今月はワインのお話し。
酒組合の関係で11月、小樽にある北海道ワイン株式会社(おたるワイン)のワイナリー見学に酒小売店仲間10名で行ってきました。当社は多品種の北海道産ワインを扱っていますが、近年は家族経営の小規模ワイナリーが人気で、私も小さなワイナリーばかり訪問し、最大手の「おたるワイン」さんにはご無沙汰でした。場所はJRの南小樽駅から車で15分程、毛無(ケナシ)峠に向かって登って行くと山の中腹にワイナリーが見えてきます。ワイナリーの入り口は平屋で大きくは見えませんが、実は斜面に沿って下に建物が何棟も繋がっている為、建物に入ると醸造タンクの大きさと本数が尋常ではありません。
外国の葡萄を使わず、日本で栽培した葡萄を発酵させた「日本ワイン」の全国シェアで10%、北海道内の葡萄を発酵させたワインの約半分をここで造っています。私も何度かお会いした「おたるワイン」創業者の故島村さんは元々、小樽で紳装(シンソウ)という紳士服の会社を経営されていました。出身は山梨の葡萄農家だったそうですが、仕立てに使う生地の自動裁断機を見にドイツに行った際にドイツの気候が北海道に近く、たわわに実った葡萄を見てドイツの葡萄品種だったら涼しい北海道でも育つのではないかと思い、仕立ての仕事と共に葡萄栽培を始めたエネルギッシュな社長さんでした。
ただ実家の山梨と北海道の気候は全く違うので、2名の社員をドイツへ3年間留学させて北海道に適した葡萄栽培と醸造を学ばせ、ドイツの葡萄品種を北海道に送り栽培を始めたそうです。ワイナリーは小樽で創業し、葡萄は縁のあった浦臼町に自社畑を作りました。こうして畑と醸造所を分けた事が、後に余市という道内最大の果樹産地の葡萄も入手出来る事になります。余市は元々リンゴの産地でしたが、リンゴの価格が暴落した時期にサクランボや葡萄に転換する農家にドイツの葡萄品種栽培を勧める事で、浦臼の自社農園とは別の葡萄を得る事が出来ました。
現在、紳士服部門は廃業しましたが、1976年当時で売上が35億円もありオーダーメイド紳士服の全国大手だったそうです。その後、葡萄栽培、ワイナリー創業をして、国産葡萄から造られた「日本ワイン」の筆頭に立つ北海道ワイン株式会社(おたるワイン)。施設見学の後に沢山のワインを試飲しましたが、やはりこの規模で造るスパークリングワインは、品質と価格が他の追随を許さないレベルでした。小さなワイナリーだから出来る個性豊かなワインと、スケールメリットを必要とする安定した品質のワイン。酒小売店は両方の良さを理解し、様々なお客様にあったワインをお薦めしなければと感じました。
私が一押しのスパークリング・ワインは北海道ワイン トラディショナル・メソッド 北海道 Type(タイプ)M 3,344円(税込)です。日本ワインのリーディングカンパニー、北海道ワイン(株)が造る、ミドルレンジのスパークリングワイン。北海道で収穫したワイン専用品種ぶどうを、伝統的な瓶内二次発酵方式(トラディショナルメソッド)に基づいて醸造しました。白ぶどう品種を中心に醸造し、すっきりとした酸味が料理と合わせやすい辛口スパークリングです。「TypeM」はフランスのAOPムスー(Mousseux)をイメージし、ティラージュ(瓶詰め)後、デコルジュマン(滓抜き)まで9か月以上の熟成を行った、軽快なスパークリングワインです。一番搾り果汁(キュヴェ)のほか二番搾り果汁(タイユ)も使用し、バランスのよい味わいに仕上げました。なおベースワインはMLF(マロラクティック発酵)を行っています。ピノ・ブラン種、シャルドネ種、ツヴァイゲルト種等のブレンド。他の生産者がこの品質の泡を造ると2倍以上の価格になると思いますので、是非一度お薦めします。
