2015年 5月

今月は車のお話。

7年間苦楽を共にしたフランス製でポンコツのルノー・キャトルを手放し、中古のニッサン・ノート初期型にして早3年。

オートマにも慣れ、ペットから家電製品の様に手のかからない車に週1回程乗っています。

そんな私の眠っていた欲望がむずむずと動き始めました。ホンダの新車S660です。

一生に一度でいいから、二人乗りのスポーツカーに乗りたい。

そんな気持ちが、軽自動車だったら可能かなと思えて、まずは昔愛読していた雑誌カーグラフィックを見に書店へ。

5月号の表紙は黄色のホンダS660、迷わず購入し、部屋で腹ばいになってページをめくり始めました。

5月号は二人乗りのスポーツカー特集。

ホンダS660、マツダ・ロードスター、アルファロメオの記事が並んでいます。

このアルファの新型4C(クワトロ・チ)の記事を読んで、私はこの編集部の企画力に驚きました。

通常、この手の雑誌は人気の車をメーカーから借りて、編集者が様々な場所を運転してその性能や、印象を記事にします。

ところが4C(クワトロ・チ)をテスト運転したのは、トヨタ、ニッサン、マツダ、各社のスポーツカー担当の設計主任でした。

私がトヨタの社長さんだったら、

自社の宝と言える設計主任を他社製品の宣伝に使われる事に許可出来るかなぁと思ってしまいます。

そして本文で、各社の設計者さんは「高額商品としては煮詰めが足りない」とか色々文句は言っていますが、

4Cの運転を終えた時の写真を見ると、皆さん顔の筋肉がゆるんで「ニマニマ」しているのです。

一番素直なのがマツダの方で、第一声は「ファンタスティックやねぇ~」でした。

三人ともスポーツカーが大好きで、好きだからこそマニアが喜ぶ車を設計できるのでしょう。


それと、さすがだなと思ったのは、トヨタ86(ハチロク)の設計者が

「実は会社が研究の為に4Cを購入したので、今回がお初ではない」と言っていました。

さて私はこの楽しいアルファの記事を読んで、少しS660に対する熱は冷めましたが、

4Cは900万円もするのでこちらに乗り換えることは無理。

そんなわけで今は若かった頃の様に「宝くじでも買ってみようかなぁ~」と考えながら時折ページをめくっています。


今月のお薦めワインです。

北海道からはグラン・ポレールの余市ピノ・ノワール12年。

近年、余市でもピノ・ノワール種の作付けは増えて来ました。

このワインは余市・登地区・弘津園の葡萄ですが、近年植えただけに苗木はピノの中で

最も人気の高い仏・ブルゴーニュ地方の葡萄を選抜したディジョン・クローンの苗木だそうです。

余市で約30年前から栽培され始めたピノですが、

当初は寒冷地向け用のドイツ系やスイス系の苗木だったと言われています。

気候風土の異なる余市で、ディジョン・クローンの栽培は難しいそうですが、

キュートで澄んだサクランボの風味はやはり本場ブルゴーニュのピノを思わせます。

山梨からはシャトー酒折の甲州・バレル13年。

甲州種を樽とタンクで別々に発酵を行い、熟成は全体の6割を樽で3ヶ月熟成させ、

残った4割はタンクで熟成させた後にブレンドした辛口白。味わいは果実味と酸味と旨味のバランスが良く、

ご家庭で食べる毎日の食事にも寄りそう日本の白ワインです。


仏ボルドー地方からは、飲み頃でお値打なワインが入荷しています。

メドック地区のシャトー・ヴュー・ロバン97年。

カベルネ種主体の97年産はキノコや革製品を思わせる熟成香が広がります。

18年を経た赤がこの価格!しかも練れた味わいですが果実味は今も楽しめ、枯れた味わいには至っておりません。

古酒の入門には最適なボルドー・ワインだと思います。

フロンサック地区のシャトー・クラーズ01年。

一般にジロンド川右岸はメルロ種主体で栽培されていますが、ここはカベルネ・フラン種が8割。

14年も経たのに果実味とタンニンが豊かで枯れた感じが無く、メドック地方のワインを思わせます。

高騰が続くボルドーで、熟成したワインがこの価格はちょっとあり得ません。

アントル・ドゥ・メールにあるシャトー・ラリイ。

ここは赤、白共に出来は良かったですが、特に赤は作柄の良かった10年産。

今この価格帯では12年か13年産しかなく、10年産は貴重品です。

凝縮した果実味とタンニンは、さすが10年産と納得できる味わいです。

ボルドーの白ではシャトー・ラグランジュの白でレ・ザルム11年。

限定ですが、少しこなれた11年産が入荷しました。4年を経て樽風味と果実感が調和し始めたころでしょう。

ラグランジュの白は毎年安定した品質なので、安心して仕入れられるワインの代表です。


ブルゴーニュ地方ではオリヴィエ・ルフレーヴのムルソー村の白1級スール・ダーヌ12年。

実はこの畑は最近まで本家のドメーヌ・ルフレーヴに貸し出されていたが、契約が切れてオリヴィエの元に戻ってきました。

ルフレーヴの時はビオディナミ栽培だったので、オリヴィエ氏もこの区画はそのままビオディナミを続けています。

さて値段ですが、本家ドメーヌ・ルフレーヴのムルソーが17,000円。そしてオリヴィエの価格を見て下さい!

2番目は、飲み頃の赤で、ゴワ・ヴァニエのボーヌ村03年。

この村で1.1ヘクタールの畑しか持っていない家族経営の生産者。

洗練されてはいませんが、何か芯があり、変に化粧をせず地酒っぽさを素直に出している所に共感を持ちました。

12年を経たボーヌの赤がこんな値段で買えて、「これが、おいらのピノだ!」とグラスから聞こえてきます。

3番目は、有機栽培を実践するプイィ・ヴァンゼル村の生産者、スフランディエールの白。

有機栽培のワインは軽いタイプが多いですが、ここはふくよかな果実味と樽発酵の風味が楽しめます。

この12年産もマコン地区産シャルドネ種の美味しさがたっぷり詰まっています。

4番目は、ムルソー村のピエール・モレ氏の赤。

ワインは魅力を振りまくようなタイプではなく、 ある意味で哲学的というか、

ゆっくり噛みしめて味わう事で少しずつ分かってくるようなスタイル。

ここの08年モンテリー村産ピノ・ノワールの赤はまさに素のままの味わい。

ブルゴーニュの皆が同じピノ・ノワール種で造っているのに、味わいがこうして異なるのは不思議ですが、

きっと栽培と醸造を通して葡萄に造り手の魂が乗り移ってくる為なのでしょう。

5番、ブルゴーニュ好きに「ボージョレは?」と聞くと嫌な顔をされます。

でも、ここボージョレ地区でも素晴らしい生産者が必死にワインを造っています。

その一つがこのラランドの白。食わず嫌いを克服出来る方にお薦めします。

この有機栽培で多分樽無しのシャルドネ種の08年産は、

7年を経てもボケたりヒネたりせず、 今も骨格のある味わいを持っています。

1本購入し、自宅でヨーグルトに漬け込んだ鳥胸肉を、カレー粉をまぶしてオーブンで焼いた料理と合わせましたが、

樽熟成無しでもスパイスを使った料理と良い調和を持って楽しめました。

6番、ヴォルネ村のロブレ・モノが造るブルゴーニュ規格の赤10年。

とにかく何度でも言いますが、素晴らしい天候だった10年産は色も香りも味も全てが格上です。

だから10年産で良い生産者のワインを値上がり前の価格で見つけたら即、買いです。

ワイン好きは皆、血眼になって10年産を探しているからです。


アルザスからは有機栽培を実践するマルク・クレイデンヴァイツのリースリング種。

この生産者も毎年安定して良質なワインを造っています。

またここでは画家にその年のワインを飲んでもらい、その印象を描いた絵をその年全てのワインにアートラベルとして使いますが、

12年産は私が思うに「フランケンシュタイン」の様な不気味なラベルで、販売量が急に落ちてしまいました。

その12年産が完売し、新たなラベルの13年産がやっと入荷しました。

この年は作柄もまずまずで、絵の仕上がりも良くて正直な所ほっとしています。


南仏からはルーション地方モーリー村のラ・ヴィスタの白。

赤も果実感が瑞々しく、赤、白共に丁寧な仕事を思わせる、澄んだ味わいが楽しめます。

シュド・ウエスト地方のカオール村からはシャトー・ピネレ11年。

向こうが透けない程の真黒な色調、味わいもフルボディですがタンニンがキメ細かで果実味は柔らかく今から楽しめます。

現地では豚肉と豆の煮込み調理と合わせていますので、やはりコクのある料理が恋しくなります。

フランスの最後はシャンパーニュ地方から、バロン・フェンテのグランド・ミレジム06年。

高騰を続けるシャンパーニュ地方で、06年の年号入りでこの価格は立派。

ここはムニエ種を得意とする生産者ですが、年号入りはシャルドネ種が45%と多い分、

ムニエ・トーンが弱まり、豊さと爽やかさがバランス良く楽しめます。


イタリアからは南部ラッツィオ州ファレスコ社の白、フェレンターノ11年。

きっと良質な樽で醗酵、熟成をさせているのでしょう。

地元のロシェット葡萄がエキゾチックな南国の果実味と、

ゴージャスな木樽の風味を身にまとい洗練された味わいになっています。

中身を知らされずに、大ぶりのブルゴーニュ・グラスでサービスされると、

私はなんて答えるだろうかと不安になる程の出来。

白の最後は最安値の1本、ブォン・ファットーレのビアンコ。

この価格とは思えない果実味とミネラル感は、

上級品DOC規格のトレビアーノ・ダブルッツォを格下げした物と聞いて納得します。ぜひ一度お試しを!


赤は少し熟成した08年産の2種。まずは大人気、アブルッツオ州ファルネーゼ社の上級品でリセルヴァのオピ08年。

ここの1番人気の赤カサーレヴェッキオが13年産ですから、

更に5年の熟成を経て濃さ強さは落ち着き始め、 複雑な熟成香が開いてきました。

カサーレヴェッキオのシロップの様な濃厚さもいいですが、たまにはこなれた赤も美味しいですよ。

そして、プーリア州のコンテ・ディ・カンピアノのスクインツァーノ08年。

まずは立派なヘビー・ボトル入りで、高級品オーラが出ています。

7年を経て味わいはこなれて外見ほど強さはありませんが、

果実味とスパイス感とアルコールが調和し始めた飲み頃の美味しさが楽しめます。

干した果実の風味もあるので、乾き物をつまみながらでも美味しいかも。


スペインからは旨安赤が2種。カンポ・デ・ボルハ地区のノストラーダから。

レゼルヴァ規格シルバー・ラベルは10年を経た05年産でこの低価格。

スペインの倉庫は保管料が掛からないのでしょうか?

とにかく熟成ワイン好きな方にとっては、とてもありがたい赤でしょう。

次は名産地リオハ地方の名門マルケス・デ・リスカル社の新製品プロキシモ。

リオハでは年功序列というか、樽熟成された古い物が上位という社会。

そこに出てきたこの赤は僅かに樽風味はありそうですが、瑞々しい果実感が売りの新顔。

良い生産者は熟成品だけではなく、新しいスタイルの赤でも美味しく造っています。


ニューワールドからはニュージランド・バビッチ家の赤シラー種。

もちろんここのソーヴィニヨン・ブラン種も良いのですが、全く期待しなかった赤、シラー種の出来に驚きました。

シラー種はもっと暖かいオーストラリア産でしょうと思っていたら、涼しいニュージーでも立派な味わいなのです。

でも、北海道でシラー種は無理だよなぁ~。


アルゼンチンからはミッシェル・トリノの赤マルベック種と、白トロンテス種。

赤、白、共にこの価格でしっかりと柔らかな果実感があって、

ぎゅーっと搾ったギスギス感がありません。本当にこの価格で頭が下がる出来です。


ブルガリアからは、ルブラのドミナント(カベルネ種+シラー種)と、ペンダー(ルビン種+メルロ種)。

共に仏ミッシェル・ロラン氏がコンサルタントしており、現代的な赤に仕上がっています。

この国の輸出はまだ少ないのでしょう。収穫年が10年と09年なので、少し熟成感も楽しめてお薦めです。


食品からはスペイン・エルポソ社のフエ(サラミ)の上級品。

こちらは豚肉の食感と、白カビの風味がより豊か。

当然、冷蔵保存ですが、食べる分を切って1時間前に冷蔵庫から出しておくと、舌の上で風味がひろがります。

最後は牡蠣の缶詰。韓国製ですが、何よりも味付けが丁度良く、しかも安い。

どれも美味しいですが、私はアヒージョ風味と、柚子胡椒味が気に入りました。

スモーク牡蠣のシリーズは全部で7種類ございます。