2016年 1月

私の毎朝の仕事の一つに、店先の歩道の清掃があります。

今はやっと街路樹の落ち葉が散り、これからは除雪が始まります。

以前にも書きましたが、私は休みの日に一条橋から豊平川の河川敷を走って中島公園まで行き、公園を一回りします。

その公園や川原では職員の方が落ち葉清掃や、木々の剪定、補修等をしています。

河原や公園、道路、そして様々な施設は多分、国か、札幌市か、あるいは企業が、 予算をかけて

維持・管理しているおかげで、私たちは気持ち良く安全に通行でき、観光の方にも喜ばれるのでしょう。


私が札幌で生まれ育って56年。若い頃は街がどんどん大きくなり、

新しいデパートや様々な施設などが出来る度にワクワクしていました。

ところが今では近くの公園や河原を散歩することで、札幌の良さをしみじみ感じています。

ですから私を育ててくれたこの街を、感謝の気持ちを持って今日も店先の歩道を清掃しています。


最後に私にとって札幌でなければ出来ない事と言えば、大晦日の夜に行う時計台前での年越しです。

毎年12月31日の夜11時過ぎ、私は一人でシャンパーニュとグラスを持って、

時計台の前で寒さに震えながら12時の鐘の音を聞いています。

この苦行のような新年のカウントダウンも今年で34回目。

屋外なので当然寒いですが、興味のある方はどなたでも参加できます。

その際は温かい恰好をして、自分の飲み物とグラスをご持参ください。

冷え切った中で聞く時計台の鐘の音は、札幌市民であることを再認識できますよ。


さて、今月のお薦めワインです。

栃木県のココファームが、山梨の甲州葡萄で造った特別な白が、

甲州F.O.S.(ファルメンテッド・オン・スキン、葡萄の皮の上で発酵させたの意)11年。

通常白ワインは白葡萄を搾って果汁だけを発酵させる為、爽やかでフルーティな味わいになります。

逆に赤ワインは黒葡萄の果汁に、黒い果皮と、種が混じった状態で発酵させるので、

皮の色が染み出て赤くなります。

赤の発酵中は色だけではなく、渋みや旨味も染み出ることで複雑な味わいになります。

さてこのワインは、白葡萄の甲州種を赤ワインと同様に皮と共に発酵させました。

普通の白ワインと違ってオレンジ色の色調に、苦みや渋みと旨味がたっぷり楽しめます。

長野県の小布施ワイナリーのシャルドネ。

ここの自社畑産のワインは4、000円前後しますが、こちらは同じ村で尊敬されるカクトウ農園産。

良質な葡萄でも自社畑で無いだけで、3割以上お安くなっています。

醸造も半分は新樽で発酵、熟成させた贅沢な造り。

タンク醗酵からのフレッシュな果実味と、樽からのナッツ風味がグラスから広がります。

今でも美味しく、更に1~2年熟成させたくなるようなポテンシャルを感じます。


北海道・千歳ワイナリーのピノ・ノワール14年。

北海道は13、14年と作柄が良く、色調もこの品種としては十分に濃く、風味も豊かに仕上がっています。

千歳ピノの14年と、13年のリザーヴは、葡萄農家の木村氏と、

醸造家の青木氏とのコンビが造った上出来の作品。

北海道産ピノ・ノワール種の品質が、ますます上がっているのが実感できるでしょう。

上富良野・多田農園で黒葡萄のピノ・ノワール種で造られた珍しい白14年。

少し果皮の漬け込みが長かったのでしょうか、僅かに朱の混じった色調だけでなく、

黒葡萄からの果実感と旨みがはっきりと楽しめます。

多田農園の新シリーズは、ラベル変更以上に味わいも豊かになって来ました。


フランス・ボルドー地方からは、お手頃価格でヴィンテージ違いの3種が入荷しました。

まずはフロンサック村そばのシャトー・モンローズ10年。

素晴らしい天候だった年だけに、この価格でもメルロ種からの凝縮した果実味と、

少し樽からのスモーク香が楽しめます。

1箱ぐらい買った事を忘れて取って置ければ、数年後から楽しい思いが出来る事でしょう。

次もACボルドーでシャトー・フルール・オー・ゴーサン07年。

こちらもメルロ種主体ですが、8年を経て少し熟成した風味が開いて来ました。

今ですと葡萄からの果実味と、熟成香、両方の美味しさが楽しめます。

そして最後はメドック地区のシャトー・デ・グランジュ・ドール04年。

この価格でメドック産ワインというだけでも驚きですが、

更に11年を経た04年産です。

少し果実味が枯れ始めて来ましたがタンニンが味を引き締め、

土やキノコを思わせる熟成香がグラスから広がります。

濃度よりは、こなれた味わいがお好きな方に!

そしてもう少しご予算がある方には、

クラレンス・ディロンのクラレンドル・ボルドー・ルージュ10年。

当然作柄の良かった10年産ですが、こちらは無理に濃度を追求せずにミディアムで品の良い仕上がり。

味わっていただければ、さすが1級シャトー・オーブリオンのスタッフが造った品の良さが感じられるでしょう。


そしてブルゴーニュです。アルマン・ジョフロワの本拠地ジュヴレ・シャンベルタン村で09年。

赤で有名なこの村ですが、最近は1万円近く出さないと豊かな味わいを持つ物には中々出会えません。

そんな中、最高だった09年産で、この価格は驚きと言えるでしょう。

サヴィニ村のシモン・ビーズ13年産の赤と白。

日本では、妻の千沙(チサ)さんのお陰もあって人気ですが、

現地では品質で日本以上の高評価を受けています。

ビーズ家にとって13年はピンポン玉大の雹が畑を直撃し、

生産量は平年の7割減(つまり1/3しか収穫できなかった)。

そして収穫日の初日に、夫パトリック氏が自動車事故で亡くなってしまいました。

そんな運命的とも言える13年産が入荷しました。

きっと千砂さんは歯を食いしばってワインを造り、育てたのだと思います。

ご冥福をお祈りしながら、味わいたいワインです。


次はブルゴーニュとは思えない価格、ジャン・ルイ・カンソンの赤、白。

この価格だけでも驚きなのに白は12年、赤は11年産なので、少しこなれた旨みも感じられます。

お安い上に、飲み頃の旨みも楽しめて、「もってけ泥棒!」状態。こりゃ~買わなきゃ損ですよ!

そして、大手でありながら良質さで知られるジョセフ・ドルーアン社の

サヴィニー村と、ボーヌ村の赤2種。

ラベル表記は無いですが、サヴィニ村のゴドー畑は自社畑で、少しこなれた11年産。

ボーヌ系のチャーミングなチェリー風味に、酸味とタンニンと旨みが綺麗に調和しています。

これ以上何を望むのですか?と言いたくなる出来です。

そしてボーヌの1級シャンピモン畑は09年産。

複雑でスケール感のある味わいは、2~3ランク上の風格を感じさせます。

果実味と木樽の風味は今からでも楽しめますが、

表情はまだ押し黙った状態で開き始めるのは数年後でしょうか。


次はメオ・カミュゼのサン・フィリベール畑の白で、熟成した08年産。

ヴォーヌ・ロマネ村1級ボーモン畑から約300m西にあるサン・フェリベール畑は、

ヴォーヌ・ロマネ村のシャルドネ種と言えるような区画。

7年を経て果実味と、木樽の風味が調和し始めて来た頃でしょう。

シャンボール村・ユドロ・バイエのパストゥグラン13年。

一般にピノ好きな方々はガメイ種が嫌いですが、

こうした優良な造り手の手にかかると、ガメイ種が入っていても飲み手の心を捉えてしまうのです。

それは多分、ガメイ種の味よりもユドロ・バイエの味わいの方が強いからなのでしょう。

想像力豊かな方にこそ、味わっていただきたい赤です。
  

南仏からはまたまたサンタ・デュック社。

同地区で他の生産者では14年産が入荷しているのに、ここの古木ローヌ赤は09年産。

素晴らしい作柄の09年産で、さらに6年間も熟成していたら、他の生産者では敵わないでしょう。

ちょっと反則技の様な味わいを持つ赤です。

そしてシャプティエ社がラングドック地方産有機栽培のシラー種で造った赤。

スパイス感と果実味がたっぷりな赤なのに、

メーカーで終売が決まり定価1,400円が処分価格で入荷しました。

文句なく、今月の旨安大賞。

アルザス地方からはトリンバック社のレゼルヴ・リースリング12年。

同じリースリング種でも、どんどん辛口に向かっているドイツに対して、

近年のアルザスの生産者は、完熟感を求めて確実に甘くなっています。

そんな流行り事はお構いなしに、

ひたすら切れの良い辛口を造り続けているトリンバック社のリースリング種で上級品。

目が覚めるようなシャープな酸味を、一度お試しください。


ラングドック地方のディモンシュが造る自然派の白。

品種は有機栽培のクレレット種で、表記はありませんが熟成した07年産。

紅茶やハーブを思わす香り、凝縮して僅かに甘みを感じる程の果実味と、

苦旨みや少し酸化のニュアンスを合わせ持った複雑な味わい。

元の葡萄のポテンシャルを充分感じさせる、独自の個性を持った白。

南仏からは自然派の生産者マタン・カルムのマーノ・ア・マーノ11年。

有機栽培のグルナッシュ種を主体に、古木のカリニャン種をブレンド。

ドライフルーツと、自然派特有のアニマル系の香。

4年を経て酸、タンニンと果実味が調和し、熟成旨みも開き始めています。

南仏の濃さ強さと、自然派の澄んだ味わいの両方が楽しめます。

シュド・ウエスト地方カオール村の自然派、マ・デル・ペリエの赤ル・ヴァン・キ・ラップ。

葡萄は有機栽培のマルベック種とタナ種ですから強烈なタンニンを予想しましたが、

品のあるきめ細かなタンニンと果実味に驚きます。

自然派に多い還元的な香りも強すぎず、

柔らかで目の詰まった味わいは初めての方でも楽しめるでしょう。


イタリアからは、ヴェネツィア・ジューリア州のヴェンキアレッツァ。

ここは2013年創業の若い生産者。有機栽培を実践し、

自然酵母による醗酵ですが自然派特有の還元香を上手く手なずけています。

ソーヴィニヨン・ブラン種の白は、まるでニュージーランド産の様な華やかなタイプ。

ここの赤は豊かなタンニンで知られるレフォスコ種。

醗酵中にタンクの移し替えを頻繁に行い、細かで軽やかなタンニンに仕上げています。


ヴェネト州からはルイジ・リゲッティのソル(太陽の意)。

今イタリアは、アパッシメント(陰干し)が大流行。

収穫した葡萄をすぐに醗酵させず、乾燥させることで

水分が抜け糖度が上がり、濃くて強いワインが出来ます。

この赤は地元のコルヴィーナ種を約90日間乾燥させてからに醗酵させ、

カベルネ種とメルロ種のワインとブレンドした事で、強さだけではなく複雑さも身に着けています。

トスカーナ州からはモンタキアーリの、熟成したサンジョベーゼ種の赤ブルネスコ05年。

大樽熟成させたのでしょうか、オレンジの色調を持ち、干した果実やなめし革の香りが開いています。

昔のキャンティ・クラシコで上物か、ブルネロを思わせる仕上がりです。


南部プーリア州からはマーレ・マンニュムのプリミティーヴォ種(米のジンファンデル種)からの赤2種。

「ゾウ」ラベルのチャンキーはアメリカン・オークの新樽で熟成後に、

また、別の新樽で再熟成させた複雑な味と香りの赤。

「マンモス」ラベルの方は、スモークのストレートな香りに、ブルーベリーとアルコール感がガツンと来ます。

二種共に、ブラインドで味わうと、カリフォルニア・ワインと答えてしまいそうな味わいでした。

最後はナターレ・ヴェルガのシチリア島グレカニコ種からの白。

南の白とは思えない爽やかでメリハリの利いた味わい。しかもこのお値段は驚きでしょう。

今月の白・旨安大賞です。


スペインからは、カリニェーナ地区のソルテオ赤。

テンプラニーリョ種、ガルナッチャ種、マスエラ種のブレンドは、

果実味に酸味とタンニンが調和したバランスの良いタイプ。牛のラベルなので、焼き肉にも最適でしょう。

ドイツからは、モーゼル地方ザール地区のワーグナーが造るトロッケン(辛口)。

私の勝手な印象ですが、仏アルザスのリースリング種より、

ドイツのリースリング種の方が安価で良質と思っています。

そして、この白もその通りで、果実味と酸味が溌剌とした上物の白です。

オーストラリア・マーガレット・リヴァー地区の名門アッシュブルックのシャルドネ種。

ニューワールドらしい凝縮した果実味と、樽熟成によるナッツやスモーキーさの両方が楽しめます。

ムニエルなどのバターを使った料理が食べたくなる、豪華で豊かな味わいを持つ白です。

そして、ジョージア(元グルジア)のワイン。

緯度的には伊・ローマあたりと同じですから、温暖で葡萄栽培に適した場所なのでしょう。

赤、白共に完熟した果実味を持ち、ふくよかでバランスの良いタイプ。

この国もロシアから独立して、ワイン等の輸出を必死に進めています。

今後、東ヨーロッパの国々は、要チェックすべきでしょう。


食品からは、瀬戸内海の小豆島から、 ヤマヒサのオリーブ新漬け。

瓶詰めオリーブのお酢っぽさがなく、浅漬けの様な爽やかな風味は大人気で、

当店の年末の風物詩となって来ました。マンザニロ種と、カラマタ種がございます。