私は朝日新聞の金曜夕刊に載っている「さっぽろレトロ建物グラフティ」の記事は欠かさず見ています。この記事は札幌のレトロな建物を写真ではなく(ここが重要!)松本浦さんのイラストと、札幌の出版社を経営されている和田由美さんの温かみのある文で楽しく紹介しています。そして16年5月27日のこの欄に、お付き合いのある平岸の酒屋「加島屋」さんが紹介されました。
昔、加島屋さんが北3条西2丁目の角で営業をされていた頃、私は北2条西2丁目に住んでいたのでよく伺っていました。今年1月に亡くなった加島屋の主(あるじ)、廣岡さんは私より年上で、私にとってお兄さんの様な方でした。私が若い頃、加島屋さんに自宅用のウィスキーを買いに行くと、「学生のうちは安い物でいい、残ったお金で乾き物を買え」と指導されました。
その後廣岡さんは結婚され、ワインの試飲会ではいつも奥さんと二人というか、奥さんのまさ子さんが子供をおんぶして3人で参加され、まさ子さんは口直しのフランスパンやチーズを器用に背中の子供に食べさせていました。
廣岡さんのファッションは札幌南高のバンカラさと、アイビー・スタイルが融合した黒いエプロンと、いなせなねじり鉢巻き。何時お会いしてもこのスタイルで、これを棺おけの中まで貫き通した、真のダンディな方でした。お酒と缶ピースをこよなく愛し「灰皿にタバコを吸わせなくていい」が信条で、数回吸うと爪で火種を落として火を消し、 又吸いたくなるとシケモクに火を付けて美味しそうに吹かしていました。
この連載は3年ほど続いており、家内と私は気になった建物を見に行ったり、営業中のお店ですと中に入ってみたり、街歩きを楽しんでいます。小樽と比べると古い建物が少ない札幌ですが、和田さんは築50~60年でもいい味を出している建物をセンス良く見つけてくるなあと毎回感心して読んでいます。
そしてこの「さっぽろレトロ建物グラフティ」は、朝日新聞・北海道版のホームページ
www.asahi.com/area/hokkaido/articles/list0100133.htmlでも見ることが出来ます。
今月のお薦めワインです。
タキザワ・ワイナリーから今の北海道に最適なロゼ・ワイン2種。余市産の黒葡萄キャンベル種のロゼは、醗酵前に葡萄を潰さず低温管理して果皮の風味を果汁に浸透させ、果汁を発酵させたフレッシュで風味豊かな辛口。
もう一つのロゼは、茶色い旅路葡萄からのスパークリング。こちらは醗酵初期の数日間は果汁に果皮と種も漬け込み、 オレンジの色調に旨みと複雑さを持ったスタイル。食前酒だけではなく、食事と共に楽しめる太さを持っています。
奥尻ワイナリーで、一番人気の白ピノ・グリ種15年が入荷しました。この島特有のコクとミネラル感は、特に白ワインで魅力を発揮します。これからが時期のアスパラや、サラダ仕立ての前菜には最適の白です。ただ、この15年産も生産者では完売でしたので当社在庫のみ。ご希望の方はお早めに!
三笠・山崎ワイナリーのバッカス種白15年は、ふくよかなこの品種の特性を生かし、 少し甘みを残した中口に仕上げています。
次は道外の国内産ワイン。山形タケダワイナリーのお徳用ワイン、蔵王スター1.8L。山梨など本州の葡萄産地では、今も一升瓶ワインの需要があります。生産農家ではコップや茶碗で気取らずに楽しんでいるのでしょう。ジンギスカンなど人数が集まる時には最適な1本。
曽我 彰彦さんごめんなさい、今回もお薦めは佐藤家親子が栽培し、彰彦さんが醸造したワインです。彰彦さんが炎天下で一匹、一匹、油虫を潰して有機栽培を行っているのはすごい事です。でも曽我家自社畑物の半額に近い値段で佐藤家産シャルドネ種とソーヴィニヨン種も大変上質なのです。長野の本家を守る兄・曽我彰彦さんと、余市の弟・曽我貴彦さんは、共に自社畑だけではなく近隣の畑の葡萄からも安価で良質なワインを造っています。
次はフランスから、安価でも良質なボルドー2種。シャトー・カスティロンヌ11年。こんなに安くても、ミディアムな果実味とボルドーらしいタンニンがちゃんと楽しめます。この価格でこの味わいは驚きです。
次はマルキ・ド・シャスのグランド・キュヴェ07年。9年を経てメルロ種とカベルネ種が調和をし始め、今もたっぷりとした果実味と熟成した風味の両方が楽しめます。多分、優良な区画の葡萄だけから造られたのでしょう、上級品の味わいを持っています。
続いてブルゴーニュ地方からは、シャブリ村の頂点に立つ生産者ヴァンサン・ドーヴィサの14年が入荷しました。正直言って1級畑でもないシャブリがこの価格は驚きですが、ここの特級畑は14,000円で当社の割り当ては数本しかもらえません。約6,000円はしますが、一度シャブリの真髄を味わってみませんか。
この4~5年、毎年高騰を続けるブルゴーニュ地方コート・ドール地区。お値打ちなブルゴーニュを探すのが困難な中で、見つけたのがソヴェストル家のサントネ村の白。ふくよかな果実味と木樽の風味が5年を経て調和してきた味わいは、上級シャルドネの典型とも言えるスタイルです。
南仏からはシャトーヌフ・デュ・パプの赤でシャトー・フォルティアのキュヴェ・バロン。ここの通常のパプはグルナッシュ種70%ですが、このバロンは60%で代わりにシラー種が10%多く使われます。これにより味わいは黒コショウのスパイス感が幾分穏やかで、果実感が豊かな赤になります。
次はロワール地方でソーヴィニヨン種最良の産地サンセール村から、対照的な白2種が入荷しました。ポール・ドウチェ家のサンセール14年。この村産だと3、000円以上する中で、3割以上お安いこの価格はぜったいお得。柑橘の香りが広がり、爽やかな酸味と果実味が溌剌とした典型的なソーヴィニヨン・ブラン種の白です。
一方セバスチャン・リフォー家のサンセールはカルトロン13年。リフォー家はビオディナミ栽培を実践し、醸造も自然酵母を使って、乳酸発酵も行うバリバリの自然派スタイル。同じソーヴィニヨン種を使っていながらドウチェ家とは対照的で、収穫も遅らせ貴腐葡萄混じりで複雑さと旨味がたっぷりな白に仕上げています。
イタリア・ピエモンテ州からはニコレッロが造るネッビオーロ種で99年。ここはワインを樽熟成した後にステンレスタンクに入れて、 タンク上部の空いた所は不活性ガスで満たして長期熟成させます。こうすると酸化が殆ど起こらず、果実味は豊かなままで熟成できます。17年前のワインでも個体差が少なく、安心して飲む事が出来ます。
ビアンカーラのイ・マシエリはイタリア自然派の白で最も知られるワイン。有機栽培を実践し、ガルガーネガ種主体で自然酵母、亜硫酸無添加等の自然派の醸造法で造られた白は、通常のソアヴェとは大きく異なり、複雑でミネラル感と酸味が前面に出てきています。自然派の入門には最適の1本だと思います。
イタリアで旨安ワインをお探しでしたら、まずはアブルッツォ州産モンテプルチアーノ種の赤でしょう。この州で最大級の生産者トロ協同組合は、大手でありながら品質を両立している貴重な造り手。ここの上級品リゼルヴァ11年が現地で有名なワイン専門誌で最高の3★評価を受けました。最高評価を受けながら、この価格は驚くべき事です。そして、更に数年熟成させる余力も十分です。
スペインからは、南部イエクラ地区のカスターニョが造るソラネラ12年が特別価格になって再入荷。地元のモナストレル種主体にカベルネ種他をブレンドし、樽熟成させた赤はパーカー氏94点評価。この12年産の評価は2年ほど前にされ、当時ジャムっぽかった果実味も今では落ち着き始め、各品種と木樽が調和した味わいになって来ました。この価格で94点のワインはあり得ないと思います。
スペインの白では2種類が良かったです。ラ・ビエンは地元のアイレン種からの爽やかな白。この低価格で温暖な産地ですと、アルコールが目立ったり、 苦みが目立つ事が多いのですが、この白は綺麗でバランスが良く仕上がっています。間違いなく、今月の旨安白に決定!
もう一つはリオハ地区の大手カセレス社がアルバリーニョ種で造る白。このリアス・バイシャス地区はスペインとしては涼しく、酸とミネラル感が引き締まった味わいで、価格も2,500~3,000円はする白で最良の産地。この特別価格をお見逃しなく!
カリフォルニアからはメーカーで品切れていた旨安ワイン、エイリアスのシークレット・エージェント赤がやっと再入荷しました。今までこの地では単一品種の濃くて強い味わいのイメージでしたが、少しずつ調和のとれたタイプが出て来ています。この赤も数品種のブレンドで、ミディアムな果実味とバランスの良い味わいが楽しめます。
こちらもカリフォルニア産の、ウーマン・オブ・ザ・ヴァイン。このワインは収穫年を見てわかるように、数年熟成した物。メーカーの在庫処分価格で入荷しましたが、味わいは6~7年を経て美味しくなって来た頃。フランスだけではなくカリフォルニアでもチリでも、丁寧に造ったワインは熟成して美味しくなります。この価格ですから偉大なワインではありませんが、この価格で熟成旨みと複雑さがチョッピリ楽しめます。
実は当社の酒類販売免許は全種類なので日本酒や焼酎も扱えますが、知っての通り店内に並んでいるのはワインか洋酒類です。そんな中、あるワインの輸入業者の試飲会で清酒の出展もあり、担当者が試飲して良かったと言うので、当社でも扱いを始めました。新潟県越つかの酒造の飛来、私は清酒の味わいの表現は未熟な為に言うのも恥ずかしいのですが、一升瓶で1,560円とそんなに高くない価格としては純米酒らしいコクと旨みを持っていると思いました。
食品からは、オリーブの種を抜き、そこにイワシ(アンチョビ)の身を入れたおつまみの缶詰。当社ではアンチョビ風味のオリーブは、900g(業務用の大瓶)しか扱いがありませんでしたが、小ぶりな350gの缶入りが入荷しました。通常の瓶入りオリーブはお酢の酸味で嫌いな方も、アンチョビの旨み成分が合わさる事で日本人が好きな味になります。
フランスからはドゥルイ社オーガニックのリンゴ酢とマスタード。共に澄んだ味わいは、有機栽培から来ているのでしょう。調味料は調理中に使ってもいいですが、小皿に少量取って食卓に置き、お醤油の様に付けて食べるのもいいですよ。絵具のパレットの様に、マスタードや、ビネガー、柚子こしょう、わさび等を並べるだけで、食卓が華やかに彩られます。