2022年 3月 店主の独り言

 今月は映画の話。

 アメリカの女性ソウル・シンガーの大御所、故アレサ・フランクリン。彼女が1972年に行ったコンサートの記録映画が、名曲「アメイジング・グレース」の名で公開されました。50年前、僕が中学、高校の時代はロックミュージックが全盛でしたが、高校の頃からR&B(リズム・アンド・ブルース、日本ではソウルミュージック)が少しずつ広まって来ました。当時の僕はソウルはあまり好きではありませんでしたが、私も30歳を過ぎてヴォーカルの良さに気づき今ではソウルも聞くようになりました。

 さてこれは、当時売れに売れていたR&Bのトップシンガーのアレサが、立派なコンサートホールではなく、ダウンタウンにある黒人の方々が集まるキリスト教の教会で行った礼拝のようなコンサートを撮影した記録映画。ストーリーもなく、聖歌隊の入場から始まる映像を見ていると、自分がこの会場にいるかのような気持ちになって来ます。牧師さんがピアノで伴奏をしながら、アレサ・フランクリンと、30名程のゴスペル・クワイア(聖歌隊)がゴスペルの讃美歌を歌い続けます。すると、ステージだけではなくこの教会に通っている150名ほどの信者も一体となって、天上から光と共に天使が舞い降りて来て、会場全体が何と言うか信じられない状況になって行くのです。

 音楽や宗教は人それぞれなので、全ての方がこの映画を見て感動するかは分かりませんが、50年前のこの教会に居た200名程の人々は、「この時、私は神を見た!」と言った事でしょう。今よりも明らかに人種差別があり、そんな中で教会に行き皆で讃美歌を捧げている間は辛い事を忘れ、神と共に天国にいる様な状態になれる。あり得ないことですが、その映像を見ていると私もその会場の椅子に座って、涙を流しながら参加している様な気分になりました。特にソウル系ミュージックがお好きな方は、ぜひ一度ご覧ください。ちなみに私はこの映画をレンタルDVDで観ました。