5月に得意先のレストラン「ジャルダン・ドゥ・ボヌール」さんから、南仏の有名レストラン「レ・ムスカルダン」のシェフ、ティエリー氏を招いての食事会の中でお客様にワインの話をして欲しいと依頼を受けました。
週末の営業はウェディングのみと言うこのレストランは、とにかく豪華で山の手界隈の奥様に人気の理由がわかります。私が会場に着くと、こちらの社長さんより黒服のほうが良いのではという助言があり、急きょ私は蝶ネクタイと黒服を着せてもらいました。
まずは昼の部が始まり、いよいよ自分の出番です。すると初めての環境で着慣れない服を着たせいか、マイクを持つ私の手はブルブルと震えだし、原稿を棒読みするのが精一杯でした。
そこで夜の部では早めに会場に入り、キッチン横の給仕控え室で原稿を何度も読み返し本番に備えました。この様な食事会となると通常のスタッフでは人手が足りないので、知り合いのお店に助っ人をたのむのが普通です。給仕控え室で見ていると、助っ人の方々は張り出されたメニューを何度も見て は、ここのお店の方にナイフやフォークのセッティング等を聞いています。
シェフが挨拶を終えて厨房(ちゅうぼう)に戻ってくると、いよいよ戦闘開始です。料理は各テーブルごとに作られ、テーブルごとに運んで行きます。給仕の方は料理が仕上るまでの間に「これは何のソースか?」「この付け合わせは?」と調理の方に質問をぶつけています。そしてシェフの「よ し!」の一言でトレーを持った給仕が、お客さんの待つホールへ飛びだして行くのです。
そして全てのテーブルに配り終えた頃、最初に出した皿が空となって戻ってきます。その下げてきた皿を洗い場に置く一瞬に、給仕の方はスマートに指を使ってソースの味見をしているのです。お客様からワインに関しての質問があると、すぐ私の所に来て意見を聞きホールに戻って行きます。
今回はレストランを裏側から見たことで、給仕とはお皿を右から左へ運ぶだけではなく、シェフとお客様の重要なパイプであると言う意味が初めてわかりました。
厨房の横では見習いなのでしょうか、若い男性が黙々と食器を洗い続け、若い女性がグラスやシルバー類を磨き終えると、ナプキンをきれいにたたんでいました。彼らも近い将来、調理かホールの給仕に立つのでしょう。思わず「がんばれ!」と声を掛けたくなりました。
- 2005年 5月
- 2005年 7月