毎年2月下旬に余市・公民館で行われる「余市のワインを楽しむ会」に今年も行って来ました。
昨年の13年は、楽しむ会の前にワイン・セミナーが企画され、
日本のワインに詳しい石井もと子さんと、鹿取みゆきさんが講師を務めました。
鹿取さんは「農業の六次産業化の難しさ」を話され、
石井さんは「ここ20年でピノ・ノワール種の名産地となって来た米オレゴン州と、
余市が名産地となっていくための道」について話されました。
石井さんは、1社が美味しい物を作るのではなく、
産地として地元の生産者が力をあわせて良質な物を作ることと、 広報活動も必要という内容。
その具体例としてオレゴンで開催されている「オレゴン・ピノ・キャンプ」や、
「インターナショナル・ピノ・ノワール・セレブレーション」の話をされました。
このピノ・キャンプや、セレブレーションは、地元のワイナリーが皆で協力して開催するイベント。
参加者は参加費を払って現地に集まり、数日間かけてオレゴンのピノの魅力を知っていただく勉強会だそうです。
石井さんはこの企画に数回参加され、
その度に日本のピノ・ノワール・ワインを持参して、皆に試飲をしてもらいディスカッションしたそうです。
しかし、現地での評価は「日本でもピノを造っているの?」と言われたぐらいだったそうです。
それでも、めげずに2012年も日本のピノを持参し参加した所、 その年のゲスト生産者として招かれていた、
カリフォルニアでピノの第一人者であるオー・ボン・クリマのオーナー、
ジム・クレンデネン氏が、褒めてくれたと嬉しそうに話していました。
その時、余市公民館のスクリーンには、プロレスラーの様な (失礼!) ジムさんが大きく写っており、
その彼が持っていたのは、なんと、三笠の「山崎ワイナリー」ピノ・ノワールでした。
ただ、会場の場所も、講義の内容も、余市だったので、
私は心の中で「やったー、三笠の山崎さん、これは本当に凄い事だよ!」と
大騒ぎしたい気持ちを何とか抑えていました。
そして今年、14年2月1日オー・ボン・クリマのオーナー、ジムさんが、
札幌に来てセミナーを開催すると案内が来ました。
すぐ輸入業者さんに当社分と、山崎ワイナリーさん分の申し込みをして、昨年の石井もと子さんの話をしました。
そして、札幌に来た時に三笠の山崎ワイナリーに寄っては頂けないかと話をしました。
担当者の方は、今回は日程がタイトで三笠に行くことは出来ないが、
セミナーの前後でジムさんと個別に話をするぐらいは出来ると言ってくれました。
そして当日、セミナーの後でワインショップフジヰにジムさんと、
山崎ワイナリーの山崎亮一さんと、太地さんの兄弟が来て、
山崎ワイナリーを飲みながら、一時を過ごされました。
オー・ボン・クリマのあるサンタ・バーバラ地区は、カリフォルニアの中では涼しい所ですが、
北海道は涼しいではなく「寒い所」。
ジムさんのワインは完熟した果実味がたっぷりですが、
「山崎ワインは果実味と共に豊かな酸味が特徴です」と弟の山崎太地さんが話すと、
同行した通訳の女性は酸味の「アッシディティ」に、暴力的を意味する「バイオレント」を付けてジムさんに話されました。
この「バイオレント」という言葉を聞いて、北海道の生産者さん達は
厳しい自然の中で必死にワインを造っているのが、改めて分かります。
普通のワイン産地ですと3月は木が活動を始める時期ですが、北海道の葡萄畑はまだ雪の下。
雪が解ける4月までの1カ月の遅れが、そのまま開花の遅れに繋がり、
最終的には収穫時の熟度に影響します。
寒冷地での葡萄作りの特徴である「バイオレント」な酸味をいつか克服する日を目指して、
地元の生産者さんたちは頑張っています。
今月のお薦めワインです。
北海道からは、ふらのワインのツバイゲルトレーベ種。
この赤は5年以上熟成を経て発売される、ここの看板商品。
しかも近年では最高の作柄だった08年産。この年のワインがこの価格で入手出来るだけでも価値があります。
藤野ワイナリーのスパークリング・ナイアガラ13年。
暑すぎた12年より、平均的な夏だった13年は、完熟感と酸味が両立した、メリハリのある味わいが楽しめます。
栃木県のココファームの白、農民ドライ13年(3月下旬入荷予定)。
醸造地は栃木ですが、原料葡萄の約半分が北海道余市産。
フレッシュな果実感とバランスの取れた味わいは、
前醸造長だったブルース・ガットラブ氏の伝統をしっかり引き継いでいます。
仏ボルドーからは、ミラード社のポイヤック・セレクション94年。
この中身はポイヤック村の某有名シャトーの桶売り品で、20年間熟成させて出荷した秘蔵の品。
当然、果実味は枯れ始めていますが、豊かな熟成香と上品な味わいは、
これはひょっとしてスーパーセカンド以上か?と勘繰りたくなる程の出来。
古酒好きでしたら、2倍以上の価値がある事が分かって頂けるでしょう。
一方シャトー・モンペラ10年は皆様に喜ばれる赤。
天候に恵まれたこの年は、モンペラにとっても大成功でした。
仏アシェット誌でも最高の3★評価された10年産は、今飲むと完熟した果実味の豊かさで楽しめますが、
12本ご購入いただき数年後から毎年1本ずつ飲まれると、熟成による味わいの変化が楽しめる事でしょう。
ブルゴーニュからはエルヴェ・シャルロパンが造るフィサン村11年。
ブルゴーニュ・ピノで、村名が付いて、瑞々しい果実味と木樽の風味が楽しめて、この価格でしたら大満足。
同価格帯のパスカル・ラショーのブルゴーニュ赤ピノ・ファン11年。
ヴォーヌ・ロマネ村の名門が造るブルゴーニュ規格の赤。
こちらは村名が付きませんが、 ピノの良さが過不足なく楽しめる、味わいの基準となるような赤です。
ロワール地区の白ではサンセール村のアルフォンス・メロが造る上級品が特別価格で入荷しました。
このドモワゼルは樹齢52年の古木葡萄を木樽を使って醸造し 、
旨味成分の多いオリと共に熟成させています。
爽やかさだけではなく、複雑さと旨味を合わせ持った上級品のソーヴィニヨン・ブラン種をこの機会にお試しください。
南仏からラ・パッションのグルナッシュで、ヴィエイユ・ヴィーニュ(古木)08年。
樹齢80年以上の葡萄からのワインは、豊かなコクとスパイス感が混じり、これからが飲み頃の赤。
煮込み料理と共に味わいたくなるような骨太の赤です。
イタリアからは今月の旨安大賞の2本、トレゼンダのカンノナウ種の赤と、ヴェルメンティーノ種の白。
白は果実味たっぷりの現代的なスタイル。
赤は大樽熟成でしょうか?タンニンが果実味に溶け込み、少しこなれた味わい。
多分選別された優良な葡萄だけで造ったのでしょう、赤、白共に澄んだ果実味が特徴です。
オーストラリアからは久々にダイナマイトのようなパンチのある赤、
ダーレンベルグ社のカベルネ・ソーヴィニヨン種でハイ・トレリス10年。
グラスの向こうが透けない真っ黒の赤で、インクとドライフルーツの香り。
凝縮した果実味がシロップの様に広がり、後からタンニンとアルコール感が引き締めます。
カベルネほどの濃度はありませんが、シラーズも凝縮感がありながらアフターに甘さが残らず、北ローヌを思わせます。
ブルガリアからはカストラ・ルブラ08年。
温暖なブルガリアに仏ボルドー系品種が適合し、醸造は仏で最高の醸造家ミッシェル・ロラン氏を起用。
凝縮した果実味とタンニンを、スモーク香が包み込んだ姿は、ボルドーでも格付け級の風格を感じさせます。
食品は共にスペイン産で、品切れていた人気の品が再入荷いたしました。
干しイチジクは枝からではなく、完熟して自然に落ちた実を乾燥させた逸品。
スペイン最高のデザートワイン、マラガ地区産マスカット種の葡萄を使った貴重なレーズン。
このレーズンは、なんと種入りタイプ。
急斜面の畑で完熟を待って収穫し、天日乾燥させた葡萄は種まで熟しており、
レーズンをかじって頂くと種が香ばしくナッツの様です。
この種ありレーズン、ちょっと癖になる味わいです。