< 2024年 6月 店主の独り言 >

 先月は私が酒小売組合の理事長も兼任していることを書きました。

 お酒には酒税がかかり、酒の製造や小売等の免許も税務署が管理しています。今まで当社では依頼している会計事務所さんが税務署等に必要書類を出していたので、直接税務署の方にお会いする事は殆どありませんでした。しかし小売酒販組合の理事長になると、札幌中税務署の連絡協議会というメンバーになり、年2回の会議に参加する事となります。この会は税理士会、法人会、青色申告会、納税貯蓄組合といった、札幌でも名門の会社の代表の方々が参加されております。

 札幌中税務署の会議室で行われた税務連絡協議会が無事終わると、次は場所をススキノの和食店に移してきっちり会費制で親睦会が始まります。初参加の私はこういった会に不慣れでしたが、偶然、札幌中税務署の署長さんの傍に座りました。税務署で一番偉い方の実家は道内の地方都市にある酒小売店だと言います。昔、給料後の楽しみはお酒を飲む事しか無かった頃、実家の酒屋は景気も良かったけど、今の酒小売は何処でも大変ですよねと言われ、つい私もホロっときました。

 署長さんは役所勤めの為、転勤で全国各地をまわったそうで、私に根室にいた時の話をしてくれました。ここには「北の勝」の蔵元として知られる碓氷勝三郎(うすい かつさぶろう)商店があります。日本酒の蔵元は冬が製造の真っ盛りですが、役所は12月28日仕事納め、1月4日が仕事始め。単身赴任の方々は皆さん正月連休の前後に代休を取って、早めに家に帰省します。「北の勝」さんは正月ギリギリまで働き、年明けも直ぐに製造を始めるそうで、毎年、仕事納めと仕事始めはには税務署の幹部の方が不在であってもご挨拶に来るそうです。

 「北の勝」さんは税務署より酒の製造免許を頂き、今年も無事に仕事を終えられました。そして新年も仕事が始まりましたというご挨拶なのでしょう。税務署長の宮坂さんは根室勤務の時にこの「北の勝」さんの話を聞き、このご挨拶を直接お受けしたいと思い、代休を取らずに暦どおり出勤され、挨拶に来た当主の碓氷さんは驚かれたそうです。今まで税務署はただ税金を集める所とだと思っていましたが、こんな美談を聞くと、今年は沢山利益を出してお国の為に国庫に納めようと思いました。毎日正直に仕事をして、お客様、酒の生産者さん、卸さんにも喜んでいただき、最後は税務署さんにも喜んでいただける会社になりたいと心新たに思いました。