2017年 1月、2月

寒中お見舞い申し上げます。

本来であれば社長の藤井が、この「店主の独り言」を担当しておりますが、今回のみ私、藤井雅裕(専務取締役)がお詫びとご報告を兼ねて書かせていただきます。

昨年11月、12月に多くのお客様から「新しいワインショップフジヰ ニュースはまだ出ないのですか」とお問い合わせをいただきました。社員一丸となって繁忙期の前にフジヰ・ニュースをお届けするため作業をしておりました。しかし11月中旬、急に私は言葉をうまく喋ることが出来なくなり、検査を受けたところ6cmを越える髄膜腫(ずいまくしゅ)という大きな脳腫瘍が見つかり、摘出手術のため入院することになりました。

当社は社長を含め7人で運営している零細企業のため、毎日の業務をこなすことで精いっぱいとなり、このニュースが年を越してしまいました。また、私が欠けた事でお客様への接客や飲食店様への対応でご迷惑をおかけしたことが多々あったかと思います。本来であればお会いして申し上げなければいけませんが、ひとまずこのフジヰ・ニュース上でお詫びさせていただきます。大変に申し訳ございませんでした。

幸い、理解あるお客様のおかげで、会社は何とか新年を迎えることができました。本当にありがとうございました。私は12月中旬に10時間を超える大手術が成功し、合併症もなく、いくつかのリハビリをこなし、昨年末に退院することができました。開頭手術というリスクの高い治療でしたが、トップレベルの技術を持った医師、粘り強く、親身になってくださる看護師、有数の技術を持った技士や療法士の方々のおかげで無事克服できたと思います。中村記念病院の皆さま、ありがとうございました。退院後は順調に回復し、少しずつですが仕事に復帰しております。今後は健康管理に努め、皆様にご迷惑のかからないようにしていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

最後に私を支えてくれた妻と二人の息子にこの場を借りて感謝の気持ちを表したいと思います。貴方たちが居てくれたおかげで病気に打ち勝つことができました。本当にありがとう。これからも末永く、共に笑い、共に泣き、時にはケンカし、楽しい人生にしていきましょう。

次のおすすめワインは入院明けの私ではなく、店主の藤井よりさせていただきます。

ではここからは、いつもの店主の藤井による今月のお薦めワインです。

まずは北海道から、千歳ワイナリーで新発売になったケルナー種の上級品、プライベート・リザーブ。優良な区画のケルナーを遅摘みした白は、非常に凝縮した果実味を持ちながら甘くなっていません。豊かなミネラル感が味わいを引き締めているからでしょう。こうして今までとは違った新しいタイプのケルナー種が出てくる事で、道産ワインの品質がまた一段階上がりました。

次は道産ワイン大手、㈱北海道ワインからの自社農場の鶴沼産ゲヴュルツトラミネール種14年。ここでは新型の選果機を導入して更なる品質向上を図り、その上13年産より600円も価格を下げて14年産を発売しました。今、道産ワインの各生産者は、品質と価格の両面で努力を重ねているのがわかります。


山形県からは、タケダ・ワイナリーのブラン・ド・ノワール(黒葡萄で造った白ワインの意)樽熟成14年。黒葡萄のベーリーAを優しく絞り、その透明な果汁を樽に入れて発酵、熟成させました。香りよりも味わいに、厚みとにが旨味等の複雑さを感じることでしょう。フルーティーで果実味たっぷりタイプよりも、この白は和食も含めてお食事との相性が良いと思いました。ぜひお試しください。

長野県の名門、小布施ワイナリーからは、お値打ちな品2種。白は近隣にあるカクトウ農園のシャルドネ種で上級品レゼルヴ・プリヴェ15年。小布施の曽我社長自身は過剰な新樽香を嫌う方ですが、 カクトウ農園の優良区画のシャルドネ葡萄を見た時に、これは新樽100%で醸造しなければならないと感じたそうです。ナッツやバニラの香りと凝縮した果実味は、分かりやすく言うと良く出来た「ムルソー村」のスタイルです。

赤ではオーディネール・メルロ&カベルネ14年。ミディアムな果実味にタンニンと酸味が調和した赤。柔らかで澄んだ果実味に、もう少しで熟成旨みも開きそうな気配です。


次は仏ボルドー地方から2種。果実味とタンニンがたっぷりのボルドーがお好きな方にはムーリ村のシャトー・モーヴザン・バルトン11年。この年から新オーナーとなったバルトン家が、高価な光学式選別機を使って厳格な選別をしているのでしょう、11年産ですがグレート・ヴィンテージの様な凝縮感が楽しめます。今後も楽しみな新シャトーが又一つ見つかりました。

次も同じムーリ村で名門、シャトー・プジョーのセカンド、ラ・サル・ド・プジョーで熟成した07年産。ボルドーに濃さ強さを望む方にはお薦めしませんが、枯れ始めた果実味に溶け込んできたタンニンの感じがお好きな方には、たまらない1本だと思います。しかし、少し前までセカンド・ワインは早飲み用で熟成はしないと言われていましたが、こういったワインを飲むと考えを直さなければなりませんね。


ブルゴーニュ地方からはトリコン家のシャブリ14年。ここ5年ほど毎年、高騰を続けるブルゴーニュ。特に人気の高いシャブリ地区は値上がり幅も大きい中で、お買い得シャブリが見つかりました。安価なだけではなく、味わいにメリハリがありシャブリらしさが楽しめます。安いだけで、薄っぺらで酸っぱいだけの白だろうと思っている方!そんな貴方にこそ飲んで頂きたい1本です。

赤では古酒に強いセリエ・デ・ウルシュリーヌ社で、ラドワ村のレ・ブリコット畑赤08年。ブルゴーニュでお値打ち品を見つけるコツは、まず信頼できる生産者、そして超有名ではない村の良い区画のワインを探す事です。少しマイナーなラドワ村ですが、1級畑に接する東向き斜面(日当たりの良い)のブリコット畑はまさにその好例です。今も表情が開いてとても美味しいですが、古酒好きの私にはもう2~3年熟成させたいと思ってしまう程のポテンシャルを感じさせます。


ロワール地区では有名なサンセール村の名門アンリ・ブルジョワ家が造るお値打ちな白のプティ・ブルジョワ。サンセール村のソーヴィニヨン・ブラン種は3,000円を楽に超えますが、サンセール村の付近で栽培されたソーヴィニヨン種は、村の物と近い味わいを持ちながらも価格は約半分になります。

次はモンムソー社が造るアンジュ地区のフレッシュなロゼ。完熟した果実甘みと、澄んだ酸味が調和してとても爽やかです。女子だけでなく、男子でも美味しく飲める甘さ加減だと思います。


人気のスペインからは2種。まずはカラタユド地区のNKホワイト。標高1000mの高地で栽培されたマカベオ種からの白は、野暮ったさが無くクリーンで引き締まった味わいです。

赤では45番ロス・フレイレスのシネルジア・バリカ07年。地元のモナストレル種80%にカベルネ種20%を樽熟成させた赤は07年産。10年を経てモナストレル種の果実味と、カベルネ種のタンニンが、木樽風味と共に調和してきました。やっぱり力のある赤は、10年前後経ることで美味しくなってくるのが分かります。


アメリカからは安価ですが、クエイル・クリークのワインが良かったです。個人的にはシャルドネ種白と、メルロ種赤が、素直な果実味で甘さが気にならず、バランスの良い仕上がりで気に入りました。飲食店のグラス・ワインや、毎日の食卓に合わせるデイリー・ワインには最適の赤、白だと思います。


今注目のニュージーランドは、良質ですが小規模生産者が多い為、安価なワインが殆どありません。そんな中でバードのピノ・グリ種(定価2,200円)が、在庫処分の形でお安くなって入荷しました。完熟した果実味がたっぷりのピノ・グリ種に、6年を経た熟成旨みも開き始めて来ました。


食品ではスペイン産ホセ・ロウ社のオリーブ3種。一番人気はアンチョビの旨みとオリーブの塩味が楽しめるアンチョア。面白いのは熟成した梅干しを思わせるシットリ感のブラック・オリーブのネグラ・デ・アラゴンでしょう。