2017年 11月

10月、家内の両親が数年ぶりに札幌に来ました。

初日の夕食はうちの家族3名と両親の5名で、札幌駅西側に出来た、六花亭ビルの上にある「モリエール・カフェ 降っても晴れても」でディナー。ワイン屋の仕事をしていると、沢山の美味しいお店とお付き合いがあって、お店選びはかえって悩んでしまいます。今回は両親が高齢なのと、義父の江戸っ子気質もあって、何皿も出てくるコース料理では無く、メインの料理中心でくつろげるお店で選びました。

前菜のサラダはとても綺麗な盛り付けと、具材ごとの味付けが見事で、小食の義母も完食してくれました。メイン料理は私と息子と義父の3名は牛肉の赤ワイン煮を選び、女性陣は魚料理のクネル。男性ですとサラダと、メイン一品では足りないと思われますが、 メインの料理を半分ほど食べた頃にクネルにはリゾット、肉にはビーフシチューとご飯が熱々の状態で、おかわりの様に盛りつけられ、お腹は十分満たされます。〆のデザートはミシュラン北海道版で三ツ星評価を受けたレストラン・モリエールのカフェですから、提供の仕方も、味わいも大満足。両親に喜んでいただき、私もホッとしました。

翌日は私が運転して、藻岩山の頂上から札幌の景色を眺め、その後はお義母さんの希望で北大のイチョウ並木を散策、夕食は自宅で鍋料理を頂きました。その食事中、義母から驚くべき話しを聞かされたのです。

この「独り言9月号」で、私は家内と東京の新名所となった「ギンザ・シックス」に行った事を書きました。ギンザ・シックスではランチの値段が超高いので、このビルを出て、裏側にあるラーメン店「むぎとオリーブ」で安くすませた話です。義母はその話が気になり、ギンザ・シックスに行った際にそこの案内の方に「このビルの裏にあるという「むぎとオリーブ」というラーメン屋さんは何処にあるの?」と聞いたそうです。

私はその話を聞いて目が点になりました。義母は「その方は親切で、ラーメン店に近いビルの出口を教えてくれて、出ると正面にあったのでラーメンを食べて来た」と言っていました。ギンザ・シックスのスタッフの方、義母が失礼なことを伺いましたが対応していただきありがとうございます。お返しで次に私が伺った際には、ギンザ・シックス内で食事をさせていただきます。

それでは今月のおすすめワインです。

北海道からは、藤野ワイナリーがリンゴで造るスパークリングワイン、シードル16年。札幌市の中心部から車で約30分強で、気軽に行くことができるワイナリー。亜硫酸塩(酸化防止剤)を最小限に抑え、無濾過であることと天然酵母で醸造する、より自然に寄り添うワイン作りを目指しています。アルコール度数6度と低めな為、アルコールに弱い方でもお楽しみいただけます。リンゴの爽やかさが楽しめるワインです。

長野県からは小布施(オブセ)ワイナリーのちゃぶ台ワイン16年。フランス産のアリカント・ブーシェ種を親に持つ日本の伝統的赤品種であるアリカント種を使用。このワインはイタリアやフランスでよく見かけるような、ワイナリー内の計り売りワインのイメージで造られました。適度に濃さのあるバランスの良いチャーミングな味わいで、テーブルではなく、ちゃぶ台に置いて、コップで家族や仲間と楽しく気軽に飲めるワインです。

フランス・ボルドー地方からは、サン・ジュリアン村の名門シャトー・タルボ14年。高騰しているブルゴーニュ地方に比べ、やっとボルドー地方の価格が落ち着いて来ました。しなやかで魅力的なサン・ジュリアン村の第4級格付け。年末に向けて今のうちに確保したいワインです。

ボルドーの白では、クロ・フロリデーヌの白14年。名醸造家、故ドュニ・デュブルデュー氏が所有するシャトーの一つ。氏はスキン・コンタクトや樽発酵、熟成など、現代的な手法を取り入れた先駆者。剪定などは全て手作業、有機肥料の使用や除草剤の不使用など、化学肥料などの使用を抑えています。ソーヴィニヨン・ブラン種とセミヨン種を主体に造られ、石灰質土壌の畑に由来する爽快な果実味、透き通るようなミネラルが特徴の白ワインです。

お値打ちボルドーでは、シャトー・ピュイグローの11年。銘醸『ル・パン』のティエンポン家が、ボルドー、コート・ド・フラン地区に所有するシャトー。1983年のファースト・ヴィンテージより評論家にも絶賛され、安定した品質と抜群のコストパフォーマンスで大人気のシャトーです。ボディは力強く、熟した赤い果実の豊満な果実味と、しっかりとした渋みがとてもバランスの良いワインとなっています。

ブルゴーニュ地方からは、リュリー村のシャトー・ダヴネイ白09年。8年熟成により飲み頃を迎えた、貴重なブルゴーニュの白。ニコラ・ポテル氏の下で白のスペシャリストとして名声を高めた、ファブリス・レンヌ氏が醸造に加わったことで、 今、評価を高めている注目の生産者です。09年らしい完熟したアプリコットの風味に、木樽由来のカスタードの上品な香りが合わさり、余韻まで長く楽しめます。

お値打ちブルゴーニュでは、ヴェルジェ社のマコン・ヴィラージュ16年。通常ヴェルジェのマコンで一番ベーシックなワインは、マコン・ヴィラージュ”テール・ド・ピエール”ですが、この年は雹が降り難しい年だったので選別を厳しくし、言わば上級品を格下げして出されたワインです。希望小売¥2.500のところ、特別価格での入荷です。

赤では、特級畑クロ・ド・ベーズの最大所有者としても知られる、ジュヴレ・シャンベルタン村の名手、ピエール・ダモワが造るACブルゴーニュの赤14年。ジュヴレ村のお隣、フィサン村やクーシェ村の樹齢40年のピノ・ノワール種を使用しており、村名クラスと言っても過言ではない、タンニンと果実味が重なった味わいが楽しめます。

南仏からは、ローヌ地方の頂点に立つギガル社のシャトーヌフ・デュ・パプの赤11年。ギガル社の創業は戦後間もない1946年。その後、わずか半世紀にして北部ローヌ最上の生産者へと大成長を遂げました。平均樹齢50年の葡萄を使用し、温度調節をしながら3週間の醸し発酵。3年間大樽で熟成。よく熟した赤い果実のアロマ、タンニンはこなれており、プラムのフレーバーがあります。複雑でリッチ、ボリューム豊かで、誰もが満足できる飲み心地のワインです。

ロラトワール・サン・マルタンが南仏ケラーヌ村で造る赤13年。畑の主となる部分は、ラストーの丘から200mあまりの、ケラーヌ村の北東にあります。栽培は農薬や化学肥料は使わず、ビオディナミ農法を実践。熟した果実味にスパイスの風味が合わさった、まさに理想のローヌワインで、ジビエ料理とは最適です。

ロワール地方からは、今注目の生産者ジョナタン・ディディエ・パヴィオのプイィ・フュメ16年。収量が激減し、「16年産は入荷しないのでは?」と思われたワインが数量限定入荷です。フュメ香(スモーキーな香り)と、澄みきった果実味で楽しませてくれるスタイルは、この年も健在。旨みの乗ったスモーク・サーモンに最適です。

お値打ちなロワール地方の白では、プイィ・フュメやサンセール村に程近いカンシー村の生産者トロテローの15年。粘土石灰質土壌のソーヴィニヨン・ブラン種は、豊富なミネラルに凝縮した果実味と柔らかな酸味とが調和し、爽やかな品種の個性と、複雑さが見事に表現された逸品です。

シャンパーニュ地方からはJ・コンテのブリュット。高騰していくシャンパーニュで、古木のピノ・ノワール種50%、ピノ・ムニエ種35%と、黒葡萄主体で造られたふくよかで、お得なシャンパンを見つけました。泡立ち細かなクリーミーな口当たりに心地良い酸味。こなれた味わいで複雑さがあり、この価格では驚きの上質な味わいが楽しめます。

次はイタリアからのお得な泡、アントニーニ・チェレーザ社のスプマンテ。実はこのスパークリング、当社で人気のスプマンテ「マスティオ・デラ・ロッジア」がメーカー欠品し、代替で取ったのですが、試飲をすると活気のある泡と爽やかな果実味で、こちらも定番化に決定。一度お客さまに紹介してみようと思いオススメに入れてみました。

スペインからフルボディタイプの赤で、アタラヤ社の最上級品のアラヤ15年。ステンレスタンクで27度以下に保ちながら発酵、マロラクティック発酵は樽で行います。熟成はフレンチオークとアメリカンオークのバリック樽で15ヶ月後、 ろ過も清澄もせず瓶詰めします。ガルナッチャ・ティントレラ種のポテンシャルの全てがこのワインに詰まっています。濃くて強いフルボディワインがお好きな方にお薦めしたいワインです。

ドイツのモーゼル地区からプリュム社のリースリング種で、トロッケン(辛口)タイプの14年。プリュムは、モーゼル川沿いの険しい傾斜の土地に葡萄畑を作った先駆者の一人で、何世代にも渡り近代的手法で高品質なワインを生産してます。粘板岩土壌の土壌からの、フルーティで華やかな芳香をもったワインです。辛口でも果実味が豊かで、酸とのバランスの取れた爽やかな味わいが楽しめます。

アメリカ、カリフォルニア州のノース・コーストからボドキン社のソーヴィニヨン・ブラン14年。シェークスピアの史劇「ヘンリー5世」にちなみ、ボドキン(矢じりの古語)の名を冠した気鋭のワイナリーです。醸造家のクリストファー・クリステンセン氏はスタンフォード大学を卒業後、20代の若さでメドロック・エイムズにて醸造家として活躍する傍ら、2011年より自らのブランドで、繊細な食事にも調和するな上品なソーヴィニヨン・ブラン種の白を造り始めました。ハーブのように爽やかで、果実味の凝縮感の強い仕上がりになっています。

次は近年注目される、東欧からの白。1450年創業のクロアチアの老舗ワイナリー・イロチュキ・ポドゥルミが、クロアチア原産のグラシェヴィーナ種で造られた辛口白ワイン。今や世界標準となったドライアイスや窒素ガスで酸化を防ぎ、ステンレスタンクによる醸造でみずみずしい果実味と爽やかさがあり、魚介類は勿論、鶏肉や豚肉料理にも調和する、ふくよかさも楽しめます。

今月は当社では珍しい清酒のお薦め。仏・ロワール地方でワインを造っている新井順子女史が、杜氏として仕込んだ酒。熊本震災の復興に少しでも役立てばとの思いを込めて熊本の米を使用し、地元茨城の蔵元と造りました。「順子・純米大吟醸・吟のさと」は2種類あり、通常のヤブタ式搾り器で搾った物と、もろみを布袋に入れて、袋をぶら下げ搾った、袋吊りの二種。ヤブタ搾りと、袋吊りの飲み比べはとっても楽しめました。

食品からは、毎年秋に入荷するフランス産のとてもお得な、マセズ社のトリュフチョコです。高価なトリュフ・チョコが500gも入って、この価格は驚きです。味も量も大満足いただけると思いますので、まだ召しあがったことがない方はぜひお試しください! 食後に濃いめに入れたお茶と共に、このチョコを味わって頂くと、私はちょっとゴージャスな気分に浸れます。小分けにして、おすそ分けしても喜ばれると思います。