今月は4月上旬、京都に行ったお話し。
三十数年前の話ですが、全国の酒小売店でワインに力を入れている所が20軒ほど集まり、生産地から共同仕入れをして安価で良質なワインを販売するネットワークが出来ました。北海道では当社が参加したのですが、毎年ヨーロッパ等に買い付けに行く時間と余裕が当社には無く、当時は本部の仕入れた物を販売するだけでした。その後、買い付けは全員参加にしようと、加盟店は毎月積み立てをして買い付けに備えましたが、 その会は数年で自然消滅。その後30年以上経て、大阪の本部から当時に積み立てたお金が今も残っており、同窓会にでも使おうと「京都・山城の筍と、京料理に合わせるワイン会」の案内が来ました。
会場の京都・美濃吉本店・竹茂楼さんに現地集合してみると、私も含めて皆さんすっかり浦島太郎状態で年配になられていました。挨拶の後、食事が始まり、途中からは舞妓さんと芸子さんが来て、食事と舞を堪能しました。舞が終わると、二人の女性はワインの給仕をしながら皆と会話をします。私の横でも給仕をされましたが、本当に首からお顔まで真っ白なのです。
私が思い浮かべたのは、真逆ですが昔流行ったコーラスグループ「シャネルズ」。彼らは黒人の音楽とスタイルに憧れ、自ら靴墨を自分の顔に塗って黒人になりきって歌い踊っていました。でも、舞妓さんはお客の為に、白く塗り舞を踊るのです。シャネルズは自身の希望で黒く塗りましたが、舞妓さんはお客さんの為に白く塗っていると思うと、居たたまれなくなり、私は舞妓さんの顔を正面から見る事ができませんでした。
そんな困惑した状態の時に、「藤井さん、こっち向いて!」と本部の方に言われて、芸子さんと記念写真を取られました。多分、今自分は苦しく、困った顔をして写っていたのだろうと思っていましたが、数日後メールに添付されたその時の写真を見ると、でれ~と鼻の下を伸ばした私が写っているのです。
人は頭の中では理性を持って行動しているつもりでも、体は違う動きをしているのが分かりました。大変赤面する写真ではありますが、証拠写真としてプリントしましたので見たい方は当社店舗にお越しの際に、「証拠写真を見せて!」と言って下されば、特別にお見せします。どうぞ笑ってやって下さい。
さて、今月のお薦めワインです。
北海道からは藤野ワイナリーのコハル・ロゼ17年。丁寧な選果を行い、亜硫酸塩(酸化防止剤)を最小限に抑え、無濾過と天然酵母で醸造するワイン作りをしています。イチゴやラズベリーの甘酸っぱさの中に熟した果実の柔らかさが余韻を引き立てる辛口のロゼワインです。自然の炭酸ガスやぶどう由来のオリが含まれることがありますが全く無害ですので安心してお召し上がり下さい。
フランス・ボルドー地方からは、オー・メドック地区のシャトー・ラローズ・ペルガンソン10年産。フランス全土で、ワインは素晴らしい出来となった2010年。果実味の凝縮と新樽熟成のコーヒーやチョコの風味があいまって、これぞボルドーといった風格を醸し出しています。2010年産を見つけたら、即、買いです。でなければ、後で後悔する事になりますよ。
仏ブルゴーニュ地方からは、フェヴレ社メルキュレ村のラ・フランボワジエール畑の赤でハーフ・ボトル15年。ニュイ・サン・ジョルジュ村に本拠を置くフェヴレ社は、1825年の創立から7代にわたって続く名門です。このメルキュレ村でも優良なフランボワジエール畑のピノ・ノワール種で、素晴らしい年となった15年産。ラズベリーやフランボワなどの香りに、爽やかな瑞々しい果実味が中心となり、後から上品な木樽の風味が広がる、しなやかで滑らかな口当たり。若いうちから楽しめる、懐の深い味わいです。
同じくブルゴーニュから、ルー・デュモンのブルゴーニュ・ブラン15年と、ルージュ15年。18年1月に、某・国営放送局の番組でオーナーの仲田晃司さんのルポタージュがありました。ブルゴーニュの地で裸一貫から始め、今や世界中に輸出するまでの生産者へ成長された仲田氏の温和で堅実な人柄がにじみ出ている様なワインです。
南仏からはフォンカリユ社でコトー・ダンシェリューヌ地区のエスプリ・ド・ノ・ペール11年の赤。フォンカリユ社は組合員1200軒、5000ヘクタールを持つ、南仏でも大手の生産者共同組合で、仏ワイン専門誌「ラ・ルヴュ・ド・ヴァン・ド・フランス」の『2012年度・年間最優秀ワイン生産者組合賞』を受賞しています。この赤はシラー種主体に数品種をブレンドし、タンクで5年以上熟成させた11年産ワイン。若いワインが多い南仏で、安価ですが飲み頃の美味しさが楽しめる貴重な1本です。
仏シャンパーニュ地方からは、J-M セレックが造るソレサンスのブリュット・ナチュール。17年、ジャン・マルク・セレック氏が来札され、試飲いたしました。平均樹齢40年の力ある葡萄からのピュアな味わいと、 ヴァン・ド・レゼルヴ(優良年で取り置きしていたワイン)の比率が50%(通常は3割程)というだけあって、複雑で奥行きのある風味に圧倒されました。今一番のお薦めシャンパーニュです。
人気のスペインからは、温暖なバレンシア州南部のエル・アンゴストが造るラ・トリブ10年。ここの標高は550メートルと高く、西の大西洋から吹く比較的冷涼なポニエンテと呼ばれる風と、東の地中海から吹く比較的温暖なレバンテと呼ばれる風が交差し、ぶどうは理想的に成熟します。しかも最高の天候だった10年産なので、凝縮した果実味と、スパイス感に木樽の風味が合わさり、飲み応えがあり、満足感の高い一本です。パーカーポイントも90点で、この価格はお値打ちです。
そして、今やスペインの顔となったカヴァ(泡)で、 コヴィデス社のゼニウス・カヴァ・ブリュット。ここはペネデス地域の800のワイン生産者による大手協同組合で、日本のワイン専門誌にもベストバイと評価されたことがあり、高品質のカヴァを生産しています。泡がきめ細かく、果実味と酸味のすっきりとした爽やかな味わいで、暖かくなるこれからの季節にぴったりな、一押しスパークリングワインです。
更にスペインの白では、テラ・アルタ地区のセリェール・ピニョル家のヌエストラ・セニョーラ・ポルタルでブランコ。ガルナッチャ・ブランカ種主体の白で、複雑な香りと長い余韻が魅力のワイン。テラ・アルタはカタルーニャ語で「高い土地」を意味し、その名の通り標高950mの山々に囲まれた場所にあり、銘醸地のプリオラートやモン・サンに似たテロワールを持ちながらも、リーズナブルで高品質なワインを産出するとして注目されています。希望小売価格1,650円が特別価格で入荷となり、大変お買い得となりました。
スペインの最後は赤、カスティーリャ・レオン地区のトリデンテでエントゥレスエロ・テンプラニーリョ15年。上級品のトリデンテには僅差で使われなかったタンクを、別に詰めたお買い得ワインになります。凝縮した果実味と樽からのバニラ香が広がり、パエリヤ、パスタ、マッシュルーム、シチュー、ソーセージ、チーズなどによく合います。この価格でフルボディワインをお探しの方には必見です。
ドイツからはダイデスハイム村の名門ワイナリー・ヨーゼフ・ビファー社のリースリング種ハルプ・トロッケン(やや辛口)14年。ここではテロワールを尊重したワイン造りを行っており、2013年より日本人徳岡女史が社長兼醸造家として活躍しています。このハルプ・トロッケンは、ピュアな果実味、きれいな甘味、フレッシュな酸味とが見事な構成をつくり、透き通ったミネラルとの調和により、味わいに広がりのある上質なワインに仕上がっています。
チリからはカサス・デル・ボスケ社カルメネール種のレゼルバ15年。カサス・デル・ボスケは、森や牧草地だった未開の土地をワイン用の葡萄栽培が出来るよう開拓し、「量より質」を求め、チリのプレミアム・ワインを生み出す事だけを目指した新鋭のブティック・ワイナリーです。風味の良い口当たりで、果実と樽の絶妙な融合が感じられ、バランスの良い柔らかいタンニンと程よい余韻が楽しめます。甘酸っぱいソースを使ったお料理や、火を使ったお肉料理に合わせやすい味わいです。
アルゼンチンからはエル・エステコ社のドン・ダビでトロンテス種レイト・ハーヴェスト16年。こちらは遅摘みしたトロンテス種100%で造られた甘口ワインです。トロンテス種独特のバラやライチ、ハチミツのような華やかな香が広がり、 果実味と酸味とのバランスが良く、マーマレードのような心地よい酸味を伴った爽やかな甘味を楽しむことができます。若干の貴腐香も感じられ、この価格では驚きのパフォーマンスです。
次は清酒から、新潟の佐渡ヶ島の北雪酒造の北雪で純米生原酒。少しマスカットを思わせる爽やかさがあり、ワイングラスでお飲み頂くとよりそのフルーティさが際立ちます。加熱処理をしていない生原酒ならではのフレッシュな香りと、コクのある旨味が楽しめます。
食品では宮城県塩釜市の五光食品が作る「炙りかき」です。アジア圏の輸入物ではなく、国産品。 原材料の欄には、「宮城県産かき」しか書かれていません。加工食品で添加物が無添加というのはあまり例がなく、さらにお手頃価格。宮城県で水揚げされた牡蠣を、海の目の前の工場で作っているので、新鮮さが封じ込められています。搾ったレモン汁をかけたら、小粋なワインのおつまみがスピーディに出来上がります! また、自然で優しい味わいなので工夫しだいで、色々アレンジが出来ます。