今月は50歳を過ぎて涙腺がますます弱くなった私が、思い出しただけでも「うるうる」来てしまう話。
この話は生協組織である「生活クラブ」が発行している会報の3月号に載っていた連載記事。
作者は大阪の小学校で、障害のある子も無い子も地域の普通学校で共に学ぶ教育を実践された先生です。
この先生にとって忘れられない生徒のカオルくんは、動けず、話せず、食事はカテーテルで栄養補給をしてたそうです。
就学前にこの先生がご家庭に伺うと、お父さんからいきなり
「義務教育で子供を学校へやらへんのが罪になるんやったら、
ワシは牢屋に入ってもええからこの子を家に置いておく」と言われました。
光や音の刺激にも反応せず、細い手足を伸ばしてベビーベッドに寝ていたカオルくん。
お母さんから渡され抱き上げた時に先生は何かを感じ、
入学に向けて頻繁に家庭訪問を続ける事でご両親も入学に前向きになって来ました。しかし困惑したのは学校です。
命の保証ができない、設備がない、勉強なんか出来ない、などと議論になり、困った学校は二人の医師に相談しました。
医師の1人は「とても無理だ」と言い、
もう一人は「子供たちの中にいられたら、カオルくんも喜びますよ」と意見が割れたことで、
最後は職員会議にカオルくんとご両親に来てもらいました。
たくさんの質問に答えた後、お父さんは「考えてみいや。音楽の時間、みんなが歌っている教室に、
カオルが母親の腕に抱かれているとしようや。この時カオルが学習していないと先生らは言えるんか」
この一言に先生たちは誰一人反論できず、
学校は入学に向けて教室に畳とベッドが持ち込まれ、カオルくんの登校が始まったそうです。
この時からこの先生は、「点数」の目盛りのついたモノサシだけで子供の学力を決めつけてはならないと肝に銘じたそうです。
予定日より3か月の早産で、保育器で3カ月入院したわが息子。
今は元気に育っていますが、保育器にいた時は何度も成長に向けたハードルを一段一段登って来ました。
それだけに、こうしたお話は真剣に感じてしまいます。
私も夜遅く帰宅し息子の寝顔を見た時は、宿題や通信簿の事など微塵も思い浮かびませんが、
休日に息子と一緒にいると、一向にすべき事を始めない姿にやきもきし、
「机の上を片付けて勉強を始めたらどうだ」という一言から、気が付くと喧嘩が始まってしまいます。
今月のおすすめワインです。
まずは北海道から、昨年11月開業した余市のオチガビ・ワイナリー。
白のバッカス種は通常甘口タイプが多いですが、ここではふくよかな辛口に仕上げています。
さらに興味深いのが赤のジャーマン・カベルネ。
オーナーの落氏が40年程前、修業先のドイツで地元の黒葡萄とフランスのカベルネ種を掛け合わせた品種を見つけ、
数種類を余市に持ち込み、その後も大切に栽培されていました。
この品種群をブレンドしてジャーマン・カベルネと名付け発売しました。
もちろん、温暖なカリフォルニアやチリで育ったカベルネと同じとは言いません。
でも寒い北海道で栽培でき、黒みがかった色調とふくよかな味わいは、やはりカベルネ種の血を感じさせる赤ワインです。
仏ボルドー地方からはオー・メドック地区のシャトー・ボーモン10年。
最高だった09年の後の10年もボルドー地方では素晴らしいワインが出来ました。
円安の影響で価格は少し上がりましたが、完熟したカベルネ種からの豊かな味わいは09年以上だと思います。
右岸からはリュサック・サン・テミリオン村の側にあるシャトー・ラ・ファヴィエールのファーストと、セカンドラベル。
新オーナーは最高のワインを造るために、最先端の醸造設備を設置しました。
通常赤ワインは、発酵後タンクから葡萄の皮と種をスコップでかき出すために、
蓋のない桶やタンクで発酵させ、樽に入れて熟成させます。
白ワインの様に搾った果汁ですと皮と種が無いため、樽で発酵と熟成が出来ます。
発酵から樽を使うと、木の風味が果実味に溶け込んだ味わいになるのですが、黒葡萄の皮と種がネックでした。
そこで考えられたのが、樽に潜水艦のハッチの様な蓋を付けて皮を取り出せるようにしました。
また発酵中の炭酸ガスによって葡萄の皮がタンク上部に集まると、
長い棒で皮の層を崩し混ぜ合わせて皮からの成分抽出を促しますが、密閉された樽では棒を入れる事ができません。
この問題は樽を設置する台にローラーを付け、樽全体をゆっくりと回転させて内部の果汁と果皮を撹拌出来るようにしました。
こうした最先端の設備で造られたワインをぜひお試しください。
ボルドー地区の白は、シャトー・オー・ムレール05年。
オーナーはボルドーで最も厳しい選別を行うと言われるマグレ氏。
天候も良かった05年ですが、凝縮したミツを思わす香はさすがです。
9年を経て少し酸化したニュアンスが混じり始めていますので、多少好き嫌いは出るでしょうが素晴らしい白ワインです。
ブルゴーニュ地方からはサヴィニ・レ・ボーヌ村シモン・ビーズの村名付き赤09年。
樹齢は35年から75年と古く、良質な実を無除梗のまま木桶に入れ今も足を使って優しく破砕し、自然酵母で発酵させます。
ボーヌ地区らしい赤い果実の風味を酸とタンニンが引き締めています。
作柄の良かった09年産は貴重です。
南仏からはジゴンダス村のシャトー・ド・サンコムがコート・デュ・ローヌ地区で造る上級品のレ・ドゥー・アルビオン11年。
濃さ強さに上品さが合わさった味わいを、毎年安定して造っています。
11年は入荷したばかりなので、デキャンタをされた方が表情が開いてくるでしょう。
ロワール地方からは自然派ワインの生産者「レ・ヴァン・コンテ」が造る
ポワーヴル・エ・セル(コショウと塩の意)と名付けられた赤12年。
地元でも少ないピノ・ドニス種の古木にガメイ種をブレンドした赤は、ミディアムな果実味にスパイス感と、旨味が楽しめます。
もう1本南仏からは、今月の旨安大賞受賞のトゥトゥ・イーヴル赤ペイ・ドック12年。
南仏で旨安ワインと言えば、真っ先に名の上がるジャン・クロード・マス氏が造った赤は、
4品種のブレンドが上手く調和し、少し複雑さのある香と、ミディアムでバランスの良い味わいのテーブル・ワインです。
イタリアからは薬物依存症患者の更生施設内にあるワイナリーが造った赤、ノイ10年。
本来は患者さんの更生が目的ですが、効率よりも手間のかかる手法を実践することで
一般のワイナリーより品質が上がり、今ここのワインが大注目されています。
品種は地元のサンジョベーゼ種に仏系のカベルネ種をブレンドしたリッチで分かりやすい味わい。
そしてこの年のイタリア・ワインは素晴らしい作柄に恵まれました。
イタリアの旨安大賞はモリーゼ州のロンボが造る赤と白。
赤はモンテプルチアーノ種とサンジョベーゼ種、白はトレビアーノ種とマルヴァジア種と2品種のブレンド。
特別濃いわけではないですがバランスが良く、ワイングラスではなくコップで気軽に味わってみてください。
スペインからは、ビエルソ地区のメンゴーバが造る赤と白。
有機栽培の畑は山の急斜面にあり、トラクターが使えず牛を使って耕しています。
生産者からの資料はありませんが、試飲の印象から醸造過程での酸化防止剤未使用等の自然派醸造でしょう。
地元品種にこだわり、赤はメンシア種、白はゴデーリョ種とドナ・ブランカ種。
味わいは澄んだ果実味とミネラル感、そして少しすりリンゴのニュアンスが混じります。
スペインでも自然派ワインの流れが着実に進んでいるのを実感できる良質なワインです。
カリフォルニアからはオー・ボン・クリマのオーナー、ジム・クレンデネン氏が始めた自社畑のワイン。
ピノ・ノワール種、シャルドネ種共に温暖な産地らしく、ブルゴーニュと比べると酸とタンニンが穏やかですが、
ブルゴーニュ好きが喜ぶツボをしっかり押さえています。
そしてこの価格、ブルゴーニュでは安めの村名付きクラスですが、
表情の豊かさはちょっとした1級畑以上!これは今月最も驚いた味わいでした。
ニュージーランドからはセレシン・エステイトのモモ・ソーヴィニヨン・ブラン12年。
現地では有機栽培のパイオニアと言われる生産者。
マールボロ地区のソーヴィニヨン・ブラン種と言えばメリハリのある酸ですが、
ここでは木の芽の香り、ふくよかな果実味、そしてミネラル感で、新しい味わいを表現しています。
食品からはチリ産のオリーブオイル、ソル・デル・リマリのエクストラ・ヴァージンタイプ。
チリで良質なワインが出来るように、オリーブだって良質な物が出来るのは当然と言えば当然。
良質なヴァージンオイルに共通する少し青みがかった香と、ふくよかなコクはかなりの物です。
大好評の小瓶に続いて、お得な大瓶が入荷。
国内からは大分県の近藤養蜂場が輸入したハチミツ。
オーストラリア・タスマニア島の大変貴重なレザーウッドの花の蜜は濃厚で気品のある風味。
また容器からスプーンを使わず出せるので、忙しい朝にも最適です。
もう1種は今流行りのナッツ入りハチミツ。
お休み前の読書のお供には最高のおつまみでしょう。
そして大手業者だけに、良質でありながらとても安価な値付けになっています。まずはご自分へのご褒美にお試しください。