2017年 12月

近年、北海道産ワインの評価が上がるにつれて、行政側でもワインを応援するイベントが増えています。今回、「道産ワインと胆振地方の食・魅力発信セミナー」が11月16日、洞爺湖のウインザーホテルで開催され、私も参加させていただきました。


2008年、日本開催のサミット会場となった、北海道で最も豪華なホテル、ウインザー。今回はここの総料理長が6種類の道産ワインに最適な料理を地元の食材を使って考案し、ワインと食の組合わせを体験するという贅沢な会。ただ私はウインザーで食べた事があるのは、前にここで購入した数種のパンしかありません。そんな「おのぼりさん」状態でしたが、第一部のセミナーで飯島総料理長さんのお話を聞いて驚きました。

飯島さんの前職場は日本で最高の朝食と評価された、栃木県那須高原に4万2000坪の敷地を持つ高級リゾートの二期倶楽部。那須では敷地内のガーデンで野菜栽培と、調理の両方をされていた飯島さん。更に雄大な自然が残る北海道に来て、素材探しと新しい食材を使った料理に打ち込んでいる姿に私は感動を覚えました。洞爺湖を見渡す山の頂上に立つお城のようなホテル、私のイメージでは日本中どころでは無く、世界中から最上の物を取り寄せているイメージでしたが、飯島さんが来てからは地元の食材にこだわり、地元の生産者とミーティングを重ねて、独自の味わいを追求しているそうです。そして今、ウインザーでは地元のお祭りや、イベントに積極的にブース等を出して参加しています。出店の際は食器やサービスも含めて本物にこだわり、食で感動していただくことで、洞爺の皆さんに愛されるホテルを目指していると語っていました。


次の第二部は試飲と試食。最初の鶴沼ヴィンヤード白は、マスカット香が華やかで食事とは合わせ辛いイメージでしたが、生の帆立を使ったマリネにマンゴーを加えることで、マスカットとマンゴー二つの香りが口中で共鳴し、閃きのある前菜となりました。

今回、私の注目はロゼワイン。千歳ワイナリーのピノ・ロゼに、ヒラメのお寿司と、霜降り和牛のローストの2品が用意されます。お寿司はポン酢・紅葉おろし・シソを使って、ワインの酸味と上手く調和していました。でも次の霜降り和牛の様な強い食材には、赤ワインでなければ負けてしまいそう。そこで牛にドライフルーツのソースを加える事で、フルーティなワインとの相性が良くなり、ピノ・ノワール種のタンニンと旨みを持つ辛口のロゼが、肉の脂肪分に溶け込んでゆくような感覚は初めての経験でした。

こうして今回、6種のワインに12品の料理が用意されていました。


さて、農学部で有名な北大は、今、ワイン研究にも目を向けています。道庁から市町村までの行政も、ワインが町おこしに役立つと気付き、動き始めています。当然、葡萄農家さんと、ワイナリーは全力で打ち込んでいます。5年、10年後、道産ワインが更に美味しくなり、道民だけではなく、全国のワイン好きから愛される事を願って私も努力を続けて行きます。

そこで皆さんの応援方法は、例えばカニやシカ肉など地元の良質な食材を入手した時に、道産ワインと共に味わってみませんか? 洋食でなくてもいいです。いつもの調理法でも、別に小皿を数枚用意して、ミネラル分の多い塩、粗引きコショウ、レモン汁、柚子こしょう、オリーブオイル、バルサミコ酢等を各小皿に入れます。そして食材とワインが調和する調味料を色々食べ比べをしてみると、食卓に楽しい会話と発見が見つかる事でしょう。


さて、今月のオススメワインです。

まずは地元から、余市・田崎正伸ソーヴィニヨン・ブラン16年。大手である北海道ワイン㈱の契約農家の中で別格の扱いを受ける田崎農園。ここが試験栽培を始めたソーヴィニヨン・ブラン種の初成り葡萄からの白。植えて3年の若木ですが、爽やかな酸味を持った味わいはまさにソーヴィニヨン・ブラン種。今後、木の成熟と共に、将来が期待されます。


フランス・ボルドー地方からは、ムーリ村のシャトー・ベレール・ラグラーヴ97年。20年を経てまさに飲み頃のボルドーです。若くてジューシーなボルドーも楽しいですが、熟成による旨みと複雑さにはかないません。「まさにボルドーの真骨頂!」といった感じです。また、今年二十歳になられた若い方々へのプレゼントとしても最適ではないでしょうか。


仏ブルゴーニュ地方からは 期待を裏切らないグロ・フレール・エ・スールのオート・コート・ド・ニュイ地区の赤で、作柄の良かった15年産。以前は果実味豊かで力強いスタイルで知られる生産者でしたが、オーナーが病気をして以来、洗練されたエレガントな造りを目指しており、味わい深いワインとなっています。2015年は良質な葡萄が収穫され、上質な果実味にオーク樽の香ばしさが合わさり、若いうちからでも芳醇な味わいを楽しむことができます。


同地区での上級品は、ヴォーヌ・ロマネ村の名門ジャン・グリヴォでこの村の12年産。ジャン・グリヴォは18世紀の末にまで遡る由緒正しき造り手です。ベルベットのようなエレガントな喉越しが、このドメーヌの共通の特徴。この赤ワインは、ヴォーヌ・ロマネ村内の数区画からのブレンドから造られています。綺麗なチェリーの風味、しっかりとした果実味とタンニンを楽しめる、旨みのあるワインです。


ブルゴーニュの白では、若手生産者の中で注目度ナンバーワンのバンジャマン・ルルー14年。果実の純粋性を表現する達人で、オーク樽のニュアンスはほんの僅かしか感じさせないようにしており、果実のみずみずしさを感じることができる上質なワインです。奥まった位置のオーセイ・デュレス村は、控え目な値付けで良品が見つかる、とっておきの産地です。


ムルソー村の人気生産者フランソワ・ミクルスキの赤、白。当主であるフランソワ・ミクルスキ氏はボーヌで醸造学を学んだ後、カリフォルニアのカレラで研修を受けます。白は天然酵母を用い、発酵に3~4ヶ月もかけます。熟成はオーク樽で12ヶ月以上、樽のニュアンスが出過ぎないように新樽比率は20%以下に抑えています。赤は15~17日間ステンレスタンクで発酵させた後、オーク樽にて14ヶ月以上熟成させます。希望小売4,000円以上の品が特別価格で限定入荷です。


南仏からは、エステザルク農協が造る安旨ワイン、プティ・アンデゾン赤。当社で大人気ワインであるダンデゾン・ヴィエイユ・ヴィーニュのセカンド的ワインです。16年ヴィンテージよりシラー種はダンデゾンのシラー種のみを使用し、グルナッシュ種は南部の葡萄を使用。シラー種2/3、グルナッシュ種1/3で、今まで以上にダンデゾンの品質に近づきました。ダンデゾンは無濾過、無清澄で濃厚ワインでしたが、このプティアンデゾンも力強い果実味は流石です。


シャンパーニュ地方からは、リッチな味わいで有名なゴッセ社グランド・レゼルヴ・ブリュット。1万円弱のプレミアム・シャンパーニュが、なんとビックリの価格です。豪華なおせちと共に味わう、年越しの泡はゴッセで決定です。


イタリアからは、コスパの高さで知られるファルネーゼ・ファンティーニ社のシャルドネ種と、ピノ・グリージョ種の白2種。辛口評価で知られるルカ・マローニ誌で常に最高評価を受けている生産者です。2種共に、12度で約20日、ステンレスタンクで発酵させます。その後、良質な澱とともにステンレスタンクで約3ヶ月熟成させます。シャルドネはレモンライムの香り、ふくよかな果実味とミネラルのフレイバーがあり、ピノ・グリは香ばしさとメリハリ感が楽しめ、共に爽やかでバランスの良いワインです。


スペインからボデガス・カスターニョの赤、ソラネラ15年。カスターニョ家では、自然が与えてくれた贈り物、天然の良質な土壌と、モナストレル種を大変誇りに思っています。彼らは先祖代々受け継がれてきた伝統を決して忘れることなく、更に新しい技術の開発に心血を注いできました。3品種のブレンドによる完熟した濃厚な果実味は飲みごたえがあり、少し贅沢な時間を与えてくれます。


ドイツ、モーゼル地方からは、コスパワインの代表格トーマス・バルテン家のやや甘口リースリング15年。畑の50%以上が急勾配の斜面で、その傾斜はなんと40%~75%。ワインは自然なものであるべき、そして自然のままであり続けるべきと考え、培養酵母は使わず、自然酵母を使って発酵させています。デザートワインまで甘くないので、どなたでも飲みやすい万能ワインです。


チリからコイレ社のロヤル・カルメネール13年。コイレは、1885年から6世代にわたる栽培醸造家のウンドラーガ氏が2006年に設立したプレミアム・ワイナリーです。コルチャグア・ヴァレーで最も標高の高いアルト・コルチャグア地区に畑を所有し、バイオダイナミックとオーガニック農法で栽培しています。凝縮したスパイス、オレンジピールにカカオ、森林を思わせるクリアな香り立ちがあり、しっかりしたコクと深みのある均衡のとれた味わいで、滑らかなタンニンが余韻まで続きます。インパクトのあるワインをお探しの方におすすめです。


アルゼンチンからは、トップ・ワイナリーのモンテヴィエホが造るマルベック種の逸品、リンダフロール08年。畑では環境に配慮した有機農法による栽培を実践し、ミッシェル・ロラン氏監修でポムロールのシャトー・ル・ゲ等のテクニカルチームがワイン造りを担当、世界でもトップ・レベルのワインを生産しています。味わいはふくよかで滑らかな果実味と、フレンチオークの上品な樽香が見事に調和しており、9年の熟成により濃さだけではなく、飲み頃の旨みも楽しめます。


ハード・リカーでは 仏アルマニャック地方の名門サマランス社の8年熟成アルマニャック・ブランディ。単一種の葡萄(ユニ・ブラン種)、単一蒸留所、単一生産地で、シングル・ド・サマランスと名前が付けられている通り、全てシングルにこだわりぬいており、このほかにも芳醇なフローラルの香りをつけるため澱を加えたり、自然な甘みだけを出すためにリキュールや砂糖を加えないなどのこだわりを持って造られています。滑らかな口当たりを持ち、香り高い上品な香りが口中に広がる高品質なアルマニャックです。


ラムでは、プランテーション・オリジナル・ダークラム。カリブ海の島でバーボン樽熟成の後、クオリティーの高い物だけを、わざわざフランスへ運び、コニャック樽で再熟成と、何とも贅沢な造りのラム酒です。ストレートでももちろん美味しいですが、ダークラム仕様のカクテルを秀逸に仕上げます。「マイヤーズでは少々甘くて・・・」と思ってらっしゃる方に最適な味わいです。なお、同じプランテーションで、アルコール69%もあるダークラムと、3つの島からのラムをブレンドしたスリースターズ(ホワイトラム)も、本当はお薦めに入れたいくらいの品質でした。


ビールでは、ベルギーの欧和(オーワ)ブリュワリーが造る黒欧和(クロオーワ)。以前、某航空会社の機内誌に今井礼欧氏の記事が載っていて、是非当店でも取り扱いたいなと思っていたビールです。しかも今回はボルドーで”クロ・レオ”を造る篠原麗雄氏とのコラボとなると見過ごす事が出来ません。


食品からはスリランカのマーズ・ハッピー・ライフ・キッチン社のカレーペースト。料理をカレー風味にしたいけど、普通のカレー粉ではもの足りない、そんな時に最適なカレーソースです! スパイシーで酸味のバランスのとれた味わいです。瓶に入っているので、開けても冷蔵保存出来るので便利です。マンネリ化した家庭料理にちょっと変化球を投げてみてはいかがでしょう。


ドイツ・メステマッハー社からはライ麦、オート麦等から作られたとても重たいパン、ドライコルン。これほど栄養素の高いパンはないでしょう。原材料は、有機全粒ライ麦、有機オート麦、有機大麦、有機亜麻仁、海塩、有機ゴマなど、身体に良い物ばかり。繊維質、ビタミンB、ミネラルたっぷりです。おすすめの食べ方は、厚めにカットしたセミハードチーズをのせてこんがりトーストします。クリーミーなチーズがドイツパンの複雑味、酸味を包みこみ、あとをひく美味しさです。朝食にいただいたら、朝から元気に活動できそうです。このパンは、7枚カッとされていて、丁度一週間分です。ワインのおつまみにも最適で、ミネラル豊かな白ワイン、酸味やスパイシーな赤ワインにもよく合います。※お腹に負担をかけない為、玄米のように、何度も良く噛んでお召し上がりください。


北海道からはアグリシステム社の小麦ヌーヴォー。ボージョレ・ヌーヴォーにあやかり、最近、様々なものが初物と称して紹介されています。この道産の粉もそのひとつ。この粉で、パンを焼きましたら、いつものパンより粉の味わいが深く美味しく感じました。初物に感謝する心も相乗効果になっているのでしょうか。とても簡単に作れ、かつ美味しいパン「ドデカパン」の作り方を、YouTubeで紹介しています。「世界一簡単かも??基本のドデカパンの作り方」で検索ください。ドデカパンをこの粉で焼きましたら、フジヰスタッフにも大好評でした!