2016年 3月

先日家内と真駒内の六花文庫に行って来ました。

ここは元、六花亭の真駒内店だった建物を、「六花文庫」という名の図書館(利用料金は無料です)にして運営しています。

この建物は趣のある一軒家で、中は間仕切りのない吹き抜け。

この中に、お菓子の六花亭らしく食に関する本だけが壁一面に何千冊と並んでいます。

フランス料理、和食、そば、ラーメン、はてはジンギスカン等々。

さらに食べ物だけではなくワインや、お酒、コーヒー、日本茶、とにかく口に入る物の本がすべて網羅されている感じ。

室内には読書をしながら、うたた寝したくなる様なソファーや椅子が20脚ほど置かれ、座り手を待っています。

私は前から読みたかったセレナ・サトクリフ女史(世界で最も有名な女性ワイン評論家)の本を見つけ、

ソファーで3時間ほどゆっくり活字を追いながらくつろぐ事が出来ました。


さて、社長さんの仕事は会社をどう運営するかを決めること。

これを現実的に言い換えると、売上のお金を何に使うか決めることです。

前に私は余裕ができたら二人乗りのスポーツカーが欲しいとここに書きました。

会社の規模は全然違いますが、六花亭の社長さんは市民が利用できる図書館を建てて、

フジヰの社長はスポーツカーを買っていたら、我が社の社会貢献は無きに等しい事になります。

そう思うと、私は六花亭の社長さんの爪の垢でも煎じて飲まなければという気持ちになって来ました。


さて、今月のお薦めワインです。

北海道からは余市リタファームの十六夜(イザヨイ)シリーズで、ナイヤガラ15年。

ライチやマスカットの甘そうな香りですが、味は爽やかな酸味が心地良い辛口。

食前酒や、前菜の盛り合わせに最適な白でしょう。

        
仏ボルドー地方からはミラード社のポイヤック村94年。

この年の作柄は正直言って難しい年でした。

でも22年間の熟成香と、果実味とタンニンが調和する事で生まれたこの複雑な味わいは 5年や10年では絶対に出来ません。

果実味は少し枯れ始めてはいますが、22年という歳月をこの価格で入手できる事はないでしょう。

次はシャトー・オー・バージュ・リベラルが、オー・メドック地区の畑で造った赤。

作柄の良かった09年産ですから、ボルドーは濃さと豊かさが無いと寂しいという方にも楽しんで頂ける赤です。


ブルゴーニュ地方ではヴァンサン・ルグー氏の白。

ロマネコンティ社を退社して始めた自身のドメーヌは、風味豊かな味わいの赤で地元では今、大注目。

そこで出てきたのがこの白。どんな物かなと試飲をしたら、赤と同様に風味豊かでバランス良。

ルグー氏のワインは、赤、白、共に要チェックです。

今月もサヴィニ村のシモン・ビーズ家のワインが数種入荷しました。

中でも1級マルコネ畑の03年産は、一押しの赤。

上品な味わいが売りの生産者ですが、暑かった03年産は高い糖度から一回り豊かな骨格と味わいを持っています。

13年を経て高かったアルコール感も味わいに溶け込み、複雑で奥行きのある味わいが期待されます。


ルイ・ジャド社が所有するデュック・ド・マジェンタ社の赤。

白で知られるシャサーニュ村ですが、サントネ村側はピノ・ノワール種に適した土壌。

中でも1級モルジョ畑はこの村の赤でも最上の畑で知られています。

15年を経た今でもタンニンが主張し、更なる熟成のポテンシャルを感じさせます。

ルモワスネ社の10年産ブルゴーニュ規格の赤、白。

とにかく10年産を見つけたら即買いが鉄則。

完熟した果実味と豊かな風味は、他の年ではあり得ません。

今でも美味しく、5年後は豊かな熟成香が楽しみです。

ロベール・マチスのコート・ド・ボーヌ・ヴィラージュで、熟成した08年。

8年を経て、なめし革や木桶を思わせる熟成香が広がります。

僅かに枯れ始めた果実味に、酸味とタンニンが調和した昔風なピノ・ノワール。

華やかな樽香は無いですが、少し野暮ったい感じが可愛らしく感じたのは私だけでしょうか?

ロワール河プイィ・ヒュメ地区のブノワ・ショヴォーのコトー・デュ・ジェノワ白。

火打石土壌のソーヴィニヨン・ブラン種は、華やかなハーブ香、オレンジやミカンを思わす果実味と豊かな酸味がたっぷり。

口に含むと、舌の上で風味がどんどん広がります。

この味わいで、この価格は驚きの出来!今月一番感動した白です。

バスク地方エリ・ミナのイルレギー白。

地元のグロ・マンサン種、他を使って濃さと複雑さを持った独自の味わいの白。

果実味よりもミネラル感が主体で、エビ、カニの濃厚さに負けない強さを持っています。

イタリアからはカ・デ・マンドルリのガヴィ。

地元コルテーゼ種の白ですが、リースリング種を思わせるミント系の香りと、小気味良い酸味が爽やかに広がります。

もっと北の産地の白を思わせる仕上がりです。

スペインからはカリニェーナ地区の赤ソルテオ。

このワイン、わざわざオーストラリアの醸造家にコンサルタントを依頼し造られました。

地元の葡萄3品種をブレンドし、フレッシュな果実味にタンニンが溶け込んだ柔らかなスタイル。

スペインらしさよりも、バランスのいい味わいを優先したのでしょう。


ドイツからはセント・チャールズのアウスレーゼ。

実はこのワインはアイス・ワイン用の葡萄でしたが、

温暖化で収穫日の気温が-7度しか下がらず、アイス・ワインを諦めアウスレーゼに格下げした白です。

-10度以下になれば2倍の価格で売れたのでしょうが、仕方なくこの特売価格になりました。

そんな訳で完全なアイス・ワインではありませんが、

このお値段でネクターの様な凝縮感と、清らかな酸味が楽しめるお値打ちな逸品です。

アメリカからオレゴン州ピノ・ノワール種の赤2種。

仏ジョセフ・ドルーアン社の故ロベール・ドルーアン氏が米オレゴン州を訪れ、

ピノに最適な地である事を確信して畑を購入、最愛の娘ヴェロニク・ドルーアン女史を派遣します。

その後、彼女の努力がオレゴン州全体の品質向上に貢献したのは有名な話。

そのヴェロニクさんの自社畑ドメーヌ・ドルーアンと、

ネゴシアン物に当たるクラウドラインのピノ・ノワール種が特別価格で入荷しました。

彼女の理想のピノはシャンボール・ミュジニ村だそうです。

二種共にニューワールドに多い樽香や濃度ではなく、

上品で凛としたシャンボール・スタイルのピノ・ノワールです。

チリからはラポストール社のアレクサンドル・メルロ。

コンサルタントに仏ミッシェル・ロラン氏を起用し、

ふくよかで柔らかな果実味とスモーキーな樽香が楽しめる、理想的なメルロ種の味わいが楽しめます。


最後は食品から。帯広・あいざわ農園産山幸種の葡萄果汁。

北海道でワインのパイオニアと言えば十勝ワイン。そしてこの地区でも新たな葡萄生産者が、活動を始めています。

先月当社に、甘味と酸味がはつらつとした9月収穫の果汁が入荷しましたが、

今月は少量ですが糖度の高い10月収穫の果汁も入荷しました。

タイからキングス・アイランドのココナッツ・チップス。

ジャンキーフード的ではなくナチュラルな味付けで、このお値段ですからどなたにでもお薦めできます。

マレキアーロ社製アンチョビ(カタクチイワシ)のオイル漬け。

地中海産のイワシをアルバニアで加工して、この価格が実現しました。

塩分控えめで素直な味は、ライ麦パン等にのせてそのままお召し上がりください。