前にも一度ここで取り上げましたが、 朝日新聞金曜の夕刊に「さっぽろレトロ建物グラフティ」という連載記事があります。出版社の和田由美さんによる、ほのぼのとした紹介文と、松本浦(ウラ)さんが描く建物は、写真よりも味わい深く記憶と重なります。
そして2月10日、私が時々伺う「ゆりや食堂」が掲載されました。当社の飲食店のお客様は、皆さん現代的なピカピカのお店ばかりですが、私が子供の頃にあった食堂がそのまま残っているのが、ここ「ゆりや」さんです。「食堂」好きな私は、月に一度はここの暖簾(のれん)をくぐります。
ここでいつも頼む物は、もりそばとラーメン。始めに蕎麦湯をもらい、湯をすすりながら待っていると、もりそばが来ます。蕎麦たれは甘辛く厚みのあるタイプ。のど越しのいい麺と共に味わうと、ふぅーと心の緊張が抜けてゆきます。半分ほど食べて少したれが薄まると、わさびは使わずに唐辛子を一振りかけて残りを頂きます。
そばを食べ終え蕎麦湯をすすっていると、ラーメンの登場です。澄んだスープにほんの少し縮れた麺、具はナルト、メンマ、チャーシュー、ねぎ。透明感のあるプレーンなしょうゆ味は、子供の頃食べたラーメンの記憶がよみがえります。こちらも何もかけずに食べますが、半分ほど食べると最後に白コショウを一振りかけてスープを味わいます。そして思うのです、この味には今時のラーメン店にある粗引き黒コショウではなく、粉の白コショウが合うなぁ~。
私がもう少し年老いたら、休日の昼下がりにぬる燗の清酒をちびちび頂き、その後に蕎麦かなぁ~なんて考えながら、食べ終えて帰ります。ちなみに東京っ子の家内は、この「食堂のラーメン」に入れ込む私の気持ちが分かってもらえません。多分、私にとってのソウル・フード(魂に染み付いた食べ物)なのでしょう。
さて、今月のお薦めワインです。今月は新入荷が多いので、お薦め品も沢山ございます。
まずは北海道。余市・リタファームからは十六夜(イザヨイ)の白2種。デラウェア種と、旅路種は共にアメリカ系の食用葡萄なので、グレープ・ジュースを思わせる香りがございます。デラはその香りが穏やかで、旅路はマスカット系の香りが華やかです。またこの2種の白は、共に葡萄の皮と種を一緒に発酵させているので、オレンジがかった色調と、複雑な「にが旨み」を持っています。スパイシーなアジア系の食事にいかがでしょうか。
千歳ワイナリーからはピノ・ノワール種で2種類。葡萄は余市産ピノで最も有名な木村農園産。少し冷夏だった15年産ですが、溌剌とした果実感が楽しめます。一方、リザーブは最良の14年産ですから、一回り豊かな果実感と樽香が楽しめます。
札幌の藤野ワイナリーはハセ・ロゼ。食用葡萄のワインですがキャンディ香も余り出しゃばらず、爽やかでフレッシュ&フルーティなスタイル。還元香等のネガティブな風味が無く、自然酵母を手なずける術を見つけたのでしょう。ただ、酸化防止剤・無添加なので、保管は冷暗所でお願いします。
次は長野県・小布施ワイナリーの白2種。まずはアメリカ台木を使わずに自根栽培している白葡萄をブレンドしたヴィーニュ・フランセーズ。栽培から渾身を込めた自社畑産ワインがこの価格はお値打ちです。
次はフランス南西部のプティ・マンサン種からの白。この品種は低収量ですが、果皮が厚く高温多湿な日本でもうまく育つ注目の品種。ここ小布施だけではなく、ココファームも山形で栽培しています。価格はそこそこしますが、一度味わっていただければ良質な白の可能性を感じていただけると思います。
次は仏ボルドー地方からの上級品2種。銘酒ピション・ラランドのセカンド・ワイン、レゼルヴ・ド・ラ・コンテスで最高の10年産がお値打ち価格で入荷しました。次は安定して高評価を受けているシャトー・ラグランジュの12年。共にこの2種は今の相場では1万円近くにはなるでしょう。今開けるとフレッシュな果実味で楽しめるでしょうし、熟成香を望むのでしたら、更に5年程待っていただければ、素晴らしい未来の贈り物になるでしょう。
もう少しお手頃な価格のボルドーは4種類。マルキ・ド・シャスのレゼルヴで、サン・ジュリアン村の葡萄で造った赤。作柄の良かった10年産だけに、完熟したカベルネ種からの杉を思わす香りが広がります。スモーキーなポイヤック村系ではなく、デュクリュ・ボーカイユ系の瑞々しい果実味はまさしくこの村の特徴でしょう。
そしてシャトー・シトランのセカンド・ワインで最良だった09年産。直近の収穫年でも2千円近いワインが、最高の09年産でこの価格は注目!
次は共にオー・メドック地区の人気シャトー、カントメルルと、ラネッサンの共にセカンド・ワイン。11年産のラネッサンは溌剌とした果実感、08年産のカントメルルは少し熟成した風味が楽しめます。
やっぱりボルドーは熟成していなければ、、と言う方には2種。まずはリストラック村のシャトー・フルカ・デュプレ96年。カベルネ種が完熟したこの年は、ふくよかな果実味と豊かなタンニンを持っており、21年を経て熟成香とタンニンが溶け込んできました。これから数年間が熟成のピークだと思われます。
リュサック・サン・テミリオン村のシャトー・フランス・ド・ロックは良年の05年産。12年を経てキノコやハーブ系の熟成香が開き始めました。果実味もふくよかで誰もが喜ぶボルドーでしょう。ボルドーの最後は有機栽培で有名なシャトー・ル・ピュイのセカンド・ワイン。濃度や、樽風味は無くても、透き通った果実感は味覚を充分満足させてくれます。特別価格で入荷しましたので、ボルドーの自然派ワインを体験してみるには最適の1本でしょう。
次はブルゴーニュ地方から。今月は白の良品が多く見つかりました。まずはシャブリ地区からで、名門ウィリアム・フェーヴルの1級ヴァイヨン畑のシャルドネ種。1級畑らしい凝縮したミネラル感と果実味が幾重にも重なっています。上級シャブリの理想と言える様な仕上がりです。
でも、やっぱりシャルドネ種はコートドール・ボーヌ地区が良いと思っている方には、3種類。ムルソー村のアルベール・グリヴォーのACブルゴーニュ規格のクロ・デュ・ミュルジュ畑で13年。一度メーカー欠品しましたが、作柄の良かった13年が再入荷しました。ラベルを見ずに味わうと、まさしくムルソー村の様なふくよかで厚みのある味わいが楽しめます。
ピュリニー村に多くの畑を持つアンリ・ボワイヨ家のACブル白13年は、ボーヌ近辺の村のシャルドネ種をブレンドした白。ブレンドによる厚みと調和したバランスの良さは、ちょっと驚くような仕上がりでした。
3番目はサヴィニー村のシモン・ビーズでペリエール畑のシャルドネ種14年。13年に夫が急死し、妻の千砂さんは家族とドメーヌを背負って行く事を決意した14年。NHKの番組で1年間取材を受けた、あの年の葡萄から生まれたワインです。涙もろい私はつい、ひいき目で見てしまうのをお許しください。
そして目下、絶好調のフレデリック・マニャン氏が造る白2種。マニャン家はモレ・サン・ドニ村ですから、当然ピノ・ノワール種を得意とする生産者。なのにサン・ロマン村とACブルのシャルドネが驚くほどの出来でした。自社畑では無いのに、この白の完成度はすごい!
ブルゴーニュの赤では、フェヴレ社が所有するポマール村の最上リュジアン畑からの赤で10年を経た07年産。しかもこの年にこの畑を購入したので、初めての収穫で当然、力の入った仕上がりとなっています。まだまだ熟成可能なポテンシャルを充分に感じさせます。
次は有名ドメーヌの少し熟成した入門ワイン2種。ポマール村の名門、ミッシェル・ゴヌーのACブル11年。この村特有の凝縮した果実味だけではなく、中心に骨格を感じさせる味わいはさすがです。
次はヴォーヌ・ロマネ村のミッシェル・グロで、こちらはお隣ニュイ・サン・ジョルジュ村の11年。6年を経ていますが、この村特有の果実味とタンニンが今もたっぷり。数年の我慢の後には、楽しい思い出が待っている事でしょう。
今からでも魅力たっぷりで楽しめるのが、 リュリー村の名門ラ・フォリーが造る特醸品キュヴェ・マリー。発酵中タンク上部に集まる果皮を混ぜる際に、ピジャージュ(棒や足で果皮を混ぜる)をせずに、ルモンタージュ(タンク下部から果汁を抜き、果皮の上に注いで混ぜる)だけで発酵させる為、タンニンが柔らかく果実味が際立っています。
ロワール地方からは赤と泡の2種。地元のラブレ組合が造るお値打ちシノン村の赤。未熟な青さの代名詞だった、ロワールのカベルネ・フラン種ですが、今では爽やかで溌剌とした味わいで、とてもバランスの良い仕上がりになっています。
ラングロワ・シャトーが造るクレマン(泡)は、4品種を使って複雑さと独自の味わいを持っています。地元のシュナン・ブラン種50%、カベルネ・フラン種10%に、シャルドネ種30%、ピノ・ノワール種10%を加えて、シャンパーニュ地方を超える泡を目指しています。
アルザス地方からは有機栽培を実践するクリスチャン・ビネール家のシルヴァネール種。この品種、一般的には格下に見られていますが、この生産者は上級品種を超える味わいに仕上げています。多分、先代か先々代が植えたシルヴァネール種を、今も大切に栽培し、細心の注意を払って醸造しているのでしょう。こういったやせ我慢に、私はつい応援したくなります。
南仏からはサンシニアン地区のスーリエが造るグルナッシュ・ブラン種主体の白。有機栽培を実践し、醸造も自然派のスタイルで行っています。一般に有機栽培は手作業が増え、収量も下がる為に価格が高くなってしまいます。そんな中で栽培、醸造共に自然派のワインでこの価格は驚きです。ぜひ一度お試しください。
フランス南西部からはマディラン地区のシャトー・サン・ベナジ01年。地元葡萄のタナ種は強烈なタンニン(渋味)が特徴で、飲み頃までは辛抱が必要。01年産は16年を経て、タンニンがこなれ果実味と調和し、今まさに飲み頃の美味しさが楽しめる状態です。
シャンパーニュ地方からはお手頃価格の2種。お値打ち感たっぷりのルノーブル・アンタンス・ブリュットは、シャルドネ種40%、ピノ・ノワール種30%、ピノ・ムニエ種30%。特にシャルドネ種は有名なシュイィ村産で、切れの良い酸味がスーッとのびて味わいを引き締めています。
一方ドゥ・カントナール・ブリュットも、シャルドネ種は有名なコート・デ・ブラン産60%に、ピノ・ノワール種30%、ピノ・ムニエ種10%。もう一回りふくよかで、バランスの良い味わいが楽しめます。
イタリア・ピエモンテ州からは赤2種。まずはフォンタナフレッダ社のバローロ村12年。北部にとってこの年は難しい年でしたが、ここではバローロらしい豊かさと、風格のあるタンニンが楽しめます。天候以上に、人の努力が成果を結んだ味わいです。
次はロベルト・サロットが造る、お隣バルバレスコ村の、リゼルヴァ規格で97年産。この年のイタリアは最高の作柄に恵まれ、各地で素晴らしいワインが造られました。味わいは完熟を超えて、干し葡萄からのワインを思わせる凝縮感が20年を経た今も感じられます。伝説の97年産が入手できる最後のチャンスでしょうか。
南イタリアからは赤、白の2種。南部ラッツィオ州のマチョッカが地元のパッセリーナ種主体で造る白。ここの大地の恵みを全て味わってほしいとの思いから、果皮と種も一緒に自然派の醸造を行い、瓶詰まで酸化防止剤を添加していません。葡萄の風味に畑の空気、日差し、土壌を一緒に煮込んだような豊潤な味わいを持った白。
赤はシチリア島モルガンテ社のネロ・ダヴォラ種13年。温暖な気候の中で完熟した葡萄は、凝縮した果実味と柔らかなタンニンが調和しています。低収量栽培を守り、丁寧な醸造によって生まれた、バランスの良い良質な赤ワインに仕上がっています。
今人気のスペインからは赤と、白の3種。温暖なテラ・アルタ地区の若い生産者アルタビン。入門編とも言えるプティット・レッド12年は、ガルナッチャ種主体に、シラー種、カリニャン種のブレンド。果実味とタンニン、スパイス感が5年を経て調和して来ました。この価格ではあり得ない程の満足感と、バランスの良さが楽しめます。
次の赤は最高の産地リベラ・デル・デュエロで高評価を受けているヴァルデリス。ここのファースト・ラベルは94点評価を受ける素晴らしい赤ですが、定価4,500円。そこで入門編として造られたのが、同じ自社畑の葡萄でも樽熟成無しで瓶詰したホーベンです。タンク熟成による瑞々しい果実味がたっぷりで、色調も縁まで真っ黒。複雑さは無くても、この低価格でこのフルボディ感は驚きです。
白はナヴァラ地区のソルサルがガルナッチャ・ブランカ種で造る辛口。温暖な産地とは思えない引き締まった青リンゴの味わいは、北部の冷涼な産地を思わせます。スペインといえば今も赤ワインのイメージですが、近年、白の出来には本当に驚かされます。
昨年あたりから、社内で旨安ワインと言えばポルトガル産です。スペインの隣で温暖な気候の中、葡萄は完熟し良質なワインが出来ますが、輸出はポートやマディラばかりで国外のワイン愛好家には知られていませんでした。ベーシックなエストリア赤、白は何と500円! この価格でもバランスが良く、毎日の食卓に最適なテーブル・ワインです。
この上級品といえるのがエンコスタ赤、白でこちらは900円! 一回り豊かな果実味と、数品種のブレンドによる調和した味わいが楽しめます。
ニューワールドからは白2種。オーストラリアのウェルウッドはピノ・グリージョ種からの白。この低価格でも豊かな果実味と、ナッツを思わせる香ばしさが豊かに広がります。
次はお隣ニュージーランドからヴァヴァサワーのソーヴィニヨン・ブラン種。グラスから立ち上る柑橘や夏野菜の香りと、爽やかな酸味のメリハリのある味わいは、この品種のお手本になりそうな出来栄えです。
ハード・リカーからはブランディとリキュールの2種。ガロティエ社のカルヴァドスは、有機栽培のリンゴを蒸留したブランデー。リンゴの皮を思わせる香りが、グラスから華やかに広がります。
次はフィリップ・ド・ブルゴーニュがオート・コート・ド・ボーヌ地区の桃から造ったリキュール。完熟を過ぎて、過熟したような桃の香りと、凝縮した風味はただ者じゃございません。食後に、このリキュールを一口頂くと幸せな気分になる事、間違えなしです。
次はノン・アルコールのドリンク。コニャック地方フェヴリエ家(仏・2月の意)のユニ・ブラン種100%果汁で、ガス無しと、ガス入りの2種。そのままでも美味しいですが、同じコニャック地方産ブランデーに少量加えても美味しく頂けます。
次は今話題のワイン用保存器プルテックスのアンチ・オックス。仕組みはよく解りませんが、柔らかなシリコン製で蓋状の物を瓶にはめると、ワインの酸化を抑えます。当社では、ボージョレ・ヌーヴォーにつけて数日ごとに時間経過を見ましたが、最後は1ヶ月を経ても、お酢にはなりませんでした。ただ酸化した風味にはなりませんが、味が何か違う方向へ向かっている感じがしたのも事実です。飲食店のグラス・ワイン用には、一度試してみる事をお勧めします。
食品では3種。タツヤの柿の種と燻製ピーナッツは、ちょっと癖になる程の良い組み合わせに驚きました。
次は品切れていましたカリフォルニア産の枝付きレーズンが、別のメーカーで入荷しました。
最後は新入荷、ベトゥルッツェッリ社の瓶入りグリーン・オリーブ。シチリア産でこの低価格。サイズは大950g、小290gがございます。