2009年 7月

  休みの前の晩は、缶ビール片手に家で映画を見ることが多い私。このところ新着で借りたい物が無く、家にあったお気に入りの2本伊丹監督の「スーパーの女」(1996年)と、宮崎監督の「ルパン三世 カリオストロの城」(1979年)を2週に分けて見ました。

 「スーパーの女」を見た訳は、前の週に話題となったモックンの「おくりびと」を見て、題材は全く別ですが綿密な下調べと話のもって行き方が伊丹監督のスタイルを思い出したからです。私が思うに伊丹さんは題材を見つけると猛烈に調査をし、その題材で起こりうる起承転結の話を映画にしたのでしょう。彼の初期の映画「タンポポ」で、銀座のフランス料理店の残飯をあさるホームレスが、空瓶に僅かに残っていたオフ・ヴィンテージのシャトー・ピション・ラランドをひとなめしたシーンは、今も鮮明に思い出します。
  私はここでロマネコンティでもシャトー・ラトゥールでもなく、ピション・ラランドでしかもオフ・ヴィンテージを選んだ事に伊丹監督のセンスの良さを感じました。 それに比べ宮崎監督は、まず自分の思い描く時代や場所の世界観がしっかりあり、その中に今回の主人公が解き放されて話が始まると言ったところでしょうか。ルパンが宮崎ワールドの中で飲むワインはボルドーの有名シャトーではなく、昔のワラに包まれたキャンティの徳用瓶の様な安酒を飲んでいました。

 二つの日本映画を見て随分違うなぁと思っていたら、よく見ている糸井重里さんのホームページでちょうど伊丹十三特集のコーナーが始まり、当時伊丹さんは宮崎アニメを観てずーっと悔しがっていたと書いてありました。そして仲のいい友人に「オレ、宮崎アニメはもう洋画だと思うことにした」とまで言ったそうです。私はこの二つの映画が大好きで、特に「スーパーの女」に出てくるおにぎりメーカーの若社長さんが改心するシーンでは、何度観ても目頭が熱くなります。そして見終わった後は、もっとお客様に喜ばれる仕事をしなければと思うのです。ちょっと古い映画ですが、特に食品業界関係の方でなくても借りて見る価値があると私は思います。

 さて、今月のおすすめワインです。
 まずは地元三笠・山崎ワイナリーのケルナー種、バッカス種、ツバイゲルトレーベ種、メルロ種。道内では新ワイナリーの設立が今ブームになっていますが、今年の山崎の各ワインは一回り大きくなり一人で横綱相撲を取っている感じがしました。追われる立場となった山崎ワイナリーですが、私には皆の挑戦を受けて立つ姿に感じられました。

 ブルゴーニュからはブリュノー・クレール ジュヴレ・シャンベルタン1級フォントニ03年。立派なお値段ですが価格以上のスケール感と力強さに、熟成感が混じり始めて来た素晴らしいワインです。

 南仏からはサンタデュック ジゴンダス02年と、ラ・セール ピエール・ルヴェ02年。サンタデュックは今が熟成のピークで、少し枯れ始めた果実味と熟成旨味が楽しめます。一方ラ・セールはまだ若さがあり、熟成感と力強さの両方が味わえ、更なる熟成も可能なポテンシャルを持っています。

 イタリアからはフォンタナフレッダ バルベラ・ダルバ パパゲーナ 04年。凝縮した果実味と樽熟成による複雑さが楽しめる風味豊かな赤です。

 安旨で熟成したワインは、スペインのコンデサ・デ・レガンサ クリアンサ03年と、チリのボタルクラ セレクション カルムネール05年。共に豊かな果実味と熟成感が楽しめてこの価格は絶対お得です。