2016年 4月

ニュースでご覧になった方もいらっしゃると思いますが、

3月中旬の深夜に当店の隣にある飲食店が入ったビルで転落事故がありました。


9階のお店で歓談されていた方が、非常階段から転落して当店の屋根に落ちたのです!

夜の2時頃で当店は無人でしたが、そのビルの飲食店の方が大きな音に気付き、

非常階段から下を見ると屋根の上に人が倒れており、119番通報したそうです。

すぐに救急車だけでなく、消防車やパトカーが何台も来て、

店前の一方通行の道路は黄色のテープで閉鎖され、まるで映画のような状況だったそうです。


何も知らない私たちは当日も朝から普通に仕事をしていたら、

隣のビルの本社の方が来て事故の状況を知らせてくれました。

一緒に3階の非常階段に行くと、屋根のビル側の所が少し凹んでいて、

その先に血の跡と半分に割れた眼鏡が落ちていました。


屋根の修理等については中央警察署に行って担当の方と話をして欲しいと言われ、

中央署へ行くと担当の刑事さんが来て上の階に移動。

そこは小さな部屋が並んでいて、中に入ると小さな机と椅子だけで、どう見ても取調室。

話を聞くと落ちた方は意識不明の重体で、屋根の修理等はその方の意識が戻ってからと言われました。

二日後、「社長さんはいらっしゃいますか」と年配の女性が来店。

聞くと転落した方の奥さんのお義母さんで、大阪から札幌に着いて、事故現場を見に来たそうです。

お義母さんによると落ちた方の意識は回復されたそうで、

何度も謝り「いやぁ~、落ちた先がいい社長さんで良かったわぁ~」と大阪弁でおっしゃっていました。

さらに次の日は病院に付きっきりだった転落した方のお母さんも来店。

息子さんは話が出来るようになったと聞き私も一安心。


当日の夜、息子さんは9階の飲食店にいましたが、

トイレに行くと言ってなぜか非常階段を下りて行き、6階でバランスを崩して落ちたようです。

うちは2階建てですが、屋根は3階の高さなので6階から3階分だけ落ちたのと、

落下場所がコンクリートではなく、傾斜のあるトタン屋根でバウンドした為に最悪の事態にならなかったようです。

後日、大阪のお義母さんから上等な昆布の佃煮が届き、

電話で佃煮のお礼を言うと、息子さんのスマホが無いとの事。

私も両方の親から菓子折り等を頂き恐縮していたので、後で建物の間の通路を探してみますと伝えました。

閉店後に懐中電灯と脚立を持って柵を乗り越え、隣り合う3軒のビルとの隙間を探すと、アイフォンが見つかりました。

6階から落ちたのにガラス面が割れてもなく無事なアイフォンを見て、

これもお母さん方の思いのお陰と感じました。

スマホを見つけた事を伝えると大変喜び、翌日にまた菓子折を持って来て下さいました。

親にとって子供は、幾つになっても大切で守ってあげるべき存在なのでしょう。

最後に、当店はお酒を販売しています。

「酒は百薬の長」とも言われますが、量を過ぎれば悪い事しか起きません。

私自身も含め、適量で楽しくお酒と接して行かなければと改めて思いました。


さて、今月のお薦めワインです。

北海道からは増毛のシードル(辛口)。

ここのシードルは、本場フランス・ノルマンディ地方の物より果実感がしっかりあります。

リンゴの収穫は秋ですが、増毛では蔵でリンゴを越冬させ春になってから仕込みを行います。

このひと冬の熟成が、味わいに豊かさをもたらしているのでしょう。


仏ボルドーからはメドック地区のシャトー・カルカニュー10年。

まずは素晴らしい天候だった10年産。

品種はカベルネ種が主体でメルロ種が25%しかなく、ボリューム感はミディアム・ボディですが、

カベルネ種特有の杉を思わせる香りが楽しめます。

ふくよかな赤がお好みでしたら、同価格帯で同じメドック地区の

シャトー・ピエール・ド・モンティニャック10年が、メルロ種40%でよりグラマラスな味わいが楽しめます。

ボルドー右岸ブライ地区のシャトー・グラン・マレショー10年。

こちらは完熟したメルロ種が75%で、さらに完熟した果実感がふくよかです。

内側を強く焦がした樽からのスモーキーな香りと共に、ゴージャスな味わいが楽しめます。


仏ブルゴーニュ地方からは、クリストフ・ブリチェック氏の本拠地モレ・サン・ドニ村のクロ・ソロン畑12年。

高騰するブルゴーニュで、人気のモレ・サン・ドニ村の赤がこの価格は注目。

さらに味わいも果実味とタンニンが詰まっており、

ピノ・ノワール種としては骨太なタイプ。ジビエ(獣肉)と合わせたくなる赤です。


南仏からは今絶好調の生産者サンタ・デュックの自社畑2種。

ロエ村のクロット畑は、グルナッシュ種とシラー種のブレンドで、作柄の良かった09年産。

7年を経て少し熟成感も楽しめるお値打ちの赤。

一方本拠地ジゴンダス村に所有する畑、8区画のブレンドした赤がオー・リュー・ディ11年。

濃さ、強さ、スパイス感だけではなく、スミレやピノ・ノワール種を思わせる凛としたニュアンスがあります。

時間と共に開き始める風味をゆっくりとお楽しみください。


次はロワール地方で一番人気、サンセール村の白。

メロ家はこの村の名門で、有機栽培を実践しています。

華やかな柑橘とハーブの香りに、溌剌とした酸味と果実味が織りなす

爽やかな味わいはサンセール村の理想とも言える仕上がり。

定価4、000円の品が驚きの価格で入荷いたしました。

この価格でしたら箱で買うべき!


アルザス地方からはシュルンバジェ家の特級ケスラー畑産ゲヴュルツトラミネール種の白。

華やかなライチやドライフラワーの香りがグラスからどんどん広がります。

凝縮した果実味とアルコール感が9年を経て調和し、飲み頃の美味しさが開いて来ました。

素晴らしい天候だった07年産は、今や貴重な存在でしょう。


グリニャン・レ・ザデマール地区は元「トリカスタン」と呼ばれていたワイン産地。

以前1,500円程していたワインですが、馴染みの無い新名称で販売が苦戦したのでしょう。

マラール・ゴーラン社でこの地区の赤が、安価な価格で入荷しました。

グルナッシュ種、他南仏系5品種程のブレンドで、ミディアムでスパイス感が調和した味わいが楽しめます。


イタリアからは北部フリウリ州産ボルゴ・マグレード社のワインが特価で入荷しました。

特にカベルネ種の赤と、シャルドネ種の白は遅摘みしたのでしょうか、ふくよかで完熟した果実味が楽しめます。

オリジナルの瓶とラベルも斬新で、かなり気合の入ったワインだった事が分かります。

次はイタリアで大人気の白、ソアヴェのお値打ち品。

ラ・ソガーラのソアヴェはふくよかな果実感と爽やかな酸味が楽しめる味わいで、

この価格でしたら2~3割は安い感じがします。

14年の天候が良かったか、良い区画の葡萄を使っているのか、

明らかにこの価格以上の風味を持っている感じがしました。

トスカーナ州はヴェラザーノのキャンティ・クラシコ・リゼルヴァ11年。

クラシコ地区の中でも有名なグレーベ地区の生産者。

通常5、000円の品が特別価格で入荷しました。

抜栓当日よりも、翌日の方がタンニンが豊かに広がりましたので、デキャンタされた方が楽しめると思います。

久しぶりに驚いたキャンティ・クラシコです。

お値打ち品では、レッチャイアが造る現代的なトスカーナ州の赤。

サンジョベーゼ種に、カベルネ種とメルロ種をブレンドで、最高の年10年産。

今も果実味たっぷりですが、6年を経て少し熟成感も開き始めています。


有機栽培、自然酵母による醗酵といった自然派ワインの流れは、スペインにも飛び火しています。

仏ブルゴーニュのシャソルネで修業したフランス人オリヴィエ氏は、スペインへ行き独自のワインを造りました。

安価な方の、ライヨス・ウヴァは自然派特有のアニマルや硫黄を思わす還元香はありますが、

澄んだ味わいでダシ系の旨味をハッキリ感じます。

上級品のヴァリャーダは、明らかに複雑さが出てきます。

粘土や羊の生肉の香りに、果実味と細かなタンニンが重なり厚みがあります。

柔らかさと硬さが両立した味わいは、もう少し熟成をさせるべきなのでしょう。

価格や産地、品種を超えて、ここまで真剣に試飲をしたワインは久しぶりでした。

自然派の波長に合う方には大絶賛されるでしょう。


次はオーストラリアの自然派ワイン。

温暖なこの国で一番冷涼なヴィクトリア州ヘンティ地区で90年に開墾、現在はビオディナミ栽培を実践。

手摘み収穫後に自然酵母で発酵、ノンフィルター、

瓶詰め時に極僅かな(35ppm)SO2添加と、バリバリの自然派醸造を行っています。

この国らしい果実甘さが無く、旨味と風味が詰まった味わいは他に類を見ないスタイルです。


次は人気のチリ。仏シャブリ村の生産者がチリで始めたワイナリー。

あえて古樽で熟成させたシャルドネ種の白は、一般のフルーティーなチリ産ワインとは異なり、

酸、ミネラル、樽が、味わいに複雑さと奥行き感を与えています。


最後は新入荷のシェリーですが、古い方には懐かしい 往年の名門「ドン・ソイロ」が再発売されました。

従来のイメージ以上の品質を目指し、アモンティリャードは12年、

フィノでも8年以上熟成させたプレミアム・シャリーです。

昔の味を知る方だけではなく、初めての方にもお薦めします。