< 2023年12月 店主の独り言 >

 今月は今話題の「ゴジラ」のお話し。

 私は1959年生まれ。最初のゴジラの時は生まれていませんが、テレビのウルトラQ、ウルトラマンといった怪獣物は再放送ではなくリアルタイムで見ていました。子供だった僕の知っているゴジラは宇宙から来た怪獣をやっつけ地球を守る味方という位置づけでしたが、僕も知恵が付いてくるとゴジラが「寅さん映画」のシリーズのように感じられて見るのを止めてしまいました。

 その後、アメリカの「スターウォーズ」や「未知との遭遇」を見てからすっかり日本映画は見なくなりましたが、1995年、新シリーズのガメラ1を友人と一緒に観て、子供だましではなくリアリティのある怪獣映画の出来に驚きました。その新ガメラ1、2、3、は全て良く出来た映画でしたが、特に「2」は札幌が舞台。「水曜どうでしょう」の鈴井さん、大泉さんがちらっと出ており、2023年11月末にススキノ交差点にオープンした「ココノ ススキノ」の場所に元あったデパート「ヨークマツザカヤ」の建物に怪獣が巣を作るという設定で、札幌の地下鉄や建物が沢山出て来ます。

 ストーリーや映像がしっかり作られている新ガメラの後に驚いたのが、2016年の「シンゴジラ」でした。今、ゴジラが出現したら日本の社会は対応に追われて後手後手になる。まさに東日本大震災の状況をゴジラに置き換えたような内容は、ガメラを超えるメッセージ性のある内容でした。そのゴジラにとって金字塔とも言える出来の「シン」の後に、満を持して製作された2023年11月公開の「ゴジラ-1(マイナス・ワン)」。一応は家内に一緒に観に行くかい?と聞きましたが、当然断られて私は友人と共に観に行きました。そして「-1」の出来も素晴らしかった。

 「シン」と、「-1」は監督が違うので、スタイルはかなり異なります。僕の印象では、怪獣映画のジャンルでは「シン」が今もトップだと思います。でも、怪獣が出ている娯楽大作映画としての出来は「-1」が勝っていました。「シン」は現代の行政や政治家に対する疑念が根本にあり、その無能さをゴジラがあぶり出し、「-1」は登場する一人、一人、普通の人達が、与えられた場所で力を出し合い、協力しながらあのゴジラに向かって行く。怪獣映画は誰が見ても感動するとは言いませんが、僕は気合の入った怪獣映画はやっぱり見たくなってしまいます。

< 2023年11月 店主の独り言 >

 10月上旬、高校時代の仲間が集まり、私のプランで温泉旅行に行って来ました。

 参加者は九州、神奈川、東京、旭川と、札幌が私たち夫婦。午後に札幌で集合して、夕食は月寒の「じんぎすかん俱楽部」さんでジンギスカン。翌日は朝8時集合、車2台で帯広に向かい昼食は帯広の名店「ぱんちょう」さんで豚丼。食後に六花亭に寄ってから今夜の宿、糠平温泉・中村屋さんに向かいます。でも、寄り道も楽しいので秘湯で有名な「幌加(ホロカ)温泉・湯元 鹿の谷(カノヤ)」さんに寄ってから糠平に向かいました。ただ、この鹿の谷は内湯から混浴なので、お連れの奥様方には事前にバスタオルを持参していただき、3種の源泉が楽しめる内湯と露天風呂を堪能しました。

 皆さんご夫婦で参加されたので始めはちょっと緊張しましたが、湯舟から5メートル程下に清流が流れている露天風呂に入り、目の前の木々が少し紅葉が始まっているのを見ていると、恥ずかしさよりもこの大自然の中での醍醐味に圧倒されてしまったようです。そして今夜の宿、中村屋に到着。この宿の部屋はそれぞれ趣が違うので、皆の部屋を訪問してからこちらのお風呂にもゆっくり入ります。その後は待ちに待った夕食、山の中なので無理して海の物を出さずに地元の山菜や野菜、川魚、鹿肉などの心のこもった料理が振舞われ、皆さん大満足。食事の後は一番広い部屋に皆が集まり、ワイワイ話をしてからもう一回お風呂へ。

 翌日も起きてお風呂に入ってから朝食。もう温泉づくしで毛穴の中までツルツルになった感じで旭川に向かいます。ここまでの行程は私のプランでしたが、この後は旭川メンバーによる旅プランになります。旭川に向かう途中で大箱、層雲峡を見て、上川町で上川大雪酒造の売店に寄ってお酒や酒粕を買い、最後の目的地は旭山動物園。今回のメンバーは皆65歳前後ですが、年寄りになってもあざらし館、ホッキョクグマ館、ペンギン館ではガラス越しの動物をくぎ付けになって見ていました。その後のランチは「エスペリオ」さんでおこっぺソフトクリームとハンバーグをいただき、最後は三浦綾子文学館を見学して解散しました。

 怒涛の様な旅行でしたが、同じ年代の夫婦と共に3日間過ごして一番思ったのは、当たり前ですが皆さん結婚前は別々の人間だったんだなぁと感じました。それぞれ縁があって結婚をして、子どもが生まれ、孫まで生まれて幸せな家族を持つ仲の良いご夫婦なのですが、旦那さんも奥さんも自分の趣味や仕事や生きがいを持って今も積極的に生きていました。夫婦がどちらかに頼りっきりではなく、夫婦の生活と自分自身の生活、両方があってそれをお互いが認め合っているからうまくやって行けるのでしょう。僕だけ結婚が遅く孫はまだいませんが、将来は他の先輩夫婦のように二人の生活と、自分自身の生活の両方を生かして行けたらいいなと思いました。

<2023年10月 店主の独り言 >

 今月は久しぶりにオーディオのお話し。

 店舗の音響は札幌ラヴワークス社のスピーカーを始めとして、毎日快適な音を提供してくれています。ただ今回の話は、当社の2階奥の事務所にある簡単なオーディオセット。20年以上前に中古で買ったCDプレイヤーとアンプに、スピーカーは25年位前に自宅用で買ったビクター・ミニコンポ(確かセットで5~6万円)の小っちゃなFS-10というスピーカーをつなげています。このスピーカー本体の直径は7センチ程、スピーカーが取り付けてある箱の寸法も正面が12センチ×15センチと、昔のラジカセに付いているような代物。これが意外なほど良い音がして、捨てる事が出来ませんでした。ただセットのCDプレーヤー本体は何度も修理しましたが、今は残っていません。

 オーディオに興味がある方でしたら、「スピーカー ビクター FS-10」で検索されると、このおもちゃの様なスピーカーが今でも売り買いがされているようです。こうして、このスピーカーは捨てずに時々鳴らしていました。さて、当社店長の稲見が最近、中古オーディオに凝っていて、更にスピーカーケーブルで音が変わると言っていました。最近の私はそれほどオーディオには気合は入らずにただ音を鳴らすという感じでしたが、店長が家から残っていたスピーカーケーブルを持って来て2階のセットにつなげてくれました。このケーブルがドイツの「インアクースティック」社の物で、音を聞いて驚きました。

 音がクリアになり、引き締まって聞こえます。多分SN比が改善されたのでしょう、この小さなスピーカーでもヴォーカルやメインの音に隠れていたパーカッション等の音がはっきり聞こえるようになりました。こうなると私も興味が出て来て、家に置いてある30年前のミニスピーカーJBL社「コントロール1」を持って来て、鳴らしてみようかなぁと思っています。真のオーディオファンは、38センチ径のような大型ウーファーで重厚な音を楽しむのでしょうが、私は安くても良い音が出る小さなスピーカーが好きですし、車も大きなものはあまり好きではないです。でも最終的に私が思うのは、どんな道具でも愛情を持って使ってあげると、能力以上の仕事をしてくれるような気がしています。

< 2023年9月 店主の独り言 >

 コロナも落ち着き、8月、東京の家内の実家に帰省して来ました。

 ついでに温泉好きな家内が探した山梨の増富温泉・津金楼さんにも行って来ました。茶系の粘土色した温泉の湯舟は2つあり、源泉そのままで約30度のぬるいお湯と、加温した40度程のお湯。まず温かいお湯で体を温めてから冷泉に10分程入っていると、冷たさに体も慣れてきます。体が冷えて来ると再び40度に入って体を温め、また冷泉につかるのを3度程繰り返すと、茶色で塩気と炭酸混じりの成分とラドンが体に吸収されているように感じられます。

 湯治の後は東京に戻り、家内と代々木の明治神宮へ。繁華街JR原宿駅の裏側に位置する神宮の広さは驚きの73ヘクタールで、広いと思っていた北海道神宮18ヘクタールの約4倍。広大な森の中心に本殿があり、他に様々な施設が神宮内に点在しています。丁度お盆の時期でしたが、参拝者の6割以上が欧米、アジア圏からの海外の方々でした。この中を3時間程かけてゆっくりと散策し、楽しみな夕食の為にお腹を空かせます。

 今回の旅行、家内の希望は増富温泉で、私の希望は銀座のレストラン・マルディグラでの食事でした。この店のオーナーシェフ和知徹(ワチ・トオル)さんは「肉の巨匠」と呼ばれ、塊のお肉を絶妙の焼き方で料理し、多くの場合、塩・コショーだけのシンプルな味付けで提供しています。和知シェフの料理本を見ていると、可愛いキューピー人形の様なシェフの笑顔を見ながら、ソースに頼らない大胆な料理を食べたくなり、その夢がやっと叶いました。

 まず店内に入って意外だったのが、肉料理で知られるお店なので、体育会系のゴツイ男子が多いと思いきや、センスもスタイルも良い今どきの若い女性同士のお客様が半分以上でした。彼女たちはそれぞれステーキを頼み、取り分けもせず楽しそうに料理を食べています。私たち夫婦も負けてはいられません。私は牛赤身肉のイパネマステーキ(5500円)、家内は鴨のステーキ(3500円)を頼みました。料理は表面が軽く焦げて香ばしく、厚みのあるお肉をナイフで切って食べると、柔らかいだけではなく少し歯応えのあるお肉は噛む度に肉の旨味が堪能できます。そして頼んだワインは当社でも扱いのある、フランス・シュドウエスト地区マディラン村のシャトー・モンテュス赤2017年。ワインはタナ種主体の力強く複雑な味わいと肉の旨味が相まって、素晴らしいひと時を楽しむ事が出来ました。

 マルディグラは銀座のレストランですから安いお店ではありませんが、私にとっては憧れのシェフの美味しいお肉料理が食べられて大満足でした。さてコスパを重視する私なので、もう1軒は安くて美味しいお店を紹介します。場所は新宿駅ビルのルミネ・エスト地下1階のビア&カフェ・ベルク。JR改札口の横にあるお店は立ち食いソバ屋さん程の広さで、朝の7時から23時まで営業しています。ここの美味しいホットドックと、ビールのセットが1000円程で朝から晩まで楽しめます。毎日1500人が来店する大繁盛店で椅子席が空いていることはほぼ無く、多くの場合、決して広くはない立ち飲みカウンターでの食事になりますが、女性も立って食べているのを見ると、大都会・東京のダイナミックさを感じる事が出来る事でしょう。マックの様なチェーン店ではなく、個人店で超忙しいお店ですから当然セルフサービスで、注文の仕方等に独自のルールがあります。初めての方はまず、店の外にあるメニューで頼むものを決めてから、注文する列に並び、前の人の頼み方をよく見ていないと戸惑ってしまうので注意が必要です。ただここでスマートに頼めて、5分ほどで食べ終え、自分で食器を下げることが出来ると、勝手な思いですが自分も東京人の仲間入りが出来たと少し嬉しくなります。今回の2軒は共に個性的で、万人が気に入る店では無いのかもしれませんが、僕にはお気に入りのお店です。

< 2023年 8月 店主の独り言 >

 7月、私は生まれて初めてサーカスを見に行きました。

 家内は小さな頃、おじいちゃんやお父さんに連れられて何度かサーカスを見に行ったそうです。子供の頃だけど面白かったから、一緒に行かない?と言われた時は正直、驚きました。僕は実物は見たことは無いけど、ゾウさんや空中ブランコでしょう。それって子供向けじゃないの?と言いましたが、僕には次の休みの代替案が出せなかった為、サーカスに決定です。

 休日の朝10時の開演に合わせて10分ほど前に到着。すると、僕らとは逆にテントから戻ってくる人が何組もいます。その後、切符売り場に行って分かったのですが、満員で自由席は完売して割高な指定席しか残っていませんでした。折角ここまで来たのだからと、入場料の他に2000円の指定席を2枚購入して中に入りました。

 途中休憩20分を含んだ2時間10分のショーは予想を遥かに超えた出来で、あっという間に終わってしまう程に楽しめました。ステージの上は動物だと仔馬さん、ゾウさん、ライオンさん、人間は綱渡り、曲芸、手品、オートバイショー、空中ブランコが次々と行われます。しかも、本物の動物や人間が5~10メートル先で緊張しながら曲芸をしていると、こちらまでそのスリルが伝わります。綱渡りの綱はしなり、綱の上にいる人間も時々ぐらつくと、進むのを止めて体を立て直し、また一歩、また一歩と歩み始めると、あたかも自分が綱の上を歩いているような気分になります。

 この臨場感に大人も子供も虜になってしまうのでしょう。さて、ショーが終わり帰る際に座席を見ると、指定席のシートは一席ずつクッションと浅い背もたれが付いていますが、自由席は幅15センチ程の長い板の上に薄いカバーが掛けられた座席でした。そして自由席の方で何人かは座布団を持参されている人がいらっしゃいました。指定席のシートは見た目以上に快適でお勧めしますが、子供さんが何人もいらっしゃるご家庭では、座布団を持参した方が快適にショーを楽しむことが出来るでしょう。そして、この木下サーカスは10月まで公演を行っています。私の様にまだ見たことが無い方は、一度行ってみる事をお薦めします。それと、日、祝日は込み合うので、1時間以上前から並ばないと満員の可能性がございます。最後にワインショップフジヰに割引券がございますので、気になる方はどうぞお持ちください。

< 2023年7月 店主の独り言 >

 先月は伊達で始まった、葡萄畑のお話。

 そして今月は空知地区のあるワイナリーに用があり、近隣のワイナリーも一緒に当社の花かつおを手土産に持って回って来ました。札幌から岩見沢で高速を降りて234号線を南に走り、街道を左に曲がると「中澤ヴィンヤード」さん。街道を更に進むと「近藤ヴィンヤード」さん。次は西に向かって30号線を超えて登って行くと、栃木のココファームが始めた「こことあるヴィンヤード」さんの畑が広がり、さらに上ると「わいん畑うらもと」さん。30号に出てタイヤマン人形を左に曲がると「10R(トアール)ワイナリー」さんと「イレンカ・ヴィンヤード」さん。

 更に30号を進むとランチに最適なブッフェ・レストラン「大地のテラス」をすぎて、30号は交差点を右に曲がりそのまま北東へ進むと左に「宝水ワイナリー」さん。更に30号を進み美唄三笠線を右に曲がって行くと達布山に向かって道は登りになり、達布を左に曲がると濱田さんと宮本さんの「ドメーヌ・タプコリーヌ」さんと、その先の右には「山﨑ワイナリー」さん。戻って真っすぐ進むと左手に山﨑さんの畑があり、その先に「タキザワ・ワイナリー」さんと、近藤さんの「タプコプ・ヴィンヤード」さんがあります。この30号線は空知のグランクリュ街道とも言えそうな道。

 伺ったのは5月の末で、各ワイナリーさんは春と共に伸びて来た草刈りの真っ最中でした。この時期の草刈り、畑の掘り起こしと言えば話題の中心は「近藤ヴィンヤード」。ここでは2019年から厚真町の馬搬(バハン)林業家と協力して、馬耕(バコウ・馬が農具を引っ張って、畑の土を掘り起こす作業)を始めています。でも同じ畑の葡萄で、トラクターが耕(タガヤ)した葡萄と、馬耕栽培による葡萄でワインを造り、両者の味わいが明確に違うとは思えません。しかし近藤さんは「葡萄にとって、健康で、快適な環境で育てられたものであるかどうか」を考え、そのために世話をする人間が、少しでも葡萄が快適に育つ様に手段や方法を考え続けているのです。

 近藤さんによると、馬耕により重たいトラクターのタイヤで踏み固められた畑は馬の足跡だけになり、土壌への踏圧負担は減って地中に適度な空気の供給が増え微生物が活発になる事で徐々に土が柔らかくなって来たそうです。しかし効率は下がるわけで、トラクターだと2時間で終わる作業が、馬ですと2頭を交代しながら行って丸一日掛かるそうです。

 その後、10Rさんの畑に伺うと奥さんが居ません。でもお隣のイレンカさんの前に「マキタ電動工具」と書かれた大きなワゴン車が止まっているので行ってみると、畑の中で2軒の女性にマキタの営業の方が電動草刈り機の実演を行っています。バッテリーとモータが大きな強力タイプと、軽くて取り回しが楽な軽量タイプ、更にカッターの刃が金属製と樹脂製とを、二人は交互に試していました。商談の途中で私が別のワイナリーさんの話をしたら、マキタの方は私もワイナリーの人だと思ったらしく名刺をいただきました。私はワイナリーさんから仕入れて販売している酒小売店ですと話したら、お詳しいので勘違いしましたと笑っていました。

 そして、この日の最後に濱田ヴィンヤードに伺うと、お父さんと息子さんが手に鎌を持って草刈りをしていました。先ほどの電動農具の話をしましたら、農作業は場所や時期によって、トラクターや、電動器具、鎌等を使い分けて行っていると話されていました。北海道には現在、沢山のワイナリーがあり、各ワイナリーではそれぞれ理想のワインを目指して、様々な手段や方法で日々作業をしている事が改めて分かった一日でした。

< 2023年 6月 店主の独り言 >

5月に家内と白老・虎杖浜温泉に行って来ました。

泊まった「ホテルいずみ」は食事も良かったですが、1番は少しトロミのある温泉で肌がツルツルになる素晴らしいお湯。翌朝、せっかくここまで来たのだから、近所にどこか面白そうな所はないかと検索していて思い出したのが近隣のワイン産地。確かサントリーさんが伊達でワイン用葡萄の栽培を始めた事を思い出して検索してみましたが、サントリーのホームページからは畑の住所が見つかりません。色々詮索していると、「伊達市(ダテシ)乾町(イヌイチョウ)」が出て来たので、ダメ元でもと思いながら車を走らせました。乾町に着き辺りを走っていると、針金に固定された葡萄の木が並ぶ畑を見つけ、農作業をしている方に聞いてみると正に「ビンゴ!」

サントリーが1983年に購入した、ボルドーの名門シャトー・ラグランジュ。スペイン系の前オーナーが世界恐慌や戦争で経済的に没落し、荒廃していたシャトーでしたが、サントリーが引き継いで購入額の数倍ものお金をかけて、畑、醸造設備、シャトーの建物等を整備した事で評価をどんどん上げ、今ではグラン・ヴァン(偉大なワイン)としての評価を受けています。現地で日本人のトップとして現場を指揮したのが、初代は鈴木健二氏、二代目は椎名敬一氏で、お二人とも数年ごとに札幌でセミナーを開催して本場のワイン造りの話を聞かせていただきました。

2020年からラグランジュでその任を引き継いだのが桜井楽生(サクライ・ラクサ、※逆に読んでも同じ名前)氏。今回アポなしで伊達の畑に伺い、声を掛けた方がその桜井さんご本人でした!なんでもシャトー・ラグランジュ2022年産のプリムール(新酒)発表会を現地のボルドーで終えて、少し休暇が取れたので日本に帰り、葡萄の様子を見に伊達に来て農作業をしていたところだと言うのです。桜井氏は2009年から山梨のサントリー登美の丘ワイナリーで勤務をされていたそうですが、2014年頃から山梨以外の日本でのワイナリーの可能性を感じて日本国内各地のデータを集め、6年かけて選んだ地が北海道伊達市でした。

道内各地のワインを販売している私は、果樹産地としてアドバンテージを持つ余市、あるいは十勝、岩見沢、函館等ではなく何故、伊達なのかを真っ先に伺いました。すると赤ワイン、白ワインを造るなら余市か岩見沢を選んだかもしれません。でもあの積雪量から葡萄の木を収穫後に地面に寝かせて雪の下で越冬させ、春には木を起して針金に固定するという作業が葡萄にとって良いとは思えなかった。一方で伊達は、雪は少ないが積算温度はどこよりも低い。そのため、糖度が十分上がらず、毎年安定して良い赤ワインや白ワインがつくれるとは思わない。

そこで視点を変えて、スパークリング・ワイン(以後は泡と表記)ではどうか。泡はアルコール発酵の後、泡を得る為に二回目の発酵も行います。収穫時の糖度が高いと、二回目の発酵後にアルコール度数が高くなりすぎるので、泡用の葡萄は糖度が上がりすぎる前に収穫します。例えば、伊達であれば、赤、白ワインをつくろうとすれば、糖度21~22%を目指して収穫を10月中下旬まで無理して待たなければなりません。しかし、泡用の葡萄は糖度が20%以下で収穫する為、2週間以上早い10月上旬、葡萄の品質にとって最適なタイミングで収穫することになります。

昔から醸造学の世界では、「秋の終わり熟した葡萄」からは、葡萄由来のフレーバーが多く生まれることが知られています。本場シャンパーニュでは、9月前半から収穫を始めます。すなわち、ブドウ由来の味わいに頼りすぎないワインづくりと言えます。早めに収穫した葡萄はフレーバーは少ないかもしれませんが、果汁の良い部分だけを惜しみなく使うことでエレガントなワインをつくり、そこへリザーブワインと呼ばれる何年も熟成させた秘蔵ワインを高割合で加えることで、味わいに厚みと複雑さがもたらされます。長い歴史をもつシャンパーニュだからこそできる素晴らしい製造方法ですが、私たちのようにこれからワインを造り始める新産地ではリザーブワインはありません。私たちの産地では、リザーブワインがない代わりに、10月に収穫する完熟葡萄由来の風味があるはずです。それを活かして、シャンパーニュとは違った個性のスパークリングワインを生み出したいと話していました。

リザーブワインに頼らずに遅摘み果実の複雑さを生かした、独自な泡が伊達で出来るであろうと考えた桜井氏は、サントリーの社員としてフランスのシャトー・ラグランジュで働きながら、伊達に畑を購入して自身のワイナリー設立に向けて動き始めているのです。太平洋沿岸部の冷涼さを逆手に取った桜井氏の賭けはどう出るか?私はその答えを知りたくて今、ウズウズしています。ここはまだ畑しかなく、今後収穫した葡萄は道内のワイナリーで委託醸造するとの事。今後も目が離せない産地がまた見つかりましたので、進展があれば逐次ご紹介させていただきます。

< 2023年 5月 店主の独り言 >

 今月は珍しくBar(バー)のお話し。

 私は時々、残業のお供に南部せんべいや、ひねり揚げなど袋菓子を狸小路のドン・キホーテに買いに行きます。この前も袋菓子を探していると、壁に「ドンキが始めた酒屋Bar HANASAKU(ハナサク)開店!」と貼ってあります。これから残業だけど、ビール1杯ぐらい試してみようかと寄ってみました。場所はドンキの地下1階で南3条通り側の角。地下2階の酒売り場には沢山のビールがありますが、バーにビールは3種類しかありません。でも、初めて見たチェコのピルスナー・ウルケルで樽ビールがあったのでオーダーしました。下面発酵ビールの爽やかさと、香ばしいホップの風味はそのままですが、瓶入りよりもクリアでシャープな味わいに寄り道した甲斐がありました。

 下面発酵のビールは爽やかでのど越しが良いのですが、次は香り豊かな上面発酵のビールも飲みたくなりました。メニューを見てスコットランドのエール(上面発酵ビール)でブリュードックを頼みました。まずは香りが豊かでアールグレイの紅茶を思わせます。ふくよかなコクもあり、やっぱり2杯目は上面発酵がいいねと楽しんでいました。ところで1杯目は気づきませんでしたが、ビールを頼むとお店の方は大きな引き戸の冷蔵庫を開けて、最上段の棚に冷やしてあるグラスを取り出します。そしてタップと呼ばれる樽ビールのレバー下の注ぎ口にグラスを置いて注ぐのですが、このタップも冷蔵庫内の上段にあり、注ぎ終えると引き戸を閉めます。冷蔵庫の下段にはホースでつながった樽ビールがあり、つまり樽ビールも、ホースを含めた配管も全て冷蔵庫の中なのです。

 今どきのお店で樽ビール用のタップはバーカウンターの上に立っていたり、壁に何本か並んでいて目の前でビールを注ぎます。でも考えてみると樽から出て配管内に残ったビールは室温になる訳です。ですから味にうるさいお店では、注ぎ口から出たビールの始めの1秒分位はもったいないですが流しに捨てて、途中からグラスを置いて次ぎ始めます。でもここでは、樽も配管も注ぎ口も全て冷蔵庫の中なので、低温で管理されているわけです。更に冷蔵庫内の樽を見ると、よくある金属製のずんぐりした樽以外に、透明なペットボトルの大きな樽があります。調べると「キーケグ(KeyKeg)」という新素材の樽で、大きなペットボトルの中に銀色の袋が入っていて、その袋にビールが入っています。これは段ボール箱入りワイン(バッグ・イン・ボックス)と同じ構造で、病院の点滴と同様に中身の液体が減ると袋がしぼんで空気が入らず、酸化が少ない優れモノの容器なのです。

 結局一杯のつもりが二杯になり、この日は店に戻っても仕事が出来ずに仮眠をしてから残業を始めました。しかし飲食店の樽ビールもどんどん進化している事を知り、実りの大きい体験でした。実はここのバー、日本酒と焼酎が主体のお店なのですが、この樽ビールは絶対にお勧めです。

< 2023年 4月 店主の独り言 >

 先月はワイン会のお話で、今月はワインセミナーのお話し。

 2月の末にニュージーランドのセントラル・オタゴからリッポンワイナリーのオーナー、ニック・ミルズさんが札幌に来てセミナーを開催しました。元ニュージー・ナショナルチームのスキー選手だった彼はヒザを痛めた為に競技を辞めてフランスに行き、4年間仏ブルゴーニュ地方ヴォーヌ・ロマネ村のジャン・ジャック・コンフュロン、DRC、ニコラ・ポテル、その後はアルザスで研修し2002年に実家のワイナリーへ戻ります。そして当時のニュージーランドではまだ少なかったビオディナミ(バイオダイナミック)農法と、灌漑をしない葡萄栽培を始めました。

 このビオディナミ栽培とは有機栽培の1種なのですが、化学的な農薬と肥料を使わず、月や惑星の動きと植物成長の調和、動物との共生、独自の調合剤の使用等を特徴としています。セミナーの中で、リッポンワイナリーを紹介するための簡単なプロモーションビデオを観ましたが、畑の横で薬草類に水をかけて発酵させたり、土に埋めて独自の調合剤(プレパラシオン)を作って畑に散布している様子が映っていました。その後6種のワインをニックさんの説明を聞きながら試飲をして、質疑応答となりました。

 何人かの質問の後に、私も手を上げました。私は先ほどの映像を見て、「スタッフと共に畑の横でプレパラシオンを作っている姿に感動しました。ただ、フランスでは最近、大きなホームセンター等でビオディナミのプレパラシオンが販売されていると聞きましたが、そういった事はどう思われますか?」と質問しました。正直、私は「そういった安易な方法でビオディナミ栽培を始めても効果は期待できない」と言った答えを期待していました。するとニックさんは、どんな方法でもいいと思う。まずは今までの慣行農法に疑問を感じ、出来る所から始めてみて一歩でも前に進んでみることが大切だと思う。ビオディナミ農法は細かな取り決めが沢山あるが、20年続けてみて最近感じたことは、取り決めを一語一句守る事よりも、この畑の中で出来た薬草や動物のたい肥を用いて調合剤を作り、それを再び畑に散布することで畑の中で生命が循環され、土や微生物、動植物がより活発に活動を始めることが分かって来たと答えて下さいました。

 私の安直な考えを覆す、寛大で、懐が広く、明るい展望を持った答えにちょっと自分が情けなくなりました。ニューワールド産ワインの多くは、目標としているフランスの名産地の味わいを模倣したようなスタイルが多いのですが、ニックさんのピノ・ノワール種のワインは、例えばヴォーヌ・ロマネ風とかではなく、骨太な骨格を持った果実味と樽の風味が調和した独自のスタイルを持っています。ニックさんがワイナリーを始めて20年程ですが、このセミナーに参加して北海道のピノ・ノワールの一歩先を行っているのが分かりました。現在、北海道の各地でピノ・ノワールがどんどん栽培され始めています。もちろん最初は何事も模倣から始まるとは思いますが、ゆくゆくはその土地独自の味わいを目指して行く事を忘れては一過性に終わってしまうということを気づかされました。そう思うと、生産者の人柄と出来上がったワインの味わいとは共通する何かがあると感じました。

< 2023年 3月 店主の独り言 >

 今年の2月には道産ワインの大きな試飲会が、3年ぶりに2件開催されました。

 一つは比較的大手の生産者さんが集まる、道産ワイン懇談会が主催で、ロイトンホテル札幌で開催される「北を拓く道産ワインの夕べ」。もう一つは札幌京王プラザホテルで開催される、小規模でも個性的な生産者が集まる「ワインヘリテージ」が、コロナの落ち着きと共に3年ぶりに開催されました。コロナが猛威を振るったこの3年間は生産者さんとのやり取りはメールが主体で、試飲会やイベントなどでリアルで話す機会がないと、何となく一方通行感を感じていました。

 それが生産者と直に話が出来ると、昨年の天候とか醸造の話が直ぐに返事が聞けて、味わっているワインの理解度が高まります。また、ワインヘリテージのパーティー前に行われる、ワインとチーズの生産者によるパネルディスカッションで司会を行っていた、ワインライターの鹿取みゆきさんが、全国各地のワイナリーと共に「日本ワインブドウ栽培協会」(以下JVA)を立ち上げ、活動を始めたと発表されました。この協会はワイナリーが葡萄栽培に関わる問題点を共同で改善して行こうという協会なのですが、特に近年問題になっているのが、葡萄苗木のクローン指定が出来ないという点です。これは少々説明が必要なのですが、私たちはワインを選ぶ際に何という葡萄品種なのかを重視しますが、その品種が果たして何処から来た、どんな血統の品種かというルーツを明確にしようという動きです。

 ピノ・ノワール種等のヨーロッパ系葡萄の起源は古く、突然変異等を経て同じ品種でも国や、地方、あるいは村によって、性格が少しづつ異なって来ました。元は同じ品種でも、今では性格の異なる兄弟葡萄たちを別の品種と扱い、数字やアルファベットで管理する様になったのがクローンです(例・115,777,Abel、UCD5,MV6、等)。フランスとアメリカでは、オリジナル・クローンの管理を国の機関が厳格に行っていますが、日本の苗木商では新品種の需要がここ10~20年で急に高まった為に、クローンが不明のまま販売が行われて来ました。

 そこで前述の鹿取さん、岩見沢10Rワイナリーのブルース・ガットラヴさん、長野ヴィラデストワイナリーの小西さん他、全国の名門ワイナリーたちが集まって「JVA」を設立し、ワイン生産者が困っている問題に一社ではなく団体の力で解決しようと動き始めたようです。現在、協会の本部は長野県にあり、協会が直接、優良なクローンを輸入して、信州大学、日本の苗木業者と連携して、希望するワイナリーへ供給できるように準備を始めているそうです。こうした働きによって、益々良質な日本ワインが全国各地で出来る様になる事を願っています。