辛口でバランス良く上出来。

どこかホットする味わいは、和食に最適な白でしょう。


仏ボルドー地方からは、久しぶりのメドック第二級格付け、サン・ジュリアン村のシャトー・グリュオ・ラローズ06年。

もちろんこの価格は、年に一度飲むにも勇気が必要な値段だと思います。

でも今、このシャトーを普通に仕入れると、販売価格は楽に一万円を超えてしまいます。

2006年が特別な年の方には、少し無理をしてでも、この機会に買っておくべきだと思います。

06年にそこまで思い入れのない方には、ムーリ村のシャトー・シャス・スプリン06年。

こちらも現在の相場は六千円前後しますので、この価格でしたら一寸奮発してと思えるぎりぎりのラインでしょう。

今月のボルドーはお値打ち品が多く出ました。リストラック村のシャトー・フルカ・デュプレ09年。

作柄の良かった年らしく完熟感がたっぷりで、今でも充分美味しいですが、

5~6年間買ったことを忘れて熟成させるのも将来の楽しみが増えることでしょう。

熟成した飲み頃ワインでしたら、サンテミリオンのシャトー・ベルルガール・フィジャック01年。

豊かな熟成香がグラスから広がり、メルロ種の果実味と13年を経た熟成旨味の両方が楽しめます。


仏ブルゴーニュ地方からは、ボーヌ村のはずれブリニィ村のマレシャル家が造るブルゴーニュ規格の赤11年と、

ジャイエ・ジルが造るオート・コート・ド・ボーヌ地区の赤09年。

好対照なこの二軒の生産者、マレシャル家は自然派を思わせる薄旨系スタイルで、

お食事と共に1本をゆっくりと味わっていただきたいタイプ。

一方、ジャイエ家は凝縮した果実味と、スモーキーな木樽の風味が華やかで、一杯目から魅力的な味わいが楽しめます。

そしてお値打ち品はブラン・ガニャールが造るシャサーニュ村の赤09年。

白で知られるこの村ですが、サントネ村に接する南側はピノ・ノワール種が多く栽培されています。

作柄が良く、更に5年を経て熟成感も出てきた09年産の村名付きワインがこの価格は要チェックでしょう。


ロワール地方サンセール村の名門アンリ・ブルジョワが造るプティ・ブルジョワ白。

サンセール村産のソーヴィニヨン・ブラン種だと3~4000円はするため、

村の境界線外側で栽培されたソーヴィニヨン・ブラン種で造られたお値打ち品。

商品名は「小さなブルジョワ家」ですが、味わいには「小さな」感じは全くありません。

シュド・ウェスト地区カオール村で有機栽培を実践しているコス・メゾヌーヴがガメイ種で造った赤。

ボージョレ地方で有名なガメイ種ですが、同じ葡萄でもこの赤はミディアム・ボディで骨格があり、

果実味とタンニンがバランス良く仕上がっています。


シャンパーニュ地方からはベルナール・レミィ社のロゼ・ブリュット。

ふくよかな味わいで、当社でも好評なここのシャンパーニュにロゼが仲間入りしました。

ピノ・ノワール種60%、シャルドネ種35%、ピノ・ムニエ種5%からの風味豊かなベースワインに、

赤ワイン(ブージー・ルージュ)を13%加えて鮮やかなロゼに仕上げました。


イタリアでは、プーリア州のラ・ルーナ・アルジェンタのネグロアマーロ・プリミティーヴォ・アパッシメント(乾燥させる)。

その名の通りネグロアマーロ種と、プリミティーヴォ種を陰干しして、

濃縮した葡萄を一部加えることで、 ワインに濃さと複雑さを持たせています。


今人気のスペインからは、スタイルの違う2種類。

まずは、アルマンサ地区のアタラヤが造るラヤは現代的な赤。

果皮だけでなく果肉も果汁も血のように赤いガルナッチャ・ティントレラ種主体のワインは、

果実味の濃さが普通の黒葡萄以上に強く出ます。

安価でもフルボディ・ワインをお探しの方にお薦めします。

一方、ヴァルデペーニャス地区のアルバリが造るグラン・レセルヴァ04年は、

伝統的な長期熟成させたスペイン・ワイン。

10年を経て濃さ強さは少し落ち着き始めましたが、

豊かな熟成香と練れた味わいが広がる様は若いワインには絶対に望めません。


スペインのお隣ポルトガルからの赤。

ブランデーを加えた甘口のポルト・ワインで知られるドウロ地区で、ポルトではなく通常のワインを造るカルム社。

ポルトと同じ風味豊かな葡萄品種を数種使い、タンクと木樽で熟成させた赤は、

果実味とタンニンがバランス良く、この価格としては最上のテーブル・ワインと言えるでしょう。


オーストラリアからはトレンサム・エステートのピノ・ノワール12年。

本場ブルゴーニュ地方だと、この価格でピノ・ノワールが買えるだけでも驚きですが、

味わってみると上品な木樽の風味まで楽しめます。普段飲みのピノとしては、言うこと無しの出来栄えでしょう。


人気のチリではボノスのソーヴィニヨン・ブラン種で3リットル・パック。

温暖なチリとは思えないメリハリのある味わいで、約1ヶ月は酸化しないバッグ・イン・ボック容器入り。

冷蔵庫に常備しておくと、急にお客様が来ても慌てません。

また、スプーン1杯でもフレッシュな状態で出せる為、調理用にも大変重宝しますよ。


そして初登場ブルガリアからは、カストロ・ルブラがメルロ種で造るテリッシュ09年。

醸造コンサルタントには、世界一有名な仏ミッシェル・ロラン氏を起用。

完熟したメルロ種特有のふくよかな果実味と、樽からのカカオ風味が楽しめます。

この価格ですから、仏・ボルドー・ポムロル村の赤とは言いませんが、

右岸リブルヌ地区で評判のシャトーを思わすぐらいの出来。メルロ種好きには、見逃せない赤でしょう。


ベルギーのトラピスト修道院で造られるアルコール9.5%のトリプル・ビール。

地元ではこの様な特別のビールは、数年熟成させてから飲まれ、 ワインと同様に賞味期限の記載は無かったそうです。

しかしベルギーがEU加盟する際、自国のビールに賞味期限の記載を受け入れました。

このビールは2012年2月に瓶詰めされ、14年2月が賞味期限の為、在庫処分価格で入荷致しました。

味わいは、賞味期限を過ぎても力強く、飲み頃はまだ後のような気がします。

熟成したベルギーの修道院ビールを、少しぬるめの10~14度にして、

白ワイン用グラスに半分ほど注ぎ、豊かな香りを楽しみながらゆっくりと味わってみませんか。


食品からはフランス・サコール社サラミソーセージのソシソン・セック。

豚肉の旨さと、白カビによる熟成風味が豊かに広がります。

当然、保管は冷蔵庫ですが、食べる分をカットし、白カビの付いた表面の紙をはがして、

30分ほど室温に戻していただくと、芳醇な味わいがたっぷり楽しめます。