2016年 10月~12月

今月は寝室のお話し。

もう季節は冬ですが、今年の夏も暑く寝苦しい日がありました。夏休みのキャンプから帰って来た息子は、自分の部屋が暑いと言ってベランダにマットを敷いて寝袋で寝始めました。翌朝体が痛くなっても知らないよと言っても聞かないのでそのままにした所、風が気持ち良くて熟睡できたと言い、その後は毎晩ベランダ寝。

その数日後、家内が私も寝てみると言い出し実行。すると家内と息子は毎晩、一つしかない寝袋をジャンケンで争うようになりました。今まで家内は布団がフカフカしてないと寝られないと言っていたのに、コンクリートの床に敷いた厚さ1センチ程のマットで寝ているのです。

1週間程して、家内は私にもベランダ寝を体験してみたらと言い出し、私もトライしました。幅1.5メートル程の狭いベランダの床に寝てみるとコンクリートの床は確かに硬いのですが、薄いマットでも十分快適。その日はベランダに出ても風を感じませんでしたが、横になってみると床のあたりは心地良い微風が頬を撫でるように流れ、見上げるとベランダの壁にさえぎられ細く切り取られた空でも星はキラキラ輝いています。気が付くと寝返りもせずにぐっすりと寝いり、翌朝は日を浴びて気持ち良く目覚めました。翌晩から私は部屋の寝床に戻りましたが、ベランダ寝は意外に楽しい体験でした。

更にベランダが気に行った家内は、夕食も折りたたみのテーブルと椅子を出して外で食べるようになりました。北国にとって長くはない夏のひと時、キャンプに行かなくてもベランダへ一歩踏み出せば、手軽に屋外の空気を楽しむ事が出来ますよ。


さて、今月のお薦めワインです。

まずは、ヌーヴォーのお知らせ。今年もフランスから11種類、イタリアから2種類、そしてカシス・リキュールの新酒が入荷します。今年初登場のユドロ・ノエラ以外は、当社で毎年安定した品質で人気の高い新酒ばかりです。私はいつも熟成したワインばかりを探していますが、この時期だけは私も出来たての新酒が恋しくなります。皆さんも、年に一回ぐらいは初物を味わってみませんか。


次は北海道の奥尻島から、シャルドネ種の白15年。島の畑は海に近く、潮風は微量の塩分を葡萄の実に付着させます。その実を発酵させると、塩分がミネラル感となって独自の味わいになります。天つゆではなく、塩で食べる天ぷらに合わせてみては如何でしょうか。

そして、余市で15年に創業した平川ワイナリーのポワレ(洋梨の発泡酒)。元洞爺湖ウインザーホテルのソムリエ平川氏が転身し、始めたワイナリーです。通常のスパークリングワインは2~3気圧以上の発泡性がありますが、 こちらは約1気圧と僅かな微発泡。ガス圧を楽しむのではなく、少し高めの温度で熟した果実の風味を味わって欲しいと平川氏は話していました。


仏ボルドー地方からはシャトー・カロン・セギュールのオーナーが所有する別シャトーのカベルン・ガスクトン02年。この年はグレイトではなく平均的な作柄でしたが、収穫を遅らせたカベルネ種は良質な仕上がりになりました。14年を経て青さもこなれて、熟成香と熟成旨味が楽しめる飲み頃ワインです。

次はサン・ジュリアン村のシャトー・タルボ11年。この年パーカー90点評価の格付けシャトーで、この価格はかなりのお値打ち。あと10~15年後の楽しみに取って置きたい方には、丁度良いボルドーだと思います。


お値打ちボルドーでは、大人気のオー・メドック・ジスクール12年。柔らかでふくよかな果実味にタンニンが調和し、今から楽しめるバランスの良い赤です。そしてこの価格は今の相場より2割ほどお得だと思います。

でも、やっぱりボルドーは10年以上熟成させなければ、、、という方にはオー・メドック・ド・ラベゴルス05年か、プルミエ・コート・ド・ボルドー地区のシャトー・レスコンブ93年。ラベゴルス05年産は優良年らしい完熟した果実味と、11年を経た熟成香の両方が楽しめます。レスコンブ93年産は23年を経た複雑な熟成香と、少し枯れ始めた果実味にタンニンが溶け込んだ古酒の世界が感じられます。


そして今注目のボルドー・白では、シャトー・ラグランジュが造る新しい白、フルール・デュ・ラック13年。このシャトーではソーヴィニヨン・ブラン種主体のレ・ザルム・ド・ラグランジュを造っていますが、こちらは逆にセミヨン種主体で造られた白ワインです。品種特有のふくよかな果実味と、樽発酵による木樽の風味は、かなり上級な白の満足感に近い物です。


ブルゴーニュ地方からは有名生産者が造る、ベーシックなピノ・ノワールの赤2種が入荷しました。フィリップ・シャルロパン・パリゾのブルゴーニュ赤13年と、モンジャール・ミュニュレのオート・コート・ド・ニュイ地区の赤12年。共に瑞々しい果実味と、良質な樽からのバニラ風味が、グラスの中からじわじわと開いて来ます。

少しこなれたピノ・ノワールでしたら、クロワ・ブランシュの06年産ヴォルネ村の赤がお薦め。10年を経た香りは、果実でもドライフルーツを思わせます。味わいは香りよりも若い印象で、果実味に酸味とタンニンが混じり始めたぐらいでまだまだふくよかです。価格は近年のACブルゴーニュ程で、人気の高いヴォルネ村の06年がこの価格は注目です!


フランスで今月の旨安大賞は、セクレ・ド・シェでトゥーレーヌ村のソーヴィニヨン・ブラン種。この品種は柑橘系スタイルのタイプが多いですが、こちらは野菜系の香りがグラスから広がります。当然ラタトゥユ等の野菜料理には最適の白でしょう。


イタリアではソアヴェの名門タメリーニ家の白。この上に畑名付きの上級品もございますが、私にはこちらの並品でも十分美味しく楽しめました。しっかりと味がありながら、濃すぎずに爽やかさもあって丁度良いバランス感が素敵です。

同じヴェネト州で有機栽培を実践するエンピリアのビアンコ・ディ・クストーザ白。トレビアーノ種、ガルガネガ種に数品種をブレンドした白はフルーティ系ではなく、 野菜やハーブ系の風味が主体。食事と共にゆっくりと味わいたくなります。


今月は熟成ワインでお値打ちな物が見つかりました。カリフォルニアからはヴァレンタインのカベルネ02年。昨年亡くなったここの創業者が、自分用に売らずに残して置いたワインを、輸入業者が残された家族に頼みこんで限定入荷しました。14年を経てもまだ果実味とアルコール感がたっぷりで、収穫時の果汁の力を感じずにはいられません。更なる熟成にも十分耐えうる赤でしょう。

そしてドイツからはモーゼルシルトのヴュルツガルテン畑の遅摘みリースリング種で、約20年を経た97年と、94年の白2種。2種共に遅摘みし、完熟したたリースリング種の甘みと、豊かな酸味が今も溌剌とした印象。カリフォルニアの赤は創業者の遺品でしたが、こちらは蔵元のモーゼル・シルト社の廃業によって放出された、共にいわく付きのお宝ワインです。通常、長期熟成を経たワインは、保管料や金利負担等によりどんどん高くなりますが、今回の赤、白は、今発売されている若いワインと変わらない価格で入荷しました。ですからこの商品が完売後は代品がありませんので、気になる方はお早めのご注文をお薦めします。


スペインからはシェリーの逸品です。名門ヴァルデスピノ社が年に一回だけ発売する特別のマンサニージャ。海沿いの場所で造られたこのフィノ・タイプは、別格の新鮮さと、塩味がはっきりと感じられます。これ程に澄んだ味わいは、スペイン・ヘレス地方のシェリーの蔵元に行って、特別に瓶詰前の樽から試飲をさせてもらったレベルではないかと思います。シェリーをよくご存じの方にこそ、味わっていただきたいシェリーです。


ハードリカーでは、北海道・十勝ワインのブランデー原酒。1985年に蒸留し、30年以上樽熟成させていた原酒を、加水せずに小瓶に詰めました。59%のブランデーを生のまま極少量、舌の上に乗せると強烈な辛さと刺激が突き刺さります。その刺激をこらえて、5秒、10秒待つと、今度は少しずつ甘味と果実感が感じて来ます。ほんの数滴で舌の上では、地獄と天国の両方が体験できる貴重な液体と言えるでしょう。


今年も蜂蜜のお酒ミードが、元の蜂蜜と共に訓子府(クンネップ)から届きました。菅野さんが蜂から採取した菩提樹の花の蜜。この蜂蜜を発酵させたのがミードです。特に菩提樹の蜜は複雑な風味と濃さを持ち、イメージする蜂蜜とは全く別の物です。


食品からはサバティーノ・タルトゥーフィ社のトリュフ・ソルト。一般には「塩」単体にトリュフの香りを付けますが、ここでは豆のさやにトリュフ香を付けて、それに塩を加えた為に、塩分はあまり強くはありません。ですから味付けされたポテト・チップス等に振りかけても塩辛さは目立ちません。ちょっと良質なオリーブ・オイルにかけると、即席のトリュフ・オイルになり、このオイルを魚や肉料理にかけていただくと、高級レストランの味になったように思えます。

まずは2グラム入りの小袋でお試しください。