2018年 6月

今月は山梨に出来た、注目の新ワイナリーのお話。

山梨県塩山駅から車で10分程の日川(ヒカワ)沿いにあるマグヴィス・ワイナリーに行ってきました。二階建ての近代的な建物に入ると、一階は今時のおしゃれなテイスティング・カウンターとワインショップがあり、その奥はガラス越しに発酵タンクが並ぶ醸造所が見えます。ここで「マグヴィス・ワイナリー」のロゴ入りTシャツを着た松坂社長さんから説明を伺いました。

このワイナリーの経営母体は塩山製作所という半導体の組み立てを行う会社。1953年からここ塩山で電気製品製造等を行う会社が、66年に半導体の組み立て事業を開始し、発展をしたそうです。このワイナリーの建物も、実は04年に建設した液晶用半導体生産の工場でした。

しかし5年後の09年には、台湾メーカーとの価格競争で液晶部門を閉鎖。より高度なスマートフォン用カメラのフィルター製造に移行しますが、アジア圏との価格競争でベトナムへ生産を移管し15年には国内生産を閉鎖。

社長さんからこんな壮絶な話を淡々と話された後、5年で破たんする仕事ではなくこの地で何十年も続けられる事業を模索。まずは社長さん自身が地元、山梨のワインが好きだった事と、祖父がここで葡萄農家だったこともあって、15年に半導体の会社がワイナリ―に着手したそうです。

半導体の設備で活かされたのが、エアーシャワー付きの防塵室と奥の瓶詰室。手術室か原発の技術者を思わせる、開口部が目の部分だけの作業着を着て、クリーンルームで瓶詰する事で異物混入を防止。搾汁時の酸化を防ぐため、半導体で使用した窒素と炭酸ガスを随所に使い、果汁の酸化を極力抑えています。もちろん各畑にはセンサーが設置され、気候データ等がオンラインで監視されています。

葡萄は地元産にこだわり、フランス系品種は無く、白が甲州種、赤はマスカット・ベーリーA種だけ。ワイナリーに隣接する畑は、横を流れる日川(ヒカワ)が運んだ砂と石が主体の痩せた土地で、当然水はけも良く葡萄にとっては最適の畑。良い葡萄が育つ場所だけに、半径500メートル程の周りにはグレイス・ワイン、メルシャン、シャトレーゼ・ワイナリー等5軒以上のワイナリーが軒を連ねています。

また、新たに購入した勝沼町上岩崎・引前(ヒキマ)畑は、中央高速の勝沼インターチェンジと繋がる国道東側の区画。畑の西側で10メートル程高い位置にある高架道路は西日を遮る役目を果たし、近隣の畑より夜間の温度が下がる事で寒暖差から葡萄の糖度が上がり、17年産のベーリーA種の糖度は23%になったそうです。

この話を聞いた私が思い出したのは、カリフォルニアでピノ・ノワール種の名手カレラ社のオーナー、ジャンセン氏が、仏で研修後にカリフォルニアで畑を探す際に、石灰質土壌の分布を調べるのに人工衛星からの写真を使って畑を探したという逸話です。異業種から農業へ参入したマグヴィス・ワイナリーの挑戦はまだ始まったばかり。また、ここのワインは3,000~5,000円と高価ですが、北海道の各ワイナリーと共に発展して行く姿を見てゆきたいと思いました。

最後に、6月9日(土)当社店舗で行う試飲会で、マグヴィス・ワイナリー数種を出品する予定です。高額の為に有料試飲が多くなりますが、山梨で始まった甲州種とベーリーA種の新しい挑戦をぜひ味わってみてください。

それでは今月のお薦めワインです。

北海道からはオサ・ワイナリーのtabi(タビ)17年。ワイナリーのある小樽はお寿司が美味しい事でも有名です。そのお寿司との相性を一番に考え、旅路葡萄の収穫時期をずらした4種のワインをブレンド。次の一口が美味しくなるようなワインに仕上げました。お寿司に合う事は間違いないのですが、以外にもガリにもよく合うワインです。お食事無しでワイン単体で飲まれる時は少し飲まれる温度を高めにしていただくと一層美味しくなると思います。

同じく地元から、千歳ワイナリーの北ワイン・ケルナー17年。1988年創業のワイナリーでは、余市町登地区・木村農園産の葡萄のみを使用しています。樹齢約30年のケルナー種の白は、心地良い爽やかな辛口で、後味にほんのりとした苦みが余韻に広がります。北海道の良質な白ワインを飲んでみたい方に、ぜひ飲んで頂きたい北海道を代表するワインです。

関東・栃木県からはココファーム・ワイナリーの農民ドライ17年。農民ドライは軽めでスッキリと飲める、手ごろな価格の白ワインを目指し、日本各地の葡萄を使って造られました。そして嬉しい事に、この17年産には余市の白葡萄が63%も使われています。爽やかな辛口タイプで、鶏肉や魚、チーズなどの軽めの料理と合わせやすいです。また、暑い夏の時期、1日の終わりや夕食に飲むと、涼しい気分にさせてくれます。お寿司や和食、お惣菜にも合う白ワインです。

仏ボルドー地方からは、レクスプレッション・ド・ポイヤック ポイヤック11年。超優良生産者から提供されたワインを瓶詰めしているというACポイヤックの赤。そのワインの出所のシャトーがどこなのか気になるところですが、インポーターは頑なに教えてくれません。気になってインターネットで調べてみると1級シャトーの名前が出てきますが、それが真実なのかも分かりません。しかし、美味しいことは事実で、この価格で力強さとエレガントさのあるポイヤックらしさが感じられます。

仏ブルゴーニュ地方からは、シャンソン社ブルゴーニュ・ピノ・ノワール15年。安定した造りで定評のあるシャンソンが造る旨安ピノ・ノワール。2015年は天候に恵まれたため、果実味に厚みがあり、酸味、タンニンとのバランスも秀逸で、自社畑の葡萄も一部使用されていることもあって、味わい深さもあります。ブルゴーニュの価格の高騰が続く中で、大変お買い得感のある1本です。

次もブルゴーニュで、ショーヴネ・ショパン家のコート・ド・ニュイ・ヴィラージュ14年。ユベール・ショーヴネ氏はニュイサンジョルジュ村の南にあるコンブランシアン村の生産者。しかしこの村のワインはコンブランシアン村の名を名乗ることができず、ラベル表記は「コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ」になってしまいます。知名度の低い村で代々続く生産者には、お値打ちなワインが多いですが、この赤も小粒なニュイサンジョルジュを思わせるタンニンと果実実が楽しめる良品です。

南仏からはヴィニュロン・エステザルク組合のキュヴェ・デ・ガレ16年。エステザルグ葡萄栽培者組合は、現在10人のメンバーで構成される小規模な組合です。最も良い葡萄約1/3をドメーヌ名で出荷、1/3は組合名で瓶詰めし、残りはネゴシアンに売ってしまいます。選別酵母や濾過、清澄などは使用せず、果実味と土壌の可能性を生かすように醸造しています。フレッシュでふくよかな果実味が楽しめる人気コスパワインです。

仏アルザス地方からは、今注目のチュスランが造るゲヴュルツトラミネール ボーレンベルグ12年。このワインは香りがとっても華やかで、蜂蜜、ライチ、ユリ、バラ等、次、次と香りが出て来て楽しませてくれます。ほんのりとした甘味が心地よくアペリティフ(食前酒)としても良いですし、ドライコルンにクリームチーズをトッピングしていただきますと格別の味わいです。

南仏からはドメーヌ・ド・ヴェディランのセリカ・ヴィオニエ16年。ヴィオニエ種を樽発酵、樽熟成したワインで、2千円以下で美味しいと思えるものはなかなか見つかりません。低収量による贅沢な造りをしており、花にナッツやバターの香り、アプリコットのふくよかで凝縮した果実味、洗練された味わいの中にはほろ苦さもあって、酸味、ミネラルと合わさることで広がりが生まれます。同じ

南仏から、マジャスのスリー・ツリーズ・ル・カイユでブラン14年。親日家のオーナーが、日本語で「森」と書かれた印象的なラベルのフランス・ワインです。有機栽培に取り組み自然酵母で発酵し、果実味を楽しんでもらうためにコンクリートタンクで発酵、熟成。有機栽培の葡萄から造られた滑らかで綺麗な味わいと、ミネラリーな風味がお料理を一層美味しくしてくれるワインです。自然な作りなのでほんの少し酸化熟成したニュアンスがありますが、これが果実味と酸とミネラルを調和させる黒子のように働き全体をまとめています。魚介とももちろん相性が良いですが、サラミ、生ハムと合わせてもお楽しみいただけると思います。

イタリアからはラッツィオ州ポッジョ・レ・ヴォルピ社のフラスカーティ・セッコ17年。約40ヘクタールの畑を有し多様なワインを生産する名門ワイナリーで、フラスカーティはローマ近郊の町フラスカーティ周辺で伝統的に造られる白ワイン。爽やかで軽快、飲み心地抜群のデイリーワインとしてローマっ子に親しまれてきました。魚介系はもちろんのことお料理を選ばず楽しめるワインです。

アブルッツオ州のカンティナ・トロ社のカジオーロ・モンテプルツィアーノ・ダブルッツオ12年。この会社は安価でも上級ワインの品質を持つ事で、世界中から注目を浴びているワイナリーです。このカジオーロは、メリハリのあるダイナミックな渋みとそれを包むまったりとした濃厚さが特徴。イタリアワインらしい飲みごたえのある1本です。

オーストリアからはロイマーのロゼ16年。葡萄はツヴァイゲルト種とピノ・ノワール種で、北海道でもこの二品種のブレンドで赤ワインが造られています。オーストリアでロゼに造るとどうなるのか、興味があり仕入れてみました。味わいは爽やか系ロゼワインの良さを思う存分発揮しています。ツヴァイゲルト種からは白コショウの様なスパイシーな香り、ピノ・ノワール種からはチェリーとホオズキの香りをもらい絶妙な香りのバランスで楽しませてくれます。

ドイツからはトーマス・バルテン社のドルンフェルダー・トロッケン16年。ドルンフェルダー種の畑は、標高250m、斜度35%の斜面にあり、西南西を向いています。葡萄の平均樹齢は15年。ドルンフェルダー種は樹勢が強い品種のため、収量制限をする必要があります。樽で2ヶ月熟成させたワインは、マイルドな味わいの軽やかでドライな赤ワインです。夏は少し冷やした方が美味しく飲めます。

こちらもドイツの赤で、フォン・ウィニング・ダインハード社のダイデスハイム村シュペートブルグンダー種13年。南部ファルツ地方の温暖な気候から生まれる果実味豊かなシュペートブルグンダー種(ピノ・ノワール)の赤。畑はビオディナミとサステーナブル農法を実践し、一部に天然酵母醗酵を行うなど人為的なものをできるだけ抑え、テロワールの表現を重視したワイン造りで、世界的に評価を高めています。希望小売価格2,400円が特別価格で限定入荷しました。

リキュール類ではイタリア・カルパノ社のビアンコ(白・甘口)。「ヴェルモットはドライじゃなきゃダメ」と、お考えの皆様に飲んでいただきたいスウィート・タイプのヴェルモットです。たっぷりのハーブとスパイスが甘味と渾然一体となり、旨みが広がっていきます。休日の昼間に炭酸で割ってカルパノ・スプリッツァーを一杯いただくと、幸せな午後になること間違いなしです。

食品ではアルテル・エコ社がスイスで作るオーガニック・チョコレートのノワール(黒)。カカオの含有量が高いチョコレートは苦味が強く、カカオは身体に良いからと無理して食べていた感ありましたが、このノワール・アブソリュ85%は苦味が柔らかく、甘み、酸味と調和してバランス良く美味しくいただけます。また、ここのノワール・オランジェは、有機のオレンジ・ピール(皮)が練りこまれ、オレンジの甘酸っぱさがチョコレートとマッチし、なんともあとをひく美味しさです。2種ともこのクオリティで、このお値段なら言うことなしです!

北欧ラトビアからはバンガ社のスモーク・オイル・サーディンで2種類。燻製している珍しいオイルサーディンで、鮮度が良いいわしを丁寧に加工しているので、臭みがなく、やさしい塩味、燻製香もやわらかく様々なお料理にアレンジ出来ます。そのままワインのおつまみとしていただくなら、軽い辛みがアクセントになっているチリ味がおススメです。

ナッツの専門店「豆豊」のメイプル・カシューナッツ。当店のナッツの中で一番人気のメイプル味のカシューナッツです。お酒のおつまみに、またお茶うけのおやつに男女問わずに支持されている美味しさです。

ここの新製品が、グリーンレーズンと、いちじくのプラリネ。イチジクとグリーンレーズン、さらにアーモンドとカシューナッツをプラリネ風に固めた、「おこし」のようなものです。ワインのおつまみとして合うので、゛雷おこし゜ではなく、゛ワインおこし゜と呼びたいです。