2018年 1月

今月は、ちょっと難しいお話です。

最近は毎月のように、北海道産ワインのイベントが行われ、私もなるべく参加するように心がけています。こういったイベントで多いのが「パネル・ディスカッション」と呼ばれる公開の討論会で、各ワイナリーや行政の担当者等がテーマに沿って発言をします。昨年開催された公開討論会では、アメリカでのワイン産地の発展がテーマでした。

今では名産地として知られるカリフォルニアは1850年代からワインを造っていたが、世界的に評価されるようになったのは1970年代に入ってからです。病害虫を乗り越えてワインの品質を上げ、産地の知名度を高める為に行った方法は、その地区内全ての生産者が、ワインを出荷する際に「1リットルにつき1円」の様な形でお金を集め、その資金で大学や研究機関に問題の解決法を研究してもらったり、産地の知名度を上げる為のイベントを開催したそうです。

この時の司会者が、「こういった形で日本でも産地の発展は出来ないだろうか?」と質問すると、参加していたアメリカ人のブルース・ガットラヴ氏(岩見沢10Rワイナリー)が答えたのはたった一言、「デモクラシー(民主主義)!」でした。広くて新しい国アメリカは、国土開拓の歴史が全て。西へ西へと開拓を進める際に問題が起こると、皆で資金を出し合い解決法を見つけては前に進んだそうです。

私も「デモクラシー」という言葉は知っています。でも、この言葉は歴史の教科書の中か、政治家や組合等が行う事で、自分たち日本の生活ではあまり使わない言葉だと思いました。北海道内でも、規模も産地も違う各ワイナリーが、一つのテーブルに集まり討論をして何かを決めるという事は、多分大変なことです。でもこうした際に必要となるのが「民主主義」らしいのです。私たち日本人は、共同作業に関しては欧米からまだ学ぶ必要があるようです。

さて今月のおすすめワインです。

千歳ワイナリーが造るピノ・ノワール16年。北海道のピノ・ノワールのルーツとも言える、余市の木村農園。92年に苗を入手してから、ピノ一筋でやってきました。繊細で上品なミドルボディで、チェリーなどの果実の風味と上品なフレンチオーク樽の香りを特徴としています。半年から1年ほど熟成させると、更に味わいが開いてくるでしょう。

フランスのボルドーからはシャトー・ジョアナン・ベコの11年。シャトー・ボーセジュール・ベコのオーナーである、ジェラール・ベコ氏の娘ジュリエット・ベコ女史が2001年2月から所有するワイナリーです。グリーン・ハーベスト(間引き)により収量を厳格に制限し丁寧に仕立てられるワインは、果実味の凝縮感がありながら、柔らかなタンニンを持ち、優しさや丸みを感じられます。女性醸造家の情熱や思いが詰まった1本を、ぜひこの機会にお楽しみください。

ブルゴーニュ地方の大手生産者、ジョセフ・ドルーアン社のアリゴテ16年。メゾン・ジョゼフ・ドルーアンは1880年に古代ローマ要塞の壁の内側に位置する、ブルゴーニュワインの中心地ボーヌに創立されたワイナリーです。130年以上もの間、家族経営にこだわり、頑なに創業当時から受け継がれるテロワールへの信念を守り、「エレガンスとバランス」を追求し続けています。このアリゴテ種は綺麗な果実味とほのかな火打石のニュアンスを感じられる、酸のしっかりとしたフレッシュな白ワインです。この低価格でもブルゴーニュの良さが楽しめるお値打ちな白です。

次はニュイ・サン・ジョルジュ村のティボー・リジェ・ベレールが造るブルゴーニュ規格の白。リュニー村とモンタニー村のシャルドネ種をブレンドすることで、ふくよかでミネラリーな味わいになっています。2012年はブルゴーニュの当たり年で、熟成によりきれいな果実味とこなれた酸味との調和が楽しめます。

ミッシェル&ジョアンヌ・エカールのサヴィニ・レ・ボーヌ ルージュ ヴィエイユ・ヴィーニュ14年。長い商品名で申し訳ありません。この生産者は元々サヴィニ村を代表するモーリス・エカールの息子夫婦になります。諸事情があり、「モーリス・エカール」の名前とワイナリーを売却しました。その品質が以前のレベルに達していないと考えたミッシェル氏は、ドメーヌの再興のため約1/3になった畑を基にワイン造りを始めました。入魂のサヴィニ村名ワインが超特価でのご提供です。

南仏で当社大人気の生産者ダンデゾン。35haの畑は海抜200mに位置し、ワインは50%がドメーヌ名でリリース、残りはエステザルグのワインにブレンドするか、ネゴシアンに売ってしまいます。基本は、除草剤を使わず、銅や硫黄を使用。ただ、病気に罹った際には、薬を使うこともあります。ラベルに牛が使われているのは、元醸造責任者のニックが牛が好きだったことと、ラベルを見て「雄牛=フルボディ」というたくましいイメージを連想させるためだそうです。シラー種100%からのワインは、雄牛のように濃くて強い味わいです。

ロワール地方からは、プイィ・フュメ地区のタボルデが造るソーヴィニヨン・ブラン種の白。人気のプイィ・フュメと、隣村のサンセールは、価格も3~4,000円以上の高級ワイン。そんな中でダボルテの白は、品質とお値打ち価格で、社内試飲では満場一致で決めたロワールの白。イヴォンとパスカルの「タボルデ兄弟」が1981年に設立したドメーヌで、畑では農薬や除草剤、化学肥料などはほとんど使用せずに自然な農法でワイン造りを行っています。16~18℃の低温で約2ヶ月かけてじっくりと醗酵するため、味わいはクリアでミネラル感に溢れています。

LGI ビッグ・レッド・ビースト16年。ラベルを見るとまるでカリフォルニア・ワインかと思うようなヘタウマのビースト(野獣)が描かれています。しっかりとした濃い系の果実味があるのに、全体を渋みと酸味が上手くまとめ上げて楽しませてくれます。コスパ抜群のリッチな南仏産赤ワインです。

シャンパーニュ地方からはピエール・パイヤールのレ・パスセル。ブジー村のパイヤール家では、力強いピノの産地で知られるこの村の葡萄だけから造られます。パワフルなこの村の味わいに、フレッシュさとエレガンスさをもたらすため、このキュヴェではシャルドネ種を40%も加えて、独自の上品さとふくよかさが楽しめます。葡萄栽培は20年前からリュット・レゾネで行っており、自然の野草で覆われた葡萄畑では、ここ15年間、化学肥料を一切使っておりません。ノン・ヴィンテージですが、瓶詰め後42ヶ月間も熟成を行っており、生き生きとした細かな泡が駆け抜ける味わいは、ふくよかな果実と細かな酸を備えています。グラン・クリュの力強さとエレガンスに、長期熟成の奥深さを堪能できます。

イタリアからは南の濃い系ワイン、ヴィニエティ・デル・ヴルトゥ-レのアリアニコ種の赤。畑は標高500m以上の高い所にあり、南部でも冷涼です。アリアニコ種は晩熟ですが、成長過程では涼しい気候を好むため、最適の産地。認証はありませんがオーガニックに近い栽培方法です。クモは化学的物質に弱い生き物で、その存在は畑が健全で自然であることを示します。濃厚で濃いワインですが、酸があるので、シロップのような濃さまでにはなっておらずバランスが良い味わいです。

次は食後酒に最適な、薬草がたっぷりのイタリア産プレミアム・ヴェルモット。カルパノ社のアンティカ・フォーミュラーは、私が一番好きなヴェルモットです。お食事とワインを終えて、ちょっと飲み足りない時や、少し音楽でも聞きたい時に最適なお酒です。甘さとハーブの苦旨みが、奥行きの深さと重層的な味わいで、特に寒いこの時期には欠かせません。ぜひ一度お試しください。

スペインのシェリーでは、バルバディージョ社が英国の酒商ベリー・ブラザーズ・ラッド社の為に造ったオロロソ・タイプの辛口シェリー。シェリー好きの人には是非試して頂きたい熟成シェリーです。英国最古のワイン&スピリッツ商が、生産者との深い絆より生まれたオリジナル・シェリーです。熟成感の中にもフレッシュさがあり、輸入過程における劣化を感じさせない抜群の状態です。肉料理や中華料理もそうですが、濃厚なチョコレート・デザートにも相性が良いです。

日本酒では、鯉川酒造の別嬪(ベッピン)純米酒。寒さが続く中で温めて美味しくなる日本酒をご紹介します。全国燗酒コンテストで2度の受賞歴があり、実際に温度を上げながら試してみると、まろやかになり全体の調和がとれてより美味しくなりました。ただ、温度を上げ過ぎるとアルコールが強く感じてバランスを崩してしまうので、ぬる燗(40度程度)がおすすめです。