2016年 2月

12月30日の仕事納めの後は、31日に時計台で年越し。

翌1日、家内と息子が実家へ里帰りで千歳空港へ向かい、

一人になった私は話題の映画「スターウォーズ」を見に行きました。

映画は息つく暇も無い程に凄い出来で、私は大満足。

昨年の正月は戦車の映画「フューリー」を見て、一昨年は「ゼロ・グラビティ」ですから、

文芸路線好きの家内とは全く趣味が合いません。

家内は正月を実家でゆっくり過ごし、私は「ドカーン、バキューン」系の映画と、

つかの間の独身生活でエネルギー充填。

まずは布団を和室から居間のストーブの前に移動し、万年床体制にします。

後は本を読みながら昼寝をしたり、テレビや映画を見て、腹が減るとお雑煮とお餅を食べる生活。

習慣で毎朝一回は体重を記録しますが、こちらも何とか65キロ未満をキープ。

今年、唯一の汚点は、赤ワインを飲んでいる時にくしゃみをしてしまい、

布団のシーツに赤い水玉模様を付けてしまったことでしょうか。

職場であるワインショップフジヰも1月4日からは通常営業となり、

1月9日は今年最初の土曜試飲会。

僅か数日間の怠惰な生活でしたが、自分一人の生活は青春時代に戻ったような気分でした。


さて、今月のお薦めワイン。

はこだて・わいんのドルンフェルダー種からの赤。

この珍しい葡萄は、定評ある農家・余市の中井農園産。

この黒葡萄は果皮だけではなく、果肉も果汁も血の様に赤い為にふくよかな赤ワインとなります。

北国の赤の中では風味に青さや未熟さを感じず、バランスの良い味わいを持っています。

次は余市の新しい生産者・三氣の辺(ミキノホトリ)産、旅路葡萄の泡。

醸造は札幌の藤野ワイナリーで、自然酵母による醗酵とオリ引きをせずに瓶詰。

しかし、こうした自然派の醸造に多い還元香や、変なくせが目立たず瑞々しい果実感のきれいな仕上り。

食用葡萄だった旅路種ですが、ワインの可能性をはっきりと感じました。

上富良野の多田農園産メルロ種の赤。

特に黒葡萄の作柄が良かった14年らしく、13年より一回り豊かな果実味と、

自然酵母による醗酵からの柔らかな旨みを感じました。

そして、㈱北海道ワイン(おたるワイン)の自社農場・鶴沼の新製品で、ブランとルージュです。

従来ここでは単一品種のワインでしたが、 ブランはゲヴュルツトラミネール種とミュスカ種を、

ルージュはレンベルガー種に数種の黒葡萄をブレンドしています。

このブレンドが功を奏し、味わいに厚みと複雑さが楽しめます。

広大な自社畑を持つ同社だけに、このお値打な価格も大きな魅力と言えるでしょう。

更に同社が満身の力を込めたのが、定価5,000円でピノ・ノワール種と、ツバイゲルト種の上級品。

特にツバイゲルト種は新酵母による醗酵で、酸味と果実味が調和し、若くてもバランスの良い味わいが楽しめます。

長野からは小布施ワイナリーの泡。

北海道民にとって嬉しい事は、このワイン余市産ミュラー・トゥルガウ種と、ケルナー種が主体。

さらに長野産シャルドネ種をブレンド後、瓶内二次発酵できめ細かな泡を得ています。

このドイツ系品種とシャルドネ種のブレンドがいいのか、この価格とは思えない複雑な味わいが楽しめます。

次は余市の新しい生産者オーバーシーズのロゼです。

余市でも有名な藤本農園を引き継ぎましたが、醸造は山梨で行い山梨産葡萄を1割加えています。

伊の醸造家コタレッラ氏の協力もあって、初めてとは思えないバランスの良い仕上がり。

フレッシュなロゼですが、赤に通じるタンニンと旨みが楽しめます。


仏ボルドー地方からはサン・ジュリアン村シャトー・ラグランジュのセカンドワインで10年。

ここは毎年、安定して高品質を保っていますが、2010年はさすがに一回り濃さ強さを持っています。

その10年産がこの価格でしたら、相場より3割ほどは安いと思います。

ボルドーはせめて10年は寝かさないと飲みたくないと言う方には

オー・メドック地区のシャトー・トゥール・デュ・オー・ムーラン04年。

タンニン豊かな伝統的スタイルのボルドー・ワインが、12年を経て飲み頃となって入荷しました。

サン・テミリオン村のシャトー・ピュイ・バルベは最高の年2000年産。

メルロ種主体のワインが16年を経て豊かな熟成香と、少し枯れ始めた柔らかな味わいが楽しめます。

次はフロンサック村シャトー・ムーランのキュヴェ・ピヴェール11年。

このワイン、ボルドーでは少ない自然派のワインで、有機栽培されたメルロ種を

タンクで醗酵、熟成(12カ月)後、酸化防止剤のSO2を無添加で瓶詰めしました。

ラベルは人の頭を小鳥が突いている絵にバツが付いています。

多分このワインを飲んでも、二日酔いの頭痛が起こらない事を表現しているのでしょう。

ご興味ある方は、ご自身でお試ししてみませんか?

グラーヴ・ド・ヴェイル地区のシャトー・ベル・エール07年。

約5割のメルロ種にカベルネ・ソーヴィニヨン種とフラン種をブレンドした赤は、

9年を経て果実感とタンニンが調和し始めた頃。

革製品を思わせる熟成香も開き始め、正にこれからが飲み頃の美味しさが楽しめます。

さてボルドーと言えばイメージはシャトー元詰ですが、

探すと大手ネゴシアン(ワイン商)のワインにも安価で良質な物がございます。

大手のジネステ社が造るボルドー規格の赤、白がとてもよかったです。

赤のマスカロンは最高の年10年産で、完熟した果実味と木樽の風味が6年を経て調和してきました。

このワイン、仏アシェット誌での2★評価が納得できる味わいです。

白のマルキ・ド・シャス13年は、ふくよかな果実感がたっぷり。

品種はソーヴィニヨン種とセミヨン種が5割ずつですが、

現時点ではソーヴィニヨン種からの柑橘風味が華やかに開いています。


仏ブルゴーニュ地方からはシャトー・ド・サントネのブルゴーニュ規格の赤と、メルキュレ村の赤で、

共に作柄の良かった12年産ですから、熟した果実味が楽しめます。

高騰が続くブルゴーニュで、メルキュレの村名付きがこの価格は注目です。

次、アントワーヌ・シャトレは大手ネゴシアン(ワイン商)のブランドですが、収穫年と価格を見て下さい。

今や7~8,000円以上するシャンボール村の赤で、少しこなれた08年産が驚きの価格です。

濃度勝負ではなく凛とした果実感に、品のある酸とタンニンが調和した姿はまさにシャンボール村の味わい。

そして抜栓後、小一時間程経つと、少し妖艶なピノの魅力が開き始めます。

想像力豊かな方には、たまらなく魅力的なピノでしょう。

次もボーヌ村で評価の高いネゴシアン(ワイン商)のワイン3種。

まずはシャンソン社の白。モンタニー村のシャルドネ種で作柄の良かった12年産。

南部シャロネーズ地方らしい柔らかな果実味を、爽やかな酸と上品な木樽風味が調和しています。

そして名門ジョセフ・ドルーアン社のワインは、

ボーヌ村の葡萄だけで造られた、コート・ド・ボーヌ13年の赤、白。

特に白はドルーアン社を代表する1級クロ・デ・ムーシュ畑の若木も加えられています。

ミディアムで上品なスタイルは、お食事と共に時間を掛けて味わっていただくと、うっとりする表情を見せ始めます。

そして、注目のカナダ人パトリック・ピウズ氏が造るシャブリ。

果実味よりも酸味とミネラル感を優先した味わいは、骨太な酸と石を舐めたような硬質感の余韻が続きます。

この独特のスタイルは、シャブリの地でしか生み出すことが出来ない味わいなのでしょう。

お値打な物では、ベルトラン・アンブロワーズのコトー・ブルギニヨン赤、白。

白はタンク熟成とは思いますが、この価格とは思えない程ふくよかな果実感。

一方この赤は通常ガメイ種とブレンドしていますが、

13年は雹の為かガメイ種の収穫が無かった為にピノ・ノワール種単体で仕込まれました。

こちらも、低価格のピノとは思えない濃さと複雑さが楽しめます。ぜひ、煮込み料理と共にお楽しみください。

そして、ブルゴーニュで一番のお薦めが、ベルナール・ドラグランジュのブルゴーニュ赤。

ここは飲み頃まで熟成させてから出荷するため、今販売中のブルゴーニュ規格の赤が04年産!

この年特有の豊かなタンニンが、12年を経て果実味と調和し始め、熟成旨味と共に飲み頃の美味しさが楽しめます。

そして、この驚くようなこの低価格、古酒の入門には最適な1本です。

ヴォーヌ・ロマネ村の名門、グロ家の本家であるミッシェル・グロのニュイ・サン・ジョルジュ10年。

何度でも言いますが、値上がり前の価格で10年産を見つけたら即買いです。

10年の素晴らしい天候から完熟した葡萄が収穫された為、この年に不良ワインを造るのは大変困難な程。

10年産ブルゴーニュは見逃すな!です。


アルザス地方からは、自然派の生産者クリスチャン・ビネールのカッツェンタール畑リースリング種13年。

柑橘、樹脂、紅茶を思わす香りと、凝縮し、複雑な風味は強烈な印象。

美味しいというよりは「スゲー」とか「ヤバい」と言いたくなる味わいです。

従来の殻を打ち破り、新たな領域に踏み出した味を体験してみてください。

同じアルザスのポール・ブランクが古木のシルヴァネール種で造った白09年。

かなりの低収量なのでしょう、凝縮した果実感と共に、酸、ミネラル、更に塩味まで感じられます。

7年を経た09年産ですが、更に熟成しそうなポテンシャルを持った上質な白が特別価格で入荷しました。


地元のタナ種を使い、タンニン豊かなフルボディの赤で知られるマディラン村。

この村を世に知らしめた生産者アラン・ブリュモン氏のワインが特価で入荷しました。

マディラン村のシャトー・モンテュス10年と、同じ村のシャトー・ブースカッセ09年。

共に豊かで力強いタナ種の味わいがたっぷり楽しめます。

次はルイ・レオナール社のお買い得なフランスの泡。

僅かに残糖を感じますが、活気のある泡とバランスの良い味わいで、この価格はお値打ちでしょう。

カヴァではなく、フランスの泡をお探しの方にお薦めします。


イタリアからはレヴェルサンティ社のお買い得バローロ11年。

バローロ村の赤は上を見たら1万でも、2万円でもあります。

そんな中で最安値に近いこのバローロですが、

果実感とタンニンにこの村らしさがあり、これは十分楽しめるバローロだと感じました。

そして、ヴェネト州モンテ・デル・フラ社の赤バルドリーノ。

ここの赤はフランスで言うとボジョレ村の様な軽くて爽やかなスタイルなので、

フルボディ好きには受けませんが、 この赤が良かったです。

濃いわけではありませんが、すみれの香りと瑞々しい果実感がとてもチャーミングです。


そしてイタリアの自然派白ワイン2種。

エミリア・ロマーニャ州イル・ヴェイの白は有機栽培された3品種のブレンドで、2本分のマグネム・ボトル入り。

酸化防止剤のSO2は、葡萄を搾る際にのみ極少量使用。

自然派らしい還元香と果実の風味が楽しめる手作り感たっぷりの白。

トスカーナ州カルロ・タンガネッリのアナトリーノは、今流行りのオレンジワイン。

白葡萄トレビアーノ種を赤ワインの様に果皮と種も一緒に発酵させる事で、

皮からの複雑さと、種からのにが旨み、そしてオレンジ色の色調と太い酸味をまとっています。

鳥や豚肉料理、根菜類と合わせたくなる芳醇な白(オレンジ)ワインです。


そしてサン・ルチアーノが造るお手頃価格のトスカーナ州の赤。

品種はサンジョベーゼ種主体で、キャンティのスタイル。

イチゴやチェリーの香りに、瑞々しい果実味と酸、タンニンが綺麗に調和しています。

特別なご馳走ではなく、いつも通りの食卓に寄り添うような赤ワインです。

トスカーナ州でも海寄りのマレンマ村で有機栽培を実践する生産者ラ・ピエーヴェの赤、白。

両方とも澄んだ果実の風味が楽しめ、自然派ワインにありがちな還元香や、酸化のニュアンスはありません。

強く自己主張をせずに、自然体で有機ワインを造っている感じが伝わるでしょう。


スペインからアバニコ社のシンフォニア白でヴェルデホ種。

ルエダ地区で知られるこの葡萄ですが、このワインには産地名が付かない事で、

メリハリのある味わいはそのままで、お値段は半額程にお安くなりました。

これは文句なく、今月の白で旨安大賞に決定です。


こちらは、僅かな差で大賞を取れなかったトーレス社のサングレ・デ・トロ白。

こちらは地元のパレリャーダ種主体で、果実味とハーブ系の風味が特徴。

魚介類の鍋料理にはピッタリです。


カリフォルニアからはコースタル・リッジで赤、白。

温暖な気候から完熟した果実味と、程良い樽風味が香るふくよかなワイン。

カリフォルニア・ワインらしさがたっぷり楽しめる味わいで、私はジンギスカンが食べたくなりました。

皆さんは何と合わせますか?

同じカリフォルニアでスミス&フックのカベルネ・ソーヴィニヨン。

今カリフォルニアで濃い赤を探すと1万円の時代に、5000円以下でこの味わいは貴重です。

まだタンニンもアルコールも強いですが、凝縮した果実味がたっぷりで、1口目から飲み手を魅了してくれます。


チリからはファレルニア社のドンナ・マリア。

シラー種の赤ですが6割を通常収穫し、4割は遅摘みした葡萄をブレンドする事で、

ミディアム・ボディでも強さと複雑さが楽しめる味わいになっています。

最後は北海道とフランスの葡萄果汁2種。

帯広のあいざわ農園は、山葡萄を品種改良した黒葡萄・山幸(ヤマサチ)種の果汁。

ポール・ジローは、コニャック・ブランディ用の白葡萄ユニ・ブラン種の果汁。

山幸は濃縮した果実味に、野性味ある酸味とタンニンが加わり複雑で奥行きのある味わい。

ユニ・ブラン種も青タタミを思わす香りに、蜂蜜と豊かな酸味が合わさりメリハリのきいた果汁になっています。

そして、あいざわ農園では近い将来ワイナリーを目指して準備を進めています。

地元・北海道にワイナリーは益々増える事でしょう。